知事と語る「ふくしまイクボス対話」

県では10年間にわたり、知事自らが職員と「イクボス面談」を行い、仕事と家庭の両立を支援してきました。その結果、令和6年度には男性職員の育児休業取得率が100%を達成しています。
こうした取組をさらに広げるため、県庁を飛び出して、経営者(イクボス)や従業員の方と直接意見交換を行う「ふくしまイクボス対話」を令和7年12月4日に初めて実施しました。訪問先は、社員の幸せを最優先に考える「株式会社こんの」(福島市)です。
■目次
1 大切なのは「社員とその家族」。
儲かったらやるのではなく、すぐやる
2 PTA活動は有休ではなく「研修扱い」
フォローする側になったときのためにスキルアップしておきたい
3 「ママ仕事頑張ってるから、ぼくも保育園頑張ってくるね」
最大の褒め言葉「安心して子育てできる会社」
1 大切なのは「社員とその家族」。
儲かったらやるのではなく、すぐやる
知事
皆さんこんにちは。
今日は(株)こんのさんにお邪魔して、いろいろとお話をしたいことがあります。
やはりワーク・ライフ・バランス、働き方ってすごく大事なんですよね。
特に紺野社長は以前から、従業員の皆さんの働き方に非常に気を配っていただいていると伺っています。
私も是非イクボスになりたい、ということで目指していますし、おそらく紺野さんの方が私より、より良く、きめ細かにやっていただいてるかなと思います。
どうしたら社員の皆さんがより働きやすくなるか、そういったところをしっかりお話をして、そこで良い取組をまた県内に広く展開したいと思いますので、今日はどうぞよろしくお願いします。
ちょっと緊張する雰囲気ですが(笑)リラックスをしてお話をしていただきたいと思います。
まず最初に自己紹介をお願いします。
齋藤課長
株式会社こんのの齋藤と申します。今年48歳になります。
知事
バリバリの働き盛りですね。
齋藤課長
はい。
家族は、妻と子どもが上の子が大学3年生、あと10個離れて今11歳の子どもがいまして。
知事
まだ子育て真っ最中ですね。
日下部主任
株式会社アイクリーンの日下部と申します。入社して12年目になります。
入社してから結婚と出産を経験しておりまして、今は夫と子どもの3人暮らしです。
子どもは今6歳、来年4月で小学生になります。
知事
じゃあもうランドセルの準備も?
日下部主任
そうですね、届きました。
今妊娠中でして、来年3月に出産予定です。
知事
おめでとうございます。
今も3人家族でにぎやかだと思うんですが、いよいよ4人家族の準備もして、あとお子さんの小学校入学もあるので、来年は、嬉しいけど忙しい一年になりそうですね。
日下部主任
そうですね、3月、4月は忙しそうです。
知事
ちょっとね、いろいろ重なりますが、それも喜びの重なりなので、ぜひ笑顔で迎えてください。
では紺野社長、自己紹介をお願いします。
紺野社長
株式会社こんの株式会社アイクリーンの代表の紺野と申します。
イクボスを宣言しましたので、福島県一、子育てを支援する会社を目指して精進してまいります。
知事
やっぱり、この福島県一と言ってくれる気持ち、それがすごく嬉しいですね、
社長の気合、非常に短いシンプルな言葉なんですが、真っすぐ伝わってきました。ありがとうございます。
今日は、大きくテーマ3つでお話をしていきたいんですが、1つ目は、「社長はどんなイクボスですか」。
ちょっと言いづらい部分もあるかもしれないし、言いやすいところもあるかもしれないんですが、ぜひこのイクボス、紺野さんはどんな感じかということを順番に伺っていきたいと思います。
まずやっぱり、当人から。
紺野社長、自分自身はどんなイクボスだと思っておられますか。
紺野社長
ちょっと前提がずれるかもしれないんですけど、昔から今日まで「良い会社にしたい」とやってきたんですけども、今までとやっていることは同じなんですけど、目的が変わったなと。
知事
なるほど。
紺野社長
会社を良くするために利益を出す。
利益で福利厚生や、給与、賞与を満たす。
それで社員は満足するだろうと思ってやっていたんですね。
知事
昭和っぽい感じですね。
紺野社長
はい。全く空回りでうまくいかなかったですね。
空回りを何とか打破したいということでセミナーや本を読み、法政大学の坂本(光司)先生に出会いました。
上場企業のステークホルダーというと「株主」であり、また他の企業では「お客様」とも言われますが、坂本先生の本には「社員とその家族」と書いてあったんですね。
知事
なるほど。
紺野社長
これがイクボスのマッチング、社員と家族が本当に幸せにならない限り会社は良くならない、ということに気づきました。
一言で言うと「出入口戦略」。出さないと入ってこない。
