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地球探検 パラグアイ共和国 廣瀬靖夫隊員 24

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年12月1日更新

 地球探検

パラグアイ通信(24)

 さて、パラグアイに来て一年が過ぎました。私がどんな仕事をしているか二十数回の「通信」を書いてきてそれに触れることがありませんでした。どう触れていいか難しいのです。

  私は、2007年の秋にJICAのSV(シニア海外ボランティア)に応募し、2008年2月に採用通知をもらいました。私は現役時代、化石燃料の低NOx燃焼や産業廃棄物の焼却をやってきたのでその技術を生かせるところと思って、「要望調査票」(JICAのホームページに掲載)を調べていったら、パラグアイのカトリック大学にそれらしいものがあったと言うわけです。正確には「上下水道・固形廃棄物・大気汚染のいずれかの専門分野」とあったのです。非常に抽象的でした。

   パラグアイのことはまったく知りませんでした。ここにきて驚いたのは、重油を燃焼するような工場はない、せめて火力発電所ぐらいはあるかと思ったらすべて水力発電所であると聞き、「しまった、場違いのところにきてしまった」と思ったものです。しかし「ボランティア(自発的)」で来たわけですから、「じゃ帰ります」ともゆかず、しばらく悩んでいました。

   しばらく大学へバスで通っているときに、バスの排気ガスの悪さ(黒さ)に何とかならないかと考えて色々と文献を調査していたら、ここの自動車の約80%がジーゼルエンジンで走り、そのジーゼルオイルの中に4,000ppm(0.4%)もの硫黄分が入っていることが分かりました。エンジン内の燃焼は私の専門外ですが、油の質を向上させる事によってパラグアイの人たちの環境・健康改善に寄与できればと考えたわけです。そこで、カウンターパートである大学の教授(女性)に「亜硫酸ガスの大気中濃度を測定し、実態をつかみ政府に提示したら」と提案したら、「うちの子供も喘息で親としての責任を感じていた、しかしデータがなく今まで強く政府に言えなかった」とすぐ賛成してくれました。

   次に問題となったのは、大気中(薄い濃度)の亜硫酸ガスを測定する方法が分からないのです。何百万円もする測定器があれば比較的容易に測定できるのですが、発展途上国で高度な測定機器を入れても故障したら大きなゴミになってしまうと言うことを聞いたことがあったので、ビーカーと試験管を使った手分析でできる方法を採用しようと考えたのです。その為に、化学分析専門の短期ボランティアに助けてもらおうと現在来パを要請しているわけです。

   と言うわけで、現在アスンシオン市内の大気中の亜硫酸ガス濃度を測定する努力をしています。

公害実態調査表 表1

パラグアイにおける公害の実態調査(廣瀬の私見) 赤丸は、注目したところ

 ジーゼルオイル中の硫黄の濃度表 表2

米各国で使用されているジーゼルオイル中の硫黄の濃度(ppm) 赤丸に注目してください。パラグアイ・ウルグアイは改善しようとする 兆しなし。数字がスラッシュをはさんで2つ書いてあるのは、何種類か の油の種類があり、その最高と最低を書いたものです。実際には低い硫 黄濃度のものは価格が高いのでほとんど使われていないのが実情です。

廣瀬 靖夫 (シニアボランティア 環境工学)