【2013年6月20日(木曜日)】 Vol109
目次
- 日々の思い
教育庁教育次長 田代 公啓(たしろ まさあき) - リレーエッセイ
県教育委員会委員 佐藤 有史(さとう ゆうし) - お薦めの一冊コーナー
- 学校自慢コーナー
- 会津若松市立河東学園小学校
- 大玉村立大玉中学校
- 福島県立いわき海星高等学校
- お知らせ
- 編集後記
日々の思い
「求められる教師像」
教育庁教育次長 田代 公啓(たしろ まさあき)
本年4月に教育次長(業務担当)に就任いたしました田代公啓です。
杉教育長は、本県が復興・再生の道のりを歩んでいくために最も重要なのは「人づくり」であると常々申しています。「人づくり」=教育は、いつの時代にあっても人間が人間らしく生きていくためには不可欠のものですが、東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第一原子力発電所事故の厳しい状況下にある本県にとっては、特に重要なことであると多くの方が考えていることと思います。したがって、未来を担う子どもたちを教え導き、その成長を支える教員に対する県民の期待はこれまで以上に大きくなっているものと思います。その期待に応えるためにも我々教員はより一層の研鑽を積み重ねていかなければなりません。
本県では、教員採用に当たって「求める教師像」を次のように示しています。
◇ 子どもに対する教育的愛情と教育に対する情熱、使命感を持って学び続ける教師
◇ 教えるプロとしての深い専門性や幅広い教養を持ち、実践的指導力のある教師
◇ 社会人として心身共に健康で高い倫理観と自律心を持ち、個性豊かで人間的な魅力あふれる教師
求められる教師像は、時代の進展とともに変化してきていると思います。経済大国となって豊かになった日本は教育水準も高くなりましたが、地域社会の崩壊、多様化した子どもや保護者等、教育現場の課題は以前よりも増えています。そして千年に一度の未曾有の大震災の中で、大人も夢を語ることはなかなか難しい状態です。変化の激しい社会の中で、どのような状況にあっても、自らの進むべき道をしっかりと考えることができる人間を育てるためには、高い人間性を兼ね備えた教師が求められます。
埼玉県の小学校長をされていた春山教子氏が、数年前ある雑誌に「教師の品格」について、ブラジルの精神科医であるアウグスト・クリの著書「素晴らしい親 魅力的な教師」の中から『晴天ばかりでなく雨の日も喜ぶ人になりなさい。雨が降れば耕すことができる』という言葉を引用し、苦難や逆境からも多くのことを学び、「教師は理想や生きていく心構え」を子どもたちに教えることが
できると述べています。そして、教師として逆にしてはならないこととして、「1 みんなの前で叱る 2 権力を振りかざす 3 口やかましく言う、子ども時代を奪う 4 怒りにまかせて罰する、説明なしに制限を設ける 5 見放してしまい、教え諭すことをあきらめる 6 約束を守らない 7 夢と希望を壊す」の7点を挙げています。
科学技術の発展、情報化、国際化、経済のグローバル化、少子高齢社会の到来、そして大震災など、子どもを取り巻く社会環境が急激に変化し、価値観の多様化、人間関係の希薄化や社会におけるモラルの低下等が問われる中、私たち教員には、教職にある者として常に謙虚に学ぶ姿勢をもって生きることや、子どもたちに生き方を語ることのできる教師としてのあるべき姿が求められています。
私自身も、自戒の念を込めてこのことをしっかりと認識し、微力ながら教育長を補佐し、本県教育の復興・再生に取り組んでまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。
リレーエッセイ
「価値観の確立」
県教育委員会委員 佐藤 有史(さとう ゆうし)
先日、北部ブロック道県教育委員協議会に参加してきた。北海道、新潟県、東北6県の教育委員で構成され、各道県が抱える教育課題について話し合い、情報を交換する場である。また、開催される地域の文化にふれ、見聞を広げる機会でもある。
今年は青森県青森市で開催された。神奈川大学大学院の昆 政明特任教授による「日本海海運と北前船」と題した講演で、北前船の歴史、用途、構造等を当時の資料を交え詳しく話をいただいた。また、実際に復元した「みちのく丸」の実験航行の苦労話など、海洋学も学んでいた私にとっては非常に興味深く拝聴できた。一昨年には青森湾に係留されている「みちのく丸」の中に入り見学したことがあるが、写真で見る、白い帆を全開に広げている北前船の姿は美しく、自然の力を最大限に活用しているそれは躍動感に満ちている。実際に見てみたいものだ。
