2020年2月定例会 討論 矢吹貢一議員
議員 |
矢吹貢一 |
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所属会派 (質問日現在) |
自由民主党 |
定例会 | 令和2年2月 |
質問等 | 討論 |
質問日 | 3月19日(木曜日) |
32番(矢吹貢一君)自由民主党議員会の矢吹貢一であります。私は、会派を代表して、知事提出議案第1号「令和2年度福島県一般会計予算」に対し賛成の立場で意見を申し述べます。
あの東日本大震災から9年が経過いたしました。過ぎ去ったこの長い年月を振り返れば、県民一人一人がそれぞれに感慨深い思いがあるのではないでしょうか。
この時間軸で、Jヴィレッジの全面再開や東京電力福島第二原子力発電所の廃炉が正式決定し、また先日双葉、大熊、富岡3町の一部が先行解除され、JR常磐線が事故以来約9年ぶりの全線開通を果たすなど、震災当時に思い描いた復興の姿がしっかりと形となって現れてきております。県民のたゆまぬ努力の証左であります。
しかし一方で、新たな課題が我々の行く手を阻もうとしています。台風第19号、そして新型コロナウイルス感染症、我が党は本県の復興を前に進ませまいとするあまたの困難にしっかりと立ち向かい、確実に結果を出し、県民の信頼と期待に応えていく覚悟であります。
さて、台風災害への対応、震災、原子力災害からの復興、福島ならではの地方創生、これらの施策を積極的に推進し、県民が復興を実感し、夢や希望が未来につながる笑顔あふれる福島を築き上げる、我が党の渡辺義信幹事長の代表質問において、知事が示した来年度当初予算の基本となる考え方であります。
一般会計予算の総額は1兆4,418億円となり、そのうち復興・創生分として5,043億円が計上されました。
歳出については、これまでの事業の効果をしっかりと見極めながら、内部経費の節減や事務事業の見直しに努めたと理解をいたしておりますが、歳入については、現在の県内経済は復興需要のピークアウトや世界経済の下振れ懸念などに加え、新型コロナウイルス感染症の影響が業種を問わず県内全域に幅広く及んでいることから、今後県税収入の先行きがさらに不透明な状況になることは言うまでもありません。一般財源の総額確保について、知事を先頭にしっかりと取り組むよう求めるものであります。
来年度は復興・創生期間や総合計画の最終年度であり、これまでの取組を踏まえ、県民が新たなスタートを切るための土台をつくる重要な年となることから、このたびの一般会計予算は復興と地方創生を両輪で進め、次の新たなステージへとつないでいく予算であり、総合計画の11のプロジェクトに重点的に予算の配分がなされているものと理解をいたしております。
これより重点プロジェクトごとにそれぞれの主な施策を見てまいりたいと思います。
まず初めに、避難地域等復興加速化プロジェクト、生活再建支援プロジェクトについてであります。
「復興・創生期間」後における東日本大震災からの復興の基本方針が昨年末に閣議決定され、今国会での関連法の整備に向けての議論がなされております。
我が党として、復興・創生期間後の組織体制や財源などの在り方について、あらゆる機会を捉え政府・与党に対して要望してまいりましたが、復興庁の設置期間の10年間延長や震災復興特別会計の継続をはじめ福島イノベーション・コースト構想の推進を軸とした産業集積や風評被害への対応など、復興のステージが進むにつれて生じる新たな課題への対応が明らかになったところであります。
引き続き、国、市町村と連携し、各地域の復興の時間軸に配慮しながら復興の拠点づくりを支援する取組を進めるとともに、事業再開や営農再開への支援など、避難地域の復興を力強く進めていきたいと思います。
福島イノベーション・コースト構想については、今春浪江町の福島水素エネルギー研究フィールドが本格稼働し、浪江町で作られた水素がいよいよ東京オリンピック・パラリンピックにおいて活用されることになり、また福島ロボットテストフィールドの全面開所も控えているなど、構想の具体化は着実に進んでおります。
しかし一方で、地元企業の新規参入の面においては課題を残していることから、新年度は異業種企業の活発化を図る福島イノベ倶楽部での事業の成果が全県に波及するよう積極的に取り組むとともに、企画調整部内に新設される福島イノベーション・コースト構想推進課を起点として、構想の具現化に向けた推進体制をより一層強化することを求めるものであります。
