県議会定例会(平成30年2月)
印刷用ページを表示する 掲載日:2018年2月16日更新
平成30年2月福島県議会定例会知事説明要旨(平成30年2月15日)
2月県議会定例会が開催されるに当たり、平成30年度一般会計予算案を始め重要な議案を提出いたしました。
以下、そのあらましについて御説明いたしますが、それに先立ち、当面の諸課題について所信の一端を述べさせていただきます。
昨年は、避難指示が解除された区域が拡大し、福島イノベーション・コースト構想が国家プロジェクトとして具体的に動き出すとともに、生産者の誇り「ふくしまプライド。」が詰まった高品質の県産農産物が震災前の輸出量を超え、さらにはEUにおいて輸入規制の緩和が実施されるなど、福島の復興・創生が加速した1年でありました。
また、福島を拠点に世界で活躍されているエアレースパイロットの室屋義秀選手のアジア人初となる年間総合優勝の快挙や、若者の文化・スポーツでの目覚ましい活躍は、私たちに勇気と感動を与えてくれました。現在開催中の平昌オリンピック・パラリンピックでも福島県ゆかりの選手が大いに活躍され、県民の皆さんに夢や希望、そして笑顔を届けてくれることを期待しております。
一方で、いまだに5万人を超える方々が古里を離れ避難生活を続けられており、避難指示が解除されても帰還が進んでいない地域があります。さらに、福島第一原発の廃炉・汚染水対策や人口減少対策という大きな課題を抱えている福島には、復興が新たなステージへ進み、光が輝きを増す中で、影の部分がより鮮明になってしまう複雑な現実もあります。
復興・創生期間3年目となる今年は、ふたば医療センターの開所、福島ロボットテストフィールドの一部運用開始、Jヴィレッジの一部営業再開が予定されるなど、復興・創生を更に前進させるための大切な一年となります。
こうした流れを確実なものとし、来る新しい年度が次のステージへ飛躍するための基礎固めの1年となるよう、引き続き、果敢に挑戦を続け、福島の復興、そして地方創生に全力で取り組んでまいる決意であります。
以下、そのあらましについて御説明いたしますが、それに先立ち、当面の諸課題について所信の一端を述べさせていただきます。
昨年は、避難指示が解除された区域が拡大し、福島イノベーション・コースト構想が国家プロジェクトとして具体的に動き出すとともに、生産者の誇り「ふくしまプライド。」が詰まった高品質の県産農産物が震災前の輸出量を超え、さらにはEUにおいて輸入規制の緩和が実施されるなど、福島の復興・創生が加速した1年でありました。
また、福島を拠点に世界で活躍されているエアレースパイロットの室屋義秀選手のアジア人初となる年間総合優勝の快挙や、若者の文化・スポーツでの目覚ましい活躍は、私たちに勇気と感動を与えてくれました。現在開催中の平昌オリンピック・パラリンピックでも福島県ゆかりの選手が大いに活躍され、県民の皆さんに夢や希望、そして笑顔を届けてくれることを期待しております。
一方で、いまだに5万人を超える方々が古里を離れ避難生活を続けられており、避難指示が解除されても帰還が進んでいない地域があります。さらに、福島第一原発の廃炉・汚染水対策や人口減少対策という大きな課題を抱えている福島には、復興が新たなステージへ進み、光が輝きを増す中で、影の部分がより鮮明になってしまう複雑な現実もあります。
復興・創生期間3年目となる今年は、ふたば医療センターの開所、福島ロボットテストフィールドの一部運用開始、Jヴィレッジの一部営業再開が予定されるなど、復興・創生を更に前進させるための大切な一年となります。
こうした流れを確実なものとし、来る新しい年度が次のステージへ飛躍するための基礎固めの1年となるよう、引き続き、果敢に挑戦を続け、福島の復興、そして地方創生に全力で取り組んでまいる決意であります。
平成30年度予算の概要について
平成30年度一般会計予算案の概要について申し上げます。
歳入につきましては、県税収入は2,341億円と、前年度を上回り、地方交付税等は3,054億円と、前年度と同程度であります。また、「原子力災害等復興基金」を始めとした各種基金を有効に活用し、必要な財源の確保に努めたところであります。
歳出につきましては、これまで執行してきた事業の効果をしっかりと検証しながら、内部管理経費の節減や事務事業の見直しに努めたところであります。
その結果、一般会計予算の総額は、復興・創生分6,178億円を含め、1兆4,472億円となります。
