ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
ホーム > 組織でさがす > 農業総合センター 農業短期大学校 > 農作業安全コラムを掲載しています。

農作業安全コラムを掲載しています。

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年3月31日更新

農作業安全コラム 

県内の農作業安全の推進として、コラムを連載しています。
農作業事故の特徴、安全対策などの内容となっていますので、是非ご活用ください。
全国で年間350~400件の農作業死亡事故が発生し、県内でも少なくない数の農業者が犠牲になっているのが農作業事故の現状です。

農作業安全コラム

vol.1 実は危ない?農作業現場 [PDFファイル/70KB] (2016/05)

vol.2 トラクタにヘルメット? [PDFファイル/65KB] (2016/06)

vol.3 刈払機に「適切な」使い方?それでもメガネ? [PDFファイル/142KB] (2016/07)

vol.4 農業と熱中症 [PDFファイル/76KB] (2016/08)

vol.5 傾斜地が危ない [PDFファイル/84KB] (2016/09)

vol.6 コンバインと巻き込まれ [PDFファイル/88KB] (2016/10)

vol.7 福島県の農作業事故は多いのか? [PDFファイル/72KB] (2016/11)

vol.8 農業機械と点検整備 [PDFファイル/87KB] (2016/12)

vol.9 火の用心?冬のあいだも農業の事故 [PDFファイル/72KB] (2017/01)

vol.10 交通事故より深刻?農業の高齢者の事故 [PDFファイル/72KB] (2017/02)

vol.11 コミュニケーションからはじめよう [PDFファイル/78KB] (2017/03)

vol.12 ピシッと起立 安全フレーム [PDFファイル/70KB] (2017/04)

※「農作業安全啓発DVD」の動画をyoutubeにアップロードしました。本校チャンネルからご覧ください。
(動画再生)
https://www.youtube.com/channel/UCVsnGl2tSDGhH9Y7eJiapwA

 

vol.1 実は危ない?農作業現場 (2016/05)

「農業は、死亡事故の多い産業です」というと、意外に思われる方も多いかもしれません。
ましてや「建設業よりも死亡事故が多い」というと、尚更かもしれません。

農作業死亡事故は、年間で350~400件程度発生しています。
実際に、平成25年の農作業死亡事故は350件でした(*1)。
対して、同年度の建設業の死亡事故は342件、製造業は201件でした(*2)。

これを就業人口10万人あたりの発生件数にしてみますと、農業 14.6件、建設業 6.8件、製造業 1.9件となります(*3)(*4)。
言い方を変えてみますと、農業は、建設業の約 2.1倍、製造業の約 7.7倍の割合で、死亡事故が起きているといえます。

いかに農業による死亡事故が多いか分かると思います。

福島県においても、ここ数年では毎年10~15件程度の農作業死亡事故が発生しています。

ちょうど1年前、昨年の5月には、2週間のあいだに農作業死亡事故が立て続けに5件発生してしまいました。
すべてが農業機械によるもので、そのうち4件は機械の転倒・転落が原因でした(*5)。

ご存じのように農業機械は大変便利ですが、使い方を誤ると事故の恐れがあります。

農業短期大学校研修部では、県内の農作業事故を少しでも減らすために、農作業安全を推進しています。

この一環として、6月3日(金曜日)に「農作業安全研修(第1回)」を農業短期大学校にて開催します。
この研修では講義・実習を通して農作業安全を学びます。

また、現地研修というかたちで「現地で学ぶ農作業安全」の講座も設けています。

「安全に農作業をしたい」という方は是非ともお気軽にお問い合わせください。

参考資料
(*1)農林水産省生産局技術普及課生産資材対策室調べ
(*2)厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課調べ
(*3)農林水産省統計部「農業構造動態調査」
(*4)総務省統計局「労働力調査」
(*5)福島県農林水産部農業担い手課調べ

vol.2 トラクタにヘルメット?(2016/06)

「自転車に乗るときはヘルメットを被りなさい」と、子供の頃に先生や親に言われて、
面倒だなと思ったことはないでしょうか。恥ずかしながら、私はよくそう思っていました。

