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県議会定例会(令和5年6月)

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年6月20日更新

令和5年6月福島県議会定例会知事説明要旨(令和5年6月20日)

 6月県議会定例会が開催されるに当たり、当面する重要な議案を提出いたしました。
 以下、そのあらましについて御説明いたしますが、それに先立ち、職員不祥事の再発防止について申し上げます。
 この度、相次いで職員の不祥事が発生しましたことは、県民の皆さんの県政に対する信頼を損なう極めて深刻な事態と認識しております。
 こうした事態を二度と繰り返さないためにも、入札業務について、各種システムにおける情報管理を徹底し、入札制度等監視委員会の提言を踏まえた実効性の高い再発防止策を講ずるとともに、職員が不祥事案に自分事として向き合うよう意識改革を図るなど、職員一丸となって不祥事の根絶に全力で取り組んでまいります。
 続いて、県政に関する当面の諸課題について所信の一端を述べさせていただきます。

東日本大震災からの復旧・復興について

 はじめに、「避難地域の復興・再生」についてであります。
 この春、浪江町、富岡町、飯舘村における特定復興再生拠点区域の避難指示が解除されたほか、今月2日には福島復興再生特別措置法が改正され、特定帰還居住区域が創設されました。これは帰還困難区域全体の避難指示解除に向けた大切な一歩になるものと受け止めております。
 一方で、避難指示が解除された地域の生活環境整備を始め、帰還意向のない住民の方々の土地・家屋の取扱いなど、依然として様々な課題に直面していることから、先般、官房長官や復興大臣など関係省庁の大臣・副大臣、政党に対し、ふくしまの復興・創生に向けた提案・要望活動を実施いたしました。第2期復興・創生期間以降も切れ目なく着実に復興を進めていくため、引き続き、進捗状況に応じたきめ細かな対応と十分な財源の確保を求めてまいります。
 また、福島国際研究教育機構、いわゆるF-REIが4月1日に開所し、その歴史的な第一歩を踏み出しました。F-REIが地域と共に世界に誇る研究開発を実現し、本県の復興・創生に資する拠点となるためには、多様な主体との連携を深めていくことが重要であります。県といたしましても、国や自治体、大学、研究機関等で構成する「新産業創出等研究開発協議会」への参画などを通じて、多くの関係者と力を合わせ、F-REIが、福島イノベーション・コースト構想を更に発展させ、福島の新たな未来を切り拓いていけるよう取り組んでまいります。

 次に、「環境回復」について申し上げます。
 福島第一原発・第二原発の廃炉につきましては、第一原発1号機の原子炉圧力容器を支える土台の内壁において、全周にわたり鉄筋の露出が確認されたことから、先月23日に廃炉安全監視協議会を開催し、東京電力に対して、可能な限り速やかに耐震性・健全性の評価を行うとともに、様々なリスクを想定し、必要な措置を講ずるよう求めたところであります。
 また、ALPS処理水の取扱いにつきましては、今月8日、経済産業大臣に対し、国内外の理解醸成に向け、IAEA等の国際機関と連携しながら、第三者による監視と透明性の確保に努め、科学的な事実に基づく情報を積極的に発信するなど、基本方針や行動計画において示した取組を更に徹底することや、万全な風評対策に取り組むことなどを改めて求めてまいりました。この問題は、福島だけでなく日本全体の問題であり、今後も国が前面に立ち、行動計画等に基づきながら最後まで責任を持って取り組むよう、あらゆる機会を通じて求めてまいります。

 次に、「カーボンニュートラルの推進」について申し上げます。
 世界的な気候変動への対応は喫緊の課題であり、あらゆる主体との連携・協働を深めながら、脱炭素社会の実現に向けた取組を進めていく必要があります。
 そのため、庁内に「福島県カーボンニュートラル推進本部」を新設し、気候変動の影響に対する「適応策」と、産業や運輸等の部門ごとに温室効果ガスを削減する「緩和策」を両輪に、全庁一体となって様々な施策を展開してまいります。
 具体的には、気候変動に関する情報の収集・分析・発信を行う拠点として、4月に「福島県気候変動適応センター」を開設したほか、電気自動車の導入推進や貨物運送事業者を対象としたエコタイヤの購入補助、住宅用太陽光発電設備の設置に係る補助メニューの拡大、民間住宅のZEH(ゼッチ)化と県有建築物のZEB(ゼブ)化を推進するなど、取組を一層深化させてまいります。
 また今月1日には、市町村や企業、関係団体との連携を強化する組織として「ふくしまカーボンニュートラル実現会議」を創設したところであり、私自身が先頭に立ち、オール福島の体制による機運の醸成と実践の拡大につなげてまいります。

