原子炉底部の温度上昇(温度計故障)に対する申し入れ
平成24年2月3日から、東京電力(株)福島第一原子力発電所2号機原子炉圧力容器底部の温度計が断続的に上昇した事象に対して申し入れを行いました。
事象の概要
平成24年2月4日16時38分、東京電力(株)より、福島第一原子力発電所2号機原子炉圧力容器下部温度計指示値に、2月2日頃より上昇傾向が見られることについて、原子力災害対策特別措置法に基づく通報連絡がありました。
その後も、2号機圧力容器下部温度計は上昇傾向が続いたため、東京電力(株)は適時、2号機原子炉への注水量の変更や再臨界防止対策として原子炉へのホウ酸注入を実施しました。
しかし、原子炉圧力容器下部温度計指示値は上昇し続け、平成24年2月12日14時50分、東京電力(株)より当該温度計指示値が82℃となり、保安規定に定める運転上の制限である「原子炉圧力容器底部温度80℃以下」を満足できないと判断したとの通報がありました。
⇒県が受けた通報連絡一覧について(平成24年2月4日~2月17日)(PDF形式 77KB)
申し入れ(平成24年2月12日)
- 日時 平成24年2月12日
- 概要 保安規定を逸脱したとの通報連絡を受け、小山原子力安全対策課長から東京電力(株)に対して、以下のことについて申し入れを行いました。
- 内容
(1)温度等の炉内の状況を適時適切に把握し、速やかに対策を講じることにより外部への影響が生じないよう全力で取り組むこと。
(2)原子炉底部温度上昇に伴い、今後発生するおそれのあるリスクについて、県民への迅速で分かりやすい情報提供を行うこと。
知事からの申し入れ(平成24年2月13日)
また、平成24年2月13日に行われた福島県災害対策本部員会議において、知事から原子力安全・保安院に対して、下記のとおり申し入れを行いました。
知事申し入れ内容
「先週もお話させていただいて、あの時は、冷温になってきたという話だった。先週から今週、どういうような原因究明をしてきたのか、そして、また、今週、このような状況になっているわけですね。私もいつもお話しているが、この11ヶ月経って県民の皆さんが多少なりとも落ち着いてきている、そういう中でのこのような話は、また不安を抱くような状況となってしまわないかなと思っている。一番は、何が原因であったかということをしっかり開示、説明してもらうことで、今後、保安院の皆さんも中に入って原因究明をし、最高の知見をもって究明し、早くこういうことであったということを知らせていただきたい。」
原子力安全・保安院の対応
原子力安全・保安院では、平成24年2月12日に保安規定を逸脱したとの通報を受け、平成24年2月13日に下記のような見解を発表しました。
見解(抜粋)
- 原子炉全体としては十分に冷却されており、放射性物質の放出量も有意な変化はみられず、原子力安全・保安院としては安全性に問題ないと考えています。
- 原子力安全・保安院としては、引き続き、原子炉の状況を注意深く監視します。また、原子炉圧力容器内の温度等の状態把握のあり方や保安規定上の扱いについて、東京電力に対して至急検討し報告するよう指示するとともに、専門家の意見を聴取しつつ検討して参ります。
その後、平成24年2月14日に、東京電力(株)に対して、今回の一連の温度上昇を踏まえた対応に関して、下記の項目を報告するよう指示しました。
⇒東京電力株式会社福島第一原子力発電所第2号機原子炉圧力容器底部における温度上昇を踏まえた対応に係る報告の徴収について(原子力安全・保安院)(平成24年2月14日)(リンク切れ)
指示内容
- 同発電所第2号機原子炉圧力容器底部の温度計の一つの指示値が平成24年2月2日以降上昇傾向が継続したこと等当該温度計の指示値の一連の挙動に関して想定される要因
- 現在使用されている温度計以外に原子炉内の温度を監視するための代替手段
- 原子炉内の圧力及び温度分布の解析等原子炉内の状態を評価するための手法
- 同発電所における原子炉の冷温停止状態の維持を確認する際に根拠とする指標及びその適用の考え方
その後の経過
上記指示を受けて、東京電力(株)では、当該圧力容器底部温度計の一連の指示値の挙動に関連して想定される要因について検討し、モックアップ試験によりその妥当性について確認を行った結果について、原子力安全・保安院に対して報告しました。その結果、当該温度計については故障していたものと判断しました。
⇒東京電力株式会社福島第一原子力発電所第2号機原子炉圧力容器底部における温度上昇を踏まえた対応に係る報告の受理について(原子力安全・保安院)(平成24年2月16日)(リンク切れ)
報告内容(抜粋)
当該圧力容器底部温度計の一連の指示値の挙動に関連して想定される要因について検討し、モックアップ試験によりその妥当性について確認を行った。モックアップ試験を行った結果、今回の当該温度計における事象で確認された短い周期での指示変動(ハンチング)及び温度指示の上昇について、それぞれ別の試験結果ではあるものの、同様の挙動が起こりうることが確認できた。
従って、今回の事象においては、
- 上下・円周方向近傍に設置されている温度計の温度が上昇していないこと
- モックアップ試験により指示変動(ハンチング)及び温度指示の上昇について同様の挙動が起こりうることが確認できたこと
から、平成24年2月2日以降から原子炉圧力容器底部温度計が故障していたものと判断する。
原子炉圧力容器底部温度計については、温度計の故障と判断したことから、保安規定第138条に定める原子炉圧力容器底部温度の監視対象から除外する。
その後、今回の事象を踏まえ、今後も温度計の故障が発生すると、原子炉内温度の監視に支障が生じるため、
- 2号機について、現在使用している温度計以外に原子炉内の温度を監視するための代替手段に関し、現時点で実現可能性があると考えられる手段ごとに、実現する上での課題を明らかにした上で具体的な作業工程を示した実施計画を策定し、報告すること。
- 1~3号機の原子炉内温度並び原子炉格納容器内温度を監視するために現在使用している温度計の信頼性を評価し、当院から指示があるまでの間、1か月に1度、報告すること。
について、原子力安全・保安院から東京電力(株)に対し、指示がありました。
⇒東京電力株式会社福島第一原子力発電所第2号機の原子炉圧力容器底部における温度上昇を踏まえた対応について(指示)(原子力安全・保安院)(平成24年2月24日)(リンク切れ)
今回の指示を受け、平成24年3月2日、東京電力(株)は報告書を提出しました。報告書の中では、代替温度計の挿入の実施計画や、温度計の信頼性評価の方法についてまとめられています。
⇒福島第一原子力発電所第2号機原子炉圧力容器底部における温度上昇を踏まえた対応に係る報告書の経済産業省原子力安全・保安院への提出について(東京電力(株))(平成24年3月2日)
その後、準備等が整ったため、平成24年10月3日、2号機原子炉圧力容器内に代替温度計を設置しました。設置後、温度の推移等を監視していましたが、他の監視計器と概ね同じ安定した挙動を示していたため、11月6日に、保安規定に定める監視計器としての運用を開始しました。
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