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地球探検 パラグアイ共和国 廣瀬靖夫隊員 36

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年12月1日更新

地球探検 

パラグアイ通信(36)

  ここカトリック大学の工学部にいて、卒業する学生がどこに就職するかに興味を持ちました。

  土木・建築学部の学生は、公共事業としての道路工事等があるので比較的国内に就職口があるのですが、ほかの化学工学・電気工学・環境工学・エネルギ-工学などは国内には就職口がほとんどないので、スペイン・ブラジル・アルゼンチンなどへ出て行くそうです。

   さらに、英語のできる人はアメリカへ、日本語のできる人は日本へと出かけてゆきます。移民一世の人の話を聞いたときに、長男は後を継いでパラグアイに残って農業をしているが、次男・三男は今出稼ぎに日本に行っているとの話を思い出します。パラグアイは大豆を中心とする農産物と牛肉・乳製品の輸出で50~60%を稼いでいるようですが、この人口600万人のパラグアイ人のうちの多くが(はっきりしないが100万人も)が出稼ぎに行っているとのこと。それらの収入も馬鹿にならないようです。

   数少ない工場ですが、2~3の工場を見学しました。一つは皮革工場です。近くの牛の屠殺場から、剥いだばかりの血のついた皮が送られてきます。これを洗浄した後、大きな木製のドラム(写真1)の中で薬品処理をして乾燥したものを各国に輸出しています。アルゼンチンの技術と資本が入っているとのことでした。

   次に見たのは、蚊取り線香とか防虫スプレ-を作っている工場です。防虫用の特殊薬品は日本の住友化学から輸入しており、それらを中心に香料とかLPG(スプレー用ガス)を使って製品として仕上げるのです。ここでは、パラグアイ人独自の資本でやっていました。そして製品は、チリ・アルゼンチン、最近ではイタリアにも輸出していると言っていました(写真2)。

  三つ目は、医療廃棄物を焼却処理している民間の工場です。民間といっても、工場のある広大な土地は政府のものと言っていましたので、半官半民なのでしょう。アルゼンチンから購入した処理能力1時間200kgの焼却炉(固定床)が2基設置されており(写真3)、24時間運転で稼動しているとのことです。受け入れ医療廃棄物の価格は1kg 0.82USドル(1ton 約8万円)とのこと。この金額をもらえれば十分やっていける金額だと感じました(1ton 日本では6~7万円でやれているとか?)。

   これらの工場は、せいぜい従業員は200~300人程度であり、技術者は多くて10人ぐらいしか受け入れられないでしょう。国内に産業がないと頭脳流出がおこり、大学も育たないということが良くわかります。 開発途上国の問題は根が深く広いということが分かります。

皮革工場 写真1

皮革工場 木製のドラムの中で牛皮を薬品処理する

蚊取り線香等を作る工場 写真2

蚊取り線香とか防虫スプレ-を作っている工場 日本の住友化学からキーになる薬品を輸入して、調合して製品としている。

医療廃棄物を焼却処理 写真3

 医療廃棄物を焼却処理 アルゼンチン製の固定床焼却炉、この炉もヨーロッパのメーカのもの。

 

廣瀬 靖夫 (シニアボランティア 環境工学)