予算編成に当たりましては、復興・創生期間の折り返しに当たる重要な年であることから、一日も早い復興の実現と地方創生に向けたこれまでの取組の成果を、県民の皆さんに実感していただけるよう、更に挑戦を続け、福島の未来を切り拓くための予算として、総合計画の11の重点プロジェクトに重点的、優先的な予算配分を行いました。
以下、総合計画に掲げられた重点プロジェクトの区分等に従って、新年度の主な施策について御説明申し上げます。
はじめに、避難地域等復興加速化プロジェクト、生活再建支援プロジェクトに関する主な取組であります。
福島イノベーション・コースト構想につきましては、福島復興再生特別措置法に基づく重点推進計画の策定を進めるとともに、推進体制を強化するため、4月から企画調整部内に「福島イノベーション・コースト構想推進室」を新設いたします。
また、昨年7月に設立した推進機構を中心に、本構想の具体化が地元の事業・生業の再生につながるよう、多様な主体と幅広く連携しながら、新産業の創出や集積、人材育成に向けた取組を加速してまいります。
Jヴィレッジにつきましては、今年7月28日に一部営業再開することが発表されました。福島復興のシンボルであるJヴィレッジの利用促進を図るとともに、周辺地域の振興につながる新駅の整備に関係機関と協力しながら取り組んでまいります。
また、復興祈念公園の整備を国と連携して進めるとともに、複合災害の記録を世界に発信するアーカイブ拠点施設につきましては、引き続き、施設整備や震災資料の収集を実施しながら、県内各地での震災資料の展示や語り部の育成などの取組を県民参加の下、進めてまいります。
帰還困難区域内に帰還者等の居住を可能とする特定復興再生拠点区域の整備につきましては、地元自治体、県、国等関係者が一体となって円滑かつ確実に実施し、復興再生に全力で取り組んでまいります。
避難地域の生活環境の整備につきましては、4月にふたば医療センターが開所するほか、介護サービス提供体制の再構築に向け、人材確保や施設等の運営を支援するとともに、防犯や野生鳥獣被害対策など、市町村や関係団体等と連携しながら、安全・安心の確保に向けた取組を進めてまいります。
また、東京電力による家賃賠償が本年3月末までとされている世帯に対し、家賃等の支援を行うとともに、戸別訪問等の意向確認により、支援を必要とする世帯の生活再建に結び付けてまいります。
原子力損害賠償につきましては、被害の実態に見合った賠償がなされるよう、引き続き国や東京電力に求めてまいります。
次に、環境回復プロジェクトに関する主な取組であります。
中間貯蔵施設につきましては、新年度の除去土壌等の輸送量が、これまでを大幅に上回る180万立方メートルとする事業方針が国から示されました。今後とも、早期搬出に向け、国、市町村等と協議・調整を進めながら、仮置場等の適正な管理や輸送及び施設整備の安全・着実な実施について、国に求めてまいります。
特定廃棄物の埋立処分事業につきましては、国に対し、地元への丁寧な対応と安全確保を最優先に、施設設置者として責任を持って事業を進めるよう求めてまいります。
福島第一原発の廃炉・汚染水対策につきましては、使用済燃料の取り出しに向けた作業や原子炉格納容器の内部調査が進められるなど、廃炉作業が前進を見せております。一方で、これらの対策は、本県復興の大前提であり、住民の帰還や風評に大きく影響を与えることから、国及び東京電力が安全を最優先に着実に取り組むよう、廃炉安全監視協議会や現地駐在職員の現場確認等により、しっかりと監視してまいります。
また、県民の強い思いである福島第二原発の廃炉につきましては、国や東京電力に対し、あらゆる機会を捉えて繰り返し求めてまいります。
次に、心身の健康を守るプロジェクトに関する主な取組であります。
健康長寿の推進につきましては、健康指標の改善のため、県民の健康への理解を深める「ふくしま健民検定」を実施するとともに、従業員の健康づくりに取り組む企業の表彰制度を創設するなど、健康への関心を喚起する社会環境を整備してまいります。さらに、健康づくりの機運醸成を促す地域密着型イベントを開催するほか、子どもの食環境の改善や生活習慣病の予防対策を推進するなど、県民運動と連携しながら、全国に誇れる「健康長寿ふくしま」の実現に向け、更に取組を進めてまいります。
地域医療の充実強化につきましては、県立医科大学新学部、(仮称)保健科学部の整備等を進め、不足する保健医療従事者の養成と確保を図るなど、引き続き、避難地域等における医療機関の再開支援や各医療圏に必要な医療提供体制の整備等に取り組んでまいります。
また、国民健康保険の広域化につきましては、新年度から県が国民健康保険の財政運営の責任主体となることから、市町村と連携しながら安定的な財政運営に努めてまいります。