企業で「儲かったらやってあげるよ」という、今の状態だとずっと儲からない。
またもう一つ脱線するんですが、「満足」と「幸せ」は違うんだなって。
知事
似ているんだけど、違うんですね。
紺野社長
はい。給与が良くて賞与が良くて福利厚生が良ければ、満足はするけど、幸せは、そのゴールが幸せにならないっていう。
一方、幸せを感じるともちろん社風もよくなりますし、結果的に収益も出るようになって、還元すると後から入ってくるんだなと。
イクボスと近いところがあると思いました。
知事
なるほど。
お話を伺って、すごく響いたことが2つあるんですが、やはり大事なものは社員さんとその家族だと。
一般的に民間企業さんだと利益だったり、株主だったり、あとやはりシェアをどうするか、
こういった経済的な側面に目が行きがちで、それはそれで正しいでしょうけど、実はそれ以外に、もっと大事なものがあるんじゃないのっていうのがポイントだなと思います。
あと出入口戦略。
確かにずっと「儲かったらやるよ」って言ってると、失われた30年なんていつまで経ってもできない。
逆にひっくり返して先にやってしまう。
それはちょっとリスクもあってね、特にリーダーにとっては怖い部分があると思うんですが、それを逆にやることで結果として回るようになる。
その感覚ってすごく、まさにワーク・ライフ・バランスを考える上で大事な、本質だなと思いました。
続いて齋藤さん。
社長さんはどんなイクボスですか。
齋藤課長
はい。一言で申し上げますと非常に熱い社長だと。
知事
熱い、なるほど。
齋藤課長
まず、初めて出会った時にも、何かこの社長さんは違うなあと、非常に夢を語る社長だなと思っていましたし、やはり入社してからも、常に「社員とその家族」ということをおっしゃっていただいています。
知事
やっぱりその頃から言っておられるんですか。
齋藤課長
そうですね。
そのことは私の家族も感じ取ってますし、何より下の子どもが生まれた時に、いち早くおめでとうの連絡をいただいたのが社長です。
知事
社長が一番早かった?
齋藤課長
はい、びっくりしちゃいましたけど、そのあとおむつのプレゼントを頂いて、その思いが家族に伝わっていますし、我々もそういう思いを頂いております。
弊社の経営理念で、「物心両面の豊かさ」というのを掲げていますので、やはり幸せを求めることと満足は違うということは、仕事の中にも息づいていると思っています。
知事
今、齋藤さんが、やっぱ社長さんは熱い、夢を語るっていうことをお話しされました。
本質は、「社員さんとその家族」「幸せと満足は、似ているけど実は違う」っていうところが、言われてみると、あぁなるほどなと。
いろんなものが、必要条件が揃っていればそれで幸せになるかっていうと、実はそうじゃなくて、それが欠けててもすごく笑顔な方ってやっぱりいるわけで、そこをひっくり返して見ちゃうとまずいんだなあということが、今齋藤さんのお話を聞いて、すごくよく伝わってきました。
続いて日下部さんいかがですか。
日下部主任
社長は、一言で申し上げると社員を家族のように温かく見守ってくださる方です。
年に一回「新春の集い」というイベントがございまして、年間の優秀社員賞でMVPを一人表彰するんです。
知事
大谷翔平くんみたいに。
日下部主任
そうなんですよ(笑)一年間頑張った社員に旅行や、プレゼントをサプライズで考えてくださったりして。
知事
へぇ、嬉しいよね。
日下部主任
やっぱりそういう社員のモチベーションになることや、社員の家族の幸せを優先に考えてくださるところが、社長の温かいお心のところでして。
第一子を妊娠した時には、東京の有名な水天宮のお守りを買ってきてプレゼントしてくださいました。
知事
あっ水天宮、わかりますよ、安産のお守り。
社長が自分で買いに行ったの?それはすごいな。
日下部主任
そうなんです、サプライズで。
初めての妊娠で不安があったのが、それで気持ちがちょっと和らぎました。
知事
しかも天下の水天宮ですからね。
今ね、日下部さんの言葉の内容もそうですが、表情とね、社長に対する思いがすごく伝わってきましたし、もうたった一つですよね、社員を家族のように見守ってくれる、考えてくれてるっていうのがすごく響きました。
いわゆる企業って大きくなるとね、なかなかリーダーと社員さんの存在って、距離感がどうしても出がちだと思います。
そこを縮めようとすると、本質は家族だと思うと、当然いつも見てなきゃいけない、気を配ってなきゃいけないっていうところが、すごく大事なキーワードだなと思います。
あと、今の水天宮のお守りの話はね、やっぱり特に初産でいろんな心配とか不安とか、あるいは夢もあるけど、その中でぽんとね「買ってきたから」と言って渡してもらうとほっこりしますよね。
日下部主任
はい、そうなんです。
