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個別Q&A14-(3)研修費用の返還について

印刷用ページを表示する 掲載日:2021年2月19日更新
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研修費用の返還について

質問

 私は、業務命令を受けて業務に必要な資格を取得し、その取得費用は会社が負担しました。会社の就業規則には、「資格取得後5年以内に自己都合により退職する場合は、研修費用の全額を返還しなければならない。」という規定がありますが、このような規定は労働基準法に違反していないでしょうか。

答え

 労働基準法に違反している可能性があると考えられます。

解説

1.違約金の定め・損害賠償の予定の禁止

 労働基準法では、使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償を予定する契約をしてはならないとされています(同法第16条)。
 その趣旨は、労働契約において、違約金や損害賠償の予定の定めがあると、労働者は自分の意思に反し、雇用関係の継続を強制されることになるため、これを禁止し、労働者の退職の自由を確保することにあります。

 2.研修費用・留学費用の返還

 資格取得などの研修費用や留学費用等を使用者が立て替え、資格取得後、労働者が一定期間勤務した場合には研修・留学(以下「研修等」という。)に要した費用の返還を免除する旨の合意をすることがあります。
 このような合意が、一定期間勤務することについての違約金あるいは損害賠償の予定として、労働基準法第16条違反に当たるかどうかが問題となります。この問題について、裁判では以下の点等を考慮して判断されています。
 (1)研修等の業務性の有無
   ア.研修等への参加が従業員の自由意思によるものか
   イ.研修等の目的や内容等に業務との関連性があるか
   ウ.会社が負担した研修等の費用が立替金と認められるか  など
 (2)返還免除基準の合理性
   ア.免除の基準が明確か
   イ.返還免除までの勤務期間が不当に長くないか  など
 (3)返還額の相当性
   ア.返還を求められる費用が実費の範囲内であるか
   イ.勤務期間に応じて返還額の減額措置があるか  など

 なお、過去の裁判例では、業務命令に基づく留学後5年間の継続勤務を求めることは、退職者に対する制裁としての性質を有し、労働基準法(違約金の定めの禁止)に違反するとした判決もあることから、質問の場合も労働基準法違反とされる可能性があります。

 

 

 

 

 

判例

〇新日本証券事件(東京地裁判決平成10.9.25 労判746号)
〇長谷工コーポレーション事件(東京地裁判決平成9.5.26 労判717号)
〇野村証券事件(東京地裁判決平成14.4.16 労判827号)

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