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【2013年10月21日(月曜日)】 Vol113

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年3月26日更新

目次

  • 日々の思い
     教育庁教育次長  田代 公啓(たしろ まさあき)
  • リレーエッセイ
     県教育委員会委員 蜂須賀 禮子(はちすか れいこ)
  • お薦めの一冊コーナー
  • 学校自慢コーナー
    • 福島市立福島第一小学校
    • 南会津郡下郷町立下郷中学校
    • 福島県立保原高等学校 定時制課程
  • お知らせ
  • 編集後記

日々の思い

「教育と信頼」         
県教育庁教育次長 田代 公啓(たしろ まさあき)
 
 教育の根幹を為すものは信頼であり、信頼関係がなければ真の教育は成立しないと言われる。その信頼は、教職員の日々の教育活動によって支えられている。教職員一人一人の地道な活動が子どもたちに評価され、それが子どもたちから保護者へ、さらには地域の人々へ伝わることによって築かれるものであろう。それでは、どのような教員が信頼を培っていくことができるのだろうか。
 まずは、何と言っても授業である。「教員は授業で勝負する」と言われるように、教員の教育活動の核となるものであり、命である。担当する教科・科目についての専門的な知識を駆使し、教える内容について体系的に把握した上で「わかる授業」を実践していなければならない。教員がどんなに素晴らしい話をしても、その教員の日々の授業が子どもたちに興味・関心を呼び起こし、授業内容を理解させて学力を身に付けさせるものとなっていなければ、子どもたちは耳を傾けてくれない。教員としての信頼を勝ち得る第一歩は授業である。
 次に、クラス担任である。クラス担任として子どもたちとより身近に接し、その成長を支えなければならない。そのためには、子どもたちの集団を指導する力と一人一人を生かす力が必要となる。異なる環境に生まれ育ち、価値観も考え方も異なる子どもたちを、集団として一つの方向へ導いていくとともに、子どもたち一人一人に合った指導が求められる。一人の子どもに成功した指導が、他の子どもに当てはまるとは限らない。子どもたちの成長を支えるということは大変厳しい作業であるが、無限の可能性がある。
 さらに、子どもたちに対する教育的愛情である。教育のプロとして「わかる授業」を実践し、クラス担任として子どもたちの成長を支え、子どもたちと良好な教育的関係を築く力が求められる。子どもたちと触れ合うことが苦手では教員は勤まらない。子どもたちと仲良くなるだけのお友達感覚でも困る。あくまでも指導する者と指導される者との立場をわきまえた師弟関係を築く教育的愛情が大切である。
 また、教育公務員特例法には「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。(第21条)」と規定されている。教員はその宿命として、教員である限りはその職を辞するまで、常に学び続けなければならないことを義務づけられている。教員は、使命感を持って研修に精励し、高い専門性と幅広い教養を身につけ、自らを人間的社会的にも成熟させていくことが肝要であり、それが子どもたち、保護者、さらには地域の人々からの信頼に繋がる。

 先達の地道な教育活動によって営々と築かれてきた教育に対する信頼が、ほんの一握りの心ない教員の不祥事によって根底から覆されるような状況に陥っている。教職員の不祥事にはまだまだ歯止めがかかってはいないが、教育に対する信頼は最後の一線でどうにか踏みとどまっている状況である。これも多くの教職員の見返りを求めない、献身的な日々の教育活動の賜と考えている。子どもたちのため、ひいては本県教育の信頼回復のため、自らの使命感のもと日々の教育活動に邁進していただきたい。切なる願いである。

リレーエッセイ

「キンモクセイ」
県教育委員会委員 蜂須賀 禮子(はちすか れいこ)

