農作業安全についてのコラムを掲載しています。
農作業安全コラム season2
県内の農作業安全の推進として、昨年度に引き続き、コラムを連載しています。
農作業事故の特徴、安全対策などの内容となっていますので、是非ご活用ください。
全国で年間350~400件の農作業死亡事故が発生し、県内でも少なくない数の農業者が犠牲になっているのが農作業事故の現状です。
農作業安全コラム season2
vol.2 安全・安心は足元から [PDFファイル/88KB]
vol.3 小さいけれど大きな被害 [PDFファイル/84KB]
※「農作業安全啓発DVD」の動画をyoutubeにアップロードしました。本校チャンネルからご覧ください。
(動画再生)https://www.youtube.com/channel/Ucvsngl2Tsdghh9Y7EjiapwaA
vol.1 初心にかえって (2017/05)
5月の異名を皐月と言いますが、これは、耕作(稲作)を意味する古語の「さ」から
「さ月」という名がついた、とも言われています。(*諸説あります)
まさにこれからの季節は、田植え作業をはじめ、様々な農作業が本格始動していきます。
しかし、それゆえに農作業事故が発生しやすくなる季節でもあります。
平成27年度に発生した農作業死亡事故は全国で338件でした。そのうち、
月別で最も発生件数が多かったのは5月で、全体の16%にあたる54件となっています。(*1)
心のどこかで、“農作業事故は他人事”と思っていませんか?
農作業事故は、誰にでも、どこでも、いつでも発生する可能性があります。
本県では、例年事故発生率の高い4月1日から5月31日までの期間、
春の農作業安全運動の重点推進期間となっており、作業者への啓発活動にあたっては、
【日常点検の確実な実施】を重点的に行ってもらうよう、お願いしています。(*2)
農業機械もほ場も、人と同じで、前日と同じ状態であることは決してありません。
農業機械の使用前後には、異常がないか、故障しそうな箇所はないかを、
また、作業場に危険な場所がないか、常日頃から点検を行うようにしてください。
特に1年ぶりに動かす農業機械については、取扱説明書をもう一度取り出して一読し、
点検・整備をしてください。
取扱説明書には、機械の安全な使い方から、簡単な点検・整備の仕方まで、
初心者でも分かるように、図なども盛り込まれて書かれています。
皆さんも、機械を買って初めて使うときには、目を通しますよね?
その後、1度見ただけで、箱の中にしまっていませんか?
日頃から点検・整備を行っているだけで、故障による事故の発生確率は下がるはずです。
“読むのが面倒だ”という方も、ほとんどの取扱説明書の最初には、
「安全に作業するために」という内容の記述があります。
ここに目を通すだけでも、安全に対する意識が変わるはずです。
毎日が「初めての作業」、そんな気持ちで気を引き締めて、作業をしていきましょう。
参考資料:(*1) 農林水産省調べ
(*2) 福島県農作業安全運動推進本部「平成29年度農作業安全運動推進計画」
vol.2 安全・安心は足元から (2017/08)
ついに東北も梅雨明けとなりました。
毎日の暑さと湿気に、我々人間や動物は気が滅入ってしまいますが、
逆に、この天候で生き生きと、ぐんぐん成長していくのが雑草たちです。
皆さんが普段から草刈り作業を行う場所はどんな場所ですか?
田んぼの畔や道路・水路の脇など、傾斜地での作業は多くないですか?