知事
めっちゃ分かりやすい。ありがとうございます。
2 PTA活動は有休ではなく「研修扱い」
フォローする側になったときのためにスキルアップしておきたい
知事
テーマの2つ目は、子育てで、あって助かった会社の取組み、齋藤さんから教えてください。
齋藤課長
私は今、下の娘の小学校のPTA会長を3年目で務めております。
そもそも、会長を引き受けてくれと言われた時も社長に相談してまして。
知事
なるほど。
齋藤課長
社長も経験されてきたということで、「勉強になるので受けてみたほうがいいよ」と言われて引き受けたんですが、正直やっぱりPTAの活動って、時間が平日の昼間だったり夕方だったりするんですよね。
知事
勤務時間とぶつかりますよね。
齋藤課長
まさにそのとおりです。
ですが会社として、「PTAの活動は研修扱い」。
有休ではなく研修扱い。
知事
研修扱い。有休じゃないんだ。
齋藤課長
はい。
トップ自らがPTA活動を推進してくださっているので、何の後ろめたさもなく参加できます。
同僚も、今日ちょっとPTAの集まりがあるとなれば、「この仕事はこっちでしておくよ」というフォローをしてくれていて、これがなければ地域貢献もかなわなかっただろうなと感じております。
知事
非常に具体的なエピソードですね。
まずPTA会長をどうしようかって時に、すっと社長に相談できるっていうこの人間関係の強さ、コミュニケーション力の高さっていうのをまず感じました。
またやはり驚いたのは、制度として、「研修」としてPTA活動ができること。
自分の有給休暇をある意味削ってPTA活動に充てるんじゃないっていうところが、応援してもらってるっていうことが制度面で分かりますよね。
そういった部分で非常に分かりやすいし、あと周りの方がね、「研修で行ってるんだし、PTAだからこれはみんなで支え合わないと、助け合わないといけないよね」っていう雰囲気醸成にもつながってるんだなってことが、今の齋藤さんのエピソードでよく伝わってきました。
続いて、日下部さんいかがですか。
日下部主任
私はパソコンで仕入れや売上を入力したり、お客様からの電話を受けたりしています。
一緒に働くコールセンターのメンバーがいるんですけど、その中でフォロー体制の強化を行う取組をしています。
どうしても子どもが小さいと、急な発熱だったりで早退しなくちゃいけない、休まなくちゃいけないっていう場面が出てきます。
そんな時に、フォロー体制がしっかりしているので、早退の時は社員同士で次はどういう業務を引き継がなければならない、どういう業務が残ってるっていうのを積極的に声掛けしてもらっているので、そこで「すみませんがこれをお願いします」と休みに入らせていただいています。
あと反対に、それがすごく心強いので、私がもしフォローする時には・・・
知事
逆の立場ですね。「まかせておけ」って。
日下部主任
そうです。
メンバーがもしお休みになる時には、私がその方の代わりにできるように、いつでも知識や技術を磨いておこう、身につけておこうっていう、連携している環境です。
知事
今、日下部さんが言われたことが実はワーク・ライフ・バランスですごく大事です。
育児休暇やあるいは介護休暇、先ほどのPTA活動研修、あと病休、いろんな形で休まざるを得ない、休みたいことがあった時に、その方が抜けて、欠けてしまうっていう状態だと、やっぱりきちっと業務として貫けないんですよね。
その点、今言っていただいた「フォローする体制、バックアップできる体制があるからこそ、安心して休める」それはまず、休暇制度の根幹として大事だと思うんですよ。
一方で、それがしっかりしていると日下部さんみたいに、自分が逆の立場になった時は笑顔でしっかりやってあげて、お互いさまなんだっていう思いでできると、あったかい雰囲気にもなりますよね。
このフォローできる体制あるいはバックアップできる組織、これがワーク・ライフ・バランスに欠かせないんだなっていうことをあらためて教えていただきました。
3 「ママ仕事頑張ってるから、ぼくも保育園頑張ってくるね」
最大の褒め言葉「安心して子育てできる会社」
知事
3つ目のテーマに移りたいと思います。
子育て真っ最中のお二人なんですが、子育て等が仕事に与えている良い影響について教えてください。
齋藤課長
実は私がPTA会長を受けた2021年というのは、ちょうどコロナ禍が終わった時で、世の中が大きく変わっていました。
PTA行事のあり方を見直す時期にあったんですが、やはりボランティア組織なので会社とは違う。
「会長」なんて言っても何の権限もない、意見をまとめる立場なので、たまに反対する方もいたりとか。
そういった中で一つの物事をしっかりと動かしていくというところは、仕事に通じる部分だなと思いました。
