地球探検 パラグアイ共和国 廣瀬靖夫隊員 16
パラグアイ通信(16)
パラグアイにはほとんど観光資源がありません。そこで、2004年に昔走っていた薪で走る蒸気機関車を整備して観光列車にしようと運行を始めました(写真1)。この汽車はパラグアイ通信(11)でも少し触れた、1844年に開通した南米最初の列車です。明治維新の24年も前のことです。
現在この列車は隔週日曜日にのみ運転していて、アスンシオンの植物公園駅から、イパカライ湖があるアレグア駅までの28kmを走ります。出発は午前10時、アレグレ駅に着いたのは11時30分ですので時速10数kmで走るわけです。時速300kmで走る新幹線と比べて、なんと心休まる小旅行だったか想像して下さい。職業柄どんなボイラーを使っているか知りたくて罐の中ものぞいてみました。炉筒煙管ボイラーを使っていました。
片道1時間30分の汽車の中では、数人のエンタティナ-が乗っていろいろなパフォマンスを披露してくれ、さらにジュ-スとチパのサ-ビスもあり、決してお客を飽きさせることがありませんでした。これで、パラグアイ人は往復30,000Gs(600円)、外国人であるわれわれは4倍の120,000Gs(2,400円)でした。日本のことを考えると安いのですが、この二重価格制がどうも引っかかりました。しかしこの小旅行は大学の秘書さんたち子供づれの家族と一緒に行ったので、彼女らの給料(月3万円程度)の安さを考えると、しょうがないだろうとも考えます。
アレグア駅から歩いて10分ぐらいで湖に着きます。このイパカライ湖(60平方キロメートル、猪苗代湖の約6割)、昔は水がきれいな湖と歌にまで歌われたそうですが、今はアオコが発生していました。このアレグア市は、セントラル県の県庁所在地であり、人口も6.8万人と比較的多いにもかかわらず、下水処理していない汚水が流れ込んでいるため、かなり富養化が進んでいるものと思われます。多分、お金がないので下水処理場の建設費が捻出できないのでしょう。農業立国では、そういう予算を捻出する余裕が生まれてこないのかもしれません。
しかし、日本も下水処理場ができたのは私が成人になってからであり、河川の汚染も工場排水によるものがほとんどだったと記憶しています。日本の便所はいわゆる「肥溜め」であり、汲み取って畑に肥料としてリサイクルしていました。パラグアイに「肥溜め」を普及させるというのも無理な話でしょうが、日本は環境工学的にはいい文化を持っていたとつくづく思うのです。
どうでしょう、農業国としては一考の余地はないでしょうか? ルゴ大統領どの。少々臭いですが・・。
写真1
1844年の薪焚き蒸気機関車を観光用に改造、 車内では19世紀の衣装をつけた女性もサービス
写真2
イパカライ湖とアオコの発生 イパカライ湖は猪苗代湖の60%の面積、それがこんなに汚染、工場がないのに!
廣瀬 靖夫 (シニアボランティア 環境工学)