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施設管理システムの概要

印刷用ページを表示する 掲載日:2021年3月1日更新
農業水利施設の施設管理システムの構築について

1 目的

 農業水利施設は、農業生産の基礎的資源である水を安定的に供給する役割を果たすとともに、環境保全、国土保全などの多面的機能を有しており、それらの機能を十分発揮させるためには、施設の適正な保全管理が極めて重要です。 本県には、ダム・ため池や頭首工、用排水機場などの施設が約7,300施設(平成21年度現在調べ)あるほか、受益面積100ヘクタール以上の基幹的な用排水路も約1,000キロメートルに及ぶなど、膨大な農業水利施設が存在します。これらの施設には、造成から相当な年数を経た施設も多く、今後は更新需要の増大が予測されます。 このような中、国、地方公共団体及び施設を直接管理する土地改良区等の財政は厳しい状況が続いており、既存施設の有効活用という観点から施設の保全管理の充実がクローズアップされていることより、適正な施設管理システムの構築が緊急の課題となっています。 このため、施設の状況や機能の実態を正確に把握することが重要であり、(1)施設台帳の整備、(2)定期的な点検・機能診断による施設の状況把握と機能評価、(3)それらを踏まえた予防保全、整備補修及び更新に向けた計画の策定が不可欠となっています。 また、事故発生時の通報や応急対応体制の再構築が急務となっています。 このようなことから、適切な保全管理と計画的な施設更新の推進を目指すため、施設の長寿命化とライフサイクルコストの低減の観点に立った新たな施設管理システムを構築する必要があります。

2 施設管理協議会の設置

(1) 農業水利施設の機能診断体制の強化と施設管理者の育成を図る施設管理体制の構築と、効率的計画的な施設管理のための整備補修や更新計画等の策定を検討するため、本庁に県、土地改良事業団体連合会、市町村及び土地改良区で構成する施設管理協議会を設置しています。 また、出先事務所に施設管理方部協議会を設置しています。

(2) 本庁の協議会は、施設管理台帳の整備、施設診断、施設管理計画の作成、施設管理技術の向上及び事故発生時の緊急対応に関する基本的な事項を検討します。

(3) 出先の方部協議会は、本庁の協議会で決定された基本的事項に基づき、管内における施設管理業務の推進と実施体制の構築に向けた支援指導を行います。 

3 施設管理システムの対象施設

 施設管理システムの対象は、基本的に農業水利施設全施設です。

(1) ダム・ため池、頭首工、用排水機場 施設管理の基礎データとなる台帳整備は全施設を対象としています。

(2) 用排水路 用排水路の台帳整備及び診断等については、広範囲に膨大な施設量があること、施設管理にかかる状況把握や緊急時の対応が、上記施設に比べ容易であることより、施設規模が大きく重要性のある基幹水路とし、受益100ヘクタール以上(県営かんがい排水事業規模)を対象としています。

 ただし、水路であっても水管橋、水路トンネルなどの重要構造物については、受益面積の大小にかかわらず管理の対象としています。

4 施設管理台帳の整備

 適正な施設管理のため施設管理台帳を整備し施設診断・更新計画を作成します。

 施設管理台帳は、適切な維持管理と計画的な施設管理を目的に下記の構成とし、協議会で定めた様式に基づき、施設管理者が作成します。

・「基礎台帳」:基本的な施設内容の把握を目的とします。

・「管理台帳」:事故補修履歴を記載し施設診断及び対策の参考とします。

・「診断評価台帳」:定期点検・施設診断結果により対策工事の要否、時期を判断します。

・「更新計画台帳」:適正管理と計画的な施設の補修、更新及び資金計画の基礎とします。

5 施設の点検・診断

(1) 点検・一次診断(施設の点検及び簡易な診断)は基本的に点検・診断マニュアルに基づき、施設管理者が毎年実施しています。

 それらの施設の内、施設管理方部協議会が選定した大規模な施設や高度な技術を要する施設については、農林事務所・土地連・施設管理者が合同で一次診断を行います(=「合同診断」)。

(2) 点検・一次診断は、通水前に一斉に行い(=「一斉点検」)、施設状況や機能の実態把握を行います。

 なお、一斉点検に対応し4月に「施設管理強化月間」を設定します。

(3) 一次診断の結果、さらに詳細な診断が必要な場合は専門技術者による二次診断を行います。

(4) 施設管理者が統一的な考え方と同一水準で施設の点検・診断が出来るよう、点検・診断マニュアル及び評価基準を作成します。

6 更新計画の策定

(1) 診断結果をもとに施設の長寿命化・ライフサイクルコスト低減に向けた予防保全及び補修・更新計画を施設管理者が策定します。

(2) 計画的な予防保全及び補修・更新事業の実施と施設管理者の資金計画の基礎資料とします。

7 施設管理システムの継続

(1) 施設の「点検・診断」「評価」「更新計画」は毎年度、ローリングして行います。

(2) また、平成19年度までの「施設管理(実施)検討会」の業務は、「施設管理(実施)検討会」を発展的に解消し平成20年度に組織した「施設管理協議会(方部協議会)」等に引き継ぎます。 

8 その他

(1)  県土地改良事業団体連合会との連携

  ア 21世紀創造運動との連携により「施設管理強化月間」を設定

    農業水利施設の適正管理のため「施設管理強化月間」設定し、21世紀創造運動の一環として実施することに  より、土地改良区の果たす役割について理解を深めて行きます。

  イ 「二次診断」での専門技術者診断は土地改良施設管理指導事業(診断事業)を活用します。

  ウ 管理技術者育成支援事業を活用し、施設点検・診断等の管理技術研修会を各方部で開催し管理技術向上を図ります。

(2)  多面的機能支払制度との連携

  多面的機能支払制度との連携により、土地改良区等が管理する基幹的水利施設から、地域で管理する末端水利施設までを一体的、効果的な管理を行います。

用語

「予防保全対策」とは

  施設の劣化が表面化し、致命的な損傷になる前に予防的に施される保全対策 

     例:ゲート設備等における腐食防止対策など)

「補修」とは

  損なわれた機能(水利機能・水密性等)を回復させるための工事等

     例:コンクリート水路の目地補修、ゲートの止水ゴム交換など

「更新」とは

  著しく劣化し機能を失った施設の取り替え、新設を行う工事等 

     例:機能を失った揚水機の入れ替えなど