 次に、「産業政策」について申し上げます。
 海外先進地との更なる連携強化を図るため、4月にスペイン、ドイツを訪問いたしました。
 スペイン・バスク州では、再生可能エネルギーや水素に関する連携に加え、新たに脱炭素技術、再エネ分野における循環型経済の構築等についても協力していくなど、経済交流を一層拡大していくことで合意しました。
 ドイツにおいては、ハンブルク州との連携覚書の更新において、水素の社会実装に向けた連携が新たな項目として加わり、ノルトライン=ヴェストファーレン州との間でも、水素やアンモニア関連技術での連携が盛り込まれました。
 水素については、先般、国の水素基本戦略が改定され、水素供給量の大幅な拡大が明記されるなど、更なる発展が期待されることから、今回の訪問で強化されたネットワークを通じて、県内企業の研究開発や事業拡大を幅広く支援し、新たな産業の創出と集積を促進してまいります。
 一方で、県内経済は長引くコロナ禍に加え、原油価格や物価高騰の影響などにより、依然として厳しい状況が続いています。
 そのため、経営安定化に向けた資金繰り支援や専門家による伴走支援を始め、省エネ設備への更新に係る補助、特別高圧電力を使用する中小企業への支援など、環境の変化に柔軟かつ的確に対応できるよう支援するとともに、今後も社会経済情勢を注視しながら、必要な支援策を適時適切に実施してまいります。

 次に、農林水産業の再生について申し上げます。
 4月3日に、県と関係団体との連携の下、「福島県農業経営・就農支援センター」を開所いたしました。各種相談にワンストップ・ワンフロアで対応する「福島ならでは」の体制で、新規就農者の確保・定着から経営発展までを一貫して支援してまいります。
 また、林業につきましては、昨年開講した「林業アカデミーふくしま」の取組等を通じて、本県林業に対する関心が着実に高まってきており、昨年度の新規林業就業者数も2年連続の百人超えとなる107人を記録しました。引き続き、本県林業の未来を担う人材の確保・育成と生産性の向上を図ってまいります。
 水産業につきましても、担い手の確保・育成に向けた研修支援等により、沿岸漁業の新規就業者数が震災前水準を維持していることから、今後も生産・流通・消費に至る総合的な支援をきめ細かく展開し、漁業復興に向けた好循環サイクルを力強く加速させてまいります。
 一方で、4月に中通りと会津地方で発生した凍霜害の被害額は、過去30年間で3番目の規模となる4億3千9百万円となりました。私が現地を訪れた際にも、生産者の皆さんは肩を落とされ、その苦しい胸の内を語ってくださいました。
 自然災害が相次ぐ中で、懸命な努力を重ねておられる生産者の心が折れることがないよう、樹勢の回復や病害虫防除等の資材購入に対する支援を始め、防霜資機材や人工授粉用花粉の購入経費に対する助成、農家経営安定資金の融通を図るなど、生産者の皆さんの営農継続をしっかりと支えてまいります。

 次に、「風評・風化対策」について申し上げます。
 昨年度におけるホープツーリズムの参加者数が17,806人となり、過去最高を更新しました。先月8日には、富岡町に「ホープツーリズムサポートセンター」を設置し、受入体制を強化したところであり、更なる交流人口の拡大を図ってまいります。
 海外に向けては、今月中にもEUで輸入規制見直しの検討がなされる予定であることから、4月にドイツ、スペインを訪問した際には、私から政府要人に対して本県の取組を丁寧に説明したほか、現地で福島の現状を紹介するセミナーを開催し、多くの方々から共感の声を頂いたところであります。
 先月開催されたG7広島サミットにおきましても、福島に関する情報のアップデートを図るため、本県の復興状況を紹介するパネル等を設置いたしました。また、各国要人の食事や国際メディアセンターにおいては、県産の日本酒や菓子などの県産品が提供されました。
 特に県産日本酒については、来場された方々からも大変評判が良く、先月開催された全国新酒鑑評会においても14銘柄が金賞に輝くなど、改めて県内蔵元の技術力の高さを実感したところであります。
 今後も県産日本酒を始めとした県産品のおいしさ、安全性を国内外に力強く発信していくとともに、様々な機会を捉えて、本県の現状や復興に向けて挑戦する姿を伝え、更なる理解の醸成と共感の輪を広げてまいります。

