2020年2月定例会 討論 大橋沙織議員
議員 |
大橋沙織 |
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所属会派 (質問日現在) |
日本共産党 |
定例会 | 令和2年2月 |
質問等 | 討論 |
質問日 | 3月19日(木曜日) |
13番(大橋沙織君)日本共産党の大橋沙織です。県議団を代表して討論を行います。
知事提出議案について、以下の議案に反対の立場から意見を述べます。
まず、議案第1号「新年度福島県一般会計予算」についてです。
今年は東日本大震災と原発事故から十年目に入ります。県の発表だけでも4万人を超す県民が県内外で避難生活を送る深刻な状況が続いており、避難者、被災者を誰一人取り残さずに寄り添う政治が国政、県政に求められています。
また、昨年10月の台風災害による被害は継続しており、そこに新型コロナウイルス感染症が追い打ちをかけ、県民生活のあらゆる面で大震災をはるかに上回る経済活動への影響が現れており、県民生活となりわいの支援は喫緊の課題となっています。国の対策は、極めて不十分と言わざるを得ず、県独自の施策が強く求められているところです。
こうした中で編成された新年度予算案は1兆4,418億円、前年度比では185億円のマイナス、うち復興予算は5,043億円と前年度比958億円のマイナスとなりました。この予算が県民本位に使われるのかが問われますが、以下の点を指摘します。
第一に、原発事故への対応で県民の願いに応えていないことです。
最も政治の支援を必要とする原発事故の避難者を容赦なく切り捨て、この3月末で大熊、双葉両町を除き、帰還困難区域内住民の仮設借り上げ住宅の無償提供を打ち切ります。
その結果、4万人の避難者のうち住宅無償提供が継続されるのは1割にも満たない世帯だけとなってしまいます。原発事故さえなければあり得なかった長期避難者に対してあまりにも冷たい仕打ちであり、住宅の無償提供は継続すべきです。
オール福島の要求であった県内原発10基廃炉が昨年ようやく実現しました。この間の世論調査でも明らかなとおり、原発事故の被害を受けた本県だからこそ、圧倒的多数の県民が全国の原発ゼロを願っています。しかし、県は一貫して他県の原発には口を挟まないとの態度を取り続け、県民多数の願いに背を向けています。
廃炉作業の中で現在大きな焦点となっている汚染水の処理をめぐっても、国の小委員会は海洋放出が現実的との報告書を出し、漁業者をはじめ県民の不安が広がっています。この問題でも、県は県民の願いである地上保管を求める明確な態度を示していません。
賠償の問題でも、東電の不誠実な態度は改まらず、事実上の打切りが進む下で、完全賠償を求める県民の意思を示すため、県の損害対策協議会の全体会議の開催を繰り返し求めていますが、原子力損害対策協議会の会長である知事は全体会議を3年以上も開催していません。
そもそもなぜ原発事故が防げなかったのか、国会事故調査委員会の検証は中断したままです。新潟県は、独自の検証委員会を立ち上げ、検証作業を行っていますが、被害県である本県は独自の検証委員会立ち上げの求めにも応じようとしません。この間、闘われている原発訴訟では、国と東電の責任を認める判決が出ており、加害者責任を求める上でも独自の事故検証が必要です。
夏に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックに向けた聖火リレーがJヴィレッジからスタート予定ですが、このコース設定でも県は復興途上のまちの現状を伝えるコース設定にすべきではないかとの意見があるように、原発事故による被害を積極的に発信する姿勢がありません。
このことは、原発事故はコントロールされているとしてオリンピックを誘致し、事故も被害も終わったことにしようとする安倍首相に追随する姿勢の表れではないでしょうか。
第二に、復興の在り方が被災県民中心ではなく、イノベーション・コースト構想に基づき大型拠点施設を整備、避難者を置き去りにして外からの呼び込みで新たなまちづくりを進めていることです。
昨年県が行った県民世論調査では、83.3%の県民はイノベーション・コースト構想をよく知らないと回答し、復興にはつながらないとの声が上がっているように、この事業に対する県民の期待は低く、県民要求から出発した事業ではないということです。
新年度のイノベ関連事業費は876億円、この4年間で総額約3,201億円が計上されたことになります。避難地域住民の生活となりわいの再建にどう貢献するのか、その展望は住民には見えていません。
イノベ関連事業は、今後莫大な施設の維持管理費を必要とし、本県財政を一層圧迫することは必至であり、財政運営をもゆがめるものです。福島の復興は、被災県民、避難者の暮らしとなりわいの再建、県民の復興こそ柱に据えるべきです。
また、イノベ関連事業には、再生可能エネルギー先駆けの地を目指す取組として大型施設設置のための支援も計上されています。しかし、県は再エネ推進に当たって数量のみを追求してきたため、太陽光発電でも風力発電でも大規模再エネ設備が地域の生活環境破壊の懸念があるとして、各地で反対運動が起きています。