農業短期大学校の研修では、受講生にトラクタ*に乗るときには「ヘルメットを被るように」と指導しています。
なぜか?トラクタの事故から身を守るためです。

トラクタによる死亡事故は年間約100件発生しています(*1)。
福島県において、今年の5月には、トラクタによる1件の死亡事故(伊達市)、1件の重傷事故(古殿町)が新聞で報道されていました。

トラクタ事故の約8割が「機械の転倒・転落」を原因としています(*1)。

この転倒・転落を未然に防ぐことが、最善であることはいうまでもありません。
しかし、転倒・転落した後に、自分が重傷化しないための対策も同じく重要です。

その対策とは、(1)安全フレーム・キャブ+シートベルト、(2)ヘルメットの着用です。(1)が最も効果的ですが、
導入のコストを考えると、ハードルが高いかもしれません。そこで、(2)のヘルメットです。
ヘルメットはトラクタの転倒、または機械からの転落による頭部への外傷を防いでくれます。
実際、ヘルメットを着用していたことで、大怪我に至らなかった事例もあります。

ここまできて、「ん~、トラクタにヘルメットねえ?」と思われた方は、以下の2点を試してみることをおすすめします。

・だまされたと思って、1週間ヘルメットを着用してトラクタに乗ってみる
・トラクタの近くにヘルメットを置くようにする(座席に置いてみる)

ヘルメットを被る5秒の手間が、いざという時にあなたを助けてくれるかもしれません。

*本記事では、トラクタは「乗用型トラクタ」を指しています。

参考資料
(*1)農林水産省調べ

vol.3 刈払機に「適切な」使い方? それでもメガネ?(2016/07)

夏がやってきました。伸びやまぬ雑草との格闘が始まりつつあります。
刈っても刈っても、しばらく経つと元通りになる光景にはげんなりします。

ところで、みなさん刈払機をなんとなく使ってはいないでしょうか?
実は刈払機には、「適切な」使い方というものが存在するのです。

覚えることは次の2つです。
「刈払機は右から左に動かして刈ること」と「刈刃の左前3分の1で刈ること」です。

この2つを守ることで、刃のはね返り(キックバック)や小石・刈刃の破片などの飛散事故を防ぐことができます。
さらには、防護カバーと刈刃の間で草が詰まることもありません。

使い方を正すことで、事故のリスクを減らすだけでなく、効率的な作業につながります。

しかし、どれだけ注意をしても起こり得るのが事故です。
そこで、安全保護具、特に「保護メガネ」です。

「刈払機による眼の外傷事故の内、4分の1が失明した」というデータがあります(*)。

この外傷事故の原因は、刈刃の破片などの飛散です。

「保護メガネは曇るから、作業しづらくて着けていられない」という農業者の声がありますが、
最近では、曇り止めの保護メガネも販売されています。

眼のケガが一発で失明につながるリスクを考えると、2,000円程度で保護メガネを購入して着用することは、
大きな負担ではありません。

防ぐことのできたケガを悔やむほど、後悔先に立たないこともないでしょう。

参考資料(*)独立行政法人国民生活センター「草刈機使用で失明の危険」

   ここでいう失明は、社会的失明(矯正視力が0.02以下)を指します。

vol.4 農業と熱中症(2016/08)

今年の暑さが大詰めとなってきました。夏野菜の収穫もピークではないでしょうか?
ようやくの収穫で作業にも身が入ることでしょうが、心配なのは熱中症です。

熱中症というと、スポーツに取り組む学生、外で力仕事をしている人などにみられる症状というイメージをお持ちかもしれません。
ところが、熱中症で亡くなる方の約8割が65歳以上で、発生場所の多くが住居内となっています(*1)。

 そして、熱中症は農作業と切っても切れない関係となってきています。
実は、高齢者の発生場所として住居の次に多いとみられるのが農場なのです(*1)(*2)。

農作業中の熱中症による死亡事故は、全国で年間20件前後発生しています(*3)。
農作業で熱中症が多い理由には、天候によって作業の集中が生じる、屋外作業が多い、
夏季であっても長袖を着用することがある(*2)、といったことなどが挙げられます。
さらに、農作業は熱中症が重度化しやすいとされており、その理由には、水分を摂る機会が少ないからだと考えられています(*4)。