次に、環境回復プロジェクトについてであります。
福島第一原子力発電所の廃炉については、昨年末中長期ロードマップが改定され、1号機から6号機のプール内にある核燃料の取り出しを令和13年末までに完了させるとした新たな目標が掲げられました。
廃炉終了についても、事故後30年から40年の期間が見込まれていることから、地域住民の安全確保や風評対策に配慮しつつ、地域の産業振興にもつながる廃炉作業を進めていかなくてはなりません。
引き続き、安全を最優先とした廃炉作業が進むよう、廃炉安全監視協議会等により国及び東京電力の取組をしっかりと確認することを強く求めるものであります。
中間貯蔵施設への除去土壌等の輸送については、国は25市町村から今年度と同程度の量を輸送する方針ですが、昨年は輸送量の増加に伴い、輸送車両の交通量も増えたことから、輸送中の事故も急増しております。
今月7日には、常磐双葉インターチェンジが開通し、通行車両の増加も見込まれることから、円滑な輸送に向けた対策が必要であります。除去土壌等の輸送が安全かつ確実に実施されるよう、国及び市町村等と連携してしっかりと取り組むことを強く求めるものであります。
鳥獣被害対策については、イノシシなどの野生動物による人的被害、農林業被害が深刻化しております。関係機関と連携し、捕獲や侵入防止柵の設置など、総合的かつ効果的な対策を求めるものであります。
次に、心身の健康を守るプロジェクトについてであります。
昨年12月、国は47都道府県や地域ごとの医師の充足状況を示す医師偏在指標の暫定値と順位を公表しましたが、本県は47都道府県のうち43位の医師少数県となるなど、厳しい現状が浮き彫りになっております。
現在策定中の医師確保計画を踏まえ、医師不足や偏在の解消に取り組むとともに、新規事業である医療従事者招聘事業と併せて医療人材の確保に取り組んでいくことを求めるものであります。
また、新年度奥会津地域をモデルに会津医療センターが訪問診療チームを編成し、県立宮下病院と連携して活動する取組を支援するなど、持続可能な地域包括ケアシステムの構築に向けて取り組んでいくことが我が党の代表質問に答える形で明らかになりました。県民が住み慣れた地域で健康で安心して暮らしていける地域づくりの実現が大きく期待されるところであります。
次に、子ども・若者育成プロジェクトについてであります。
国の調査によれば、本県のICT環境の整備状況は全国的に見ても大きく遅れているとのことであり、Society5.0と呼ばれる新たな時代に対応するため、ICT環境を計画的に整備し、全国水準の教育環境にしていくことが急務となっております。
新年度からモデル校などでタブレット端末や大型掲示装置等の整備が進められるとともに、教員のICT活用指導力の向上など、教育の質の向上と一体化したICT環境の充実に取り組むことから、新しい時代を生き抜く子供たちの学びの環境が形づくられることになります。
本県の未来を支える子供たちが夢の実現に向かって大きく踏み出せるよう、グローバルな人材育成に向けた英語教育等の充実や学力向上推進事業などプロジェクト内の各事業とともに効果的な事業の推進を求めるものであります。
県立高等学校改革については、前期実施計画により県立高等学校25校を13校とする統合が予定されておりますが、各地域からは地域振興策から子供たちの日常にまでわたる幅広い分野での意見が出されており、教育行政だけでは対応が到底困難な課題が山積をいたしております。
そのため、2月4日、我が党として内堀知事に対し、県立高等学校改革を県政の重要課題の一つに位置づけるとともに、県の人口減少、少子高齢化対策と連携して進めるよう要望したところであります。
県においては、地域の声を丁寧に聞き、県民にとって最善の策となるよう県庁一丸となって取り組むことを強く求めるものであります。
次に、農林水産業再生プロジェクトについてであります。
本県の農林水産業は、根強い風評など厳しい環境にある中で、新規就農者が5年連続で200人を超え、また県内高校生の日々の努力によって、GAP認証を取得した高校数で全国最多となりました。
新年度においても、引き続き認証GAPの推進やスマート農業の導入支援をはじめとした生産基盤の強化が図られることを大きく期待するものであります。
