《福島県公共事業等景観形成指針》
1 公共事業等(福島県景観条例第2条第4号に係るものをいう。)の実施に当たっては、事業の目的を踏まえた上で、県土の景観形成の先導的役割を果たすよう機能性、安全性、経済性等に配慮した設計を行うことはもとより、地域の個性を生かしながら永続性、公共性、環境性を備える洗練されたデザインとなるよう努めること。
2 公共事業等を実施する場所(以下「行為地」という。)及びその周辺の自然、生活、歴史等の地域特性を調査し、公共事業等によって整備される施設(以下「公共施設」という。)のデザインが地域の景観形成上必要とされるデザインの水準を満たすものであることを確認しながら、周辺の景観と調和した、魅力ある景観形成に努めること。なお、デザインの要求水準を決定するに当たっては、行為地の地域特性、公共施設の種類、規模等に応じ、当該公共施設に求められる景観形成上の役割を個別に判断しながら行うこと。
3 公共事業等の計画に当たっては、自然公園法(昭和32年法律第16号)、都市計画法(昭和43年法律第100号)等に基づく施策並びに県及び市町村の条例、要綱等に基づく景観形成に関する施策との整合を図ること。
4 公共事業等は、周辺の景観に著しい影響を与えることを認識し、必要に応じて事業によって改変された後の景観を透視図、模型、コンピューター・グラフィックス等によるシミュレーションによって予測し、その影響を評価するとともに、説明会の開催等により周辺住民との合意形成に努めること。
1 自然景観や歴史的建造物等の景観資源を保全、活用した景観形成に努めること。
2 公共事業等による景観形成は、まちづくりの一環であるという視点に立ち、周辺の他の施設との景観上の秩序を明らかにした上で、調和や統一性に配慮すること。また、行為地内に複数の公共施設を設ける場合には、施設間の調和に配慮すること。
3 大規模な公共建築物、公園、橋詰広場、ポケットパーク等の行為地内には、地域の優れた景観を眺望できる快適な空間を視点場として整備するよう努めること。
4 設計に当たっては、遠景、中景、近景、近接景等、異なる視点からの検討を行うよう努めること。なお、道路等の視点が移動する公共施設については、シーン景観(立ち止まって見る景観)、シークエンス景観(視点が動いているときの景観)の特性の違いに配慮すること。
5 設計に当たっては、行為地内の景観を損ねている要素の修景に努めること。また、擁壁、さく等の工作物、法(のり)面及び建築物の表面に安易に描画、文字の記入等を行わないこと。なお、地域性を演出する場合は、景観に与える影響を十分に検討した上でデザインを選定すること。
6 設計に当たっては、四季の変化、終日の光の変化、夜景等を考慮するよう努めること。
7 設計に当たっては、公共的空間と私的空間との境界、道路、公園、河川等種類の異なる公共施設の境界、異なる材料の境界等の景観上の秩序を明らかにし、全体として基調の整った中にも、必要に応じめりはりのあるデザインとなるよう努めること。
1 行為地の選定
ア 歴史的建造物等や地域のランドマークとなる樹木等の景観資源を損なう敷地の選定をできる限り避けるとともに、地域のシンボルとなる山岳、湖沼、歴史的建造物等への眺望の妨げにならないよう努めること。
イ 山頂、丘陵地の頂部等の従来の自然景観を著しく変化させるような敷地の選定を避けること。
ウ 山岳や森林内に整備する公共施設は、自然景観を分断しないよう、できる限り地形の改変を少なくする位置、構造、形態等を選定すること。
2 行為地の造成
(1) 土地の形状
ア 従来の地形を生かした造成とし、地形の改変をできる限り少なくすること。
イ 大規模な擁壁等の構造物をできる限り生じさせないこと。
(2) 法(のり)面等の外観
ア 公共施設の位置、構造、形態、擁壁との組合せ等を工夫し、法(のり)面の面積をできる限り少なくすること。
イ 法(のり)面は、安定計算から求められる勾配の範囲の中で、できる限りゆるやかな勾配とし、法肩部及び法尻部等については、ラウンディングを行うなど周辺の起伏と滑らかに連続させるよう努めること。
ウ 法(のり)面は、周辺の植生と調和した緑化に努めること。また、法(のり)面安定のための工法選定に当たっては、緑化可能な工法の導入に努めること。