そこで、熱中症対策が必要となるのです。
熱中症対策の基本は、(1)体温の維持、(2)水分補給です。

(1)体温の維持
 屋外では、帽子・上着で日射を遮ること。室内では、肌の露出を多くすること。
 休憩時には、作業着を脱いで、衣服内の風通しを良くすること。

(2)水分補給
 ノドの乾き具合ではなく、あらかじめ時間を決めて水分補給をすること。
 例えば、20分おきにコップ1杯分の水を飲む、といったように。

あとは、熱中症に限った話ではありませんが、体調管理が大切です。
農作業も日常生活もカラダが資本です。 

参考資料
(*1)厚生労働省調べ
(*2)中井誠一ら「スポーツ活動および日常生活を含めた新しい熱中症予防対策の提案」
(*3)農林水産省調べ
(*4)三宅康史ら「本邦における熱中症の実態」

vol.5 傾斜地が危ない(2016/09)

「すべって転ぶ」というのは、マンガの世界のお約束という感じがします。

しかし、転倒の事故は、現実世界のどの業種においても悩みの種になっています。
実際に、休業4日以上の労災事故で最も多い原因は「転倒」なのです(なんと年間26,000件!)(*1)。

これは、農業にあっても例外ではありません。
トラクタをはじめ乗用型の農業機械は傾きに弱く、転倒・転落が事故につながります。
(農作業安全コラムvol.2で触れています。)

また、農業機械のみならず、人間自体も得てして傾きが苦手です。

高齢の農業者の(農業機械を使わない)転倒・転落の事故を分析した研究によると、
高齢者は「すべって」転倒することが最も多く、その原因は「傾斜地」だというのです(*2)
さらに、その作業内容は、草刈り、農薬散布などの「管理作業」となっています。

そもそも、年齢を問わず、傾斜地で作業するだけで心拍数が上がることも知られています。

そこで、傾斜地の安全対策なのです。

(1)スパイクの着用 傾斜地の滑り防止にはスパイクが有効です。
 専用のスパイク靴もありますし、通常の作業靴などに取り付けるものもあります。

(2)作業現場の見直し高さ2m以上、傾斜角40°以上の法面であれば、小段を設置することをお勧めします。
 (法面の小段については、別回で紹介する予定です)
 また、畦際など段差のあるところに境界線の目印をつけておくことも有効です。
 これらは、安全面だけでなく、作業効率や作業負担においても効果があるといえます。

傾斜地農地の多い日本では尚更、「傾き」に敏感になってほしいと思います。

参考資料
(*1)厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「ストップ!転倒災害プロジェクト」
(*2)百瀬義人・末永隆次郎「福岡県の高齢農業従事者における農業機械が関わらない転倒・転落による傷害の特徴」

 vol.6 コンバインと巻き込まれ(2016/10)

田んぼが黄金色を帯びてきました。
稲刈りの秋。1年間眠っていたコンバインの出番です。
同時に、長い眠りを経て、機械がちゃんと動くか心配な場面でもあります。

コンバインは、乗用トラクタ、歩行トラクタ、運搬車に次いで
最近5年間で、4番目に死亡事故の多い農業機械となっています(*1)。

死亡事故の原因の多くは転倒・転落なのですが、コンバインについては、
可動部(刈取・搬送部、脱穀部、排わら処理部)の露出があるため、
可動部での巻き込まれの事故を軽視することができません。

コンバインの可動部における事故は、死亡に至らなくても重傷化しやすい傾向があり、
ある調査によると、その20~30%は入院が必要な怪我になるとされています(*2)。

通常、可動部における巻き込まれ事故は、
エンジンをかけたままの状態で、可動部に不注意に近づいてしまうときに発生します。
そのため、「エンジンをOFFにしてから整備点検や清掃を行う」という指導が多いのです。

しかし、コンバインの手こぎ作業に限っては、
エンジンをONにした状態で可動部に接近して作業する他ありません(!)。

そこで、手こぎ作業時に、作業者が実施できる対策は2点です。
(1)ブカブカの服装や軍手を避けること
(2)フィードチェーンに手が接近しないような稲の投げ込みをすること
衣服の袖口や軍手が引っかかって、「しまった!」と思ったときには、時すでに遅しです。

