2015年12月定例会 一般質問 紺野長人議員
議員 | 紺野長人 |
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所属会派(質問日現在) | 民主・県民連合 |
定例会 | 平成27年12月 |
質問等 | 一般質問 |
質問日 | 12月18日(金曜日) |
24番(紺野長人君)民主・県民連合会派の紺野長人です。通告により一般質問を行います。
最初に、震災と原発事故からの復興を担う職員の心身の健康維持に向けた労働時間の短縮について知事にお尋ねします。
震災・原発事故から4年9カ月を過ぎようとしていますが、原発事故の爪痕は余りにも多種多様であり、県のあらゆる部局においていまだに解決困難な課題が山積みの状況にあります。
職員は、そうした中で長期にわたって平常とは異なる長時間労働を強いられており、この状態がいつまで続くのかさえわからないまま頑張り続けています。
県庁は夜の10時を過ぎても毎日のように明かりがついた状態で、県の調査でも25年度1年間に月60時間以上時間外労働を行った職員は、知事部局だけでも延べ3千人を超えています。この問題は、県人事委員会の報告でも触れられたように職員の健康管理に重大な影を落とし続けています。加えて、長時間労働による判断力や生産性の低下という点からも、知事の強いリーダーシップのもとで改善の方向性を示す必要があります。
そこで、知事は職員の労働時間の短縮にどのように取り組んでいくのかお示しください。
次に、国の緊急雇用創出事業の廃止について質問します。
県は国からの緊急雇用創出事業費を活用し、県内における雇用環境の改善を図ってきました。特に震災、原発事故後は離職者の雇用確保に大きな役割を果たしてきました。
国はこの事業を今年度限りで廃止することを一方的に決定しましたが、被災者の暮らしの実態に触れ、そして原発事故の責任を少しでも感じているのであれば到底あり得ない判断です。緊急雇用された皆さんは、公務支援として原発事故によって増大した県や市町村の復興関連事業の業務補助を担い、自治体の長時間労働の軽減に貢献してきました。
また、被災者支援として仮設住宅の見守りや維持管理、入居者の買い物や通学などの支援、障がい児の学校生活支援、被災者の介護サポートなど復興から最も取り残された皆さんの生活を支えてきました。
さらには、原子力災害対応として、食品や農産物の放射線測定など県民の安全・安心を下支えしてきました。
これらは704事業によって3千7百名の雇用を確保し、91億5千万円の規模に及んでおり、今廃止すれば県民の暮らしの復興に重大な影響を及ぼすことになります。
そこで、緊急雇用創出事業により担ってきた業務の継続について県の考えをお示しください。
次に、大きく後退している県内の医療・介護供給体制について質問します。
少子高齢化社会がピークを迎えるとされる2025年に向けて、医療・介護体制をどのように維持・改善していくのかは避けて通れない政治の最重要課題です。
そうした中でも福島県は、避難などによって生産年齢人口が国の推計値でも原発事故前より10%も減少し、2025年問題を一気に引き寄せてしまいました。
また、2011年2月との要介護認定率を比較すると、全国平均が1.2ポイント増なのに対し、避難指示10市町村では4倍近い4.5ポイント増となっており、受け入れている避難先自治体の医療・介護供給体制の強化がいかに逼迫しているかを示しています。
こうした状況をつくり出した原発事故の重大さを改めて認識するとともに、対策に必要な財源は国の責任で措置するよう追及していかなければなりません。今すぐにでも政治と行政が強い意志を持って人材不足によって後退している医療・介護供給体制を改善しなければ、介護疲れによる無理心中や孤独死の増加をとめることはできません。
人間らしく生きる権利を保障している憲法は、高齢者とその家族も含め、全ての国民の身近に存在しなければならないはずです。
そこでまず、看護師不足解消に向けた施策についてですが、県内の看護職員の供給体制は2010年の看護師等養成施設の卒業者が882名なのに対し、2015年は946名と64名の増加となっています。このことからも、県内の看護師不足の背景には、苛酷な労働条件による若年退職と賃金水準が高い他県への流出があることが見てとれます。
今当面の措置としてできることの1つは、看護職場の業務軽減に向け、資格要件の要らない看護補助者の配置を支援することです。しかし、看護補助者も不足している現状にあり、公費負担で養成を図る必要があります。