講演が終わり、すぐさま班別協議となった。そこでは、3題のテーマ「健康教育(健康意識の向上)」、「道徳教育(いじめ問題と家庭・地域と学校の連携)」、「国際社会に対応できる教育のあり方(グローバル化を見据えたコミュニケーション能力の育成・充実)」に分かれ、私は「道徳教育」に参加させてもらった。協議会自体はじめての参加で班別では県の施策の発表もある。だいぶ緊張もしていたし、不安でもあった。しかし、そんなネガティブな考えも吹き飛ぶオファーを座長より受けることになった。福島県は今、大河ドラマ「八重の桜」で会津のことが旬なので、ぜひ、「什の掟」について紹介してほしい
とのことだ。つまり、ありがたいことだが、議論の切り口になってしまった。責任の重大さを考える暇なく、ネットやスマートフォンで資料を集め、そして、知りうる知識を出し、短時間でまとめた。この流れは予測できたこと。もっと準備に時間をかけしっかりとした資料を皆さんに紹介できたらと悔やまれてならない。反省である。
あらためて、「什の掟」をまとめてみる。
一、年長者(としうえのひと)の言うことに背いてはなりませぬ
二、年長者には御辞儀をしなければなりませぬ
三、虚言(うそ)をいふ事はなりませぬ
四、卑怯な振舞をしてはなりませぬ
五、弱い者をいぢめてはなりませぬ
六、戸外で物を食べてはなりませぬ
七、戸外で婦人(おんな)と言葉を交えてはなりませぬ
そして、「ならぬことはならぬものです」と締めくくられている。
現代の通念上からのものとはかけ離れている文言もあるが、当時の藩士の子どもへの教えであり、約束事であった。
日新館は、江戸時代後期に、悪化した藩政の立て直し、改革にはまず人材育成が重要であると教育の振興を目的に設立された藩校である。藩士の子どもは10才になると入学し、文武両道のもと儒学、武術、天文学など高等教育まで行っていたという。また、優秀な生徒は江戸への留学も
許されていた。「八重の桜」に登場する山本覚馬(同志社大学設立者の新島襄の協力者、初代京都市議会議長、第2代京都商工会議所会頭)もその一人だったのだろう。また、「江戸時代の武士学校」として小学校6年生の社会の教科書にも取り上げられている。
(新しい社会6上P99 東京書籍)
什の掟の「什」とは、日新館に入学する前の6才から9才までの子どもの10人前後の集まりであった。掟という約束事を破れば罰があり、仲間の許しがなければならず、子どもたちの話し合いで罰の内容が決められた。許すための見守りもあったに違いない。仲間同士、切磋琢磨し合い、人として、
武士としての自覚を養い、絆を深めたのだろう。特に「ならぬことはならぬものです」は簡単なフレーズだが、奥が深い。「ならぬこと」の定義はひとりひとりの価値観となる。その価値を高め、良識ある判断をし、時には大胆な英断をしなければ人間関係の形態をまとめあげることはできない。これを、低学年の子どもが真のリーダーとしての理念を模索し、思い悩みながらも成長の糧にしていたのだから素晴らしい。
最後に会津若松市の「あいづっこ宣言」を紹介したい。
一、人をいたわります
二、ありがとう ごめんなさいを言います
三、がまんをします
四、卑怯なふるまいをしません
五、会津を誇り年上を敬います
六、夢に向かってがんばります
やってはならぬ やらねばならぬ ならぬことはならぬものです
これは子どもだけではなく、大人への行動規範でもあるという。
お薦めの一冊コーナー
このコーナーでは、福島県立図書館司書のお薦めの一冊を御紹介します。
『カメラが撮らえた会津戊辰戦争』「歴史読本」編集部/編 新人物往来社
おなじみの松平容保や徳川慶喜の写真や、砲撃の爪跡が残る明治7年当時の鶴ヶ城天守東面の写真のほか、白虎隊記念館で所蔵する「白虎隊自刃の図」 (佐野石峰・筆)など、会津戊辰戦争の戦況を伝える豊富な写真・絵図を紹介。
あまり難しくなく読める内容ですので、会津士魂をビジュアルに堪能したい方におすすめの一冊。(県立図書館司書 M.K)
県立図書館024-535-3218
http://www.library.fks.ed.jp/
学校自慢コーナー
このコーナーでは、各学校の特色ある取組を御紹介します。詳しい内容を 県教育委員会のホームページで紹介していますので、御覧ください。
『予防・開発的生徒指導「人間関係づくり」』
会津若松市立河東学園小学校
すべての子どもが、安心して登校し、楽しく学校生活を送ることができるようにするために、様々な人々とのかかわり合いを通して、自分の感情を適切にコントロールしたり表現したりする力、他者の感情を受け止める力を身につけさせ、互いに支え合うことができる「あたたかな集団」をつくることを目指しています。
会津若松市立河東学園小学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
