地球探検 パラグアイ共和国 廣瀬靖夫隊員 18
パラグアイ通信(18)
先日世界最大のイグアスの滝を見に行く途中で、その滝の近くにある今は世界第二の大きさ(中国・三峡ダムが世界一、22,400メガワット)のイタイプー発電ダムを見学してきました(写真1)。
このダムは1973年から1982年の約10年間かけてパラグアイとブラジルの共同で建設され、総発電能力は14,000メガワットと言われています。
このほかに、1968年に稼動したアカラウ発電ダム(210メガワット)とパラグアイとアルゼンチンとの共同で1994年に作られたヤスレタ発電ダム(3,200メガワット)があり、すべてパラグアイの電力は水力発電でまかなわれています。環境工学的にみても、安定供給としても優れたシステムだと思います。そして、パラグアイはこんなに多くの電気を現在のところ必要としないのです。パラグアイが理論上使用可能な電力は、イタイプーの半分(7,000メガワット)、アカラウのすべて(210メガワット)そしてヤスレタの半分(1,600メガワット)です。しかし、イタイプー発電所のパラグアイ分の90%(6,300メガワット)をブラジルに売っているので、パラグアイで現在使用している電力の最大は2,510メガワットとなります。このト-タルは日本の福島第二原子力発電所の4基ある発電基の2基分程度です。
ここで、ブラジルへの売電価格が今大きな政治問題になっています。発電所建設当時、共同建設とはいえパラグアイには技術者もお金もなくブラジルに「おんぶにだっこ」という状態だったらしく、ブラジルに「安くたたかれた?」のが実情なのでしょう。現在4ドル/メガワット時で売っている価格を37ドル(中国の三峡ダムでも35ドルぐらいで試算)に上げたいと交渉しているらしいのですが、交渉は難航しているみたいです。新聞では、「ブラジルに三十年間も収奪されてきた」との記事が出たりで、現ルゴ政権にとって最大の政治課題だそうです。相場価格の1/9と言うのは確かに安すぎますよね。
また、発電所の位置が国土の南と東に偏っていて(写真2参照)、送電ロスが多いようです。しかし、パラグアイの中央を流れているパラグアイ河の西(地図では左上)は原野で、あまり人が住んでいないので(全人口の20%程度)、そう大きな問題にはなっていないのかもしれません。
さらに、パラグアイ独自の発電所を作ろうとしており、今年2009年には着工する予定で、日本も資金援助するようです。水力発電の欠点は、設置位置が限られることでしょうかね。今度のダムもイタイプー発電所とアカラウ発電所の近くだそうです。
写真1
今は世界第二になったイタイプー水力発電所 (手前に見える滑り台みたいなものは放水路です。写真の中央左付近、堤防の下に白い筒状の縦の管がいくつか見えるのが発電機に行っている導水管です。)
写真2
発電所の位置関係
廣瀬 靖夫 (シニアボランティア 環境工学)