工事を施工する時の注意事項
★「知らなかった」では、すまされない!!建設業法
東日本大震災や令和元年東日本台風災害など、頻発化・激甚化する自然災害への対応の増加に伴い、技術者の不適正な配置や元下請負契約などの法令違反の増加が心配されています。
建設業者の皆さんには、建設業法をよく理解し遵守していただきますようお願いします。
「知らなかった」ではすまされない!!建設業法 [PDFファイル/242KB]←ポスター(A3版)令和5年1月版
◆請負契約を締結するとき
○建設工事の請負契約の原則(建設業法第18条)
建設工事の請負契約の当事者(注文者及び請負人)は、各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実に履行しなければなりません。
○建設工事の請負契約の内容(建設業法第19条)
建設工事の請負契約の当事者(注文者及び請負人)は、契約の締結に際して以下に掲げる事項を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付しなければなりません。 また、契約の内容を変更する場合も、同様にその変更内容を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付しなければなりません。
・工事内容
・請負代金の額
・工事着工の時期及び工事完成の時期
・工事を施工しない日または時間帯の内容
・請負代金の前金払または出来高払いの時期及び方法
・設計変更または工事着手の延期若しくは工事の中止の場合の工期の変更、請負代金の変更、損害の負担及びこれらの額の算定方法に関する定め
・天災等不可抗力による工期の変更または損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
・価格等の変動等に基づく請負代金の額または工事内容の変更
・工事の施工による第三者への損害賠償の負担に関する定め
・注文者からの資材提供または機械貸与の内容及び方法に関する定め
・工事の完成検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
・工事の完成後における請負代金の支払時期及び方法
・工事の目的物を担保すべき責任またはこの責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定め
・履行の遅滞、債務不履行の場合における遅延利息、違約金、その他の損害金
・契約に関する紛争の解決方法
なお、契約にあたっての標準的な契約約款としては、現在次のようなものが示されていますので、これらを使用するか、これらに準じて、書面による適正な契約の締結を行ってください。
・民間建設工事標準請負契約約款(甲)・・・中央建設審議会決定
・民間建設工事標準請負契約約款(乙)・・・中央建設審議会決定
・民間(七会)連合協定・工事請負契約約款 ・・・・業界7団体決定
・公共工事標準請負契約約款 ・・・・・・・中央建設審議会決定
・建設工事標準下請契約約款 ・・・・・・・中央建設審議会決定
○建設工事の見積り等(建設業法第20条)
・建設業者は、建設工事の請負契約の締結に際して、工事の内容に応じ、工事の種別ごとの材料費、労務費、その他の経費の内訳並びに工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を明らかにして、建設工事の見積りを行うよう努めなければなりません。
・建設業者は、建設工事の注文者から請求があったときは、請負契約が成立するまでの間に、建設工事の見積書を交付しなければなりません。
・見積書の交付を、電子情報処理組織を使用する方法に代えることができます。
・建設工事の注文者は、請負契約の方法が随意契約による場合はその契約を締結するまでに、入札の方法により競争に付する場合は入札を行うまでに、次の事項についてできるだけ具体的な内容を提示し、かつ、その提示からこの契約の締結または入札までに、建設業者がこの建設工事を見積るために必要な一定の期間を設けなければなりません。
【具体的に内容を提示する事項】
請負契約書に記載する事項(14項目)のうち請負代金の額を除いた13項目
【工事を見積るために設けなければならない期間(建設業法施行令第6条)】
(1)工事1件の予定価格が500万円未満の工事・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1日以上
(2)工事1件の予定価格が500万円以上5,000万円未満の工事・・・・・10日以上
(3)工事1件の予定価格が5,000万円以上の工事・・・・・・・・・・・・・・・・・15日以上
(2)と(3)の場合で、やむを得ない事情があるときは、上記の期間を5日以内に限り短縮することができます。
○工期等に影響を及ぼす事象に関する情報の提供(建設業法第20条の2)
建設工事の注文者は、次の事象が発生するおそれがあると認めるときは、契約を締結するまでに建設業者に対して情報提供をしなければなりません。