そこで、看護補助者の養成について県はどのように取り組んでいくのかお示しください。
2つ目には、比較的賃金が高いとされる関東各県との賃金格差を解消し、養成施設、卒業者を含めた県外流出を防止することです。そのためには、人員不足による労働強化の解消に県が本腰を入れて取り組んでいる姿勢を県内外にアピールすることが重要です。
人員不足はそのまま夜勤回数に跳ね返り、月9回の夜勤は家庭生活との両立が困難であり、特に小さな子供を持つ看護職員は悩みに悩んだあげく、退職へと追い込まれていきます。看護職員の離職防止と定着のためには、人員不足がさらなる人員不足を生むという悪循環をとめるための勤務環境の改善が必要です。
そこで、看護職員の勤務環境の改善について県はどのように取り組んでいくのかお示しください。
次に、介護サービスの入り口となる要介護認定のおくれについてですが、介護保険では申請から30日以内と規定しているにもかかわらず、福島市では認定に平均70日を要する月もあります。
さきに述べたように、こうした介護体制後退の背景にあるのは原発事故であり、本来であれば利用者に負担を強いることのないよう国の責任において措置されるべきです。
例えば、要介護2を見込んで介護ベッドを利用した方が要介護1に認定された場合、支給限度額を超えた分については10割負担となってしまうことから、長期間サービスを受けずに待つという事例も多くなっています。
こうした状況を一日も早く解消し、介護を必要とする方とその家族の負担を軽減するためには、県による保険者である市町村への支援が強く求められています。
そこで、市町村による円滑な要介護認定の実施に向けて県はどのように支援していくのかお示しください。
次に、指定居宅・介護支援事業所による紹介先が8割を超えて同じ事業主体を紹介すると介護報酬がカットされる、いわゆる集中減算について質問します。
地域包括ケアシステムでは、住みなれた地域での介護サービスを主要な目的としています。しかし、集中減算の紹介率を9割から8割に引き下げたことにより、住みなれた地域どころか信頼を築いてきた居宅介護・支援所の介護サービスや訪問看護を受けられないという事例が生じています。
少なくても事業所に乏しい地域事情や利用者と事業者の信頼関係に考慮が必要な場合には、県は集中減算を弾力的に運営する必要があります。
そこで、介護報酬の新たな集中減算について弾力的な運用を図るべきと思いますが、県の考えをお示しください。
次に、TPP加盟と県内農業の対応について質問します。
安倍政権は、多くの国民の反対や不安の声を無視し、大企業の国際市場への事業拡大のため、TPPに合意しました。今後は無秩序な国際競争とアメリカの押しつけによって、医療や保険といった戦後日本が築いてきた安全・安心の仕組みが破壊されることになります。
農業分野においても、当面は補助政策によってしのいだとしても、TPPは対等な競争の妨げとなる農業補助金は基本的に禁止であり、結果として個人農家が立ち行かなくなり、農村地域の崩壊や環境破壊をもたらすことが危惧されます。したがって、早い段階から外国人にまねのできない高い技術力と手間暇を必要とする品種の開発に取り組む必要があります。
例えば、県北地方で生産されている洋ナシの1品種は栽培が難しく、ごく一部の農家でしか販売されず、高い付加価値を得ています。これまでの品種改良の意識を転換し、こうした高い技術力と手間を必要としても、より品質の高い品種を開発し普及することが国際競争に打ちかち、個人農家が生き残る鍵と言えます。
そこで、本県農産物について国際競争に勝てる品種の開発と技術支援が重要と思いますが、県の考えをお示しください。
次に、教員の多忙化と過重労働の解消に向けた取り組みについて質問します。
2014年の国際教員指導環境調査によると、日本の中学教員の勤務時間は週53.9時間と国際的にも突出していますが、そのうち実際に授業に充てている時間は32.8%と、際立って低くなっています。
福島県はこれまで30人学級を中心に国の基準を上回る形で教員を配置してきました。しかし、教員の多忙化と過重労働は、原発事故による子供の心の不安定なども重なってさらに厳しさを増しています。現場の教員からは、長時間の会議や煩雑な事務作業などが余りにも多く、子供と向き合う時間を十分に確保できないとの悲鳴が聞こえてきています。
何よりも人員の確保が求められていますが、当面の措置として会議や事務作業のスリム化など、さまざまな角度から業務の縮減を検討する必要があります。
そこで、教員の多忙化を解消し、児童生徒と向き合う時間を確保すべきと思いますが、県教育委員会の取り組みをお示しください。
