【2013年4月22日(月曜日)】 Vol107
目次
- 日々の思い
県教育委員会教育長 杉 昭重(すぎ あきしげ) - リレーエッセイ
県教育委員会委員 高橋 金一(たかはし きんいち) - お薦めの一冊コーナー
- 学校自慢コーナー
- 小野町立夏井第一小学校
- 川内村立川内中学校
- 福島県立大沼高等学校
- 福島県立石川養護学校小学部
- お知らせ
- 編集後記
日々の思
「こころ豊かでたくましい人」に・・・
県教育委員会教育長 杉 昭重(すぎ あきしげ)
教育長として2年目に入りました。今年度は、福島の子どもたちの未来と幸せのために、 震災・原発事故からの復興・再生を実行・加速させて参ります。
「夢・希望・笑顔に満ちた“新生ふくしま”」を基本目標に掲げた福島県総合計画「ふくしま新生プラン」では、教育の視点、目指す将来の姿として、「子どもたちが互いに協働し社会に貢献しながら自立して人生を切り拓いていく、創造力にあふれた“こころ 豊かでたくましい人”に育っています。」としました。
これを踏まえ、第6次福島県総合教育計画では、「“ふくしまの和”で奏でるこころ豊かなたくましい人づくり」を基本理念とし、この理念に基づき、3つの基本目標と、大きく20の施策を掲げました。これにより未来を担う子どもたちが、将来への希望や生きる喜びを 実感できるよう、福島の復興・再生に向けた「ふくしまならではの教育」を推進してまいります。
“こころ豊か”には、震災を経験して改めて気づかされた、命の大切さや思いやり、絆、 協力などが含まれます。“たくましい人”には、知・徳・体がバランスよく育まれていることや、 社会に貢献しながら自立して人生を切り拓いていける人などが含まれます。子どもたちが、 こころ豊かでたくましい人に育っていけるように、学校・家庭・地域が一体となってのご協力よろしくお願いいたします。
子どもたちには、こころ豊かでたくましい人になってほしいと書きましたが、では、 先生方にはどうでしょうか。3月22日の県議会総括審査会で「教育長の目指す優秀な教師像とはどのようなものか。」という再質問がありました。予期していなかった質問に、 いい授業をする先生、情熱にあふれた先生、生徒思いの先生など、いろいろと理想の教師像が頭の中を巡りましたが、「私も含め、教師は子どもが好きで教師になっています。 その子どもたちのために本県の先生方はがんばっています。私の目指す教師は、 子どもたちのために、全身全霊、一生懸命にがんばる教師です。」と答弁しました。 子どもへの愛情にあふれたとか、指導力に優れたなど、一切のものを、この「一生懸命にがんばる教師」に込めました。一生懸命にがんばっている先生は、必ずや子どもたちを、 こころ豊かでたくましい人に導いてくれると信じています。
最後に、ご家族、保護者の皆さんに対してですが、4月下旬には多くの学校で、 PTA総会が行われます。その折には、「子どもの教育上、保護者としてどうあればいいのでしょうか?という質問を受けます。特にこうしてくださいということはありません。 しいていうなら、ご家族仲良くしてください。決してお子さんの前で喧嘩をしないでください。 できれば、弁当は作って持たせてください。」とお願いをしておりました。
リレーエッセイ
「新年度を迎えて」
県教育委員会委員 高橋 金一(たかはし きんいち)
先頃、福島県における裁判員裁判において、初めて死刑判決が下されました。 関わられた裁判員の方々は、非常に重大な決断を迫られたことと推察します。
この事件では、被告人らは当初より犯行を認めておりました。
私の職業は弁護士なので、こういう事件が起きたときに聞かれるのは、「悪いことをしたと本人も認めていて、無罪を主張している訳でもないのに、なぜ弁護人が付くのか。」ということです。
それに対しては、被疑者・被告人に、専門家の助力を得て、自分の自由や権利を 防御させて、適正な裁判が行われるようにするためだというのが教科書的な答えでしょう。
そうすると次にこういう質問が来ます。
「でも有罪を認めているんだから、弁護人が付こうが付くまいが結論は同じじゃない のか。」という、反論のような、質問のような疑問です。
