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【ろうどうコラム】「働き方を見つめ直す」

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年5月7日更新

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R2.5.7  「働き方を見つめ直す」

労働委員会 労働者委員 遠藤 和也     

 「24時間働けますか~,戦えますか~」というCMキャッチコピーを覚えているでしょうか。平成が幕を開けた年の流行語にも選ばれた言葉で,当時は,日本人の働き方が絶頂の経済状況を後ろ盾に,誇らしげに語られる熱狂の中であったと記憶しています。“企業戦士”という言葉に情熱や矜持も残っていた時代であったとも言われましたが,その後,時を経る間もなく株価や地価のバブルが崩壊し日本経済は長期にわたる苦難の時代へと突入していきました。バブル崩壊によって企業倒産は相次ぎ,解雇や労働者の所得の伸びの鈍化,正規雇用の減少と非正規雇用の増大等,労働分野にとっても大変厳しい時代が続きました。

 その後,時が経過し「平成」から「令和」へと元号が変わり,新時代が幕を開けました。令和の時代がどのような時代になるかは今後の動向を見守りたいと思いますが,改元からの約1年が経過する中で,私たちにとって大きな転換点を迎えたひとつに,平成30年6月に可決した「働き方改革関連法」が昨年4月から順次施行されたことが挙げられます。労基法制70年ぶりの大改正と言われ,その改正内容は過労死・過労自殺につながるような長時間労働の是正を目的とした時間外労働の上限規制や,正社員中心の雇用システムを背景とした正規・非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を禁止するための同一労働同一賃金の導入等が挙げられます。

 先日,上限規制が始まった時間外労働について,主要企業110社に対するマスコミ調査の結果が公表されましたが,45%にあたる49社が前年に比べ時間外労働が変わらなかったり増えたりしたという実態が判明しました。業務削減や効率化に取り組むものの,時間外労働削減等の働き方の見直しがまだまだ進んでいない現状にあるということをあらためて認識しました。令和2年度からは中小企業へも上限規制が適用されることになります。時間外の上限規制ばかりでなく,年次有給休暇の取得義務化や同一労働同一賃金の導入を含めて,労基法制大改正の目的を確りと認識したうえで,今後も実効ある取り組みを進めていく必要があると考えます。

 平成27年に大手広告代理店の新入社員が,長時間労働が原因で自ら命を絶ってしまうという痛ましい事件が起こったことを今でも鮮明に覚えています。自らの命,あるいは家族を苦しめてまで働くことが容認されるような社会であってはならないはずであり,今回の働き方改革関連法の施行が,そうした社会システムに日本が突き進まないための歯止めとなるべく,労使がそれぞれの立場からその役割を発揮しなければなりません。

 私の幼少期,実家の両親は共働きで毎日朝早くから夜遅くまで仕事をしていたことを覚えています。残業規制があるのかどうかも分からない自分にとっては,それが当たり前で仕事をして給料をもらうということはそういうものだと思い込んでいましたが,今の時代は仕事時間と生活時間のオンとオフをしっかりと棲み分けて,誰もがいきいきと働き過ごすことができる日本社会の構築が求められていると思います。あらためて私たちの働き方を見つめ直す,今がまさにその時ではないでしょう。

 最後に余談ですが,原稿を書いている今この時,世間は新型コロナウイルス感染症の問題でもちきりです。国内外の経済活動に大きな打撃を与えているほか,私たちの雇用や日常生活にも大変な影響を及ぼしている現状は,出口の見えない長いトンネルに迷い込んでしまった感じがします。さらに,東京オリンピック・パラリンピックの開催延期が決定するなど,現時点で事態の収束を見通すことは困難ですが,この原稿がコラムに掲載される頃には,事態の収束に向けた道筋が何かしら示されていることを心から願うばかりです。

 

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