次に、公立の保育所、幼稚園、小学校等におけるフッ化物による口内洗浄で虫歯を予防するいわゆる集団フッ化物洗口について質問します。
フッ化物洗口による虫歯予防効果については研究者の間でも意見が分かれており、また、副作用の心配もあることから、全国的には取りやめる学校や保護者からの同意書に副作用を明記する学校もあります。
さらに、使用されるフッ化ナトリウムそのものは劇物に指定されており、教職員の監視下で実施することが求められ、さらなる多忙化を招くことになります。こうした現状を踏まえ、集団フッ化物洗口の推進に当たっては、市町村や市町村教育委員会、もしくは各学校の判断を十分に尊重する必要があります。
そこで、公立の保育所、小学校等における集団フッ化物洗口の推進に当たっては市町村等の判断を十分に尊重すべきと思いますが、県の考えをお示しください。
次に、ことし9月4日に施行された女性活躍推進法に基づく県の特定事業主としての行動計画の策定と、さらには県内の一般事業者を対象とした推進計画の策定について質問します。
女性活躍推進法は、地方公共団体や従業員301人以上の民間事業者に行動計画の策定や取り組み結果の公表などを求めていますが、国による特別な支援策があるわけではありません。しかし、さきに述べたように原発事故が大きな原因となって生産年齢人口が大幅に減少している福島県としては、女性の社会参加に向けた環境整備は重要な課題です。
この法律は、地方公共団体においても特定事業主としてみずからの行動計画を来年3月31日まで策定するよう規定しています。県の職場は原発事故後の長時間労働のもと、子育てや介護を抱える職員にとっては極めて厳しい労働環境となっており、行動計画をより具体的で実効性のあるものとすることが求められています。
そこで、女性活躍推進法に基づく特定事業主行動計画について県はどのような考え方で策定するのかお示しください。
次に、この法律は区域内において、女性の職業生活と家庭生活の両立のために市町村は都道府県の計画を勘案して推進計画をつくるよう努めることとしています。企業においては、男女を問わず家庭と職場の両立のために、労働時間の短縮と有給休暇などの権利を行使しやすい職場環境が何よりも重要です。
一方で、自治体には公立保育園の拡充による待機児童の解消や通勤圏内での託児などといった社会環境の整備が求められています。
そこで、女性活躍推進法に基づく推進計画について県はどのような考え方で策定するのかお示しください。
以上で私の質問を終わります。
副議長(満山喜一君)執行部の答弁を求めます。
知事(内堀雅雄君)紺野議員の御質問にお答えいたします。
職員の労働時間の短縮についてであります。
本県の復興・再生には長期間の取り組みが必要となることから、職員一人一人が仕事と生活との調和を図り、家庭や生きがいを大切にしていくことが極めて重要であると考えております。
このため、超過勤務縮減に向けた意識の醸成、職員の再配置による業務の平準化、業務や会議のあり方の見直し等に取り組んでおりますが、震災後の大幅な業務増もあり、職員の超過勤務時間は増加している状況にあります。
私自身も仕事が多い中で、どう工夫すれば業務を効率的に執行できるかということを常に考えながら実践をしてまいりました。直ちに大幅な超過勤務の縮減は困難でも、さまざまな工夫による日々の取り組みの積み重ねが公務能率の向上、職員全体の超過勤務の縮減、ひいては仕事と生活との調和による職員の業務に対する意欲や県民サービスの向上につながっていくと考えております。
8月のイクボス宣言や先月実施した若手職員と先輩職員との交流会等において、私みずからがこうした意思や姿勢を明確に示しているところであり、今後とも職員全員に対する意識啓発を図りながら超過勤務の縮減を進め、ワーク・ライフ・バランスの実現に積極的に取り組んでまいる考えであります。
その他の御質問につきましては、関係部長から答弁をさせます。
総務部長(藤島初男君)お答えいたします。
女性活躍推進法に基づく特定事業主行動計画につきましては、国の策定指針に基づき女性職員の採用やキャリア形成、管理職への登用等における課題を分析し、職員の意識改革、人材育成及び職場環境の整備等の充実に資する計画を策定し、女性が個性と能力を十分に発揮できる職場づくりに努めてまいる考えであります。
保健福祉部長(鈴木淳一君)お答えいたします。
看護補助者の養成につきましては、看護職員が専門的な業務に従事できる環境をつくるために必要な取り組みであると考えております。
