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地球探検 パラグアイ共和国 廣瀬靖夫隊員 25

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年12月1日更新

 地球探検

パラグアイ通信(25)

   急に空が暗くなり雷がなりザーッと雨が降ってくることはよくあることです。そして今年の3月4日(土曜日)には、最初に真っ黒い雨が降ってきたのです(午後3時ごろ、写真1)。私の住んでいるベランダでも真っ黒な水が流れました。

  次の月曜日同じ研究室の気象学専門講師に「土曜日の雨を見たか!」と言われました。実は、「パラグアイで環境の問題をやるのなら農業従事者の野焼きによる大気汚染について気象条件との関係で研究したい。それがテーマにならないか?」と言われていたのです。大気関係の「環境工学専門家」としての私の取り組むべきテーマとしてです。その時は「野焼きは学問的な問題と言うより政治的問題でしょう」と答えて取り合わなかったのです。

   その月曜日にその講師はいろいろな写真を示して黒い雨について説明してくれました。このパラグアイは、西に高いアンデス山脈が横たわっているので北風か南風しか吹かない。夏は暖かい北風が、冬は冷たい南風が吹くが、季節の変わり目などに、それらが両方からぶつかって竜巻なんかができて、野焼きによって生じた燃焼炭化物が舞い上げられ、雨と一緒に降ってきたものと思われるとのことでした。「黒い雨が降ったことはあまりなかった」とは言ってましたが、アスンシオン市が薄い煙に包まれることはよくあることと説明していました。

   いままで、ごみを燃すようなにおいがして街がかすんで見えることは何度かあったのですが、それが野焼きの正体だったとは知りませんでした。この野焼きは、秋から冬にかけてよく行われ、害虫駆除・農作物の残渣処理等のために行われるとのことです。しかし、公害や火災の危険などからパラグアイ政府も野焼きの禁止をしているのですが「事故」と称して野焼きの実施は収まるところを知らないという状態です。写真2を見てください。これは衛星写真ですが、火の手(赤い点)があがっているのは、パラグアイだけでなくブラジル・アルゼンチン・ボリビアと南アメリカ全土に広がっているのです。

   また、パラグアイには、現在、人口の約2倍の1,000万頭の牛がいるそうです。その牛一頭が1日に吐き出すゲップの量は約400リットル、そのゲップの主成分がメタンガスです。そして、メタンガスは地球を暖める効果が二酸化炭素の約20倍と言われています。大気汚染というと、化石燃料を燃すことによって発生する排気ガス等に着目しがちですが、農業による大気汚染・環境破壊も注目すべきなのかもしれませんね。

写真1

2009年3月4日の様子

2009年3月4日に黒い雨が降った。(新聞社ABCコロールのウエブサイトより)

黒い雨 

洗面器に集めた黒い雨

写真2

衛星写真

衛星写真で見たパラグアイ周辺の火災地点 火災はパラグアイのみならず、ブラジル・アルゼンチン・ボリビアにまで広がっている

廣瀬 靖夫 (シニアボランティア 環境工学)