地球探検 マダガスカル共和国 小倉貴美子隊員 4
第4回 私が感じたこと・考えたこと
「幸福度」
マダガスカルの人達は、日本に対して『お金持ち』という気持ちを抱いています。私は、「お金を頂戴。」と大人から子供まで大勢の人に言われました。マダガスカルに着いたばかりの頃は、言葉のとおり可哀想だと思っていました。
しかし村に住み、彼らを観察してみると「彼らは本当にかわいそうなのだろうか?」という疑問を持つようになりました。「私達は貧しいからかわいそう。」と彼らは言いましたが、マダガスカルの人達の表情には悲壮感はなく、活気があり明るい感じに見受けられます。
それはなぜなのか、私はもっとよく観察しました。そして気付いた事は、彼らは常に家族や友達などたくさんの人達と深い関係を築いていた事でした。
もっと詳しく話すと、周囲の人達と深い関係を築く事によって喜びや悲しみなどのたくさんの感情を共有しているのです。例えば、嬉しい事があった時。誰かに話すと、相手も嬉しく思ってくれて喜びが2倍になります。また悲しい事があった時は、痛みを分かち合い乗り越える事などです。そんな人間関係を、身近に築いていました。これは、素晴らしいものではないでしょうか?
そう思った時、私は彼らが「貧しいかわいそうな人達」に思えなくなっていました。確かに日々の暮らしは、物質的に不自由だと思うのですが、人としての「幸福度」を考えた時マダガスカルの人達は日本に劣っていないのではないかと・・・・。家族など、共感できる人が常に一緒にいる貴さが彼らにはあるのです。
今はまだ物質的な幸福度で考えてしまいがちですが、将来経済が発展し物が満たされても家族・周囲の人同士が支え合っている国でいて欲しいと願っています。
「心の訴えについて」
次に≪心の訴えについて≫考えた事をお話ししたいと思います。
これは、私がマダガスカルについてすぐの頃のお話です。
私は、体調管理には細かく注意していたつもりだったのですが、ある日突然熱を出てしましました。病院に行こうと思ったのですが語学が上達していない状態で、どのように医師に説明していいのか分からなかった事、また住んでいる場所は車が来るのが不定期な辺鄙なところ、そして夜間という事もあり不安がいっぱいになり「ここで死んでしまったらどうしよう。」と大げさですが考えてしまったのです。
しかしその直後、「こんな所で死にたくない。最後は家族に会いたい。」と思ました。翌日には快方に向かいましたが、症状を振り返っていた時ふと日本で仕事をしていた時の事を思い出したのです。
それは、病棟勤務していた時の事です。私はその日、何人かの患者さんを受け持っていました。ほぼ寝たきりの状態の患者さんばかりでした。そして私が処置のために、患者さんの病室を訪れると、寝ていた患者さんが急に「家に帰りたい。」とはっきり言ったのです。私はビックリしてしまいました。
しかしその時の私の対応を思い返すと、「そう、ではお家の方が来たらもう一度話しましょう。」と対応したのですが、その方は自宅に戻る事が出来なかったと記憶しています。
なぜ急に、忘れていた事を思い出したのか分かりません。でもあの時、もっと本気でその患者さんの言葉を受け止める事が出来ていればよかったと、任地で病気を経験した後に後悔の気持ちが湧いてきました。
『自分の人生を思った時、どういう最後をどこで迎えたいのか。』私はその患者さんの心からの訴えを聞き逃してしまったのです。この様な経験しないと患者さんの気持ちを分からなかった自分が恥ずかしいと思いました。
だから今後仕事に復帰した時には、そんな心からの訴えを受け止められる人になりたいと思います。1人でも多くの人が満足のいく環境で生活できるように、そんな医療従事者を目指したいと思います。
「手紙」
最後に≪手紙について≫お話ししたいと思います。
私が2年間途上国で過ごす事が出来たのは、日本からの手紙によって励まされ支えられたからです。今はパソコンや携帯で、リアルタイムに情報を交換する事ができ大変便利だと思います。でも、手紙やはがきもよい所がたくさんありました。この様な途上国で生活していると、時々停電になる事があります。パソコンや携帯は便利なのですが、充電を必要とするため電気がないと使う事が出来ません。
でも、手紙やはがきは違います。手元に残り、いつでもどこでもどんな時にでも読む事が出来るのです。 また、文字の大きさや形、筆圧などから送ってくれた人を想像し読む事はとても楽しかったです。パソコンや携帯も、すぐに連絡を取る事が出来ていいと思います。でも、手紙もいろいろな味わいがありいいものです。是非皆さんも大切な言葉は、手紙で送って形を残してみてはいかがしょう。
間もなく帰国する私に、子供達が絵をプレゼントしてくれました。
保健ボランティアが村を巡回し、啓発活動を行っている時の様子。
聞いている子供達も一生懸命です。でも、学校に行っていません。
カメラを向けたら明るい表情の子供達。 いつまでもこの澄み切った空のようでいて欲しいと思います。
マダガスカル共和国 H21年度4次隊 職種:看護師 小倉 貴美子 アンバンヌ基礎保健センター