・地盤の沈下、地下埋設物による土壌の汚染その他の地中に起因する事象
・騒音、振動その他の環境に配慮が必要な事象
○契約の保証(建設業法第21条)
建設工事の請負契約において、請負代金の前金払の定めがある場合には、注文者は、建設業者に対して前金払をする前に保証人を立てることを請求することができます。
ただし、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事及び「公共工事の前払金保証事業に関する法律」に規定されている保証事業会計の保証に係る工事は対象になりません。
この場合、建設業者は次のいずれか一方の保証人を立てなければなりません。
ア 建設業者の債務不履行の場合の遅延利息、違約金その他の損害の支払の保証人(金銭保証人)
イ 建設業者に代わって自らその工事を完成することを保証する他の建設業者(工事完成保証人)
なお、注文者の請求に対し、建設業者が保証人を立てないときは、注文者は、契約の定めにかかわらず、前金払をしないことができます。
○下請契約の締結の制限(建設業法第16条)
発注者から直接請け負った建設工事については、特定建設業の許可を受けた者でなければ、下請代金の総額が4,500万円以上(建築工事業の場合は7,000万円以上)となる下請契約は締結できません。
○一括下請負の禁止(建設業法第22条)
建設業者は、その請け負った工事を一括して他人に請け負わせてはなりません。また、建設業を営む者は、建設業者からその建設業者の請け負った工事を一括して請け負ってはなりません。
なお、民間工事(多数の者が利用する施設及び共同住宅の新築工事を除く。)において元請負人があらかじめ発注者から書面による承諾を得た場合に限り、一括下請負が認められますが、公共工事においては一切禁止です。
ア 一括下請負となる場合
(ア)自己の請け負った工事をそっくりそのまま他人に請け負わせる場合
(イ)請け負った建設工事の主たる部分を一括して他の業者に請け負わせる場合
(ウ)請け負った建設工事の一部であって、他の部分から独立して機能を発揮する工作物の工事を一括して他の業者に請け負わせる場合
(注)いずれも場合も、中間搾取の有無は関係ありません。
イ 一括下請負にならない場合
元請負人自らが総合的に企画、調整、指導を行い、その下請工事の施工に実質的に関与していると認められる場合
(注)単に技術者を配置しているだけでは該当しません。
ウ 一括下請負が禁止されない場合
民間工事(多数の者が利用する施設及び共同住宅の新築工事を除く。)において、あらかじめ発注者の書面による承諾を受けている場合
○不当に低い請負代金の禁止(建設業法第19条の3)
注文者は、自己の取引上の地位を不当に使用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額で、契約を締結してはなりません。
○不当な使用資材等の購入強制の禁止(建設業法第19条の4)
注文者は、契約締結後、自己の取引上の地位を不当に使用して、その注文した建設工事に使用する資材若しくは機械器具またはこれらの購入先を指定し、これらを請負人に購入させて、その利益を害してはなりません。
○著しく短い工期の禁止(建設業法第19条の5)
注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比べて著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはなりません。
○帳簿の備え付け(建設業法第40条の3)
建設業者は、営業所ごとに、請け負った建設工事あるいは請け負わせた建設工事の契約内容やその状況等を記載した帳簿を備え、保管しなければなりません。
◆工事を施工するとき(共通する事項)
○現場代理人及び監督員の選任等に関する通知(建設業法第19条の2)
請負人は、請負契約の履行に関し工事現場に現場代理人を置く場合においては、その現場代理人の権限の内容等を、書面により注文者に通知しなければなりません。 また、注文者は、請負契約の履行に関し工事現場に監督員を置く場合は、その監督員の権限の内容等を、書面により請負人に通知しなければなりません。
○下請負人の変更請求(建設業法第23条)
注文者は、請負人に対して、建設工事の施工につき著しく不適当と認められる下請負人の変更を請求することができます。 ただし、あらかじめ書面による承諾をして選定された下請負人については、変更の請求をすることはできません。
○技術者の配置(建設業法第26条第1項、第2項)
建設工事を施工するときは、その工事現場における技術上の管理をつかさどる、主任技術者または監理技術者を置かなければなりません。
ア 監理技術者を置かなければならない場合とその要件
(ア)監理技術者を置かなければならない場合 発注者から直接建設工事を請け負つた特定建設業者が、下請契約の請負代金の総額が4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上となる工事を施工する場合