これに対しては、「有罪だからと言って結論が決まるわけではありません。殺人罪でも、 刑法は、人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処すると定めているのだから、どういう量刑をするかについて、つまり情状について弁護人が被告人の人権保障のために活動する必要があるのです。」ということになるでしょう。 すると、「オウム真理教事件の教祖のように、何人も死傷させた首謀者は、誰が 見ても死刑なのだから、情状弁護によって量刑が動くことはないのではないですか。」 という反論が来ます。
もっともあの事件では有罪そのものを争っていたので、この反論が適切かどうかは、 この際、脇に置いておきますが…それでも、何人も殺して死刑間違いなしの場合に、 弁護人が付こうが付くまいが同じではないかというのは素朴な疑問として、誠に当然だと思います。
さて、ここまで来ると、ひと言で一般の方が納得するように説明をすることが難しくなってきます。勿論きちんとした理論的な裏付けはあります。被告人は無罪の推定があるのだから、いくら有罪であることを認めていたとしても、証拠調べの結果、事実が認められなければ、有罪にはできない。だから、きちんとした証拠調べが行われるか どうか、弁護人が監視する必要があり、刑事裁判手続が適正に行われていることを 保障するために、弁護人はなくてはならない存在なのです、という辺りが一応の答えになります。
ただ、こういうことですべての方々、子どもたちも含めてなるほどという納得が得られるでしょうか。頭では何となくわかったとしても、わかったという実感が得られないのではないでしょうか。更に、こうした制度が何故できてきたのかというような歴史的な裏付けまで遡って説明しないと、なるほどわかったという共感を得ることは難しいと思います。
このように有罪であることを本人も認めて、有罪の判決が下されるのが分かっている場合でも弁護人が付くのはどうして?という質問に対して、私は次のように答えることにしています。
「このテーブルの上に茶筒があります。これを正面から見ると、どう見えますか。」という問いかけをします。すると、答えは、「長方形」ということになります。たまに、子どもさんの前で話しているとき、茶筒だから円筒形という突っ込みが入ったりしますが、その時は、真横から光を当てた時、その影はどういう形ですかと応じます。すると、長方形という答えが返ってきます。
「では、これを上から見たらどうでしょう。」と次の質問。すると、100%「円」という答えが 返ってきます。そこで、次のように説明します。
「このように二つの方向から見て初めて、この物体が円筒形だということが分かるのです。 捜査機関及び検察官は、被疑者・被告人をこいつは悪いやつだという方向からしか見ていません。つまり、長方形にしか見えない方向からしか話しをしません。そこで、円形にも 見えるんだという見方を弁護人が提示する必要があるのです。そして、初めて物事の実体に近づくことができるのです。そうして、初めて正しい判断ができるのです。」と。
この話しを聞いた方は、なるほどと納得してくれます。中学生も、高校生もああそうか、と言ってくれました。小学生の前ではやったことがないのですが…
4月から新学期が始まり、沢山の新しい先生方が教壇に立たれることと思います。教員を 目指して勉強してきた中で、指導法について様々な知識を身につけておられることと思います。しかしながら、指導を受けるのは生身の人間です。教科書、参考書に書いてあることが、すべてそのまま通用すると言うことはありません。実践の中で、様々な試行錯誤を 繰り返しながら、日々研鑽し、よりよい指導方法を見出し、福島県の子どもたちが健やかな成長を遂げることができるよう、先生方に頑張って頂きたいと思います。特に、汚染水漏れという新たな問題が出てきて、一向に収束したとは言えない原発事故の影響下の福島県において教員を志して下さった、若き先生方に、一教育委員として期待しています。
お薦めの一冊コーナー
このコーナーでは、福島県立図書館司書のお薦めの一冊を御紹介します。
おすすめの一冊 『学び続ける力』池上 彰/著 講談社(講談社現代新書)