稲刈りという、年に1回の限られた作業だからこそ、作業手順の再確認が重要です。
事故によって、実りの秋が台無しになることは、誰も望むところではないでしょう。

追記:現在、コンバインの新機種では、上述の事故対策として
手こぎ部の緊急即時停止装置が標準装備となっています。

参考資料
(*1)農林水産省調べ
(*2)冨田宗樹ら「農業者アンケート調査結果に基づいた自脱コンバインの事故分析」

 vol.7 福島県の農作業事故は多いのか?(2016/11)

11月になりました。11月は「食物月(おしものつき)」とも呼ばれるように、収穫した農作物を祝う季節です。
秋作業も徐々に落ち着きつつあるのではないでしょうか。

今回は、農作業安全研修会などで質問に挙がる
「福島県の農作業死亡事故って多いの?」ということについて考えてみます。

まず、最近5年間の各都道府県の農作業死亡事故件数の合計を比較してみると、
1位:北海道(96件)、2位:福島県(79件)、3位:鹿児島県(78件)、4位:熊本県(78件)、5位:千葉県(67件)、となっています(*1)。

福島県の農作業死亡事故の件数は、全国ワースト2位となっているのです(!)。

しかし、この5道県をよくよく見ると、どれも農業が盛んなところだと判ります。
農業で働く人が多ければ、農業の事故が多くなるのは自明かもしれません。

そこで、就業人口を踏まえて、農作業死亡事故の年間発生頻度を算出してみると、
福島県の農業の就業人口10万人あたりの死亡事故件数は、16.9件(注)となります(*1)。

これは、最近5年間の当事故件数がすべて公表された27道県中、15番目に高い数字です。
つまり、福島県の農作業死亡事故の発生頻度は、突出して高いわけではないのです。

ただ、やはり安心できる数字ではありません。上述の数字の見方を変えると、
「福島県では約6,000人に1人が農業で亡くなっている」という計算になります。

労働災害では、約100,000人に1人が亡くなる程度、
交通事故では、約10,000人に1人が亡くなる程度です(*2)。

農作業事故の多さを、都道府県で比べている場合ではないのかもしれません。

(注)ここでは、平成22年から平成26年の農作業死亡事故件数の平均値を、平成22年と
平成27年の農業就業人口の平均値で割っているため、参考値として算出しています。

参考資料
(*1)農林水産省調べ
(*2)石田敏郎「交通事故学」

 vol.8 農業機械と点検整備 (2016/12)

自動車の車検の時期が近づいてくると、
「うわ~」という金銭的な悲鳴をあげたくなる人もいるでしょう。
2年に1度の断末魔の叫び、とでも呼べばいいでしょうか。 

一方、トラクタ、田植機、コンバインなどの農業機械には車検の必要がありません。
これは、農業機械が基本的に小型特殊自動車に分類されるためです。

しかし、「車検が無い」ということを、素直に喜んで良いでしょうか。
なぜなら車検が無いために、農業機械のメンテナンスは全て自己責任となってしまいます。
機械のパフォーマンスと安全は、農業者の手に委ねられたのです。 

では、どこに目星を付けて点検整備をすると良いかというと、
以下の農業機械メーカーのサービスコールの内容(依頼の多い順)をご覧ください(*1)。

トラクタ  :(1)オイル交換(12%)、(2)オイル漏れ(9%)、(3)部品注文(9%)

田植機  :(1)点検依頼(17%)、(2)エンジンかからない(15%)、(3)取扱説明指導(6%)

コンバイン:(1)点検依頼(14%)、(2)ベルト交換(11%)、(3)動かない(7%)

エンジンやオイル関係にてトラブルが多く、ここが点検の重要ポイントだと考えられます。
なお、これらのトラブルの原因は、腐ってしまった(劣化した)ガソリンの使用や
経年劣化したオイルシールの不良であることが多いとされています(*2)。

