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個別Q&A13-(2)セクシュアルハラスメントと雇用管理上の配慮

印刷用ページを表示する 掲載日:2024年9月25日更新
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セクシュアルハラスメントと雇用管理上の配慮

質問

 会社の上司からセクシュアルハラスメントを受けたため、社長に相談しましたが、何も対応してもらえませんでした。
 会社には、このような場合に対応策を講じる義務はないのでしょうか。

答え

 会社には、職場で生じたセクシュアルハラスメント問題について適切に対応し措置を講ずる義務があります。

解説

1.セクシュアルハラスメント(以下「セクハラ」という。)とは

(1)定義 

 セクハラとは、厚生労働省の「職場におけるハラスメント対策マニュアル」によると、「職場において行われる、労働者の意に反する性的な言動に対する対応によって、労働条件について不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されること」とされています。  

 

「職場」とは

 労働者が業務を遂行する場所を指しますが、通常就業している場所以外にも、労働者が業務を遂行する場所であれば職場に含まれます。勤務時間外の宴会、懇親の場などであっても、参加がほぼ義務であるなど、実質上職務の延長と考えられるものは職場に該当します。

「労働者」とは

 正規労働者、パートタイム労働者、契約社員など、事業主が雇用する労働者のすべてをいいます。また、派遣労働者については、派遣先事業主も、自ら雇用する労働者と同様に措置を講ずる必要があります。

「性的な言動」とは

 性的な内容の発言および性的な行動を指します。事業主、上司、同僚に限らず、取引先、顧客、患者、学校における生徒などもセクハラの行為者になり得るものであり、女性労働者が女性労働者に対して行う場合や、男性労働者が男性労働者に対して行う場合についても含まれます。

 

(2)セクハラの類型

ア 対価型セクハラ

 労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、当該労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けること。

 (具体例)

  ・事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、その労働者を解雇すること。

  ・出張中の車中において上司が労働者の腰、胸などに触ったが、抵抗されたため、その労働者について不利益な配置転換をすること。

  ・営業所内において事業主が日頃から労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、その労働者を降格すること。         

イ 環境型セクハラ

 労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること。

 (具体例)

  ・事務所内において上司が労働者の腰、胸などに度々触ったため、その労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること。

  ・同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、その労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと。

  ・事務所内に性的なポスターを掲示しているため、その労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと。

(3)判断基準

 セクハラの状況は多様であり、判断に当たり個別の状況を斟酌する必要があるとされています。また、「労働者の意に反する性的な言動」や「就業環境を害される」の判断に当たっては、労働者の主観を重視しつつも、一定の客観性が必要とされています。

 

2.事業主の責務

 男女雇用機会均等法では、「事業主は、性的言動問題に対する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者(他の事業主が雇用する労働者及び求職者を含む)に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施など必要な配慮をする・・(略)・・よう努めなければならない」とされています。(男女雇用機会均等法第11条の2第2項)

 また、事業主(法人にあっては、その役員)自らも、性的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならないとされます。(男女雇用機会均等法第11条の2第3項)

 加えて、職場におけるセクハラを防止するため、事業主は雇用管理上、以下の措置を講じなければいけません。(男女雇用機会均等法第11条)

 

<事業主が講ずべき措置>

(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

  ア 職場におけるセクハラの内容及び職場におけるセクハラがあってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること

  イ セクハラの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処内容を就業規則等の文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること

(2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

  ア 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること

  イ 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること、また、広く相談に対応すること

(3)職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

  ア 事実関係を迅速かつ正確に確認すること

  イ 事実確認ができた場合は、速やかに被害者に対応する配慮のための措置を適正に行うこと

  ウ 事実確認ができた場合は、行為者に対する措置を適正に行うこと

  エ 再発防止に向けた措置を講ずること

(4)上記と併せて講ずべき措置

  ア 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること

  イ 相談をしたこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として、不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知、啓発すること

 

 事業主が、職場のセクハラ問題について適切な防止対策や相談対応等を行わなかった場合には、被害者である労働者から民法上の責任を問われる可能性があります。

 

3.労働者の責務

 男女雇用機会均等法では、労働者も、「性的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主が講じる措置に協力するよう努めなければならない」とされています。(男女雇用機会均等法第11条の2第4項)

判例

〇福岡セクシュアルハラスメント(丙企画)事件(福岡地判平成4.4.16 労判607号)
〇仙台セクハラ(自動車販売会社)事件)仙台地判平成13.3.26 労判808号)

 

 

 

 

 

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