ニュース解説に定評のある池上彰さんの知識はどのように培われたのか、どうしてわかりやすく 伝えることができるのか。それは、“学び続ける力”に理由があるのではないでしょうか。池上さん自身の学習方法を伝授しながら、学ぶことの楽しさを思い出させてくれる1冊です。(県立図書館司書 S.S)
県立図書館024-535-3218
http://www.library.fks.ed.jp/
学校自慢コーナ
このコーナーでは、各学校の特色ある取組を御紹介します。詳しい内容を県教育委員会のホームページで紹介していますので、御覧ください。
『合い言葉は「努力のあとの笑顔」』
小野町立夏井第一小学校
本校の全校児童57名は、美しい自然、温かい地域の方々に見守られながら、『なかよく』 『つよく』『いっしょうけんめい』そして、『努力のあとの笑顔』を合い言葉に、楽しく、元気に学校生活を送っています。
小野町立夏井第一小学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
小野町立夏井第一小学校のホームページへ
『デジタルツールを活かして、学びを深める子どもの育成』
川内村立川内中学校
公益財団法人福島県学術教育振興財団の研究助成により、iPad、電子黒板、 インターネットなどのデジタルツール(ICT機器)を生徒の学習に生かせるよう研究を 進めてきました。
川内村立川内中学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
川内村立川内中学校のホームページへ
『可能性を発見し、伸ばす学校!』
福島県立大沼高等学校
本校は、会津盆地の南西に位置する1学年3クラスの小規模校です。しかし、普通科の高校らしく、国公立大学や短大をはじめ、看護系の大学や専門学校への進学が多く、また、 部活動も盛んです。それは、誰もが持っている可能性を教員も生徒自身も信じているからです。
その象徴的な存在が、ここ数年で全国区となった演劇部です。他にも、レスリング部、 陸上競技部が東北大会、全国大会に出場しており、男子バレーボール部は会津地区1位、 県大会3位の活躍を見せています。
福島県立大沼高等学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
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『地域とともに育つ学校づくり 小学校、高齢者との交流』
福島県立石川養護学校小学部
小学部では、地域の小学校(石川小学校、沢田小学校)や石川町の高齢者(長寿会)との交流及び共同学習に取り組んでいます。小学校へは、事前にゲストティーチャーとして、本校から2名の教員が出向き、特別支援学校の授業や児童の様子を紹介することで、児童の「障がい」について、小学校の児童や先生方との共通理解を図ってから実施しています。
福島県立石川養護学校小学部の学校自慢のページへ[PDFファイル]
福島県立石川養護学校小学部のホームページへ
お知らせ
今年度は月曜日から新しい年度がスタートしました。朝の通学路には、希望をカバンいっぱいに詰め込んだ新入生の姿が見られます。
この一年が先生方にとって実り多い一年であることをお祈りいたします。
ここからは4月のお知らせコーナーです。
第6次福島県総合教育計画平成25年度アクションプランについて
本県では、「“ふくしまの和”で奏でる、こころ豊かなたくましい人づくり」を基本理念として、 その実現に向けた教育施策を総合的・計画的に推進するための指針である第6次福島県 総合教育計画を平成22年3月に策定し、各種施策を展開してきました。
平成24年度には、引き続き東日本大震災・原子力災害からの復興・再生に向けて盛り込むべき施策や平成24年12月に改定された福島県総合計画「ふくしま新生プラン」等への対応を図りつつ、第6次福島県総合教育計画を改定いたしました。
そこで、これまでの各種施策の成果を踏まえながら、本年度重視する観点及び施策ごとに実施する事業等を体系的に示す「平成25年度アクションプラン」を策定いたしました。
これに基づき、未来を担う子どもたちが将来への希望や生きる喜びを実感できるよう、 ふくしまの再生に向けたふくしまならではの教育を推進してまいります。