次に、子ども・若者育成プロジェクトに関する主な取組であります。
福島の子どもたちが、夢や希望を持って力強く羽ばたいていけるよう、教育委員会と連携しながら、学力を着実に伸ばす取組や、グローバル人材を育成するための英語教育、キャリア教育の充実など「頑張る学校応援プラン」に基づく教育施策を進めてまいります。
また、福島イノベーション・コースト構想をけん引するトップリーダーや農業、工業を担う人材の育成に加え、浜通りはもとより、中通りや会津地方の高校においても最先端技術に触れる取組などを実施してまいります。
来春のふたば未来学園の併設中学校開校に向けた準備や、新校舎の建築等を進めるとともに、伊達地区において特別支援学校の整備に着手するなど、教育環境の充実にしっかり取り組んでまいります。
さらに、生まれ育った環境に左右されることのないよう、保護者への各種支援制度の周知に努めるなど、子どもの夢を実現するため市町村や民間団体と連携してまいります。
次に、農林水産業再生プロジェクトに関する主な取組であります。
農業の再生につきましては、GAP認証取得の拡大に加え、農業法人等が被災地においてICTなどの先進技術を導入し、生産から流通・販売まで一貫して取り組む新たなビジネスモデルの支援や、オリジナル品種の開発、さらには農産物の輸出拡大に向け、海外ニーズに対応できる果実の安定的な供給体制の構築などを進めてまいります。
また、米政策の見直しに対応するため、本県の強みをいかした良質米生産を支援するとともに、施設園芸産地の拡大を支援し、農家所得の向上を図ってまいります。
水産業につきましては、水産種苗研究・生産施設の整備により、栽培漁業の再構築を図るとともに、第三者認証制度の水産エコラベルの取得支援や高鮮度保持技術の活用により、本県産水産物の競争力を強化し、水産業の再生に取り組んでまいります。
また、6月に開催される第69回全国植樹祭につきましては、先日、実行委員会において式典プログラムが決定されたところであり、引き続き、大会成功に向けしっかりと準備を進めてまいります。さらに、今大会を契機に、より豊かな森林を次の世代に継承する県民参加による森林づくり活動を一層推進してまいります。
次に、新産業創造プロジェクト、中小企業等復興プロジェクトに関する主な取組であります。
今年は、福島ロボットテストフィールドの一部開所が予定されており、また一つ新たな拠点が動き出します。今後とも、海外との連携・交流を深めながら、新たな時代をリードする新産業の創出を積極的に推進するとともに、福島復興の要である成長産業の育成・集積、地元企業の参入支援や技術力向上、さらには人材育成に取り組んでまいります。
再生可能エネルギーの導入につきましては、浪江町で行われる世界最大級の水素製造実証事業が、国における再生可能エネルギー由来水素の利用拡大の先駆的なプロジェクトとして位置付けられたところであり、再エネ導入目標の達成と地域活性化等を図るため、共同送電線の着実な整備やスマートコミュニティ事業のモデル構築を推進するなど、世界に誇れる「再生可能エネルギー先駆けの地」を目指す取組を加速させてまいります。
また、地域経済を支え、雇用を担う中小企業等につきましては、経営基盤を強化するため、相談体制の充実や人材育成、確保を図るとともに、商店街の活性化、ものづくり、観光産業の育成など、既存産業の振興に積極的に取り組んでまいります。
ふくしま医療機器開発支援センターにつきましては、経営改善計画に基づき、経営の安定化に向けた取組をしっかりと進めてまいります。
次に、風評・風化対策プロジェクトに関する主な取組であります。
風評払拭と風化防止に特効薬はありません。しかし、一つ一つ丁寧に、熱意を持って挑戦を続けていく中で、共感と共鳴の輪が広がりを見せ、福島に思いを寄せてくださる皆さんと共働して取り組むことでしっかりと成果につながることを実感しております。こうした流れをより確かなものとするため、福島の持っている魅力や復興に向け歩んでいる姿を国内外の皆さんに伝わるよう、届く発信を積極的に進めてまいります。
風評・風化対策強化戦略に基づく取組につきましては、発信力の高い全国展開企業等の手法や影響力を活用するほか、県内市町村と共に首都圏の大規模商業施設等においてプロモーションを実施するなど、ターゲットを意識しながら、連携強化による取組の機会を増やし、「より伝わる」「より共感が得られる」心に響く発信を行ってまいります。
また、本県産品の風評払拭につきましては、新しい市場を開拓するため、農林水産物や加工品のブランディング、パッケージングの強化や、工業製品の新しい価値を創造するデザイン指向のものづくりを支援するとともに、量販店等での旬を捉えた販売フェアや取扱の定番化につなげる販売コーナーの設置や、今年度好評を得たオンラインストアによる販売の強化など、県産品全体のブランド力向上と販路拡大に積極的に取り組んでまいります。