エ 圧迫感のある垂直擁壁等をできる限り避け、高さの低減に努めること。
オ 水辺の自然景観の保全と水際のデザインの連続性に配慮しながら、治水上支障のない範囲で生態系に優しい法(のり)面、護岸の導入に努めること。
カ 安全性に支障のない範囲で必要に応じて、法(のり)面、護岸等の水辺空間を親水性を確保したデザインとなるよう努めること。
3 公共施設の整備
(1) 位置
ア 従来の地形の改変を最小限にとどめるとともに、行為地内の優れた樹木、緑地等を保存し、公共施設周辺の景観との調和に配慮した位置とすること。
イ 連続する町並み等の壁面線についての規則性がある場合を除いて、道路境界線及び隣地境界線からできる限り後退すること。
ウ 歴史的建造物等の保存に努め、行為地がそれらの優れた景観資源に近接する場合は、景観の保全に配慮した位置とすること。
エ 行為地が水辺に近接する場合は、水際線を遮るような位置を避け、できる限り水際線から後退すること。
オ 行為地が都市部にある場合は、隣接する土地の利用形態と調和するよう、歩行者に開かれたまとまりのある外部空間を創出できる位置とすること。
(2) 規模
ア 建築物等にあっては、周辺の町並みや自然景観と調和するよう、建築物の分割等によって規模を調節すること。
イ 行為地の周辺が樹林地である場合は、できる限り樹冠から突出しない高さとするよう努めること。
(3) 形態・意匠
ア 過度な装飾を避け、シンプルでわかりやすい形態を基本とすること。なお、必要に応じて装飾的効果、繊細な構造表現等により魅力的なデザインとすることを妨げない。
イ 構造計算から求められた寸法を全体のバランス及びプロポーションから見直し、より洗練された形態に仕上げるよう努めること。
ウ 素材の変化する部分では、見切りの方法等を工夫し、連続的なデザインとなるよう努めること。特にダム、橋梁等の巨大な公共施設では、周辺の地形との境界部のデザインに細やかな配慮を行い、周辺の景観との調和を図ること。
エ 地域の景観の連続性を遮断し、違和感や圧迫感を感じさせるような形態を避けること。
オ 公共施設本体に付加されるバルコニー、手すり等の附属物は、施設本体と調和したものとし、全体としてまとまりのある意匠とすること。
カ 単調な大壁面による圧迫感を生じさせないこと。
キ 行為地が歴史的建造物等に近接する場合は、伝統的な意匠を継承し、又はこれと調和したものとすること。
ク 歴史的な公共施設の改築、修繕に当たっては、材料の一部又は外壁等の意匠の一部を保存し、又は再生することによって歴史的景観の保全に努めること。
ケ 道路等の公共空間から見通すことのできる壁面等は、公共性の高い部分として長く親しまれ、品位のある意匠となるよう配慮すること。
(4) 色彩
ア 公共施設の外観には、けばけばしい色彩等の不快感を与える色彩を使用せず、四季を通じて周辺の町並みや自然景観と調和した落ち着いた色彩を基調とすること。
イ 公共施設の外観の一部に周囲の色彩と対比的な色彩を使用する場合は、周囲の色彩との調和に配慮し、対比的な色彩の面積が過大にならないよう努めること。
ウ 公共施設に設置される設備機器及び屋上工作物並びに行為地内の屋外設備、附属工作物等の色彩は、公共施設本体及び周辺の景観との調和に努めること。
エ 自然景観地等では、公共施設の構造、形態、素材等の特徴を生かすとともに、 四季を通じて周辺の景観と調和した色彩とすること。
オ 地域の象徴的な公共施設としてデザインする場合は、使用する色彩についてシミュレーション等によって慎重に検討すること。
(5) 素材
ア 周辺の町並みや自然景観との調和に配慮した素材を使用すること。
イ 行為地が優れた自然景観の中にある場合は、反射性の高い素材を使用しないこと。
ウ 地域の自然素材又は伝統的素材を使用するよう努めること。
エ 行為地が歴史的建造物等に近接する場合は、歴史的建造物等に使用されている伝統的素材又はこれと調和したものを使用するよう努めること。
オ 建設後、汚れや破損などによって景観に支障が生じることがないよう、耐久性、耐候性、退色性、エイジング効果等を考慮した素材を使用すること。
カ 舗装の素材、色彩、テクスチュア、パターン等によって、空間の連続性や分節性を表現する場合は、舗装面だけが目立ちすぎないように配慮すること。
