ペットとの別れに備える
ペットの寿命も年々伸び、犬や猫などは、15年以上一緒に暮らしていくこともできるようになりました。やんちゃで手に負えないくらい元気なペットも、年を追うごとに、目が見えにくくなったり、耳が聞こえにくくなったり、走りまわることがなくなったりするなど、段々と年老いていきます。
ペットも家族の一員です。自分とペットのこれからを想像し、もしもの時に備えて、日頃からペットのために何ができるのか考えておきましょう。
1 民間事業者のサービスなどを利用する
2 一時的な預け先を見つけておく
3 新しい飼い主にゆだねる
4 ペットについて相談する
5 ペットの“万が一”に備える
6 飼い主の“万が一”に備える
7 動物とのふれあい方いろいろ
8 最後に
1 民間事業者のサービスを利用する
飼い主自身の体力や能力に合わせ、民間事業者を利用することを検討してみましょう。また、ペットの介護を一人で頑張らず、ときには、専門家に相談してみましょう。
ペットシッターは、飼い主の自宅を訪問し、飼い主の代わりにお散歩などのペットの世話を行います。トリミングサロンは、シャンプーや被毛のカットなどを行います。爪切りや毛玉取り、耳掃除なども頼めます。送迎してくれるところもあります。利用料金は、ペットの種類や大きさによって異なります。民間事業者のサービスや店舗などは、電話帳、情報誌、インターネットなどで探すことができます。
かかりつけの動物病院で、介護のポイントや注意点についてアドバイスをもらいましょう。往診やペットの介護が大変な時の短期入院の相談に応じてくれる動物病院もあります。
2 一時的な預け先を見つけておく
ケガや病気で飼い主が突然入院しなければならない場合などに備え、ペットの一時的な預け先を見つけておきましょう。動物の介護疲れの解消にも役立ちます。
(1) 親戚、ご近所、友人などに頼る
飼い主と親しく、ペットもよくなついている預け先があれば安心です。ペットのことをもっとよく知ってもらえるように、普段からのコミュニケーションを大切にし、いざというときにペットの世話や預かりをお願いできる関係を築いておきましょう。
(2) ペットホテルを利用する
ペットホテルでは、預かる動物にワクチン接種済などの条件を決めていることがほとんどです。あらかじめ、預けるための条件や料金、移動手段を確認しておくとよいでしよう。ペットホテルを併設している動物病院もあります。
(3) 前もって準備しておきたいこと
・預け先が困らないように、普段から、しつけ、ノミ・ダニ予肪やワクチン接種を行いましょう。
・ペットの食べ物や性格などをメモしておき、預ける際に渡しましょう。
・ペットが不安にならないよう、短時間預かってもらうことを繰り返すなど、ペッ卜を預け先に慣らす練習をしておくと安心です。
・犬と猫以外の動物を預かるペットホテルは少ないので、早めに探しておきましょう。
3 新しい飼い主にゆだねる
ペットを幸せにするには、体力も経済力も必要です。ペットを飼うために無理をすることは、飼い主にもペットにもよいことにはなりません。ペットが幸せに暮らせるよう、新しい飼い主を見つけてあげるのも、愛情の一つです。新しい飼い主に安心して飼ってもらえるよう、日頃からの健康管理としつけも大切です。
(1) 新しい飼い主を自分で探す
かかりつけの動物病院に相談する方法や、町会やスーパーの掲示板などに飼い主募集の貼り紙を貼らせてもらうという方法もあります。新しい飼い主候補が見つかったら、必ず一度会って、ペットとの相性なども確かめておきましよう。自分で新しい飼い主を探すことで、手放した後も安心できます。
(2) 動物愛護ボランティアに相談する
ペットの性格などを見極め、ホームページ上で紹介するなど、飼い主探しに協力してくれるボランティアの方もいます。新しい飼い主が見つかるまでには時間がかかるので、信頼できるボランテイアの方を早めに見つけておくことをおすすめします。
(3) 老犬・老猫ホームなどで世話をしてもらう
ペットが亡くなるまで世話をしてくれる民間の事業者もあります。事業者によっては、ペットを預けた後も面会ができたり、近況を報告してもらえたりするところもあります。契約内容は様々なので、預ける前に施設等の見学をし、十分に説明を聞いて納得できる施設を選びましょう。
4 ペットについて相談する
県や中核市でも、ペットに関する相談を受け付けています。どうしても飼いきれなくなり、新しい飼い主を見つけられない場合には、犬と猫の引取りを行うこともありますが、事前相談が必要です。
お住まいの地域を管轄する行政窓口に御相談ください。(別ウィンドウが開きます)
5 ペットの“万が一”に備える
多くのペットは人よりも早く歳をとり、飼い主はペットの最期を見届けることとなります。かけがえのないペットが最期を迎える際に、飼い主としてどのようなことができるのか、考えておきましょう。
(1) 治療
