ラウンド農ふくしまWeb-センター通信(試験研究・業務)-
令和6年度 試験研究・業務の紹介
阿武隈中山間地域でもピーマンのトンネル栽培で所得向上が図れます
阿武隈中山間地域に位置する川内村では、令和4年度からピーマン栽培が始まっています。
さらに所得向上を目指して、一般的な露地栽培よりも収益性が高いと言われるトンネル栽培の実証試験を実施しました。
川内村でも収穫時期を露地栽培より2週間ほど早めて、単価の高い時期に多く出荷することができ、所得を増やせることがわかりました。
図1 トンネル栽培の様子
表1 トンネル栽培と露地栽培の年間所得の差(10a当たり)
「イネ初冬直播き栽培」に取り組むためのポイント
「イネ初冬直播き栽培」は、11月ころの初冬の水田にイネの種子を直播きし、そのまま土中で越冬させ、翌春に発芽・苗立ちさせる栽培方法です。そのため、春の繁忙期の作業を大幅に軽減できるメリットがあります。
一方で、長期間湿潤条件の水田に種子が置かれるため、苗立ち率が低下するリスクがありますが、冷蔵保存した前年産種子を用い、鳥害対策としてチウラム水和剤(商品名:キヒゲンR-2フロアブル)を種子に塗沫処理することで、目標苗立ち率50%を確保することができます。
また、施肥は冬期の肥料成分の流亡を防ぐため、播種前にリン酸、カリ施用と同時に、シグモイド型の肥効調節型肥料を窒素成分で1kg/a施用します。これらの技術で、精玄米重50kg/aを確保できます。
ミスト噴霧でトマト「りんか409」の裂果を減らすことができます
県内の夏秋トマト産地では、夏期の高温による収量や品質の低下が問題となっています。
そこで、トマトのハウス内にミスト装置(霧状の水を噴霧するもの)を設置して、ハウス内の
環境やトマトの収量・品質に及ぼす効果を調査しました。
ミストを噴霧することでトマト(品種:「りんか409」)の裂果の発生を減らすことができました。
図1 トマト裂果状況 図2 ミスト噴霧装置
「鳥獣被害対策にICT機器をどう使う?」導入支援マニュアルを作成しました
鳥獣被害対策には、見回り活動や状況確認に多くの人手が必要であり、鳥獣被害の特定に時間がかかることがしばしばです。
農業総合センターでは、ICT機器である通信型センサーカメラ及びインターネット上で管理できる地図アプリケーション(GIS(地理情報システム))を活用することで、省力化と時短を目指しました。
通信型センサーカメラを使うことにより、画像確認時間が削減でき、また、地図情報を簡易にデータ化し編集できました。
導入支援マニュアルは、農業総合センターHPにて公開していますのでご確認、ご活用ください。
データベースを活用した経営シミュレーションツールを作成しました!
経営・農作業科では、新規就農者や農業者の品目選定や、新規品目の導入等において活用できる「経営シミュレーションツール*1」を作成しました。
このツールは、メニューから経営面積、現在の労力、品目等を選択して実行すると、利益を最大にする品目の組合せを算出します。Microsoft Excel*2をお持ちであれば、センターのホームページより無料でダウンロードして使用することができます。
現在の労働力や所有する機械を用いて経営の柱にする品目を探したい!新規品目を導入して収益を向上させたい!方は、是非ご活用ください。
*1 ツールは現国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が作成した線形計画法による試算プログラム「XLP」を利用しています。
*2 Microsoft Excelは2016以降のバージョンを推奨します。
図1 シミュレーションの流れ
図2 シミュレーションモデル(労働時間が上限に近づくと、色が濃く赤くなります)
ナシジョイント栽培における施肥量を3割削減できる施肥方法
ナシ栽培には、年間10a当たり窒素成分で20kg必要です。通常、年に2~3回に分けて施肥を行っているため、農業者の作業負担が大きくなっています。そこで、肥料散布回数や量を減じる方法を検討しました。
ナシ「あきづき」のジョイント栽培において、毎年9月の基肥を肥効調節型肥料とし、慣行の施肥量から窒素成分当たりで3割削減しても、慣行と同等の生育と収量を確保できることがわかりました。
ジョイント栽培のナシ棚 ナシの収量と果実重(2021~2023年)