また、トラブルの多くは、事前の点検によって防ぐことができたとみられており、
特にトラクタについては、分析したサービスコール(6,210件)の47%が、事前点検でトラブルの未然防止ができたとされています(*1)。

点検整備の基本は、取扱説明書に詰まっています。
年に1回は、時間をかけて機械の面倒をみてあげたいところです。

※田植機、コンバインの点検整備については、来年度に本校で研修を実施する予定です。

参考資料
(*1)株式会社クボタ調べ(トラクタ・田植機は2009年春、コンバインは2010年秋)
(*2)株式会社秋田クボタHP

 vol.9 火の用心?冬のあいだも農業の事故 (2017/01)

新年がやってまいりました。
こたつ・お餅が手放せませんが、そろそろ正月気分も切り上げでしょうか。 

さて、農閑期となる冬は、通年で農業の事故が少ない時期です。
これは、農作業自体が少ない時期であることに因ります。
特に1月は、農作業死亡事故の件数が最も少ない月となっています。 

しかし、だからといって、全く安心できるものでもありません。
福島県の冬の事故には、他の季節には珍しい事故が発生するのです。 

実は、冬の農作業死亡事故(12月~2月)の3分の1が「火」に関連しています。(*1)
通年だと、火に関する死亡事故は10分の1以下なので、
いかに冬のあいだに火の事故が発生しやすくなるかが判ります。

これらの事故に至った作業は、「野焼き」「たき火」「融雪」となっています。

「野焼き」「たき火」の事故は、火の延焼が原因でした。
野焼きの火が風にあおられて衣服に飛び移ってしまった、
火が枯れ草に燃え移って巻き込まれてしまった、という発生状況でした。
風の向き・強さを考慮すること、延焼を防ぐ緩衝帯を設けることが対策だと考えられます。

「融雪」の事故は、木炭の燃焼による一酸化炭素中毒が原因でした。
ビニールハウスに積もった雪を溶かすためにハウス内で炭焼きをしたとのことですが、
密閉された空間での木炭の燃焼は命取りです。同様のシチュエーションであれば、
換気を良くすること、木炭の代わりにストーブやローソクを使用することが対策です。 

また冬は、路面が凍結して滑りやすくなるなど、
特殊な状況下での事故が発生することも、頭に入れておくと良いと思われます。

「一年の計は元旦にあり」というように、まずは今月から事故無く過ごしたい限りです。

参考資料
(*1)農業担い手課調べ

 vol.10 交通事故より深刻?農業の高齢者の事故 (2017/02)

最近、高齢者の交通事故のニュースが
世間を騒がせているような感じを受けないでしょうか?

「事故したときの記憶がない」「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」など、
不可解な見出しに首をかしげることもあるでしょう。 

昨年は、高齢者の交通事故の割合がこれまでに最も高く、
交通事故死者数の65歳以上の割合が54.8%となっていました(*1)。
世間からは「高齢化の弊害だ!」「対策を打たないと!」との非難の声が上がりました。 

そういった交通事故の状況を踏まえた上で、
農業の分野に目を遣ると、農業の事故が相当に異常だと感じます。

なぜなら、農作業事故の死亡者は、8割以上が高齢者(65歳以上)だからです(*2)。
さらに、死亡者全体の4割は80歳以上なのです。

これには、農業従事者の高齢化(平均年齢66.8歳)が大きく影響しています(*2)。
「農家で60代はまだまだ若手だ」とは、よく耳にするセリフです。

実際、農作業で体を動かしているためか、
高齢者とよばれる年齢でも元気ハツラツとした方が農業には多くいます。

ただ、高齢化に伴い、体力・判断力が低下して、人為的なミスが増えることも事実です。
さすがに、20~30代の時の自分と比較したら、衰えを感じざるを得ないでしょう。

「農業には定年がない」ということは素晴らしいことですが、
「高齢化による事故リスク」と裏表の関係になってしまっては元も子もありません。

高齢者の事故対策は、交通安全同様に農作業安全の喫緊の課題です。
次回コラムにて、高齢者の農作業事故防止に向けてできることを考えてみます。

参考資料
(*1)警察庁調べ
(*2)農林水産省調べ(平成26年の数値を参考にしています)

 vol.11 コミュニケーションからはじめよう (2017/03)

