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地球探検 パラグアイ共和国 廣瀬靖夫隊員 28

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年12月1日更新

 地球探検

パラグアイ通信(28)

   先日の福島県出身者の会合で警察副長官までやった金沢奥蔵さんに会うことができました(写真1)。これ幸いとパラグアイの警察組織についていろいろ聞いてみました。

   パラグアイの警察組織は複雑で、内務省管轄の本来の警察組織の他に、建設省所轄の交通警察があります(図1参照)。何年か前に、一つに統合しようと言う話があったらしいのですが、統合に失敗したそうです。いずれの国でも自分の権益を守る官僚主義が幅を利かせているようです。
  内務省の警察は、国家警察を中心に、警察学校・調達部門・警察病院の4つの組織に分かれており、中心となる国家警察(写真2)は、国内の治安維持・犯罪取り締まりに当り、麻薬取り締まり部門は常にアメリカ合衆国と連携をとりながら活動しており、公安警察は情報収集、スパイの摘発、国民の身分証明書の発行や刑務所の管理をやっています。

   金沢奥蔵さんが副長官に就任した1999年に、サッカーの南米カップがパラグアイで開催され、日本のサッカー選手団と共に高松宮殿下がパラグアイにきました。その時のセキュリティの責任者を務めたのが金沢さんでした(写真3)。
 金沢さんが退職したのは2000年で、すでに退職して10年になります。当時の警察官は12,000人でしたが、今では22,000人になっているそうです。「しかし最近は治安が悪化していますが?」と尋ねたら、「今は犯罪の陰に警察官が絡んでいるケースが多い」と言うことを聞いてびっくりしました。金沢さんが現役時代に質の悪い警察官を400人ほどパージしたのですが、最近民主化が進み当時の野党などが勢力を伸ばしてくると、そのパージされた警察官を復帰させているというのです。ストロエスネル大統領の35年にわたる長期独裁政権が、1989年(平成元年)に副官であったロドリゲス将軍のクーデターで終わり、そこから民主化のプロセスが始まったわけです。

   金沢副長官がいた時代はまだ軍事政権の延長が続いていたものと思われ、その時代は今より治安も良かったようです。民主化は、国の発展に欠かせないものでしょうが、同時に治安維持の難しさを浮き彫りにさせるものでもあるようです。

   そして今大きくマスコミを賑わせているのが誘拐事件です。昨年(2009年)10月15日に、北部コンセプション県に住む牧場主がEPP(パラグアイ人民軍)と呼ばれるテロ組織に誘拐され500万ドルの身代金を要求されています。軍・警察が全力で捜査しているようですがまだ解決していません。

   市民たちは無事を祈って白いリボン運動を展開しており、「平和」のシンボルの白いリボンや白布を車や玄関先のあちこちに飾っています(写真4)。これでもパラグアイは、中南米全体からみれば比較的安全で治安が守られている方だそうです。

 

      パラグアイ警察の組織概略図  図1

パラグアイ警察の組織概略図 

金沢奧蔵元警察庁副長官と共に 写真1

金沢奧蔵元警察庁副長官と共に(自宅近くの船の上で)

国家警察官 写真2

国家警察官 連発銃をもって警戒中

高松宮殿下の護衛を担当した 金沢副長官 写真3

高松宮殿下の護衛を担当した 金沢副長官(1999年6月30日当時の写真)

研究室の入り口 写真4

平和・安全を祈る白いリボン カトリック大学の私が利用している研究室の入り口にも掲げられている

廣瀬 靖夫 (シニアボランティア 環境工学)