 次に「県民の健康増進」について申し上げます。
 先般、福島県版健康データベースを活用し、生活習慣とメタボリックシンドロームとの関連性について解析を行った結果、「食べる速度が速い」、「朝食を抜く」といった生活習慣がある場合、5年後のメタボリックシンドローム該当リスクが高まる傾向にあることが分かりました。
 本県におけるメタボリックシンドローム該当者の割合は全国ワースト4位となっており、大変厳しい状況にあります。そのため、これまで進めてきたベジ・ファーストの取組に加え、食べる速度など、食べ方の意識付けを新たに図っていくほか、事業所と連携した食に関するモデル事業の推進や、市町村における特定保健指導の向上支援、さらには健民アプリを活用し、適正体重を目指す参加型キャンペーンを実施するなど、健康指標の改善に向けた様々な施策を推進してまいります。
 また、5月8日に5類へと移行した新型コロナウイルス感染症につきましては、移行後、県内における定点医療機関からの報告数が減少傾向にあったものの、先週、増加に転じたことから、引き続き、感染状況を注視していく必要があります。
 そのため、5類移行に合わせて設置した「新型コロナウイルス感染症対策連絡調整会議」の下、今後の流行に備えるとともに、対応できる医療機関や病床を拡大していくなど、感染防止対策と医療提供体制の更なる充実に努めてまいります。

 次に、「子ども・若者育成」について申し上げます。
 この春、県立高等学校の統合により、伊達高等学校、二本松実業高等学校、白河実業高等学校、会津農林高等学校、南会津高等学校の5校を開校し、新入生を迎えることができました。今後は、地域と統合校の連携・協働を進め、地域全体の魅力向上や担い手の育成を図るなど、各学校の特色化、魅力化を推進してまいります。
 また、児童生徒の発達段階に応じた資質・能力を確実に育成するため、学力向上支援アドバイザーの配置や、ふくしま学力調査等の結果を踏まえた学力向上を図っていくとともに、4月3日に開所した「ふくしま幼児教育研修センター」を通じて、指導力の強化と幼小連携を推進するなど、「学びの変革」の実現に向けた施策を着実に進めてまいります。
 加えて、様々な困難を抱える子どもたちを支援するため、特別支援学校10校に特別支援教育アドバイザーを配置したほか、「不登校児童生徒支援センター」によるオンラインを活用した支援、さらには、個別支援教育コーディネーターを配置した県立高校において、NPO法人等と連携した生徒の居場所づくりに取り組むなど、学習支援体制の更なる充実強化を図ってまいります。

 次に「インフラの整備等」について申し上げます。
 昨年8月の大雨で被災したJR磐越西線が、4月1日に全線で運転を再開し、県内の鉄道ネットワークは12年振りに不通区間が解消され、再び一つにつながりました。
 ただ、人口減少の加速化や車社会の進展などに伴い、ローカル鉄道を取り巻く環境は厳しさを増しており、本県においても、水郡線、只見線、磐越西線、磐越東線の4路線9区間が赤字区間として公表されたほか、阿武隈急行については、度重なる自然災害などにより、厳しい経営状況が続いております。
 そのため、それぞれの路線における実情等を踏まえながら、沿線自治体を始めとした関係機関と共に、マイレール意識の醸成や交流人口の拡大、地域の魅力創出など、利活用の促進に向けた議論を深めてまいります。
 また、本県の空の玄関口である福島空港が、3月20日で開港30周年を迎えました。コロナ禍で落ち込んだ利用者数が回復傾向にあることに加え、ベトナムからの国際チャーター便が約3年振りに運航を再開するなど、かつてのにぎわいを取り戻しつつあることから、引き続き、路線の拡充や開拓を目指すとともに、開港30周年を記念した様々なイベントを実施するなど、官民一体による一層の利用促進を図ってまいります。