さらに、県産農産物が海外でも高い評価を頂いたことから、新たな輸出戦略を今年度末を目途に策定し、更なる販路の開拓・拡大に向けた取組を強化してまいります。
今年は、太平洋・島サミットやアクアマリンふくしまにおいて世界水族館会議が開催されます。復興が進んでいる福島の姿とこれまで頂いた御支援への感謝の気持ちを世界に向け発信する絶好の機会であることから、しっかり準備を進めてまいります。
観光の振興につきましては、インバウンド対策として、外国人目線を徹底したプロモーションの強化や東北各県との連携による誘客活動を展開するとともに、国内観光対策として、一年を通した切れ目のない観光誘客を図りながら、実際に福島の今を感じていただくホープツーリズムの実施や教育旅行の回復に取り組んでまいります。
東京オリンピック・パラリンピックにつきましては、大会を契機とした復興の加速化に向け、ホストタウンや機運醸成を始めとする関連施策の更なる推進に加え、野球・ソフトボール競技の県内開催に向けた準備が本格化するため、4月から文化スポーツ局内に「オリンピック・パラリンピック推進室」を設置いたします。今後とも、こうした取組に加え、事前キャンプの県内誘致や聖火リレーの検討、官民が連携したレガシー創出など、県内開催の効果が県全体に波及するよう市町村や関係団体と連携して取り組んでまいります。
次に、復興まちづくり・交流ネットワーク基盤強化プロジェクトについてであります。
公共インフラの整備につきましては、避難地域の復興や帰還を進め、地域を活性化させる必要不可欠なものであります。引き続き、ふくしま復興再生道路を始めとする道路網や物流を支える小名浜港、相馬港の整備を促進するなど、県民の安全・安心の確保につながるよう、インフラの復旧・整備に全力で取り組んでまいります。
また、今後増加が見込まれる公共施設等の維持管理・長寿命化対策等につきましては、中長期的な視点に立ち、計画的に取り組むとともに、「ふくしま建設業振興プラン」に基づく、技術力・経営力の強化や担い手の育成、確保等を支援してまいります。
JR只見線につきましては、今後とも、JR東日本を始め国や関係市町村等と連携しながら、復旧工事の着実な進展を図るとともに、年度内に策定予定の利活用計画に基づく各種施策をしっかりと進めてまいります。また、JR常磐線につきましても、関係機関と連携し、早期全線開通に向けて引き続き取り組んでまいります。
開港25周年を迎える福島空港につきましては、定期路線の維持・拡充に努めるとともに、国内外からのチャーター便の運航促進を図ってまいります。特に、九州・沖縄並びに名古屋からのチャーター便と、台湾・ベトナムからの連続チャーター便の誘致を一層強化し、新規路線の開設に向けた取組を加速してまいります。
地域防災力の向上につきましては、防災ガイドブック等を活用した県民の防災意識の高揚や地域における自主的な防災機能及び自治体の公助機能の強化を図るなど、防災・減災・災害対応力の向上に取り組んでまいります。
次に、人口減少・高齢化対策プロジェクトについてであります。
人口減少対策に取り組み地方創生を進め、地域の活力を高めていくことは、復興を前進させるために重要であります。
安心して子どもを産み、育てる環境づくりにつきましては、妊娠・出産・子育てのワンストップ相談窓口となる「子育て世代包括支援センター」の設置を市町村と連携して進めるとともに、センターを設置した市町村が実施する妊娠後期の妊婦訪問を支援してまいります。
また、保育人材の確保や待機児童解消について、市町村と連携しながら取り組みを進めるとともに、企業内保育所の整備や男性の積極的な育児参加を奨励する企業を支援するなど、働きやすい職場づくりを始めとするワーク・ライフ・バランスの充実を推進し、安心して、結婚、出産、子育てができる環境の整備に取り組んでまいります。
さらに、全ての特別支援学校に「地域支援センター」を設置し、支援を必要とする子どもたちの発達や就学などの相談体制の充実を図ってまいります。
定住・二地域居住につきましては、若者の定着、還流、現役世代等の移住促進を図るため、首都圏における移住相談体制を強化するとともに、将来の移住促進につなげる移住体験や相談会を実施するほか、遊休施設等を活用した住まいやテレワークオフィス等の受入施設の整備促進に取り組む市町村、団体等を支援してまいります。