 夜になると虫の声が聞こえる季節になり、今までの暑さは何だったのだろう。
毎日毎日、「暑い」という言葉を言わない日は無いくらい、声に出していた事を思い出す。日本各地で降る雨は、「これまでに経験をした事のない雨」という報道がテレビから流れる。今の日本はどんな気候になっているのだろうか。
 一人、部屋に居て、ふと目にしたふくしま道徳教育の資料。
「生きぬく・いのち」いのちの文字が目に飛び込んできた。
漢字で表すととても強く感じる。ひらがなで表すとやさしさを感じる。
言葉は、どちらも同じ発音なのに、漢字とひらがなとでは感じ方が違う。
私はひらがなの「いのち」が好きだ。
今、私はこの大切な「いのち」を持っている。
いろいろな力となる「いのち」を。
 東日本大震災の時は、「あ~“いのち”があって良かった。」と思った。
どんなに辛くても「いのち」があれば、何とか生きていける。心からそう思った。
でも、時々このまま生きていても良いのだろうかと思う時がある。
生きるということは、とても辛いと思う時があるからだ。しかし、「いのち」がある限り、生きなければと強く思う。自分一人の「いのち」ではなく、家族や友だちなど、たくさんの人たちに支えられて生かされるているのだから・・・。
 日本には四季がある。春になると色とりどりの花が咲き、夏にはホタルが飛び交い、秋には木々たちが美しい色を競い合い、冬は美しい白雪が舞いおりる。
そんな自然の流れに身を置いた時、いつもこう思う。
生まれた時に「いのち」と共に与えられた運命。
どんなに苦しくても変える事のできない運命もある。
でも苦しい事ばかりではなく、楽しい運命もある。
“運命”この言葉も“命”である。
福島の子供たちばかりが、この“命”の中で生きているわけではないと思う。
すべての子どもたち、私たちが生きている。
 夏の暑い中、子どもたちは汗だくになりながら公園の中でセミを採っていた。
しかしすぐに放した。「どうして 逃がしてしまうの?」
「だって命が短いんだよ」「一度手にとったからもういいんだ。
自然にかえしてあげないとかわいそうだから」と、子供たちから素敵な答えが返ってきた。「そうね」と答えた私。セミはまた桜の木にとまり、「ミーン ミーン」と鳴いている。その声は「ありがとう」ともきこえた。
 子供たちが自然や自分の経験から命の大切さを学ぶこと、また一番身近な親からも「いのち」の大切さを伝えることを忘れてはならないと思う。
 私自身、本当に辛い人生を生きていると思う。しかし、この辛さと共に生きることが私の人生。与えられた命が消えるまで、命を燃やし続けていくことが自分に課せられた運命だと思う。
 こんな生き方をしている私にも自然は秋を届けてくれる。
仮設住宅からでると、どこからともなく薫ってくるキンモクセイの香り。
とても懐かしく心休まる香り。昨年まではこの香りにさえも気づかなかった私。
少し自分の生活に落ち着きを感じ、周りの自然を五感で感じることができるようになった今日、あまい香りに酔っていると「おはようございます!」と元気な中学生のあいさつの声。なんてさわやかな声。
 彼たちの声に元気をもらい、全身に力があふれ、いのちの大切さを思う朝。
私も元気に「おはよう!行ってらっしゃい」。さぁ、今日もがんばろう。

お薦めの一冊コーナー

 このコーナーでは、福島県立図書館司書のお薦めの一冊を御紹介します。

『国史大辞典を予約した人々 百年の星霜を経た本をめぐる物語』 佐滝 剛弘/著 勁草書房 2013

 図書館でも盛んに活用されている、吉川弘文館の『国史大辞典』。その初版は明治41年に刊行されました。当時、高価なこの日本史辞典を、予約購入した人々がいます。文人、学者、華族、書店、学校、そして図書館。一見無味乾燥な『予約者芳名録』を読み解くことで、明治の時代背景や、
書物をめぐる歴史が垣間見えてきます。(県立図書館司書 K.O)

県立図書館024-535-3218
http://www.library.fks.ed.jp/

学校自慢コーナー

 このコーナーでは、各学校の特色ある取組を御紹介します。詳しい内容を県教育委員会のホームページで紹介していますので、御覧ください。   

『共に学び合い、たくましく生きる児童の育成 ~キャリア教育の視点を生かした実践を通して~』

福島市立福島第一小学校

 本校では、よりよい人間関係を築きながら自分のよさに気づき、夢と希望のある生活や将来を作り出そうとする意欲と能力のある児童を育てるために、各教科・総合的な学習の時間・特別活動をキャリア教育の視点から見つめ直し、それぞれの目標との関連を図りながら児童に育てたい能力を明らかにしながら取り組んでいます。
 
  福島市立福島第一小学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]

『「当たり前のことを当たり前にできる」生徒の育成』

南会津郡下郷町立下郷中学校

 下郷中学校は、南東に雄大な那須連峰を望み、町を貫流する大川の清流とその渓谷美など、豊かな自然環境に恵まれた学校です。
 各学年2クラス、特別支援学級1クラスの合計7クラス、全校生156名で、「当たり前のことを当たり前にできる生徒の育成」をスローガンに毎日の授業や生徒会活動、部活動に取り組んでいます。

  南会津郡下郷町立下郷中学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
  南会津郡下郷町立下郷中学校のホームページへ

『challenge ~君の夢 実現~ 』

福島県立保原高等学校 定時制課程

 保原高等学校は、 「飾り気がなくまじめで、心と体が強くてたくましい」という意味の『質実剛健』と「心から打ち解けて、力を合わせる」という意味の『和衷協同』を校訓として、自主独立の精神に満ち、健全な心身と確かな学力を持ち、生きる力を備えた人間の育成を教育目標としています。