傾斜地の危険性については、以前のコラムでも紹介しています。(農作業安全コラムvol.5 )
特に高さ2m以上、傾斜角40°以上の法面には、法面の中腹に小段(こだん)の設置を
勧めています。今回は、その小段の設置方法について、以下の3つを紹介します。
(1) 鍬などで地面を削って小段を作る
・山側の斜面を削り、足下に道を作りながら進みます。(簡単にできる方法かも
しれませんが、地面を固める、木の板で土留めをするなど、追加の対策も必要です。)
(2) 丸太を設置する
・法面の等高線上に細い仮杭を打って丸太の位置を決めたら、丸太と杭を鎹(かすがい)で
固定します。丸太は、樹皮をはいで、防虫・防腐塗料を塗ると長持ちします。
(3) 専用の機械で小道を作る
・樹園地などの法面に小道を設置する目的で開発された、作業道管理機を使います。
・山側の斜面を削り、谷側に土が排出されるようになっているので、ハンドルは軽く持ち、
谷側の車輪を浮かせ気味にして、管理機を山側へ傾けるようにするのがコツです。
・補助者は、管理機の車体にロープをつけ、法面の上から引っ張って、
管理機が落ちないようにします。
・小道を作った後は、(1)と同様、地面を固め、土留めをしておきましょう。
・地域や組合などで機械をリースして使用すると、経費も少なく済みます。
いずれの方法でも、事前準備として、小段を設置したい場所の草をあらかじめ除いておくと、
設置する場所の凹凸や、石や障害物がないかを確認でき、作業がしやすくなります。
また、小段を水平に設置できるように、ロープなどで等高線に印をつけるとよいです。
朝露で濡れた草の上や、雨上がりの足場では、滑って転ぶ危険性がさらに増します。
また、“この土日の間に…”、“まだ涼しいうちにここだけは…”、“あともう1か所…”など、
どんどん伸びる草を目の前にすると、どうしても焦りや欲が出てきます。
そんな時に、事故は起こるものです。
心にゆとりを持って作業をするためにも、小段の設置を実践してみてはいかがでしょうか。
参考資料
・DVD多面的機能支払 支援シリーズNo.1 みんなで草刈り編 (農文協)
・季刊地域 No.26 P.76-81 (農文協)
vol.3 小さいけれど大きな被害 (2017/08)
みなさんは、日本において、最も人を死に至らしめている動物はなにかご存じですか?
クマでしょうか?それとも毒ヘビ?…いいえ、正解はハチなんです。
ハチ刺されによって、全国で毎年20名前後が亡くなっており、
平成27年には23名の方が亡くなっています。(*1)
亡くなった方の多くは、アナフィラキシーというアレルギー反応を引き起こし、
血圧低下、発熱、呼吸困難などの症状が出て、刺されてから1時間以内に死亡しています。
アナフィラキシーを引き起こすかどうかは体質によるので、ハチに刺された回数は
関係ありません。しかし、ハチに刺されたことでアレルギー体質になる場合もあるようです。
特に8月から9月はハチ刺されによる事故が毎年多く発生しています。
そこで、ハチ対策を以下にまとめてみましたので、参考にしてみてください。(*2)
ハチに出くわしてしまった時
・肌の露出している部分を少なくし、少し身をかがめてできるだけ遠くに静かに逃げる。
・手で振り払うなど素早い動きは逆効果です。
万が一刺されてしまった時
1.毒を取り除く…ドラッグストアなどで市販されている「ポイズンリムーバー」
という装置を使うと、うまく吸い出せます。外作業の時は携帯するようにしましょう。
2.傷口を冷やす…濡れタオルや氷嚢などで患部を冷やし、痛みや腫れを抑えます。
3.すぐに病院へ…ハチ毒アレルギー体質の方は、応急処置用の自動注射器(エピペンなど)
を処方してもらい、携帯するようにしてください。
ハチに刺されないために
・長袖長ズボンの着用、黒地の服を控える。
・1人での行動を避ける。(刺されてしまった場合、助けを求めることができない)
・匂いに気をつける。(化粧品やジュース等の匂いで攻撃性が高まる可能性があります)
ちなみに、最近話題のヒアリ(有毒を持つアリ)も、実は分類学上ではハチの仲間なんです。
どんなに小さな生物でも、侮っていると痛い目に遭います。
ハチの巣を見つけた時は、自分で無理に駆除使用とせず、専門の業者に依頼するなど、
まずは自分の身を守ることを優先してください。
参考資料:(*1) 厚生労働省 人口動態調査より
(*2) 森林総合研究所「森林レクリエーションでのスズメバチ刺傷事故を防ぐために」
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