また、会津地域において、全国屈指の観光資源と鉄道を結ぶ二次交通強化対策に新たに取り組むほか、本県の宝である尾瀬の魅力を「ふくしま尾瀬」として発信し、福島県側からの入山者の増加を図るためのモニターツアーを実施するなど、交流人口の拡大に向けた取組を進めてまいります。
以上、新年度の主要な施策等について申し上げました。
先月、広辞苑の改訂版が10年ぶりに出版され、新しく「東日本大震災」、「浜通り」、「廃炉」といった言葉が掲載されました。そして、「福島」の定義が変わり、「東日本大震災と原発事故により被災」という言葉が新たに加わりました。
これは今の福島の現実であります。福島は、あの震災と原発事故によって被災し、特に原子力災害の影は深刻な影響を及ぼしております。
「私たちに変えられることが二つある。一つは自分自身、もう一つは未来だ。」
これは、福島が生んだ世界的医学者、野口英世博士の言葉であります。
私は、何としても福島を復興させる、という強い意志を持ち続け、若者たちの世代へとこの思いをつないでいくことで福島を「被災の地」から「復興の地」へと変えていくことが必ずできると確信しております。
これからも、県民の皆さんと共に努力を続け、国内外の福島県を応援してくださる方々とスクラムを組み、目の前にある課題に一つ一つ挑戦しながら、福島の復興・創生が更に前進するよう全身全霊で取り組んでまいります。
県議会の皆さんを始め、県民の皆さんの御理解、御協力を心からお願い申し上げます。
歳入につきましては、県税収入は2,341億円と、前年度を上回り、地方交付税等は3,054億円と、前年度と同程度であります。また、「原子力災害等復興基金」を始めとした各種基金を有効に活用し、必要な財源の確保に努めたところであります。
歳出につきましては、これまで執行してきた事業の効果をしっかりと検証しながら、内部管理経費の節減や事務事業の見直しに努めたところであります。
その結果、一般会計予算の総額は、復興・創生分6,178億円を含め、1兆4,472億円となります。
予算編成に当たりましては、復興・創生期間の折り返しに当たる重要な年であることから、一日も早い復興の実現と地方創生に向けたこれまでの取組の成果を、県民の皆さんに実感していただけるよう、更に挑戦を続け、福島の未来を切り拓くための予算として、総合計画の11の重点プロジェクトに重点的、優先的な予算配分を行いました。
以下、総合計画に掲げられた重点プロジェクトの区分等に従って、新年度の主な施策について御説明申し上げます。
はじめに、避難地域等復興加速化プロジェクト、生活再建支援プロジェクトに関する主な取組であります。
福島イノベーション・コースト構想につきましては、福島復興再生特別措置法に基づく重点推進計画の策定を進めるとともに、推進体制を強化するため、4月から企画調整部内に「福島イノベーション・コースト構想推進室」を新設いたします。
また、昨年7月に設立した推進機構を中心に、本構想の具体化が地元の事業・生業の再生につながるよう、多様な主体と幅広く連携しながら、新産業の創出や集積、人材育成に向けた取組を加速してまいります。
Jヴィレッジにつきましては、今年7月28日に一部営業再開することが発表されました。福島復興のシンボルであるJヴィレッジの利用促進を図るとともに、周辺地域の振興につながる新駅の整備に関係機関と協力しながら取り組んでまいります。
また、復興祈念公園の整備を国と連携して進めるとともに、複合災害の記録を世界に発信するアーカイブ拠点施設につきましては、引き続き、施設整備や震災資料の収集を実施しながら、県内各地での震災資料の展示や語り部の育成などの取組を県民参加の下、進めてまいります。
帰還困難区域内に帰還者等の居住を可能とする特定復興再生拠点区域の整備につきましては、地元自治体、県、国等関係者が一体となって円滑かつ確実に実施し、復興再生に全力で取り組んでまいります。
避難地域の生活環境の整備につきましては、4月にふたば医療センターが開所するほか、介護サービス提供体制の再構築に向け、人材確保や施設等の運営を支援するとともに、防犯や野生鳥獣被害対策など、市町村や関係団体等と連携しながら、安全・安心の確保に向けた取組を進めてまいります。
また、東京電力による家賃賠償が本年3月末までとされている世帯に対し、家賃等の支援を行うとともに、戸別訪問等の意向確認により、支援を必要とする世帯の生活再建に結び付けてまいります。
原子力損害賠償につきましては、被害の実態に見合った賠償がなされるよう、引き続き国や東京電力に求めてまいります。
次に、環境回復プロジェクトに関する主な取組であります。
