【2016年2月22日(月曜日)】 Vol141
目次
- リレーエッセイ
県教育委員会委員 小野 栄重(おの えいじゅう) - 日々の思い
特別支援教育課長 上妻 弘(あがつま ひろし) - お薦めの一冊コーナー
- 学校自慢コーナー
- 大玉村立大山小学校
- 南会津町立南会津中学校
- 福島県立郡山養護学校
- 福島県立聾学校福島分校
- 福島県立聾学校平分校
- お知らせ
- 編集後記
リレーエッセイ
「先生に見た卓越した指導力」
県教育委員会委員 小野 栄重(おの えいじゅう)
つい先日、平成27年教育・文化関係特別功績者表彰式に立ち会うことができました。
第1部は児童生徒(団体)の部11団体、第2部は優秀教職員の部22名の方々の表彰でした。
第1部の児童・生徒達の活躍のほとんどは、日本一の成績で、圧倒されるとともに、勉強で忙しい合間にいかにしてそのレベルまで到達したのか感心しました。と同時に、表彰を受け取る子どもたちの笑顔がとても自然体だったことに感銘を受けました。
このことは陰で支えている指導者が子どもたちの自主性を尊重し、のびのびと楽しく気持ちを汲み取りながら取り組んでいる成果ではないかという思いが頭をよぎりました。
その思いが奇しくも証明されることになったのが、第2部の優秀教職員の部における先生方の自己紹介と各分野での現在進行形の取組の御説明でした。それは、それぞれ分野は違っても、どれも学校教育にかける強い意志と意欲を述べたすばらしいものでした。
特に興味を持ったのが教職員の方々が様々な研修を通して自己研鑽している事実と、それらを児童生徒はもちろん、先生同士、さらには保護者とも常にコミュニケーションをはかりながら自分自身を高め、その結果、教職員の指導力の向上に繋がっているという事実です。
第1部の子どもたちが、とてつもないすばらしい実績を残すことができたのは、本人たちの努力はもちろん、その能力を遺憾なく引き出し発揮させた先生の指導力の賜物といっても過言ではないでしょう。
東日本大震災と原発事故というこれ以上ない過酷な試練を乗り越えてきた福島の子どもたちに、不可能なことなど何もありません。
この子どもたちの無限の可能性を引き出すのが先生の仕事といっても過言ではありません。しかしそれには先生の子どもたちへの深い愛情と信頼感、そしてそれらを包括した卓越した指導力がなければなし得ないこともまた事実でしょう。
先生には子どもたちが日々成長していく姿をじかに見守ることができるすばらしい環境が準備されています。なんと恵まれたやり甲斐のある仕事でしょう。先生方には常に高みを目指して頑張っていただきたいと思っております。
今、福島の子どもたちは心の様相が大きく変わりつつあります。それは広い意味のハンディキャップからプライドへの変化であります。将来ふるさと福島の復興に係わるような生業を持ちたい、そして自分を育んでくれた福島に恩返しをしたい、と考える子どもたちが増えてきています。
その変化をいかに受け止め、将来の夢を実現できるようにサポートするかは私たち大人の責任でもあります。
その意味では、私たち全ての大人の指導力が問われているのかも知れません。
日々の思い
「出会い、そして絆」
特別支援教育課長 上妻 弘(あがつま ひろし)
昨年9月、日本特殊教育学会の特別講演を聞きに行った。正確には講演者である松田直先生に会いに出かけた。先生との出会いは、もう20年以上も前になる。
ペリーが来港した神奈川県の浦賀に近い久里浜の海岸線沿いに国立特別支援教育総合研究所がある。平成6年度、私は本研究所で長期研修生として一年間、研修漬けの日々を送らせていただいた。
当時、研究所には障がい種ごとにいくつかの研究室が設置されており、各室に専門の研究官が数名ずつ配置されていた。私が希望した配属先は、最も障がいの重い子どもたちを対象とする「重度・重複障害教育研究室」で、私の担当研究官が松田直先生であった。
先生は月曜日から木曜日までは朝9時から夜7時まで1日5組程度、教育相談として直接障がいの重いお子さんとその保護者と関わっていた。金曜日は近隣の特別支援学校や特別支援学級、障がいのある方を収容している成人施設等を訪問し、同様に相談を行っていた。そして私は、すべての相談のビデオ撮影を担当するとともに、途中から直接関わらせていただいた。
その数は、一年間で300名以上に上った。
先生はお子さんと関わるとき、特別に環境を設定することはしない。いつもそこにある道具を使い、訪問した学校や施設にある、普段そのお子さんの指導に使用している道具を使って関わる。
しかし、関わり始めて10分から20分もすると、普段そのお子さんの指導に当たっている職員が見たこともないような自発的で積極的な活動が発現する。その日が初対面のお子さんでも同様である。生き生きと活動している姿を見て、保護者は喜び、担当者は愕然とする光景を数多く見せていただいた。
一年間研修し、私の指導力も少しは向上したかと思ったが、世の中それ程甘くないことを痛感させられた。先生の足下にも及ばない。
9月、久しぶりにお会いすると開口一番、「福島は大変だったと思うけど、よく持ちこたえた。でも、これからが本当の復興、これからが重要だ。」と話された。頭が下がった。「福島のため、お力をお貸しください。」とお願いした。来年度、養護教育センターの専門研修講座の講師をお引き受けいただいた。
私は、つくづく人との出会いに恵まれている。
お薦めの一冊コーナー
このコーナーでは、福島県立図書館司書のお薦めの一冊を御紹介します。
おすすめの一冊 『音とことばのふしぎな世界』 (川原繁人/著 岩波書店 2015)
「あ」と「い」はどちらが「大きい」?「魅力を感じさせる名前」とは?
