調査研究
ダニ媒介性感染症の検査体制の構築と福島県におけるリスク分析
(期間:平成28~平成31年度)
研究の意義及び目的
近年、重症熱性血小板減少症候群(病原体:SFTSウイルス)の患者が国内で確認され、重症化しやすく致死率の高いダニ媒介性感染症として注目を集めています。本県のダニ媒介性感染症としては、つつが虫病(病原体:つつが虫病リケッチア)やライム病(病原体:ライム病ボレリア)が発生しており、特につつが虫病は、全国でも有数の多発県となっています。また、近年、隣県の新潟県や栃木県で日本紅斑熱(病原体:日本紅斑熱リケッチア)の患者が発生していることや、SFTSウイルスを保有するマダニや感染歴のある野生動物が東北地方で確認されていることから、過去に本県では事例のなかったダニ媒介感染症感染が発生し、県民に健康被害を及ぼす危険性が一層高まっています。以上のことから、本研究では、ダニ媒介性感染症の検査体制の整備、ならびに感染リスクの分析を行うことを目的としています。
研究の概要
ダニ媒介性感染症の網羅的な遺伝子検査法を確立します。また、つつが虫病については抗体価検査によって感染歴を調べ、各地域の侵淫実態を調査します。さらにダニの生息状況および病原体の保有状況を調査します。
期待される行政効果
死亡率の高いSFTSをはじめ、臨床症状だけでは診断が難しいダニ媒介性感染症について、網羅的かつ迅速に結果が得られる遺伝子検査法を確立することによって、的確な行政対応ができ、正しい診断に基づく治療が患者に対し適切に施されると考えられます。また、つつが虫病については、これまで医師の届出による発生状況に地域的な偏りが見られます。これに対して、県内の各地区単位で住民のつつが虫病の抗体保有状況を調査することやダニの生息状況を調査することで、広域な浸淫状況や感染リスクを明らかにし、科学的な根拠に基づいた各地区ごとの具体的な注意喚起ができると思われます。
食肉の食中毒菌汚染状況調査(期間:平成29~31年度)
研究の意義及び目的
近年、食肉の関与が疑われる食中毒事例が全国的に多く発生しています。その原因の一つに食肉の加熱不足が挙げられています。これらの状況から、食肉中のカンピロバクター属菌を迅速に検査する方法を模索するとともに、市場流通食肉の汚染状況を調査し、その実態を明らかにすることを目的として研究を行います。
研究の概要
カンピロバクター属菌のリアルタイムPCR法によるスクリーニング検査の検討とともに、県内流通食肉の食中毒菌による汚染状況の調査を行います。
期待される行政効果
市場調査の汚染状況を調査し、そのリスクを把握することにより加熱不足等による食中毒の危険性を広く周知できるとともに、食中毒との関連等の菌株情報等を確認し、営業者や消費者への意識付けの根拠とすることができ、行政指導等に寄与できると思われます。