このため、看護補助者としての知識や技術を学ぶ養成講習会を県内5地域で開催し、修了者を医療機関に紹介する事業を行うとともに、医療機関の看護管理者に対しても看護補助者の活用推進を図る内容の研修を実施しているところであります。
今後は行政講習会の充実を検討するなど、看護の質の向上に向けしっかりと取り組んでまいる考えであります。
次に、看護職員の勤務環境の改善につきましては、看護職員が安心して働き続けていく上で重要な課題であると考えております。
このため、院内保育所を設置する民間医療機関への補助や看護職員のライフステージに応じた多様な働き方の導入に向けたワークショップの開催などのほか、今年度から医療勤務環境改善支援センターを設置し、医療機関からの相談対応を行っているところであり、今後とも引き続き看護職員のワーク・ライフ・バランスを一層推進し、医療機関における勤務環境の改善に努めてまいる考えであります。
次に、要介護認定につきましては、市町村等が設置する介護認定審査会において認定調査員による訪問調査の結果や主治医による意見書をもとに判定しておりますが、高齢化の進展等により事務処理件数が年々増加しております。
このため県といたしましては、市町村等が認定事務を円滑に行えるよう、巡回による市町村等への技術的助言や認定調査及び主治医意見書の作成等をより効率的に行うための研修会の開催などに取り組んできたところであり、今後とも要介護認定の適切な実施に向けてしっかりと支援してまいります。
次に、介護報酬の集中減算につきましては、適切な介護サービスの提供のため、地域や利用者の事情等を踏まえた対応が必要であると考えております。
このためこれまでも基準を超えた際の届け出を個別に判定し、中山間地域等で事業所数が少ない場合や質が高いサービスに利用者の希望が集中した場合などには減算を適用しない扱いとしてきたところであり、来年3月から実施する制度改正後の減算判定につきましても、これまで同様地域の実情を踏まえ、柔軟に対応してまいる考えであります。
次に、集団フッ化物洗口につきましては、公衆衛生上安全かつ有効な手法であり、保育所等で行うことにより個人で実施する場合に比べ長期実施が確保されることから、国がガイドラインを作成し推奨しております。
また、福島県歯科口腔保健の推進に関する条例においても、フッ化物洗口は幼児期から学齢期における虫歯予防対策の基本的な施策に位置づけられているところであり、県といたしましては市町村、保育所、県歯科医師会等関係団体等の協力体制を確立した上で推進してまいりたいと考えております。
商工労働部長(飯塚俊二君)お答えいたします。
緊急雇用創出事業につきましては、これまで被災者の雇用の確保や復興の加速化に重要な役割を果たしてまいりました。
来年度につきましても、国の交付金や厚生労働省が概算要求している新規事業の予算確保を強く要望しながら、避難指示区域内の防犯パトロールや商工会の復興支援員など、復興の推進に欠くことのできない事業についてはしっかりと継続してまいる考えであります。
次に、女性活躍推進法に基づく推進計画につきましては、同法に基づく国の基本方針において、女性の職業生活における活躍を推進するための支援措置や、職業生活と家庭生活との両立を図るために必要な環境の整備についてさまざまな取り組み項目が示されております。
県といたしましては、この基本方針を勘案し、関係機関との連携のもと、幅広く県民の意見を聞きながら来年度推進計画の策定を進めてまいる考えであります。
農林水産部長(小野和彦君)お答えいたします。
農産物の品種開発と技術支援につきましては、国内外との競争の激化に対応した取り組みが今後一層重要になると考えております。
このため開発に当たっては、国内外の消費者ニーズを初めとした需要動向を担当者に幅広く捉えさせながら、味のよさや品質、加工適性、さらには輸出に対応できる貯蔵性や輸送性等も重視した品種の開発に取り組んでまいります。
また、その普及に当たっては、研究員と普及指導員が一体となって先進的な農業者と連携した現地実証を行うなど、品種の特性を最大限に生かせる技術支援に努めてまいります。
教育長(杉 昭重君)お答えいたします。
教員の多忙化の解消につきましては、これまで各種会議や研修等の精選、作成書類の電子化を進めるとともに、学校運営効率化のための取組事例集に基づく効率的な職員会議の運営や部活動休養日の設定等により業務の縮減に積極的に取り組んできたところであります。
今後とも成果を上げている事例を周知し、各学校の実情に応じた一層の改善を促すことで教員が児童生徒と向き合う時間を確保し、より質の高い教育活動を展開できるよう努めてまいります。