福島県労働委員会会長に選任されました槇裕康です。
平成28年6月に福島県労働委員会の公益委員に選任されて以来、8年間、不当労働行為救済申立事件や個別的労使関係調整事件等の労働委員会の業務に携わらせていただいてきましたが、この度、会長の重責を担うことになり、改めて身の引き締まる思いであります。
さて、私は、普段は弁護士の仕事をしております。20年以上弁護士として活動してきた中で、これまでは声を上げることができなかったハラスメントに関する被害救済や未払残業代の支払請求などの相談が徐々に増えてきており、労働者の方々の権利意識が向上してきていることを肌で感じております。
かかる労働者側の権利意識の向上については、使用者側からすると、これまでは問題とならなかったようなことが労使問題とされるようになったものであり、単なる経営上の支障として捉える向きもあるかもしれません。
しかしながら、厚生労働省による10年ほど前の調査ではありますが、「従業員と顧客満足度の両方を重視する企業」は、「顧客満足度のみを重視する企業」と比べ、業績が向上し、人材確保ができているという結果が出されております。
この調査結果は、使用者において、労働者の権利意識の高まりを、単に迷惑なものと捉えるのではなく、自社の業績を高めるためのきっかけであると前向きに捉え、従業員満足度の向上に取り組むことが、結果として業績の向上及び人材確保に繋がるということを表すものであります。
よって、これからの労使関係は、労使双方ともに、労働法の知識に基づき、労使それぞれの権利・義務を理解し、互いに尊重し、十分な話し合いの場を設けることによって、健全に発展していくものと考えるべきであります。
しかし、労使間において、相互の尊重の欠如により、十分な話し合いがなされず、民事訴訟や労働審判といった法的手続に発展する事案が多く見られることも事実でありますところ、法的紛争の解決には相当の時間、労力、費用を要する場合が多く、労使双方にとって大きな負担となります。
福島県労働委員会では、労使紛争に関し、不当労働行為の審査、労働争議の調整及び個別労使紛争のあっせんにより、迅速かつ適切妥当な解決を図ることを目指しており、通常は、上記の法的手続に比して労使の負担が軽いものとなっております。また、公益委員、労働者委員、使用者委員の三者による対応がなされるものであり、この点は、他の紛争解決機関にない特色です。
さらには、労働困りごと相談会、ワークルール出前講座、ハラスメント防止出前講座などを通じて、労働関係法令の周知、啓発や労働紛争の未然防止にも努めております。
今後は、福島県労働委員会の会長として、紛争解決や労働関係法令の周知・啓発等の各種業務について、誠実に取り組み、福島県における労働環境の向上と健全な労使関係の発展に尽力したいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
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