平成25年度アクションプランの詳細は、下記のホームページ御覧ください。
県立美術館からのお知らせ
横尾忠則ポスター展 2013年4月20日(土曜日)から6月16日(日曜日)
横尾忠則(1936年、兵庫県生まれ)は、第一線で活躍するグラフィック・デザイナー、美術家です。織物の町、兵庫県西脇市に生まれ育った横尾は、高校生時代からポスターを作り始め、 地元で注目を集めていました。しかし本格的にデザイナーの道を歩み始めるのは、1960年に上京してからです。舞踏家・土方巽、劇団状況劇場の唐十郎、天井桟敷の寺山修司、 そして作家・三島由紀夫などとの出会いから生まれた、独特なイラストとデザイン感覚にあふれるポスターは、たちまち若い世代の支持を集め、大衆文化を代表する寵児となりました。
その後、デザイナーとしての仕事は、ポスターからイラストレーション、ブックデザインなどさまざまな印刷メディアへと展開し、さらに絵画や版画、映画といった芸術分野にまで広がっていきました。マルチな才能は留まるところを知りません。
今回の展覧会では、このように広範囲にわたる横尾忠則の仕事の中でも、出発点として常に彼の創作活動の中心にあったポスターに焦点をあてます。1950年代の初期作品から最新作ポスター、原画や色指定紙等の資料も含め約400点を展示し、その原点と全体像を 御覧いただきます。
県立美術館 024-531-5511
http://www.art-museum.fks.ed.jp/
県立博物館からのお知らせ
平成25年NHK大河ドラマ特別展「八重の桜」(福島展:5月17日から7月3日)の開催にあたり、
事前の周知事業の一環として、新島八重の生涯を知るための写真パネルおよびゆかりの資料を展示します。
現在展示している資料
同志社女子大学生活科学部人間生活学科・清水久美子教授のゼミ生のみなさんが写真に基づき細部まで忠実に再現したものです。福島県特産の「川俣シルク」を使用しています。
期 間: 開催中~平成25年5月6日(月曜日)
会 場 : 福島県立博物館 企画展示室
観覧料: 常設展料金で御覧になれます。
県立博物館 0242-28-6000
http://www.general-museum.fks.ed.jp/
福島県文化財センター白河館「まほろん」からのお知らせ
『特別企画展』文化財復興展 「救出された双葉郡の文化財1」
東日本大震災で被災し、原発事故の影響により警戒区域に取り残された浜通り地方の双葉町、大熊町、富岡町の各資料館から、文化財レスキューにより救出した考古資料、 民俗資料、古文書などの歴史資料を展示・公開します。
是非、御観覧ください。
期間:開催中~平成25年6月9日(日曜日)(好評開催中!)
「ゴールデンウィークまほろんまつり」を開催します。
期間:平成25年5月3日(金曜日)から5月6日(月曜日)
内容:
- 「火おこし」
- 「弓矢」体験
- 収蔵庫を探検する「バックヤードツアー」
- 「紙かぶとづくり」
- 「むかしのおかしづくり」 など
まほろん 0248-21-0700
http://www.mahoron.fks.ed.jp/
編集後記
1月より始まったNHKの大河ドラマを毎週拝見しています。幕末を描く作品は多くありますが、 薩長側、新政府側を描いたものか、幕府側だと新撰組や白虎隊などが戦争に敗れるところまでを描いたものが多いように思います。今回の「八重の桜」は、明治維新の流れに飲まれ ながらも、明治以降の日本を支えた人々に焦点を当てるもので、明治以降がどう描かれるのかも楽しみにしています。もっとも、会津戦争以降は福島のシーンが減るのではないかと思うと少々 寂しい気持ちもありますが。
さて、県立博物館では、5月17日よりNHK大河ドラマ特別展「八重の桜」を開催いたします が、現在、それに先立ち、新島八重の生涯を知っていただくため、ゆかりの資料などを企画展示室にて展示しています。ゴールデンウィーク終了までの開催ですので、ぜひ足を お運びください。
教育総務課長 森下 平(もりした たいら)
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