用地補償のあらまし
はじめに
福島県では、県民の皆様が安全で快適に暮らせるよう、様々な公共事業を行っています。
これらの公共事業を行うにあたって、皆様の大切な土地をお譲りいただいたり、建物などの物件の移転をお願いすることもあります。
このような場合、どのような手続き・方法で土地の補償や、建物等の移転補償がなされるかについて、その概要をご説明いたします。
用地補償の流れ
1.事業説明
県では、地元の皆様にご協力をいただくため、事業の目的、内容、用地補償などについて説明を行います。
2.測量・調査
皆様に立会いをいただき、土地の境界や事業に必要な土地の範囲の確認をしていただくとともに、建物などの調査をします。
(1)土地の調査
土地調査は、買収面積の確定と権利者の確認が目的であり、土地所有者や隣接地の所有者など関係のある方々の立ち会いのもと、境界を明らかにしたうえで一筆ごとに調査します。
(2)建物や、工作物などの調査
建物や工作物などの調査は、補償金算定の基礎資料となりますので、あらかじめ皆様のご了承をいただいたうえ、県が委託した補償コンサルタント等が屋内外に立ち入り、詳細な調査を行います。
3.補償金額の算定
土地の価格や建物等の移転料は、憲法をはじめとして土地収用法などの法律の規定に基づき「正当な補償」を行うため、「福島県土木部所管の公共事業の施行に伴う損失補償基準」などにより買収させていただく土地や、移転していただく建物などの補償金額の算定を適正に行います。
4.契約内容の説明
補償金額の算定ができますと、各地権者の皆様にお示しし、ご理解いただけるよう協議いたします。
5.契約・登記・移転
ご了解いただきますと、契約書や登記承諾書にご署名・ご捺印いただくとともに土地を県に引き渡していただくため、建物などの物件を移転していただきます。
6.支払い
建物などの移転及び土地の所有権移転登記が完了し、土地の引き渡しを受けた後、金融機関への振込により補償金をお支払いいたします。
補償のいろいろ
(1)土地の補償(土地代金)
土地の1平方メートル当たり単価は、近隣の正常な売買取引価格、地価公示法による公示価格、さらに不動産鑑定士が行う鑑定価格などをもとに、適正な土地価格を算定します。
この場合、地目、面積は土地登記簿に記載されているものではなく、地目については現況により、面積については実測により、それぞれ算出します。
(2)建物の補償(建物移転料)
土地に建物がある場合は、その建物の配置、種類、構造、敷地の形状などに基づき通常妥当と思われる移転工法(再築工法、ひき家工法、改造工法など)を決定し、移転に必要な費用を補償します。
・再築工法
残地、隣接の自家用地または自家用地以外の土地に建物を移転することが合理的と認められる場合は、建物の現在価値と取り壊し費用などを補償します。
・ひき家工法
残地または隣接地の自家用地に建物を移転する余地があり、ひき家することが合理的と認められる場合は、そのために必要となる費用を補償します。
・その他
建物のごく一部が事業用地にかかり、その部分の切り取りや改造が可能な場合はそのために必要となる費用を補償します。
(3)工作物の補償
移設することができる工作物(フェンス、物置など)については、移転に必要な費用を、移設することができない工作物(ブロック塀、井戸など)については同種のものを新設するために必要な費用を補償します。
(4)立木の補償
庭木などで移植することが相当と判断される立木については、移植に必要な費用などを、伐採することが相当と判断される立木については、伐採による損失額を補償します。
(5)建物の移転に伴う諸経費の補償
・仮住居補償
建物をひき家工法、改造工法などにより移転する場合は、移転工事期間中住まいが必要となります。この場合には、建物の規模世帯人員や家財道具などの数量に応じた仮住まいに要する費用を補償します。
・動産移転
建物の移転に伴う動産(家財道具、商品、諸材料等)については、荷造り、運搬などに必要な費用を補償します。
・借家人補償
貸借している建物が移転することにより、その建物を移転後引き続き借りることができなくなる場合には、現在の建物と同程度のものを借りるために必要な費用を補償します。
・営業補償
店舗や工場などを移転することにより販売や製造を一時休止する必要がある場合には、休業を必要とする一定期間の収益減や従業員に対する休業手当などの補償をします。
・移転雑費
建物の移転に伴い新たに必要となる経費として、建築物確認申請手数料、その地方の慣習で行う上棟式や建築祝などに要する費用、親戚や友人、知人に対する移転挨拶状の費用などを補償します。
(6)その他の補償
これらの補償のほかに、残地に損失があった場合の補償や、貸家の移転に伴う家賃減収補償などもあります。
収用等の場合の課税の特例について
(1)譲渡所得の特例
公共事業用地として譲渡した場合は、次の特例のうちどちらか一方を選んで受けることができます。
・5,000万円の特別控除
譲渡所得の金額から最高5,000万円まで控除されます。
・代替資産を取得した場合の課税の特例
土地代金等で代替資産を取得した場合には、代替資産の取得にあてられた金額については譲渡がなかったものとみなされます。
※課税の特例については、租税特別措置法の適用条件が個々に異なりますので、詳細については所轄の税務署にご相談ください。
(2)不動産取得税
代替地を取得する場合や建物補償を受けて新築等した場合には、原則として課税されますが、申告することによって不動産取得税が軽減されます。
(相談窓口)所轄の各振興局県税部
(3)生前一括贈与の受贈農地について
生前一括贈与の受贈農地となっている場合には、贈与税の納税猶予額の一部(買収面積に対応する部分)を納付しなければなりませんが、利子税の金額については、届け出することにより2分の1に軽減されます。(平成26年4月1日から平成33年3月31日までの間に譲渡をした場合には、利子税の全額が免除)
(相談窓口)各所轄税務署
(4)国民健康保険税
保険税算定において、公共事業による譲渡所得の控除が適用になります。
(相談窓口)各市町村税務担当課等
(5)扶養控除(所得税、住民税)
配偶者及び被扶養者の方(かた)が土地を譲渡した場合は、その所得が一定の金額を超えるとその年分の配偶者特別控除又は扶養控除が受けられなくなることがあります。
(相談窓口)各市町村税務担当課
各所轄税務署
年金関係のはなし
(1)農業者年金
農業者年金については所得による制限ではなく農地面積によって制限されますので、受給者が公共事業のために農地を譲渡したり、代替地として農地を提供した場合、または代替農地を取得する場合は、農業委員会にお問い合わせください。
(相談窓口)各市町村農業委員会
(2)福祉年金等
(老齢福祉年金・障害基礎年金・遺族基礎年金・特別障害者手当等)
福祉年金等の受給者がいる世帯のどなたかが土地を譲渡した場合は、その所得が支給制限の限度額を超えると、翌年度の8月分から1年間支給が制限されることがあります。
(相談窓口)各市町村担当課
各所轄社会保険事務所
代替地について
代替地を提供してくださる所有者(代替地提供者)の方にも租税特別措置法の特例があり、譲渡所得の金額から最高1,500万円(事業用地価格が上限)まで控除されます。
この特例を受けるためには、事業用地提供者、代替地提供者、福島県の三者による契約(三者契約)を行います。
ただし、事前に仮契約などしますと、代替地提供者に対する特例が受けられない場合がありますのでご注意ください。