【ろうどうコラム】男女が共に働きやすい社会への実現
H27.5.15 男女が共に働きやすい社会への実現 |
労働委員会 労働者委員 国分 しのぶ |
ある日、高校2年生の姪から、学校の課題で書いた作文を聞いてほしいとの相談があった。「世界における女性たちの生き方」というテーマで、働く女性の立場で意見がほしいとのことであった。 『母親は専業主婦、母親が家にいることにとても感謝している。しかし少子高齢化、人口減少の課題を抱える日本は、女性の労働力は確実に必要になっていて、経済発展には女性の働きやすい環境づくり、男女関係なく協力し合うという社会実現が必要だと思う。特に男性の積極的な家事育児への参加が大切。育児環境が充実しているスウェーデンは、男性の育児休暇取得率が非常に高く出生率も高い。日本も育児休暇制度の充実、更には制度利用のしやすい環境整備が必要不可欠なのではないか。今後更に社会で活躍する女性は増えていくだろう。その中で女性が働き続けることに対する課題も多くあると思う。課題を克服し、男女が共に働きやすい社会となることを願いたい。』 そんなことが書かれていた。学校の課題とはいえ、彼女なりに先進国の女性が働く環境や、日本の企業における次世代育成の取り組み、また子育てサポート企業を厚生労働大臣が認定する「くるみん認定」についても調べていたようだ。「働く女性の立場で意見がほしい」と相談されたことがとても嬉しく、また、このようなことを調べ考えていることに、私自身も刺激になった。 私たち女性労働者が、生活のため、目標・実現のため、また育児や介護をしながらも働くことができているのも、男女雇用機会均等法があるからと思っている。1985年の制定から30年が経つ(※)。「女性差別撤廃」から、1997年改正の「男女の均等な機会及び処遇の確保」、2007年改正の「男女双方に対する差別や間接差別の禁止強化」と、女性差別禁止から始まった制度が、妊娠・出産に関する権利が拡充されたことや、セクシュアルハラスメントに関する雇用管理上の義務が事業主に課されたこと等のほか、性差別禁止法への内容と変革している。 女性が働く環境整備はされたとはいえ、まだ世の中には、採用・昇進差別、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱、セクシュアルハラスメントに関する問題が少なくはない。女性の就労環境は、多くの方がパートや派遣など不安定な状況にあることへの課題もある。 最近、身近なところで議論・取り組みをしているテーマは「育児・介護と仕事の両立」だ。制度はある程度充実してきたものの、その制度を利用しにくい環境にあることが課題である。特に男性の、育児・介護制度の取得率が低い=女性が働き続け難い環境にあると思っている。ある男性に育児休職制度利用の意志を確認すると「できれば取得したい。ただ仕事のことを考えると実際は無理」との応えであった。どうしたら取得できるかと聞くと『働き方の改革、長時間労働の改善』であった。ある女性は3人のお子さんがいて、育児しながら製品開発の仕事をしている。夫はある会社の管理職で、子供や自分が寝る頃に帰ってくるという。彼女も決して早い帰宅ではない。『夫が少しでも早く家に帰ってきてもらえたら』と彼女は言う。 さまざまな問題や課題があり、それらを解決していくことが、姪が願う男女が共に働きやすい社会の実現につながるのだろう。私たち勤労世代が、課題に向き合い考え解決していくことに加え、学生の時に「働く実情」や「働きやすい社会」ということについて、考えることも大切なのだろうと感じた。 ※ 1972年(昭和47年)に「勤労婦人福祉法」として公布・施行されたが、1985年(昭和60年)に改正され、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」となり、翌年施行された。 |