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H27.1.21 職場におけるおせっかい屋さん |
労働委員会 使用者委員 佐藤 卓也 |
3年前から事業活動の一環として婚活支援事業に取り組んでいる。これまでに6回の婚活パ-ティ-等を開催し、19組のカップルが誕生した。会員企業の複数の役員から、「会社内に多くの未婚の社員がおり、将来のことを考えると会社としても何らかの手を打たなければならない」など多くの意見が寄せられ、組織として会員企業の力も借りながら男女の出会いの場づくりに取り組んでいる。
国立社会保障・人口問題研究所『人口統計資料集』 (2013年版)によると、今や男性の20.14%、女性の10.61%が一生に一度も結婚しない時代に入っている。男性の場合、非正規労働者の未婚率が高く、経済面の不安定さが結婚を遠ざける一因となっているようである。男性の生涯未婚率(50歳時の未婚率)についてみると、1970年からの40年で約12倍、女性は約3倍に増えている。このように未婚化が進んでいる要因としては、結婚観・価値観の変化、ライフスタイルの変化、雇用・所得環境の変化などがあると思うが、今まで出会いの場となっていた「お見合い」や「職場での出会いを通した結婚」が減少していることも理由としてあるようである。
「職場での出会いを通した結婚」については、職場環境が大きく変化したことが影響している。これまでの年功賃金制や終身雇用制が崩れ、それに伴い従業員の会社への帰属意識が薄れ、また、企業を取り巻く環境が厳しさを増して、企業全体に余裕がなくなったことにも原因があるようである。以前は、地域社会や会社が結婚の世話を焼いてくれていたし、企業においては社内旅行や運動会が開催され、サークル活動も盛んで、仕事終了後のノミュニケーションなどの職場づきあいも多くあり、上司や先輩が背中を押してもくれた。私も以前勤めていた職場で、同期の仲間同士で、仕事帰りの飲食や休日に海水浴、テニス、スキーなどに仲良く出掛けていたこともあり、同期同士で2組が結婚に至っている。残念ながら今の多くの職場においては、風通しが余りよくなく、コミュニケ-ションが十分に取れていないのではなかろうか。職場の人間関係が希薄になり、恋愛などの私的なことに過度に立ち入り不快と感じとられてしまうと、相手の受け取り方次第では、セクハラにもパワハラにもなる恐れもある。私のところでも、人事労務担当者を通じて婚活に関する開催案内の周知等について協力を求める際にも、セクハラやパワハラ等の問題もあり、社員の方に中々気安く、気軽にお声がけをして頂くことが難しくなってきている。
セクハラやパワハラ等の難しい問題はあるにしても、最近では、企業や労働組合が積極的に婚活支援に乗り出してきている。「プライベートの充実は仕事にもプラスになり、社員同士が仲良くなることは団結心が増し、生産性も上がる」との考えの下、愛媛県のある食品会社では、「職場結婚奨励」という形で一貫して婚活支援を続け注目を集めている。社員が交流する数多くの仕掛けがあり、これまでに500組以上が結婚し、社員が職場結婚すると、本社ビル内にある「社内結婚神社」に人事担当者が夫婦の名入り絵馬を奉納するようなことまで行っている。
社員の結婚を応援することは、企業にとっても社員の福利厚生対策にも通じ、(1)結婚して家庭や家族を持つことにより仕事に対する責任感・やりがいが生まれる(2)仕事に対するモチベ-ションのアップにつながる(3)職場外での安定した家庭生活は健康につながる(4)職場への定着率が高まる(5)優秀な人材の獲得につながる(6)社員が幸せになることで会社の業績アップに繋がる(7)結婚生活を通じて思いやりの気持ちを持つことによりチームワークを重んじるようになる、などプラス効果が大きいと思われる。
少子化の背景には、未婚化だけでなく晩婚化もあると言われるが、一日の多くを過ごす会社の中での男女の出会いの場を増やすことは、会社とそこで働く社員双方にメリットも多い。法制度面からも私生活に余り立ち入らない、また立ち入ることが出来ないような風潮が広まったが、もともと職場は、「男女の出会いの場」であった。国立社会保障・人口問題研究所の『第14回出生動向基本調査』 によると、「なぜ結婚しないのか」の問いに対して、25歳~34歳の男性で46.2%、女性で51.3%と、男女共に「適当な相手にめぐり会わない」点を挙げる人が多い。職場以外での出会いの場を増やす必要性もあるが、「灯台下暗し」という言葉もあるように、身近なところで理想の相手が見つかるように、職場の中で「おせっかい屋」さんを増やすことも大事なのではないか。 |
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