本書では、私たちが無意識に感じている音のイメージを音声学的に解き明かします。また、未知の言語を記録して研究する手法や刑事ドラマでおなじみの声紋分析の仕組みなども紹介しています。
近年では言葉や声を失った人の福音となる「マイボイス」の開発に関わるなど、実は身近で有用な音声学について興味深く学べる一冊です。
県立図書館024-535-3218
http://www.library.fks.ed.jp/
学校自慢コーナー
このコーナーでは、各学校の特色ある取組を御紹介します。詳しい内容を県教育委員会のホームページで紹介していますので、御覧ください。
『めざせ!夢に向かってがんばる子 ~地域と共に,自らの夢に向かって努力し,未来を拓く子どもの育成~』
大玉村立大山小学校
大玉村では、園庭・校庭をより安心・安全で,年間を通してのびのびと活動できる場とするために芝生化を進めています。本校で今回植えた芝生は「ティフトン芝」と呼ばれる芝で,日本サッカー協会より提供いただき、子どもたちは元気いっぱいに活動しています。
大玉村立大山小学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
大玉村立大山小学校のホームページへ
『体験活動の重視、それは「地域の宝」を活用すること』
南会津町立南会津中学校
教育目標「夢を求めて自ら磨き 思いやりの心でふれあい 仲間とたくましく伸びる」を掲げ南会津中学校は開校3年目を迎えました。
本校では日々の教育活動を推進していくための柱の一つに、「地域の宝(地域資源)」を活用した「体験活動の重視」を位置付けています。
南会津町立南会津中学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
『児童生徒一人一人を 「つなぐ 」 学習(訪問教育) ~学習の広がりにむけたAT機器の活用~ 』
福島県立郡山養護学校
訪問教育を受けている児童生徒の家庭での学習において、それぞれの学習の場で『つながる』ことを目的にパソコンやタブレットを活用した授業を展開しています。
福島県立郡山養護学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
福島県立郡山養護学校のホームページへ
『自立と社会参加に向けて ~社会の中で人と交わり生活していくために必要な力の育成と言語活動の充実を目指して~』
福島県立聾学校福島分校
本校では、キャリア発達の段階に応じた社会性と言語力の育成を目指した取組を行っています。小学部児童会行事の実施に向けた話し合い活動では、6学年の児童が中心となり、相手に伝わる説明の仕方や質問に対する答え方などを工夫しながら、全学年でやりとりをし、みんなが楽しめる「お楽しみ会」を計画・実施することができました。
福島県立聾学校福島分校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
福島県立聾学校福島分校のホームページへ
『子ども「ふるさと福島」魅力発掘プロジェクトに参加して』
福島県立聾学校平分校
本校小学部は福島県の観光交流局観光交流課主催の子ども「ふるさと福島」魅力発掘プロジェクトに参加しました。いわきの魅力を「人のやさしさにふれる旅(バリアフリーの旅 in いわき)」と題した二泊三日の旅プランにまとめ、12月25日に開催されたプレゼン大会において発表しました。
福島県立聾学校平分校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
福島県立聾学校平分校のホームページへ
お知らせ
白梅や ひと日(ひ)南を あこがれぬ 石川啄木
さて、ここからは2月のお知らせコーナーです。
福島県教育委員会からのお知らせ
講師を募集しています!
