「特定母樹」の増殖に向けたコンテナ苗を生産しています
植栽後4年目の特定母樹
「特定母樹」は、林業種苗育種法に規定する種苗のうち、特に優良な種苗を生産するための種穂(種や挿し木用の穂)を採取するための親木となる樹木です。
森林吸収源対策の目標達成のため、「森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法」 (平成 25 年 5 月 法律第22号)では、種穂の採取に適する樹木で、成長に係る特性の特に優れたものを農林水産大臣が特定母樹に指定し、平成32年まで増殖を促進するという基本方針が定められています。
林業研究センターでは、指針に定める特定母樹のうち、スギの増殖を行っていますので、その取組について紹介します。
「特定母樹」の特徴及び増殖や普及の方法
スギ特定母樹の特徴
- 成長量は在来系統の単木材積の約1.5倍
- 幹が通直で曲がりが全くないか、曲がりがあっても採材に支障がない
- 材は剛性に優れている
- 雄花着花性が一般のスギの半分以下
増殖や普及の方法
- 特定母樹の原種は、国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所林木育種センターから都道府県や特定増殖業者に配布されますが、
福島県では、平成27年から原種(10品種)の配布を受け林業研究センターで採種園の造成に着手しました。
普及の流れ図
コンテナ苗を利用したミニチュア採種園の造成
コンテナ苗
根鉢の様子
コンテナ苗の特徴
- 生産作業が効率的で労働負荷が軽減される
- 専用の植栽器具を使用することで簡易な植栽が可能
- 条件が厳しい時期を除けば植栽が可能で植栽時期を選ばない
- コンテナトレー(40本/枚)毎に原種(品種)を育成できるため、多品種の管理が容易
ミニチュア採種園の特徴(メリット)
ミニチュア採種園は次世代型の採種園として次のようなメリットがあります。
- 従来の採種園は造成から10年を経過した頃から種子生産が可能となるのに対し、ミニチュア採種園は作業の効率化を図るため、単位当たりの面積や植栽間隔を狭くし、人為的に着花をコントロールをすることにより、造成から4年程度で種子を生産できるため、様々なニーズに対して早期に対応ができます。
マスの数字はクローンの品種
苗木植栽後のミニュチア採種園
今後の取組など
終戦後や高度成長期の伐採跡地に造林された人工造林地の森林資源が利用できる時期にある現在は、「植える→育てる→使う→植える」 という循環利用サイクルの うち「使う」時期にありますが、次世代へ森林づくりのため「植える」準備をはじめる時期でもあります。
今後は各地で特定母樹の増殖が予想されるところですが、コンテナ苗の技術を活用しそれぞれの地域の特性に合ったミニチュア採種園の造成が期待されるところです。