会津若松市立河東学園小学校のホームページへ
『あいさつ日本一を目指す あいさつ運動の取組み』
大玉村立大玉中学校
本校は、秀峰安達太良山の麓、大玉村にある唯一の中学校です。教職員、生徒がともに一緒になって、「 あいさつ日本一を目指そう!」を合い言葉に、4年前より全校で取り組んでいます。
大玉村立大玉中学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
『被災地から元気を!~世界に響け「じゃんがら」の音色』
福島県立いわき海星高等学校
福島県いわき市の伝統芸能「じゃんがら念仏踊り」を継承する本校生徒が、各地で「じゃんがら」を披露。震災後再結成したチーム「じゃんがら」は、半年で18回の披露機会がありました。平成24年度は40回を超える披露があり、平成25年度は、埼玉、東京などで3回披露しています。
今後も頑張って活動しますので応援よろしくお願いします。
福島県立いわき海星高等学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
福島県立いわき海星高等学校のホームページへ
お知らせ
運動会や各種大会など大きな行事を経て、学校・学級にはひとまわり大きく成長した児童生徒の声が響いていることでしょう。夏休みももうすぐです。
さて、ここからは6月のお知らせコーナーです。
教育総務課からのお知らせ
平成25年度「ふくしま子ども宣言」作文コンクール
県教育委員会では、「ふくしま子ども宣言」作文コンクールを実施します。このコンクールは、福島県の子どもたちが作った「ふくしま子ども憲章」の一項目である「社会の一員として人の役に立つ」に着目し、子どもたちが社会の一員として人の役に立つことについて考え、行動することを目的に実施します。
※「ふくしま子ども憲章」は、県内小中学生に「自分が守りたい、大切にしたい、心がけたい」と思っていることを募集し、「子どもたちの、子どもたちによる、子どもたちのための宣言」として決定したものです。
- 応募対象:県内に在住の小学6年生及び震災等により 県外に避難した小学6年生
- 募集期間:平成25年7月1日(月曜日)から8月31日(土曜日)
詳しくはこちらまで http://www.soumu.fks.ed.jp/
健康教育課からのお知らせ
「わたしが作る朝ごはんコンテスト」
「ごはんを主食としたアイディア朝ごはん」をテーマに、県内小学校に在籍する小学生を対象に「わたしが作る朝ごはんコンテスト」 を実施します。
- 応募期間:平成25年7月1日(月曜日)から9月2日(月曜日)
福島県文化財センター白河館「まほろん」からのお知らせ
「カラムシから布をつくろう」参加者募集
カラムシとは、大昔から布などをつくる材料として使われてきた植物です。まほろんでは、毎年、このカラムシを栽培して、その繊維から糸をつむぎ、アンギン(編布)をつくる講座を実施しています。
日時
・1回目 6月29日(土曜日) 10時00分から14時00分
まほろんの“古代の畑”でカラムシを刈り取って、繊維を取り出す“おひき”をします。
・2回目 7月20日(土曜日) 10時00分から14時00分
第1回に取り出した繊維をよって、糸をつくります。
・3回目 8月31日(土曜日) 10時00分から14時00分
つくった糸を使って、アンギン(編布)をつくります。
材料費 500円
募集人数 16名(先着順)
※講座は全3回です。すべてに参加できる方の御応募をお待ちしています。
まほろん 0248-21-0700
http://www.mahoron.fks.ed.jp/
編集後記
本号の学校紹介でじゃんがら念仏踊りをご紹介したいわき海星高校は、甚大な津波被害を受けた学校の一つであり、生徒たちは被災した校舎で一生懸命学校活動を続けています。
先日、プライベートで宮城県の南三陸や石巻を訪れました。恥ずかしながら、他県の津波の被災地を訪ねるのはこれが初めてです。
被害を受けた地域は、がれきこそ片付けられていますが、土台が一部残る更地のようになっており、まだまだ復興へは道半ばという印象です。
一方で、各町の中心部には仮設の商店街が置かれ、地元の産品を買ったり、新鮮な海の幸を食べることができます。私も名物のウニ丼に舌鼓を打ち、地酒を買いあさって来ました。同じように他の地方から来ている人々も多く見られ、活気が感じられました。
地元の方によれば、それでも一時期に比べると観光客は減っているとのこと。訪れて、楽しむだけでもきっと復興の一助となると信じて、また他の地域にも訪れてみようと思います。
教育総務課長 森下 平(もりした たいら)
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