再エネは、住民参加、地域主導を基本とし、そのための条例をつくるとともに、本気で県民参加型の再エネを推進するためにも、住宅用太陽光発電に対する県の補助金を引き上げ、真に県民参加の復興を進めるべきです。この方向こそが再エネ先駆けの地にふさわしい取組です。
この予算には、小名浜港東港地区整備予算として新年度に総額96億9,700万円も入っています。安い石炭に依存する国のエネルギー政策に沿い、大量の石炭を輸入するため、小名浜港東港地区の整備を進めてきました。
IGCC型とはいえ、新たな2基の石炭火力発電から排出されるCO2は県内の年間排出量の8割近い膨大な量となり、地球温暖化対策からの逆行です。
首都圏の建設残土を福島県に持ち込むために始まった小名浜港を埋め立てる東港地区の整備事業費は、実施計画がスタートした2003年当初は730億円だったのが完了する新年度末では1,384億円と、この16年間で約2倍にまで膨らんでいます。
石炭の大量輸入の国際バルク港に位置づけられたことで、IGCC型石炭火発増設がイノベ関連事業となり、大型船が接岸できる埠頭の整備等事業費が大幅に増額となったものです。イノベ事業と国のエネルギー政策の誤りが大型事業の無駄遣いを生む要因となっています。
昨年の台風被害などを受け、福島市でも世界に連帯し気候変動マーチが行われるなど、気候変動対策を求める声が大きく広がっています。
環境省によると、このまま有効な温暖化対策を取らなければ2100年には東京で8月の最高気温が43,3度と予想されるなど、地球環境は危機的状況になってしまいます。温暖化に拍車をかけるこの予算は見直し、再生可能エネルギーへとかじを切るべきです。
県は、復興の土台は産業基盤を整備することだと今議会でも繰り返し述べましたが、本当の復興の土台である人間の復興にこそ予算を振り向けるべきです。
第三に、県民の暮らし、子育て、医療、介護の支援策が不十分だということです。
県は、復興計画の個別計画で「日本一子育てしやすい県」、「全国に誇れる健康長寿の県」を掲げていますが、本気の取組が見えてきません。
安倍政権は全世代型社会保障を掲げていますが、実態は全世代の社会保障削減を進めようとするものです。県民の命と暮らしを脅かす社会保障切捨て政策に県は明確に反対を表明していません。
国が名指しで公立、公的病院の統廃合を進めようとしていることにも、地域医療を守る立場で反対するとともに、地域医療構想の見直しを図るべきですが、その立場は明らかではありません。
加えて、県直営の大笹生学園、若松乳児院を民間に委託する方向を打ち出しています。子育て世帯が切実に求め、県内過半数を超す市町村が実施する学校給食費の無償化にも、福島県は市町村が判断すべきこととして背を向けたままです。
また、新年度に再来年度からの高校統廃合のための準備が始まります。県立高校の統廃合については、関係市町村から、地域が疲弊する、通学が困難になる生徒が出て、学ぶ権利が侵害されるなど、どの地域からも厳しい批判と見直しを求める意見が相次ぎ、県議会からも疑義の声が上がっています。しかし、県はこの地域住民の声に耳を貸すことなく、自ら決めた方針を県民に押しつける態度を取り続けていることは重大な県民切捨てではないでしょうか。
第四に、安倍政権の憲法と地方自治、国民生活破壊の政治に対峙する姿勢がないことです。
憲法の立憲主義を踏みにじる暴挙を繰り返し、安倍首相の意に沿う忖度政治が国政を覆う異常な事態が続いており、その疑惑は枚挙にいとまがありません。その安倍首相が執念を燃やす憲法九条改悪に対し、憲法遵守義務を負う知事は、国会で議論すべきこととして、自らの意見表明は行っていません。憲法が県政のあらゆる分野で生かされる県政の実現を強く求めるものです。
相次ぐ災害、原発事故、新型コロナウイルス感染症が県民の暮らしとなりわいを脅かしている今こそ、県民の不安に寄り添い、県民の生活最優先の県政実現を求めるものです。
次に、議案第10号「港湾整備事業特別会計予算」についてです。
これは、小名浜港東港地区の予算も含んでおり、先ほど述べた理由から反対です。
議案第13号「流域下水道事業会計予算」についてです。
昨年9月議会の条例改正で特別会計から企業会計に移行され、新年度から企業会計としてスタートするものです。
国、総務省の指導を受けての改正で、将来の安定や基盤強化などのため、人口減少、施設の老朽化の中で必要な下水道料金を徴収するといいます。これは、経済性の重視で利用料の引上げが懸念されることから認められません。
議案第24号「介護保険法施行条例の一部を改正する条例」についてです。
これは、ケアマネジャーの登録手数料を二百円値上げするものです。介護の現場でケアマネジャーは重要な役割を担っていますが、人手不足が深刻です。これでは介護職員不足に歯止めがかからず、この議案には反対です。
議案第31号「県立高校条例の一部を改正する条例」についてです。