ペットの死因は、悪性腫瘍や心臓病、腎不全など様々であり、それに対応するための獣医療も日々進歩しています。また、延命目的の治療のほかに、苦痛を軽減し生活の質を向上させるための終末期医療(ターミナルケア)など、治療の考え方も多様化しています。ペットのためにどのような獣医療を選ぶのか、かかりつけの動物病院とよく相談して決めましょう。
(2) 看取り
ペットの死は辛く、悲しいことですが、看取りは飼い主がペットに愛情を注ぐことのできる最後の機会です。ペットが幸せな最期を迎えられるように、残された時間をどのように過ごすか、よく考え、悔いのない選択をしましょう。
(3) ペットロス
「ペットロス」とは、ペットを亡くした飼い主の体験や、それによる悲しみのことを言い、決して珍しいことではありません。悲しい気持ちを人に聞いてもらったり、十分な休養をとったりするなど、一人で抱え込まず、無理をせずにペットの死と向き合いましょう。
ペットロスに関する講演動画を東京都が公開していますので、御紹介します。
題名:ペットロス:愛情、悲しみ、つづいていく絆
講師:濱野佐代子氏(帝京科学大学 生命環境学部 アニマルサイエンス学科 教授、獣医師、博士(心理学)、臨床心理士、公認心理師)
内容:ペットと暮らしていくにあたり、ペットとの別れは避けて通ることができません。遺された飼い主は悲しみの末、ペットロスになることがあります。ペット終活・ペットロスについての基礎知識、自分や身近な人のペットロスとの向き合い方等について、帝京科学大学附属動物病院 家族の心のケア科でカウンセラーとして相談対応している濱野先生がお話します。
視聴:YouTube(別ウィンドウが開きます)
東京都公式動画チャンネル「東京動画」(別ウィンドウが開きます)
ペットを失って何ヶ月もたっているのに、以下の症状が2項目以上、2週間以上継続しているのであれば、ペットロスによってうつ病を引き起こしている可能性があります。
一人で悩まずに専門医や「こころの健康相談窓口」等にご相談ください。
=うつ病チェックリスト= |
◇こころの健康相談窓口(別ウィンドウが開きます)
6 飼い主の“万が一”に備える
突然の事故や病気などで、ペットとの暮らしが急転してしまうかもしれません。万が一ペットより先に死亡した場合などに備えて、ペットのことを十分に考えておきましよう。
(1) ペットのための遺言を残す
ペットのために遺言書を残しておくこともできます。弁護士や行政書士などに相談して、ペットを誰に託すか、ペットのためにどのように財産を残すかなどを整理し、法的に有効な遺言書を作っておきましょう。また、ペットを他の人に譲り、飼育を託したいと思っている場合には、譲りたい相手から承諾を得ておくことも大切です。
(2) ペットのための信託を利用する
ペットのために信託会社へお金を預けておき、いざとなったら、そのお金をペットのために使用することができる仕組みがあります。飼い主は、あらかじめ、ペットの世話を誰にしてもらうか決めておきます。預けたお金は、ペットのために使われます。
遺言や信託については、弁護士、司法書士、行政書士、保険会社に相談してみましょう。市町村の法律相談窓口などを利用するのもよいでしょう。
7 動物とのふれあい方いろいろ
ペットと一緒に暮らす以外にも、動物と親しんだり、お世話をしたりする方法があります。
(1) ボランティア活動を通じた動物とのふれあい
ペットの世話をお手伝いするボランティア活動を通じて動物と触れ合う機会を持つこともできます。保護している動物達の世話や新しい飼い主に出会うまで一時的に自宅で飼育するボランティアを募集している動物愛護団体もあります。動物に関われるボランティアの募集がないか、情報誌やインターネットで調べてみてはいかがでしょうか。
(2) 動物園
最近の動物園は、より近くで動物の生態を観察することができるよう工夫され、子供から大人まで十分に楽しめる空間に変化してきています。また、動物とふれあうことができる広場がある動物園もあります。
(3) バードウォッチング
海、山、川など大自然の中で野鳥を観察してみてはどうでしょうか。
8 最後に
飼い主には、ペットがその命を終えるまで適切に飼養する「終生飼養」の責任があります。どうしても飼えなくなった場合でも、飼い主が先に亡くなった場合でも、ペットが安全に安心して暮らせる環境を用意してあげることが飼い主の務めです。
確認しましょう。
□ ペットのお散歩やお世話など、以前と変わらずにできている。
□ ペットの不妊去勢手術や予防接種などの基本的な措置を行っている。
□ ペットの平均寿命を考慮に入れても、最後まで飼い続けることができそうだ。
□ ペットの高齢期に備え、介護や治療にかかる費用を確保している。
□ 自分に万が一のことがあったときのための、ペットの預け先等を確保している。
□ ペットを長期間誰かに預けられるように適切なしつけ等ができている。
□ ペットを失った後の心の問題について知っている。
全てにチェックが入りましたか?
1つでもチェックが入らなかった場合、自分自身とペットのために、元気な時から対策をしましょう!
「絶対に最後まで飼う」だけでなく、「飼えなくなった時のために準備する」、「ペットを失った後の心の問題に備える」ことも大切です。