中間貯蔵施設につきましては、新年度の除去土壌等の輸送量が、これまでを大幅に上回る180万立方メートルとする事業方針が国から示されました。今後とも、早期搬出に向け、国、市町村等と協議・調整を進めながら、仮置場等の適正な管理や輸送及び施設整備の安全・着実な実施について、国に求めてまいります。
特定廃棄物の埋立処分事業につきましては、国に対し、地元への丁寧な対応と安全確保を最優先に、施設設置者として責任を持って事業を進めるよう求めてまいります。
福島第一原発の廃炉・汚染水対策につきましては、使用済燃料の取り出しに向けた作業や原子炉格納容器の内部調査が進められるなど、廃炉作業が前進を見せております。一方で、これらの対策は、本県復興の大前提であり、住民の帰還や風評に大きく影響を与えることから、国及び東京電力が安全を最優先に着実に取り組むよう、廃炉安全監視協議会や現地駐在職員の現場確認等により、しっかりと監視してまいります。
また、県民の強い思いである福島第二原発の廃炉につきましては、国や東京電力に対し、あらゆる機会を捉えて繰り返し求めてまいります。
次に、心身の健康を守るプロジェクトに関する主な取組であります。
健康長寿の推進につきましては、健康指標の改善のため、県民の健康への理解を深める「ふくしま健民検定」を実施するとともに、従業員の健康づくりに取り組む企業の表彰制度を創設するなど、健康への関心を喚起する社会環境を整備してまいります。さらに、健康づくりの機運醸成を促す地域密着型イベントを開催するほか、子どもの食環境の改善や生活習慣病の予防対策を推進するなど、県民運動と連携しながら、全国に誇れる「健康長寿ふくしま」の実現に向け、更に取組を進めてまいります。
地域医療の充実強化につきましては、県立医科大学新学部、(仮称)保健科学部の整備等を進め、不足する保健医療従事者の養成と確保を図るなど、引き続き、避難地域等における医療機関の再開支援や各医療圏に必要な医療提供体制の整備等に取り組んでまいります。
また、国民健康保険の広域化につきましては、新年度から県が国民健康保険の財政運営の責任主体となることから、市町村と連携しながら安定的な財政運営に努めてまいります。
次に、子ども・若者育成プロジェクトに関する主な取組であります。
福島の子どもたちが、夢や希望を持って力強く羽ばたいていけるよう、教育委員会と連携しながら、学力を着実に伸ばす取組や、グローバル人材を育成するための英語教育、キャリア教育の充実など「頑張る学校応援プラン」に基づく教育施策を進めてまいります。
また、福島イノベーション・コースト構想をけん引するトップリーダーや農業、工業を担う人材の育成に加え、浜通りはもとより、中通りや会津地方の高校においても最先端技術に触れる取組などを実施してまいります。
来春のふたば未来学園の併設中学校開校に向けた準備や、新校舎の建築等を進めるとともに、伊達地区において特別支援学校の整備に着手するなど、教育環境の充実にしっかり取り組んでまいります。
さらに、生まれ育った環境に左右されることのないよう、保護者への各種支援制度の周知に努めるなど、子どもの夢を実現するため市町村や民間団体と連携してまいります。
次に、農林水産業再生プロジェクトに関する主な取組であります。
農業の再生につきましては、GAP認証取得の拡大に加え、農業法人等が被災地においてICTなどの先進技術を導入し、生産から流通・販売まで一貫して取り組む新たなビジネスモデルの支援や、オリジナル品種の開発、さらには農産物の輸出拡大に向け、海外ニーズに対応できる果実の安定的な供給体制の構築などを進めてまいります。
また、米政策の見直しに対応するため、本県の強みをいかした良質米生産を支援するとともに、施設園芸産地の拡大を支援し、農家所得の向上を図ってまいります。
水産業につきましては、水産種苗研究・生産施設の整備により、栽培漁業の再構築を図るとともに、第三者認証制度の水産エコラベルの取得支援や高鮮度保持技術の活用により、本県産水産物の競争力を強化し、水産業の再生に取り組んでまいります。
また、6月に開催される第69回全国植樹祭につきましては、先日、実行委員会において式典プログラムが決定されたところであり、引き続き、大会成功に向けしっかりと準備を進めてまいります。さらに、今大会を契機に、より豊かな森林を次の世代に継承する県民参加による森林づくり活動を一層推進してまいります。
次に、新産業創造プロジェクト、中小企業等復興プロジェクトに関する主な取組であります。
今年は、福島ロボットテストフィールドの一部開所が予定されており、また一つ新たな拠点が動き出します。今後とも、海外との連携・交流を深めながら、新たな時代をリードする新産業の創出を積極的に推進するとともに、福島復興の要である成長産業の育成・集積、地元企業の参入支援や技術力向上、さらには人材育成に取り組んでまいります。