また、反対される保護者の方がいらっしゃった時に、社長にもいろいろ相談したんですけども、「賛成は必ずしも100%ではないから」という言葉がすごく心に残りました。
会長として、こちらの良い方向に進めていくという方向であれば、それで間違いないんだなと思って今はやっています。
知事
さっきからPTAエピソードがすごくしっくりきますね。分かりやすい。
特に会社の中では、例えば課長さんだったりすると、部下はある程度上下関係的なものがあって、指揮監督権みたいなものがある。秩序だった部分があります。
でもPTAって本当にボランティアだし、ルールが強くあるわけではないので、そこの中での意思形成とか合意形成って非常に難しいですよ。
しかも、結構強く言われる方もいるし、あと微妙に複雑な表情をしてる人がいたりとか、やっぱり会社の組織と全く別物です。そこで、リーダーシップって何だろうとか、人をまとめるってどういうことかなっていうことを、組織とは違う感覚で、結果として勉強になる。
ということは、まさに研修だったんですね。
「PTAが研修」だったっていうことがあらためて今齋藤さんのお話を聞いてて分かったし、それは結果的にその後仕事を進めていく上で、すごく頼りになる、宝物になってるんだろうなと思いますね。
知事
「子育て等が仕事に与えている良い影響」日下部さんいかがですか。
日下部主任
私は、一番はモチベーションだと思います。
子どもは、私が仕事を頑張っているっていうことは分かっていますので、「ママ仕事頑張ってるからぼくも保育園頑張ってくるね」っていう一言があると・・・
知事
泣きそう!
日下部主任
じゃあママ頑張ってくるね、ってなります。
大きな仕事が終わって疲れたって帰ってきた時に、息子が「ママお疲れ様」って言ってポンポンと肩たたきしてくれることもありました。
知事
最高だな、その6歳は。
日下部主任
その時は、あぁ頑張ってよかったなって、明日からも頑張ろうっていう素直な気持ちになりますね。
あと、息子に対して厳しくしないといけない時もありまして、「やらなければならないことと今自分がやりたいことは違うんだよ」って言い聞かせたりする時があります。
それは、自分の息子に伝えるだけじゃなくて、その自分の言葉に責任を持たなければならないなと思います。
それは仕事でも一緒で、やりたい仕事とやらなければならない仕事の優先順位がありまして。
知事
分かる。
やりたいことやりたくなっちゃうよね。お子さんの気持ちも分かるもんね。
日下部主任
そうなんです。
息子に言ったことを自分の中でも反芻して、仕事に取り組むことがあります。
知事
なるほど、今のモチベーション理論はすごくしっくりくるし、確かにお子さんに対する教育と、実はそれを言っている自分自身ができてっかい?っていうのとは、同じだよね。
やはり前半の方のね、お子さんのお母さんに対するあったかさ・優しさ・感謝の思いっていうことが、「また明日頑張ろう」あるいは「仕事と家事ダブルで大変だけど頑張ろう」って思える原動力になるっていうのがすごく伝わってきました。
紺野さん、ずっとお二方のお話を聞いていて、全体的な感想はいかがですか。
紺野社長
はい。良い社員に恵まれて本当に幸せな社長だと思いました。
それから、このことを長年やっていた副産物で福島県に貢献しているのは・・・うちの社員の子どもの数が多いんです。
社員とヒアリングすると、「安心して子育てができる会社だ」っていう最大の褒め言葉をもらっていて。
知事
実際に産んでおられるわけですからね。
紺野社長
子どもが4人いる社員が4人いるんですよ。3人もざらにいますし。
知事
合計特殊出生率に比べたら圧倒的に高いですね、県全体の平均に比べて。
紺野社長
いろんなところで効果が出てくるんだなと。
社員を大切にすることは結果的に、利益につながったり、お客様満足度につながったり、家庭の安定にもつながるんだなと。
知事
紺野さんの話でまた響いたのが、実は明日講演するんですけど、そのテーマがまさに「人口減少対策」で、合計特殊出生率が1.15なんです。
間違いなく紺野さんのところはそれを優に超えてますよね。
ワーク・ライフ・バランス、イクボス、また社員さんを家族のように大事にするっていうその取組が、結果として人口減少にもプラスの効果がある。
そしてその取組は、家族がいることでのモチベーションの話や、PTAは地域貢献、自分自身が幸せに生きることができる会社、幸せに生きることができる地域。
その本質と直接関わってるんだなっていうことが学びになりました。
今日教えていただいたことを、明日の講演でも活かしたいと思いますし、今まさに県の人口減少対策、ふくしま官民連携・共創チーム、この中でも広げていきたいと思います。
本当に今日はありがとうございました。