(6) 附属施設
ア 設備機器を公共施設の屋上又は屋外に設置する場合は、目立たないように遮へいするか、又は公共施設本体と調和したすっきりとしたデザインとすること。
イ 公共施設の外壁の表面には、施設の名称等を除き必要以上の広告及び図画等を表示しないよう努めること。
ウ 公共施設への看板、広告幕及び広告塔の設置はできる限り避け、やむを得ず設置する場合は、規模を必要最小限にとどめるとともに、公共施設及び周辺の景観との調和に努めること。
エ 屋外駐車場は、生垣等によって安全上支障のない範囲で道路から直接見通せないよう配慮するとともに、周辺景観と調和した場内の植栽に努めること。
オ 標識及びサインは、地域の全体表示、地区内表示、個別表示等を使い分け、人々を全体から個別へ円滑に導くよう序列化し、整理統合することによって、最小限度の掲出とし、繁雑な印象を軽減すること。
カ 照明施設は、必要照度を確保したうえで、設置数を最小限にとどめ、繁雑にならないように配慮すること。
キ 照明施設は、過剰な光が周囲に散乱しないよう光源の種類、位置、光量及び配光特性に配慮すること。
ク 彫刻、モニュメント等の設置に当たっては、設置場所の空間特性に応じた作品の選定に努めること。
ケ 行為地内における電線類は、地中化するよう努めること。なお、やむを得ず設置する場合は、建柱位置等を工夫し、目立ちにくい配線とすること。
コ 電柱の占用許可に当たっては、原則として袖看板及び巻立看板の掲示を認めないこと。
4 公共施設の緑化等
(1) 緑の保全と緑化
ア 公共施設との調和を図りながら、行為地内はできる限り緑化し、周囲にさく等を設ける場合は、生垣等とするよう努めること。
イ 樹姿又は樹勢の優れた既存の樹木がある場合は、保存又は移植によって修景に生かすよう努めること。
ウ 周辺の景観と調和するよう、できる限り地域に多く生育する植物の中から樹種を選定すること。
エ 高木・中木・低木・地被植物等の配置を効果的に行うこと。
オ 山岳部や森林部の道路は、規則的な配植や不適当な樹種の選択により違和感を生じないよう、周囲の樹林との調和や道路からの眺望を考慮し、植栽の方法を工夫すること。
カ 河川においては、治水上支障のない範囲で必要に応じて緑化に努めること。
(2) 農地・森林
ア 農地の整備等に当たっては、個性ある農村、田園景観を形成している谷地田、屋敷林、平地林、里山等の保全に努めること。
イ 農地の整備等に当たっては、生態系に配慮した多自然型の用排水路、溜め池等の整備に努めること。
ウ 森林の施業に当たっては、森林景観の保全に配慮し、大規模な皆伐を避け、適度に樹木を残すよう努めること。
エ 森林の施業に当たっては、豊かな森林景観が形成されるよう、景観に配慮した樹木の植栽等を工夫し、多種多様な林相を形成するよう努めること。
5 公共施設の維持管理
(1) 時間の経過とともに更に景観形成が図られるよう適正な維持管理に努めること。
(2) 用途廃止した公共施設は、速やかに適切な処分を行うこと。
(3) 汚損しやすく、維持管理が困難な幟旗(のぼりばた)の掲出をできる限り避け、やむを得ず掲出する場合は、期間を限定して適切に管理するとともに、汚損したり不要となった場合には、速やかに撤去すること。
6 公共事業等における景観形成の推進体制
(1) 地域の景観形成に大きな影響を及ぼす規模又は機能を有する公共事業等の計画策定に当たっては、地域住民の意見を聴取するなど住民参加の機会の確保に努めるとともに、地域住民への説明責任に配慮すること。
(2) 公共事業等の実施に当たっては、計画、設計、施工の各段階において景観に関し検証を行いながら、当該事業による優れた景観の形成を図るとともに、事業終了後の景観に関する評価を行い、その後の公共事業等の景観形成に生かすよう努めること。
(3) 公共事業等の設計に当たっては、景観形成について多くの優れた実績のある設計者及び学識経験者等専門家の意見を活用するよう努めること。
(4) 公共事業等の景観形成に関する研修会を定期的に開催するとともに、各種講習会等に積極的に参加するなど職員の資質の向上に努めること。
(5) 公共事業等の実施が複数年度にわたる場合は、当該事業の公共施設の景観形成に関する基本方針が継承され、首尾一貫したデザインとなるよう努めること。