再生可能エネルギーの導入につきましては、浪江町で行われる世界最大級の水素製造実証事業が、国における再生可能エネルギー由来水素の利用拡大の先駆的なプロジェクトとして位置付けられたところであり、再エネ導入目標の達成と地域活性化等を図るため、共同送電線の着実な整備やスマートコミュニティ事業のモデル構築を推進するなど、世界に誇れる「再生可能エネルギー先駆けの地」を目指す取組を加速させてまいります。
また、地域経済を支え、雇用を担う中小企業等につきましては、経営基盤を強化するため、相談体制の充実や人材育成、確保を図るとともに、商店街の活性化、ものづくり、観光産業の育成など、既存産業の振興に積極的に取り組んでまいります。
ふくしま医療機器開発支援センターにつきましては、経営改善計画に基づき、経営の安定化に向けた取組をしっかりと進めてまいります。
次に、風評・風化対策プロジェクトに関する主な取組であります。
風評払拭と風化防止に特効薬はありません。しかし、一つ一つ丁寧に、熱意を持って挑戦を続けていく中で、共感と共鳴の輪が広がりを見せ、福島に思いを寄せてくださる皆さんと共働して取り組むことでしっかりと成果につながることを実感しております。こうした流れをより確かなものとするため、福島の持っている魅力や復興に向け歩んでいる姿を国内外の皆さんに伝わるよう、届く発信を積極的に進めてまいります。
風評・風化対策強化戦略に基づく取組につきましては、発信力の高い全国展開企業等の手法や影響力を活用するほか、県内市町村と共に首都圏の大規模商業施設等においてプロモーションを実施するなど、ターゲットを意識しながら、連携強化による取組の機会を増やし、「より伝わる」「より共感が得られる」心に響く発信を行ってまいります。
また、本県産品の風評払拭につきましては、新しい市場を開拓するため、農林水産物や加工品のブランディング、パッケージングの強化や、工業製品の新しい価値を創造するデザイン指向のものづくりを支援するとともに、量販店等での旬を捉えた販売フェアや取扱の定番化につなげる販売コーナーの設置や、今年度好評を得たオンラインストアによる販売の強化など、県産品全体のブランド力向上と販路拡大に積極的に取り組んでまいります。
さらに、県産農産物が海外でも高い評価を頂いたことから、新たな輸出戦略を今年度末を目途に策定し、更なる販路の開拓・拡大に向けた取組を強化してまいります。
今年は、太平洋・島サミットやアクアマリンふくしまにおいて世界水族館会議が開催されます。復興が進んでいる福島の姿とこれまで頂いた御支援への感謝の気持ちを世界に向け発信する絶好の機会であることから、しっかり準備を進めてまいります。
観光の振興につきましては、インバウンド対策として、外国人目線を徹底したプロモーションの強化や東北各県との連携による誘客活動を展開するとともに、国内観光対策として、一年を通した切れ目のない観光誘客を図りながら、実際に福島の今を感じていただくホープツーリズムの実施や教育旅行の回復に取り組んでまいります。
東京オリンピック・パラリンピックにつきましては、大会を契機とした復興の加速化に向け、ホストタウンや機運醸成を始めとする関連施策の更なる推進に加え、野球・ソフトボール競技の県内開催に向けた準備が本格化するため、4月から文化スポーツ局内に「オリンピック・パラリンピック推進室」を設置いたします。今後とも、こうした取組に加え、事前キャンプの県内誘致や聖火リレーの検討、官民が連携したレガシー創出など、県内開催の効果が県全体に波及するよう市町村や関係団体と連携して取り組んでまいります。
次に、復興まちづくり・交流ネットワーク基盤強化プロジェクトについてであります。
公共インフラの整備につきましては、避難地域の復興や帰還を進め、地域を活性化させる必要不可欠なものであります。引き続き、ふくしま復興再生道路を始めとする道路網や物流を支える小名浜港、相馬港の整備を促進するなど、県民の安全・安心の確保につながるよう、インフラの復旧・整備に全力で取り組んでまいります。
また、今後増加が見込まれる公共施設等の維持管理・長寿命化対策等につきましては、中長期的な視点に立ち、計画的に取り組むとともに、「ふくしま建設業振興プラン」に基づく、技術力・経営力の強化や担い手の育成、確保等を支援してまいります。