福島県立学校(高等学校・特別支援学校)、福島県公立小中学校の臨時的任用教員を募集しています。
詳しくはこちらを御覧ください。
教職員採用のページ
県立図書館からのお知らせ
下記のとおり展示を実施します!
- 展示「東日本大震災5年展 ~あのとき そして これから~」
期間:平成28年2月27日(土曜日) から 平成28年4月6日(水曜日)
場所:福島県立図書館 展示コーナー
内容:平成28年3月に東日本大震災から5年となることから、震災を振り返り、忘れずに未来へ伝えていくために、震災記録の写真パネルや「東日本大震災福島県復興ライブラリー」より震災の記録等を展示します。
また、その後の復興に向けた活動を掲載した図書や写真集等を展示紹介し、これからを共に考えます。 - 展示「梶井宮御流福島支部春季華道展」
期間:平成28年3月4日(金曜日) から 平成28年3月6日(日曜日)
場所:福島県立図書館 エントランスホール及びセンターホール
内容:長年、ボランティアとして、当館に生け花による癒しの空間を提供している梶井宮御流福島支部の協力により、生け花約20点を展示し、来館者に春のひととき華やぎの世界をお届けします。
福島県立図書館 資料情報サービス部 024―535―3218
http://www.library.fks.ed.jp/
会津自然の家からのお知らせ
みんな集まれ!クラフトキッズフェア
会津自然の家が提供しているクラフトのプログラムを、一日で数多く体験できます。
開催: 平成28年3月5日(土曜日)10時00分から15時00分
申込: 申込書をFAXで送付
※クラフト申込締切日 平成28年3月3日(木曜日)
※昼食申込締切日 平成28年2月26日(金曜日)
参加対象:幼児、小中学生とその家族
会津自然の家 0242-83-2480
http://www.aizu-nc.fks.ed.jp/
いわき海浜自然の家からのお知らせ
森の音楽会
特別メニューのディナーバイキングと、いわきに縁のある音楽家の生演奏を楽しむことができます。
開催: 平成28年3月6日(日曜日)18時00分から20時00分
いわき海浜自然の家 0246-32-7700
http://www.iwaki-nc.fks.ed.jp/
福島県文化財センター白河館「まほろん」からのお知らせ
収蔵資料展 「縄文土器の年代―その古さを読み解く―」
縄文土器が使用された年代や縄文人の食生活などについて、福島県内の代表的な縄文土器とともにわかりやすく解説します。
期 間:平成28年3月5日(土曜日) から 平成28年5月8日(日曜日)
入館料:無料
まほろん 0248-21-0700
http://www.mahoron.fks.ed.jp/
編集後記
今号のリレーエッセイでは、小野委員から教員の指導力の陰には、自己研鑽や子どもへの深い愛情、信頼感があるとされていました。
私も、日々努力を積み重ねている教員の皆さんから教育への熱い思い、期待を聞くと、とてもうれしい気持ちになります。
行政側の人間として、また頑張ろうとやる気がみなぎるのです。
最近はこんなご意見をいただきました。
「人間のよさをもっと実感できる教育が必要です」「組織的な授業改善で、福島県がひとつになれたらよい」「福島の教育界を、全体として価値付けする存在としてスーパーバイザーを置くのはどうだろうか」
また、学校を視察して、最もうれしくなる瞬間は、教員が児童生徒に向き合い、イキイキと授業をする姿を見るときです。
かつて、「現場の心を我が心とすること、現場の情熱、感動を我が情熱、感動とすること。それは教育行政に携わる一人一人の仕事の本当の意味を再確認すること」だと教えてくれた人がいました。
視察させていただく度、本当にそのとおりだと実感しています。
教育行政の最も大事な本質は教員に係る役割だと信じています。誤解を恐れずに言えば、「学校」というのは、校舎がなくても教科書がなくても教員と子どもがいれば成り立ちます。
言い換えれば、学校において教員は最も必要な存在です。だから教員に係る制度が非常に重視され、明治以来、教員の養成、免許、研修、任用、定数、給与など、教員に係る制度が充実され、定着してきました。
教育行政はこれら諸制度の運用によって、児童生徒の日々の授業の下支えをすることが最も大事な任務です。
いま、福島大学の教職大学院設置に向けて、福島大学と福島県教育委員会が一体となって準備を進めています。これを機に、学校現場ともつながりつつ、未来志向の長期的視座で、教員の養成・採用・研修を有機的に進めることができるダイナミズムを生み出していきたいです。
今の福島だからこそ、教育の本質を見つめ直した取組を大事にしていきたいのです。
教育総務課長 大類 由紀子(おおるい ゆきこ)
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