安全対策のアプローチには、主に「機械」と「人」があります。
安全性100%の完璧な機械であれば、事故は激減するでしょう。
たとえば、絶対に転倒しない構造のトラクタが普及すれば、転倒事故は無くなります。 

実際、農業機械の安全性は向上しつつあります。
最近では、最新の機種にトラクタの片ブレーキ防止装置などが導入されました。

さて、それではひとつ考えてください。
はたして、農業者全員が安全性に優れた最新の機種に更新するでしょうか。 

おそらく、使用中の農業機械が壊れてしまった場合、多くの農業者は、
金銭的な理由により、「中古機械を探す」または「更新できずに廃業する」
という選択を迫られるのではないでしょうか。 

そのため、農業の事故では「人」にアプローチせざるを得ない面があります。
ここで、心に留めておくべきは「人はミスをするのが前提」ということです。
「危ないので注意してください」では、ほとんど意味がありません。 

「注意しろ」という前に、次の2点が重要です。
(1)作業環境の改善 (例:田畑の進入路の整地、畑と土手の境目に目印など)
(2)機械の安全確保 (例:刈払機の防護カバーの装着、トラクタの安全フレームの起立など)

「環境」や「機械」の見直しをしてから、「人」の安全対策をするべきでしょう。
これは、ヒューマンエラーが多いとされる高齢者では尚更です。 

そして、安全対策を具体的に知るためには、
農林事務所・普及所、JA、本校などが実施する農作業安全講習会への参加をおすすめします。
少なくとも、「こんな危険があるんだな」とは感じてもらえると思います。

また、農業者本人以外の家族が参加して、家族から本人に声かけするのも良いでしょう。
農業法人や組合の誰かが参加して、自分の組織に持ち帰るのも良いでしょう。
地域のリーダーが参加して、地域住民に呼びかけるのも良いでしょう。 

他の人とのコミュニケーションで、安全意識が広がることを願います。

 vol.12 ピシッと起立 安全フレーム(2017/04)

「キリンの長い首は何のためにあるの?」
「どうしてお猿さんのおしりは赤いの?」
その姿かたちを見て、何かしら疑問をもつ時期はあったでしょうか。 

農業機械の研修で、機械の構造について説明していると、
「何のためにあるのか知らなかった!」と農業者がビックリするものがあります。
その最たる例が、トラクタの安全フレームです。
その姿かたちを見て、気にはなっても、それ以上の追求まで至らない存在のようです。 

安全フレームは、トラクタが転倒しても、運転者の身を守ってくれるものです。

これは、トラクタが横転や反転したときに、
トラクタ本体とフレームによって生じるスペースに運転者を留まらせて、
トラクタの下敷きになることを防ぐためです。 

ただし、これはシートベルトをしているときに限られます。
安全フレームとシートベルトは、セットでないと意味がありません。

実際に、安全フレームは高い救命効果が認められており、死亡事故を防いでくれます(*1)。

たまに、可倒式の安全フレームを倒した状態のまま
公道を走るトラクタを見かけますが、とてももったいないように思います。
車庫入れやハウス作業などがあるからフレームを倒しているのかもしれませんが、
フレームはピシッと起立していないと効果を発揮できません。 

そして、なぜ、安全フレームの重要性がこれだけ強調されるのかというと、
その根底に、トラクタの構造的な倒れやすさがあるためです。

安全対策というと、「事故を起こさないように」というリスクゼロに目が行きがちです。
しかし、トラクタの安全フレームのように、
「事故が起きたときに重傷化させない」というリスクベースの対策も等しく重要です。

さて、春が始まりました。背中をピシッとして、作業といきましょうか。

参考資料:(*1)革新工学センター調べ

Adobe Reader

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe社が提供するAdobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。(無料)

ご意見お聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?
このページは見つけやすかったですか?

※1 いただいたご意見は、より分かりやすく役に立つホームページとするために参考にさせていただきますので、ご協力をお願いします。
※2 ブラウザでCookie(クッキー)が使用できる設定になっていない、または、ブラウザがCookie(クッキー)に対応していない場合はご利用頂けません。