JR只見線につきましては、今後とも、JR東日本を始め国や関係市町村等と連携しながら、復旧工事の着実な進展を図るとともに、年度内に策定予定の利活用計画に基づく各種施策をしっかりと進めてまいります。また、JR常磐線につきましても、関係機関と連携し、早期全線開通に向けて引き続き取り組んでまいります。
開港25周年を迎える福島空港につきましては、定期路線の維持・拡充に努めるとともに、国内外からのチャーター便の運航促進を図ってまいります。特に、九州・沖縄並びに名古屋からのチャーター便と、台湾・ベトナムからの連続チャーター便の誘致を一層強化し、新規路線の開設に向けた取組を加速してまいります。
地域防災力の向上につきましては、防災ガイドブック等を活用した県民の防災意識の高揚や地域における自主的な防災機能及び自治体の公助機能の強化を図るなど、防災・減災・災害対応力の向上に取り組んでまいります。
次に、人口減少・高齢化対策プロジェクトについてであります。
人口減少対策に取り組み地方創生を進め、地域の活力を高めていくことは、復興を前進させるために重要であります。
安心して子どもを産み、育てる環境づくりにつきましては、妊娠・出産・子育てのワンストップ相談窓口となる「子育て世代包括支援センター」の設置を市町村と連携して進めるとともに、センターを設置した市町村が実施する妊娠後期の妊婦訪問を支援してまいります。
また、保育人材の確保や待機児童解消について、市町村と連携しながら取り組みを進めるとともに、企業内保育所の整備や男性の積極的な育児参加を奨励する企業を支援するなど、働きやすい職場づくりを始めとするワーク・ライフ・バランスの充実を推進し、安心して、結婚、出産、子育てができる環境の整備に取り組んでまいります。
さらに、全ての特別支援学校に「地域支援センター」を設置し、支援を必要とする子どもたちの発達や就学などの相談体制の充実を図ってまいります。
定住・二地域居住につきましては、若者の定着、還流、現役世代等の移住促進を図るため、首都圏における移住相談体制を強化するとともに、将来の移住促進につなげる移住体験や相談会を実施するほか、遊休施設等を活用した住まいやテレワークオフィス等の受入施設の整備促進に取り組む市町村、団体等を支援してまいります。
また、会津地域において、全国屈指の観光資源と鉄道を結ぶ二次交通強化対策に新たに取り組むほか、本県の宝である尾瀬の魅力を「ふくしま尾瀬」として発信し、福島県側からの入山者の増加を図るためのモニターツアーを実施するなど、交流人口の拡大に向けた取組を進めてまいります。
以上、新年度の主要な施策等について申し上げました。
先月、広辞苑の改訂版が10年ぶりに出版され、新しく「東日本大震災」、「浜通り」、「廃炉」といった言葉が掲載されました。そして、「福島」の定義が変わり、「東日本大震災と原発事故により被災」という言葉が新たに加わりました。
これは今の福島の現実であります。福島は、あの震災と原発事故によって被災し、特に原子力災害の影は深刻な影響を及ぼしております。
「私たちに変えられることが二つある。一つは自分自身、もう一つは未来だ。」
これは、福島が生んだ世界的医学者、野口英世博士の言葉であります。
私は、何としても福島を復興させる、という強い意志を持ち続け、若者たちの世代へとこの思いをつないでいくことで福島を「被災の地」から「復興の地」へと変えていくことが必ずできると確信しております。
これからも、県民の皆さんと共に努力を続け、国内外の福島県を応援してくださる方々とスクラムを組み、目の前にある課題に一つ一つ挑戦しながら、福島の復興・創生が更に前進するよう全身全霊で取り組んでまいります。
県議会の皆さんを始め、県民の皆さんの御理解、御協力を心からお願い申し上げます。
提出議案について
次に、今定例会に提出しているその他の議案についてであります。
特別会計等予算案15件につきましては、それぞれの目的に応じた事業を実施するため、所要の額を計上したものであります。
条例に関する議案といたしましては、「福島県国民健康保険広域化等支援基金条例の一部を改正する条例」を始め51件を提出しております。
それ以外の議案は、「包括外部監査契約について」など44件で、いずれも県政執行上重要な案件であります。
慎重に御審議の上、速やかな御議決をお願いいたします。
特別会計等予算案15件につきましては、それぞれの目的に応じた事業を実施するため、所要の額を計上したものであります。
条例に関する議案といたしましては、「福島県国民健康保険広域化等支援基金条例の一部を改正する条例」を始め51件を提出しております。
それ以外の議案は、「包括外部監査契約について」など44件で、いずれも県政執行上重要な案件であります。
慎重に御審議の上、速やかな御議決をお願いいたします。