地球探検 シリア・アラブ共和国 岡田眞一隊員 1
シリア・アレッポ便り 1
中東の国シリアのアレッポ市に派遣されているJICAシニア海外ボランティアの岡田眞一です。福島の皆さんお元気でお過ごしのことと思います。 本年1月に日本を離れシリアの首都ダマスカスに到着し、約1ヶ月の語学等の研修後、2月初めアレッポ市に定住しました。派遣後既に半年経ち、こちらの生活にもすっかり慣れ、ボランティア活動も活動計画に基づき配属先のアレッポ工業会議所に加盟する企業訪問指導を実施しているところです。 今回は派遣国シリアの国情について概略ご紹介したいと思います。
シリアプロフィール(JICA資料に基づく)
(1)正式名称 (和文)シリア・アラブ共和国(英文)Syrian Arab Republic
(2)政体 共和制
(3)首都 ダマスカス
(4)面積 18万5000平方km(日本の約半分)
(5)人口 1836万人(06年シリア統計局推定)
(6)民族 アラブ人(85%)、ほかアルメニア人、クルド人、パレスチナ人など
(7)言語 公用語:アラビア語
(8)宗教 イスラム教(スンニー派・アラウィ派)85%、キリスト教13%、ユダヤ教
(9)略史 紀元前4世紀、セム人の王国をアレキサンダー大王が占領。その後ローマ帝国の支配下に入り、ダマスカス、アレッポなどの都市にヘレニズム文化が開花した。その後7世紀にメッカでイスラム教が興るとともにアラブ人がシリア一体の支配権を握り、661年にウマイヤ朝が成立し、ダマスカスをイスラム帝国の首都とした。この地はその後イスラム思想の中心地として栄え、後にアッバース朝、マムルーク朝へと支配権が移り、16世紀から1918年までオスマン・トルコの支配を受け、第一次世界大戦後の1920年フランスの委託統治領となり、1946年独立した。
(10)在留日本人 255人(2006年9月現在) JICA のボランティアは現在(2009年5月31日現在)青年海外協力隊員が32名、シニア海外ボランティアが20名で夫々の任地で活動中です。
(11)気候 シリアの大部分は高原地帯からなりますが、北西部の一部が地中海に接しているほかは 不毛のシリア砂漠が多くを占めております。気候は沿岸部の地中海性気候と内陸部の砂漠性気候に大別され、首都ダマスカスは後者に属します。11月から3月までは雨季に当り、ダマスカスでも200mm前後の雨が降りますがそれ以外は乾季で、雨は殆ど降りません。
気温は、夏の日中は40℃以上まで上昇することがありますが、夜間は20℃近くまで下がります。一方、冬には氷点下まで気温が下がり、ダマスカスでも積雪が見られるなど、年格差、日格差ともに大きいのが特徴です。
任地アレッポ市はシリアの首都ダマスカスから北方に約350kmぐらい離れており、トルコ国境に近く、緯度は日本の東京と略同じくらいですが、12~2月の冬季は雨の日が多く、結構寒くて暖房が必要です。しかし5月以降は全く雨が降らず、真夏のような暑さが9月末まで続きます。
(12)産業 シリアの主要産業は、サービス業(52.3%)、鉱工業(23.8%)、農業(23.9%)です。
シリアでは石油が産出され鉱工業生産の大きな部分を占めていますが、近年その生産量が減少傾向にあります。又この地方は古代から「肥沃な三日月地帯」と呼ばれ世界で始めて農業が生まれたところと言われています。国土の北部から東部にかけて流れるユーフラテス川流域は豊かな農業地帯となっており、小麦、綿花、オリーブなどの栽培が盛んです。
そしてこの地域から世界最古の織物が発見されるなど、古くから繊維産業が発達して今でもシリア産業の主力として、国内ばかりでなく近隣諸国にまで輸出されています。任地アレッポ市はシリア国内の繊維産業の中心地で、市内には沢山の繊維工場が稼動しています。
(13)対日感情 シリアの人達は極めて親日的であり、親切です。戦後の日本の復興、自動車や家電製品に代表される日本製品の品質の良さ、中東和平やシリアに対する日本政府の援助、並びに長年に亘ってシリアに派遣されてシリアの人々のために活動してきたJICAボランティアの皆さんの努力が評価されてきたものと思います。
シリアの人達は殆どがモスリム(イスラム教信者)で、イスラム教の教えを忠実に守って日常生活を送っています。イスラム国では金曜日が休日ですが、金曜日のお昼頃になると多くの市民が市内各地にあるモスク(イスラム教礼拝所)に集まり祈りを捧げています。
又、アレッポ市内を循環するバスに乗ると、若者が進んでお年寄りや女性に席を譲る姿がよく見られます。家族を愛し、弱者に手を差し伸べる姿は我々日本人も心すべきことと思います。
シリアの歴史ははるかに古く、今でも各時代々の遺跡が各所に沢山残っています。次回からはそれらの遺跡を皆様にご紹介したいと思います。それではまた。
シリア内陸部の砂漠地帯の様子。疎らに雑草が生えているところは冬季の降雨時に水の流れた跡のようである。
北部のアレッポ市に近い農耕地帯。夏の乾期にも灌漑による耕作が盛んである。
温暖な地中海沿岸部ではトマトのビニールハウス栽培が盛んである。
アレッポ市中心街にある広場の様子。シリア国旗の掲揚とアサド現大統領の肖像画が見られる。
アレッポ市のシンボル・アレッポ城から見下ろすアレッポ市内の様子。アレッポ市は人口350万人を有するシリア第2の都市でシリア第1の工業都市である。
アレッポ市の中心街にある野菜市場の様子。シリアは野菜が豊富で、日本のスーパーで見られる野菜は略揃っている。しかも値段が安く、例えばきゅうりは1キロ60円ぐらいである。
シリアの首都ダマスカスの様子。市街地は背後にあるカシオン山の山裾まで伸びている。
紀元前から人が住んでいる歴史の古い街で、市内の道路網は整備されているが、朝夕のラッシュ時には交通渋滞に見舞われる。
岡田眞一 【平成20年度 第3次隊 工場管理と改善活動 】