また、本県オリジナル水稲品種の「福、笑い」のブランド化をはじめ強い野菜産地拡大特別対策事業では、本県の主要野菜であるキュウリ、トマト、アスパラガスの3品目において生産の施設化を加速的に進め、長期安定出荷により市場シェアの拡大を図るなど、農家の所得向上はもとより、地域農業全体の持続的発展にもつながることから、本県農業の復興に向けて大きく期待のできる取組であります。
さらに、森林の多面的機能を将来にわたって発揮させていくため、林業に従事する人材の育成をはじめとした本県林業の振興や水産業の再生に向けて、水産エコラベルの取得支援、常磐ものに代表される本県水産物の販路確保など、他県に負けない競争力の向上が期待されます。
次に、中小企業等復興プロジェクト、新産業創造プロジェクトについてであります。
県内の中小企業等の振興については、事業承継の問題解決や知的財産の戦略的活用など経営基盤の強化がなされるとともに、県産品の販路拡大や海外での新たな市場開拓に取り組むこととしております。県内経済を担う中小企業等の活動が活発化し、新たな雇用と収入が確保され、活気あふれる本県経済となることを期待するものであります。
新産業創造プロジェクトについては、福島ロボットテストフィールドにおける最先端の研究開発に地元企業が積極的に参画し、浜通り地域、ひいては本県の産業振興につながっていくことが期待されており、また県内企業の高い技術力を生かし、救急、災害の現場で活用できる製品開発の支援を行うなど、県内の医療関連産業の振興が図られることになります。県内全域で失われた産業の振興に向けて、新産業の育成・集積がさらに進んでいくことを強く望むものであります。
次に、風評・風化対策プロジェクトについてであります。
イギリスの日刊紙ガーディアンによって、フィンランド、スリランカ、ウィーンなど個性的な観光地と同様に、本県が今年行くべき二十の場所に選ばれました。これまでの県民挙げての取組の成果が現れており、引き続き東京オリンピック・パラリンピックの開催を好機として、福島が誇る食やホープツーリズムなどをはじめ温泉や自然などの観光資源と併せて世界中へ福島の魅力を発信していくべきであります。
また、ふくしまHACCPによる県産品の安全性の発信をはじめ戦略的な情報発信を強化し、福島の今をしっかりと世界中へ届けてほしいと考えております。
次に、復興まちづくり・交流ネットワーク基盤強化プロジェクトについてであります。
3月14日、JR常磐線が約9年ぶりに全線開通となりました。また、地方創生路線であるJR只見線についても、令和三年度中の全線復旧に向け、地域資源を生かした利活用促進が進むとともに、今後只見線を核とした地域振興がさらに強化されることになります。
我が党としても、発災当初から両路線の復旧に深く関わってまいりましたので、万感胸に迫る思いでありますが、只見線の全線復旧についてはあともう一押しであり、引き続き全会津地域をはじめ関係者の皆様と連携して取組んでいきたいと思います。
最後に、人口減少・高齢化対策プロジェクトについてであります。
本県の人口は、何も対策を講じなかった場合には令和22年に143万人となり、さらに令和42年には100万人まで減少すると推測されております。特に進学や就職などに伴う若者世代の県外への転出が顕著であり、相当の危機感を持って対策を講じていく必要があります。
出生数の回復や人口の県外流出の抑制、また高齢者が元気で暮らし、女性、若者が活躍できる場をつくるため、人口減少・高齢化プロジェクトには284件の力強いメニューが並んでおり、今後さらに本県の活力が高まっていくことを確信いたしております。
以上申し述べましたとおり、知事提出議案第1号「令和2年度福島県一般会計予算」は福島復興と地方創生の実現に向けた予算として大いに評価すべき内容であり、当然に賛成すべきものと考えます。
反対するだけでは何も生まれません。この予算を可及的速やかに通すことは、県民生活を守ることに大きくつながります。
最後に、一言申し上げます。
粒粒辛苦。物事を成し遂げるためにこつこつと苦労を重ね、地道な努力を積むこと。お茶碗の御飯の一粒一粒が農家の人々の苦労の結晶であります。着実に一歩、また一歩、令和の新しい時代を共に過ごす同志として、この議場から全ての県民にエールを送り、私の討論を終わります。御清聴ありがとうございました。