(イ)監理技術者の要件 特定建設業における専任技術者の資格要件を満たす技術者であること。
イ 主任技術者を置かなければならない場合とその要件
(ア)主任技術者を置かなければならない場合 工事を施工する場合で、監理技術者を置かなければならない場合以外の場合、つまり、許可を持つ建設業者は、下請の場合であっても、金額の大小にかかわらず技術者を置かなければなりません。
(イ)主任技術者の要件 一般建設業における専任技術者の資格要件を満たす技術者であること。
○公共工事等における技術者の専任(建設業法第26条第3項、第4項)
公共性のある工作物に関する重要な工事(以下「公共工事等」という。)において設置する主任技術者(または監理技術者)は、請負金額が4,000万円以上(建築一式工事の場合には8,000万円以上)の場合は、原則として工事現場ごとに専任の者でなければなりません。
この場合、下請工事の場合においても、専任が必要となるので注意が必要です。
なお、監理技術者を選任で置くことが必要となる建設工事において、発注者から直接請け負った特定建設業者が特例監理技術者を置く場合(監理技術者を複数の工事現場で兼務させる場合)には、監理技術者補佐を当該工事現場ごとに選任で置かなければなりません。
※「公共工事等」とは、
1 国または地方公共団体が注文者である工作物に関する工事
2 鉄道、道路、上下水道等の公共施設に関する工事
3 電気事業用施設、ガス事業用施設に関する工事
4 学校、図書館、工場等公衆または多数の者が利用する施設に関する工事
※「専任」とは、
「他の工事の主任技術者または監理技術者及び営業所の専任技術者との兼任を認めないこと。」を意味します。
ただし、請負金額が4,000万円以上(建築一式工事の場合には8,000万円以上)の公共工事等に置く主任技術者については、密接な関係のある2以上の工事を同一の場所または近接した場所において施工する場合に限り兼任が認められてます(監理技術者には適用されません。)。
このほか、同一又は別々の注文者が、同一の建設業者と締結する契約工期の重複する複数の請負契約に係る工事であって、かつ、それぞれの工事の対象が同一の建築物又は連続する工作物である場合については、すべての注文者から同一工事として取り扱うことについて書面による承諾を得た上で、これらの複数の工事を一の工事とみなして、同一の主任技術者、監理技術者又は監理技術者補佐が当該複数工事全体を管理することができます。
※「監理技術者補佐」とは、
次のいずれかに該当する者のこと。
ア 主任技術者の資格を有する者のうち、一級の技術検定の第一次試験に合格した者(一級施工管理技士補)
イ 一級施工管理技士等の国家資格者、学歴や実務経験により監理技術者の資格を有する者
なお、監理技術者補佐として認められる業種は、主任技術者の資格を有する業種に限られます。
※特例監理技術者が兼務できる工事の現場数は、2件までです。
○監理技術者資格者証の携帯が必要となる工事(建設業法第26条第5項、第6項)
国、地方公共団体等が発注する公共工事の現場に専任で設置しなければならない監理技術者は、「監理技術者資格者証」の交付を受けている者で、さらに平成16年3月1日から監理技術者講習を受講した者(講習修了証を持つ者)でなければなりません。
また、発注者から請求されたときは、監理技術者資格者証を提示しなければなりません。 なお、この講習の受講は、これまで監理技術者資格者証の交付要件でしたが、要件ではなくなりました。
○一式工事業者が専門工事等を施工する場合(建設業法第26条の2)
土木工事業または建築工事業を営む者が、土木一式工事または建築一式工事を施工する場合、土木一式工事または建築一式工事以外の建設工事を自ら施工するときは、その専門工事に関する技術者を置いて施工しなければなりません(ただし、一式工事に置く技術者が、専門工事の技術者要件を満たす者であれば兼任することができます。)
技術者を置いて自ら施工することができないときは、その専門工事の建設業の許可を受けた建設業者に施工させることが必要です。
また、建設業者が許可を受けた建設業に係る建設工事の附帯工事を施工する場合も、同様にその附帯工事に関する技術者を置くか、この附帯工事に関する建設業の許可を受けた建設業者に施工させることが必要です。
◆工事を施工するとき(元請負人となった場合の義務)
○下請負人の意見の聴き取る(建設業法第24条の2)
元請負人は、その請け負つた建設工事を施工するために必要な工程の細目、作業方法等を定めようとするときは、あらかじめ下請負人の意見をきかなければなりません。
○検査及び引渡し(建設業法第24条の4)
元請負人は、下請負人から建設工事が完成した旨の通知を受けたときは、この通知を受けた日から20日以内で、かつ、できる限り短い期間内に、その完成を確認するための検査を完了しなければなりません。