 福島県立保原高等学校 定時制課程の学校自慢のページへ[PDFファイル]
 福島県立保原高等学校 定時制課程のホームページへ

お知らせ

 各地から地域のお祭りのニュースが伝わってきます。子どもたちも太鼓や御神輿の重要な担い手として大活躍。伝統を守り受け継ぐ心意気を瞳に秘めた子どもたちの誇らしげな顔がテレビに映し出されていたのが印象的でした。あらためて地域の絆を感じる季節です。
 さて、ここからは10月のお知らせコーナーです。

教育庁教育総務課からのお知らせ

平成25年度「ふくしま教育の日」、「ふくしま教育週間」

 福島県では、11月1日を「ふくしま教育の日」、11月1日から7日までの1週間を「ふくしま教育週間」とし、学校教育、社会教育及び文化の充実と発展を図ることを目指しています。
 この期間、学校や文化施設で様々な行事や催しが実施されます。皆さんそろって御参加ください。
 詳しくはこちらを御覧ください。
   http://www.pref.fks.ed.jp/kyouikunohi/kyouikunohi.htm

「平成25年度教育フォーラム」

 子どもたちが主体的に学び、確かな学力を身につけるためにはどのようなことが必要かを中高生・大学生に発表してもらうことにより、本県の学力向上に資することを目的として開催します。さらに座談会形式をとって、教育委員および教育関係者、県民と双方向的な意見交換をする予定です。
 現在、傍聴者を募集(11月8日締切)していますのでふるって御応募ください。

  日時:平成25年11月19日(火曜日)  13時10分から15時00分
  会場:福島県立会津学鳳高等学校
          (会津若松市一箕町大字八幡字八幡1番地の1)
  テーマ:「学びの意欲 ~ 子どもたちが学びに向かうとき ~」
 詳しくはこちらを御覧ください。
   http://www.pref.fks.ed.jp/foramu/25tirasi.pdf[PDFファイル]

県立博物館からのお知らせ

考古学からの挑戦 ―東北大学考古学研究の軌跡―

 期 間: 開催中~平成25年12月1日(日曜日)
 会 場: 福島県立博物館 企画展示室
 観覧料:一般・大学生500円、高校生300円、小・中学生200円  
  
 長年にわたる東北大学の調査・研究によって蓄積されてきた膨大な資料の多くは現在、東北大学片平キャンパス内にある「文学研究科考古学陳列館」に収蔵、その一部は東北大学総合学術博物館において一般に公開されています。
 今回の企画展では、収蔵されている膨大な資料のなかから、主に東北地方の旧石器時代から古代までを考古学の研究史に登場する著名な遺跡の出土資料を中心に紹介します。また、福島県関連の資料を含め、先学が歩んできた考古学研究の足跡をたどります。  

県立博物館 0242-28-6000
http://www.general-museum.fks.ed.jp/

福島県文化財センター白河館「まほろん」からのお知らせ

収蔵資料展「ダムに沈んだ遺跡たち1 三春ダム内の遺跡」

 期間:開催中~平成25年12月23日(月曜日・祝日)     
 
 大滝根川の中流域、田村郡三春町に所在する三春ダムの建設に関連して調査された、柴原A遺跡などの収蔵資料を紹介します。
 発掘調査では、縄文時代中期後半~後期前半(今から約4,000から3,000年前)の間に位置づけられる複式炉・敷石住居・配石などの遺構が数多く発見されました。
 展示では、これらの石を使ってつくられた遺構に焦点を当て、大滝根川流域で自然と関わりながら暮らした、縄文時代の人々の姿を紹介します。
   
まほろん 0248-21-0700
http://www.mahoron.fks.ed.jp/

編集後記

 本文で紹介したとおり、来月19日に会津学鳳高校にて教育フォーラムを開催します。今年度は、県教委の目下最大の課題である学力の向上について、子どもたちの声を率直に聞いてみたいと考えています。傍聴者も募集しておりますので、是非足をお運びください。
 子どもたちの声と言えば、今号の学校自慢コーナーで掲載した福島市立福島第一小学校の記事を見て、懐かしい気持ちになりました。
 震災により執務室の書棚や机が倒壊した県教委は、約3ヶ月の間、近隣の学校や図書館などに分散しており、教育総務課がお借りしていたのが、県庁向かいの福島一小の特別教室でした。被災状況の把握や原発事故の対応などで疲れた気持ちが、小学生たちの声で癒されたことを昨日のことのように思い出します。
 来月の教育フォーラムもそのような会合になるよう努力したいと思います。
 
教育総務課長 森下 平(もりした たいら)

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