地球探検 パラグアイ共和国 廣瀬靖夫隊員 37
パラグアイ通信(37・最終回)
もう数ヶ月で任期の2年が経ち日本へ帰国しなければなりません。
「どうでしたこの2年間は?」と聞かれれば、「有意義でした」と答えることができると思います。
何が有意義だったかと言うと、当然ながら日本の社会にはない文化を感じ取ることができたことです。前期高齢者の域に達するまで海外での生活を経験したことのない私たちは、単に素通りする海外旅行では味わえない経験をしました。それらをそのときの感動とともにパラグアイ通信に記録してきました。そして、全体として生き方そのものの違いを感じました。その典型が誕生会です。
日本では、誕生会はほとんど子供のものです。大人になるとあまりやりません。2~3人で「今日は君の誕生日か、じゃお祝いにワインでも飲もう」程度のことはあるでしょうが、多くの人を呼んでパーティをするようなことはそうそうやりませんね。
ところがここパラグアイでは(ラテンアメリカ全体が)、誕生会パーティが好きです。ここカトリック大学の私の職場でも、簡単にサンドイッチ、コーラとショートケーキ等ですが、最低月に一回は行われています。
先日は、1日に2回も誕生会がありました。誕生日のAさんとBさんの勤務帯が違っていて、Aさんは午後に帰るので、昼食時に誕生会を行い、Bさんは午後から出てくるので、夕方4時ごろにパーティを行いました。何故こんなに誕生会にこだわるのか、いい年をした大人が喜々として喜ぶ姿を見て不思議に感じたしだいです。
17回のパラグアイ通信でも触れましたが、私の番がまわってきたときに(写真1)、「死での門出の一里塚・・・・」とひやかしたら、「今まで生きてきたことに感謝しなければなりません」と諭されたと書きました。この一言は重かったです。
日本の文化(仏教としての宗教)は「死」を見ており、私たち老人仲間で話すときも、「眠るように死にたい」「出来れば花の咲くころ花の下で死にたい」と話題になります。そして、国民の行事もお彼岸(春分と秋分)さらにお盆と「先祖・死」に関する行事が多くありますが、パラグアイの文化(キリスト教としての宗教)は、12月のキリストの誕生、3月から4月にかけてのイースター(キリストの復活)と「誕生・生」に関する行事が多いのです。
日本も昔は大家族制度があり、お互いが助け合って生きてきたのでしょうが、近代化・工業化とともに孤独化が進み、老人の孤独死が問題になる昨今、この誕生会パーティを日本の大人社会・老人社会に導入していければ少しでも楽しい社会になるのではと考える次第です。今まで生きてきたことに感謝して!
パラグアイ通信も、最初はこんなに回数を重ねるつもりはなかったのですが、ここまで書けたのは、優秀な援助者がいたからなのです。
その一人はMontserrat Cospさん(写真2中央)で、カトリック大学応用技術センターの事務員(私が働いている研究室の秘書)であり私の面倒を見てくれた親切な人です。三国戦争前後の人口変化のデータ・紙幣の人物像の資料・キリスト教に関するさまざまな考え方等を教えてもらいました。彼女がいなければ半分も書けなかったと思います。
また写真1のJulianさんには気象関係のデータを提供してもらいました。 ここに彼らに深く感謝して筆をおきたいと思います。福島県の国際課の皆さんにも長い間お付き合いいただきありがとうございました。また日本でお会いできる日を楽しみにしております。
写真1
私の誕生会で 左の女性はセンターの所長Lisaさん、右の男性が気象庁で午前中仕事をしていて夕方大学で教べんをとっているJulianさんです。
写真2
中央後ろの人が、パラグアイ通信の資料提供やアドバイスをしてくれた、Montserratさん、左の女性は私のカウンターパートのFabiolaさんです。
廣瀬 靖夫 (シニアボランティア 環境工学)