また、工事完成を確認した後、下請負人が申し出たときは、直ちに、この建設工事の目的物の引渡しを受けなければなりません。
ただし、下請契約において定められた工事完成の時期から20日以内の一定の日に、引渡しを受ける旨の特約がされている場合には、この限りではありません。
○下請代金の支払(建設業法第24条の3)
ア 前金払 元請負人は前払金の支払を受けたときは、下請負人に対して、資材の購入、労働者の募集等建設工事の着手に必要な費用を、前払金として支払うよう適切な配慮をしなければなりません。
イ 出来高払及び竣工払 元請負人は、工事の出来高払または竣工払を受けたときは、その工事を施工した下請負人に対して、支払を受けた金額の出来高に対する割合及びこの下請負人が施工した出来高部分に相応する下請代金を、出来高払または竣工払を受けた日から1カ月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければなりません。また、元請負人は、下請代金のうち労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮をしなければなりません。
工事を施工するとき(特定建設業者の場合の義務)
特定建設業の許可は、下請負人を用いることを前提に設けられた許可の区分です。 したがって、上記の事項にほかに加えて下記の義務が課せられます。
○下請代金の支払期日等(建設業法第24条の6)
ア 下請契約における下請代金の支払期日は、下請負人が建設工事の目的物の引渡しを申し出た日から起算して50日以内で、かつ、できる限り短い期間内において定められなければなりません。
なお、50日を超える日を支払期日と定めたときは、下請負人が建設工事の目的物の引渡しを申し出た日から起算して50日を経過する日が、下請代金の支払期日と定められたものとみなされます。
イ 下請契約において、下請代金の支払期日が定められなかつたときは、下請負人が建設工事の目的物の引渡しを申し出た日が、下請代金の支払期日と定められたものとみなされます。
ウ 下請契約における下請代金の支払について、元請負人は支払期日までに一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付してはなりません。
エ 元請負人は、下請負人が建設工事の目的物の引渡しを申し出た日から起算して51日目からその支払をする日までの期間に対応する遅延利息(年14.6%)を支払わなければなりません。
○下請負人に対する特定建設業者の指導等(建設業法第24条の7)
発注者から直接建設工事を請け負つた特定建設業者は、下請負人がその建設工事の施工に関し、建設業法の規定または建築基準法、宅地造成等規制法、労働基準法、職業安定法、労働安全衛生法及び労働者派遣法の次の規定に違反しないよう指導し、違反していると認めたときは、その下請負人に対してその事実を指摘してその是正を求めるように努めなければなりません。 この場合において、下請負人が是正をしないときは、その下請負人が建設業の許可を受けている場合は、その許可をした国土交通大臣もしくは都道府県知事またはその建設工事の現場を管轄する都道府県知事に、許可を受けていない場合は、その建設工事の現場を管轄する都道府県知事に、その旨を通報しなければなりません。
ア 建築基準法 第9条第1項及び第10項(同法第88条第1項から第3項までにおいてこれらの規定を準用する場合を含む。)並びに第90条
イ 宅地造成等規制法 第9条(同法第12条第3項において準用する場合を含む。)及び第14条第2項から第4項まで
ウ 労働基準法 第5条(労働者派遣法第44条第1項の規定により適用される部分を含む。)、第6条、第24条、第56条、第63条及び第64条の2(労働者派遣法第44条第2項(建設労働法第44条の規定により適用される場合を含む。)の規定によりこれらの規定が適用される場合を含む。)の規定によりこれらの規定が適用される場合を含む。)、第96条の2第2項並びに第96条の3第1項
エ 職業安定法 第44条、第63条第1号及び第65条第8号
オ 労働安全衛生法 第98条第1項(労働者派遣法第45条第15項(建設労働法第44条の規定により適用される場合を含む。)の規定により適用される場合を含む。)
カ 労働者派遣法 第4条第1項
○施工体制台帳の整備等(建設業法第24条の8)
特定建設業者は、発注者から直接建設工事を請け負つた工事に関して、下請契約の請負代金の総額が4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)になるときは、工事に関わるすべての業者名、工事の内容、工期等を記載した施工体制台帳を作成し、工事現場ごとに備え置かなければなりません。 また、建設工事における各下請負人の施工の分担関係を表示した施工体系図を作成し、工事現場の見やすい場所に掲げなければなりません。
なお、工事に関わるすべての下請負人は、再下請を行ったときは、特定建設業者に対して、その業者名、工事の内容、工期等を通知しなければなりません。