地方創生・人口減少対策について

 次に、「地方創生・人口減少対策」について申し上げます。
 今春、大学等を卒業した福島県出身者などを対象に行った調査において、県外に就職を決めた理由を尋ねたところ、62.9%の方が「福島に志望する企業がない」と回答しました。本県では、こうした若者の県外流出などにより、県内企業の人材不足が深刻化しており、人口減少を加速させる大きな要因の一つとなっております。
 県内には、日本や世界においてもトップレベルにある技術や、高いシェアを誇る魅力的な企業が数多くあるものの、そうした情報が学生や保護者の方々に十分に知られていないのが現状であります。
 そこで、県内企業の認知度を高め、地元就業を促進するための新たな取組、『感働!ふくしま』プロジェクトに着手いたしました。県内企業の情報発信力を強化し、福島で働くことの魅力を戦略的に伝えていくとともに、高校生とその保護者を対象とした企業説明会や小中学生向けの工場見学、県外からの還流を促す企業体験ツアーを展開するなど、様々な取組を進めてまいります。
 先月実施した高校生の企業見学会では、県内企業の高い技術力を目の当たりにした生徒たちから、「貴重な体験になった」、「ものづくりにやりがいを感じた」などの感想が多数寄せられました。こうした県内企業に対する興味・関心を着実に育みながら、産業人材の確保を図り、地域産業の振興と人口減少対策にしっかりと取り組んでまいります。

 この春、「声楽アンサンブルコンテスト全国大会」が、4年振りに有観客で開催され、多くの若者たちが大舞台で歌えることの喜びを噛みしめながら、美しいハーモニーを響かせてくれました。
 「歌えなかった先輩たちの分も全力で歌うことができた」、「最後の一音の余韻まで、ありがとうの気持ちを込めた」、満面の笑顔で語る若者たちの表情は充実感に満ちあふれていました。
 コロナ禍を通じて、これまで当たり前のように感じていた日常が、実はとても貴重なものであることを、私たちは改めて実感させられました。
 「有ることが難しい」と書いて「有(あ)り難(がと)う」。
 若者が口にした「ありがとう」の思いは、決して当たり前ではない「日常」に対する感謝の気持ちが込められていたのかもしれません。まだまだ楽観視はできませんが、私たちは一つ一つ着実に、コロナ禍前のような日常を取り戻しつつあります。
 そして、私たち福島県民には、必ず取り戻さなければならない、もう一つの大切な「日常」があります。それは、12年前の東日本大震災と原発事故によって奪われた日常です。これを取り戻すため、私たちは心を一つにして幾多の挑戦を続けてきました。
 また、それを支えてくれたのが、福島に思いを寄せる多くの方々の温かい御支援でありました。これも決して「当たり前」のことではありません。この12年間、変わることなく本県を応援し続けてくださっている方々への「ありがとう」、感謝の思いを胸に、私はこれからも県民の皆さんと共に、福島の大切な「日常」、すなわち、誰もが笑顔と希望に満ちあふれた「復興の地ふくしま」を創り上げるため、全力で挑戦を続けてまいります。

令和4年度決算見込みについて

 次に、令和4年度一般会計の決算見込みについて申し上げます。
 令和4年度予算につきましては、新しい総合計画の初年度として、総合計画に掲げた将来の姿の実現を目指し、復興と地方創生を力強く前進させるための当初予算に加え、新型コロナウイルス感染症対策、令和4年3月の本県沖地震や8月の大雨など自然災害への緊急対応、さらには原油価格・物価高騰への対応など、喫緊の課題に対応するため、10度にわたる補正予算を編成してまいりました。
 復興に係る広範かつ多額の財政需要に対しましては、原子力災害等復興基金を始めとする各種基金や、震災復興特別交付税を活用するなど、あらゆる方策を講じて財源確保に努めてきたところであります。
 この結果、一般会計の決算見込額は、歳入で1兆4千89億円、歳出で1兆3千725億円となり、その差額である364億円から翌年度への繰越事業に充当すべき財源278億円を差し引いた実質収支額で、86億円程度となる見込みであります。

提出議案について

 提出議案について御説明申し上げます。
 令和5年度一般会計補正予算案につきましては、原油価格・物価高騰への対応のほか、4月に発生した凍霜害への対応など、緊急に措置すべき経費を計上いたしました。
 これによる一般会計補正予算の総額は、95億9百万円となり、本年度予算の累計は1兆3千479億7千5百万円となります。
 その他の議案といたしましては、条例が「福島県税条例の一部を改正する条例」など10件、条例以外の議案が「県の行う建設事業等に対する市町村の負担について」など11件で、いずれも県政執行上重要な案件であります。
 慎重に御審議の上、速やかな御議決をお願い申し上げます。

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