喜多方高校と喜多方東高校、いわき海星高校と小名浜高校の統合に伴う条例改正ですが、県教育委員会主催の懇談会でも反対の声が相次いでいます。喜多方市は、地域全体の振興などを考え、市長も高校統廃合計画の見直しを求めています。
また、いわき海星高校は県内唯一の水産高校として漁業者の後継者育成に重要な役割を果たしており、原発事故からの復興途上である本県の水産業発展のためにもなくてはならない高校です。いわき市漁協など漁業団体からも見直しを求める陳情が上がっており、地元の理解が得られていないことは明らかです。
県教委が進める高校統廃合計画は、地域の衰退に拍車をかけ、真の地方創生に逆行するものであり、見直すべきです。
議案第46号「公の施設の指定管理者の指定」についてです。
これは、双葉町に建設されたアーカイブ施設、伝承館の管理運営をイノベ推進機構に委託するものです。
伝承館の本来の役割は、アーカイブ施設として自然災害と原発事故という本県特有の複合災害の特性を踏まえた被害の実相や重要な記録などを保存、活用し、未来に伝える重要な施設とすべきです。
県は、伝承館をイノベの情報発信拠点にもするとしていますが、それは本来の位置づけと異なります。
次に、議員提出議案及び請願について意見を述べます。
議案第30号「憲法第九条の改定に反対する意見書」についてです。
今年1月の時事通信の世論調査で、安倍政権下での憲法改正に反対が45.9%に上り、昨年8月の前回調査より4.6ポイント増加しています。この間、新型コロナウイルス対策に乗じて基本的人権を抑制する緊急事態宣言を可能とする特措法を成立させました。
また、自らの疑惑隠しのため、内閣が検察上層部の人事に介入し、三権分立を脅かそうとすることも許されません。このような安倍政権の下での憲法第九条改定は認められません。よって、議案第30号と第29号は可決すべき、請願31号は採択すべきです。
次に、第33号「日本軍「慰安婦」問題の真の解決を求める意見書」についてです。
日本軍慰安婦問題は、日本が侵略戦争と植民地支配の下、アジアの女性たちを強制的に連行し、性奴隷とした戦争犯罪であり、重大な人権侵害です。日本政府がこの歴史的事実に背を向け続けていることが被害者をより深く傷つけており、全ての女性の人権をないがしろにすることにつながっています。
今月8日の国際女性デーには、ジェンダー平等を求める国際行動に呼応し、性暴力のない社会を求めて福島県を含む全ての都道府県でフラワーデモが行われました。日本政府は、慰安婦被害者と真摯に向き合い、真の解決へ今こそ踏み出すべきです。よって、議案第33号は可決すべき、請願26号は採択すべきです。
次に、議案第34号「所得税法第56条の廃止を求める意見書」についてです。
商店や農家などの自営業は、家族全体の労働によって支えられています。しかし、所得税法第56条では、事業主と生計を一にする配偶者など家族が事業に従事していても、対価の支払いは必要経費として認められていません。このため、配偶者など家族従事者は、保育園や奨学金の申込み、住宅ローンなど、所得証明が必要なサービスが受けられず、不利益を受けています。
世界の主要国では、家族従事者の働き分は必要経費と認められています。国内でも500を超える自治体がこうした意見書を採択しています。よって、議案第34号は可決すべき、請願27号は採択すべきです。
次に、議案第35号「消費税率10%から5%への引下げを求める意見書」についてです。
安倍政権は、8%増税時から景気が戻らない中、昨年10月に10%への増税を強行した結果、昨年10月から12月期のGDP改定値が実質年率換算で7.1%減となりました。
さらに、台風被害や新型コロナウイルスの影響などで全国的に景気が冷え込んでおり、県内でも沼尻温泉の田村屋旅館など倒産に追い込まれる事業者も出てきています。
日本共産党は、昨年5%への減税を提案しましたが、今や与野党、マスコミなどからも消費税減税を訴える声が大きく広がっています。消費税を引き下げ、国民、県民の暮らしを守ることは、今こそ党派を超えて取り組むべきことではないでしょうか。
緊急に消費税率を5%に戻し、全ての労働者や中小企業を守るべきであり、議案第35号は可決すべき、請願28号は採択すべきです。
次に、議案第36号「刑事訴訟法の再審規定の改正を求める意見書」についてです。
日本の再審制度は、再審を求める再審請求手続とそれを受けて行われる再審公判手続という2段階の組立てになっていますが、再審請求手続の段階で再審が認められないというケースが多いのが実態です。
再審制度の抱える問題点は2つあり、1つは捜査で集めた証拠資料を検察が開示しない例があること、2つ目は検察官の上訴です。
こうした制度の下、再審開始決定を得るだけでも長い年月がかかり、再審が認められないまま被告人が亡くなってしまった例もあります。冤罪被害者を救済するためのルールが今こそ必要です。よって、議案第36号は可決すべき、請願30号は採択すべきです。
以上で討論を終わります。