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個別Q&A6-(3)従業員が会社に与えた損害と従業員の退職金の相殺

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年3月4日更新
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従業員が会社に与えた損害と従業員の退職金の相殺

質問

 運転中の不注意から社用車で物損事故を起こした従業員が退職することになりました。
 従業員は過失を認め、故障した社用車の修理費用の一部を負担することには合意していますが、費用は退職後に現金で支払うと言っています。
 就業規則に基づき退職金を支給する予定ですが、従業員の負担額と相殺できるでしょうか。

答え

 退職する従業員の同意がなければ相殺はできません。

解説

 支給基準が明確な退職金はその全額を支払う必要がありますので、従業員の同意なく相殺はできません。なお、従業員の負担する修理費用は別途請求することはできます。

●相殺禁止の原則
 就業規則等により支給条件が明確である退職金は「賃金」に該当し、使用者は労働者にその全額を支払わなければなりません(労働基準法第24条第1項)。
 この賃金の全額払いの原則は、相殺禁止の趣旨も含むとされており、使用者が労働者に対して持つ債権と賃金を一方的に相殺することは許されません。

●相殺禁止の例外
  判例では、以下の場合に相殺禁止の例外が認められています。
 1.合意による相殺(日新製鋼事件)
   使用者と労働者の合意による相殺は、労働者が自由な意思に基づいて同意したと認めるに足りる合理的理由が客観的に存在するときは全額払いの原則に違反しないとされています。
 2.調整的相殺(福島県教組事件)
   計算ミス等により払い過ぎてしまった賃金を翌月の賃金と相殺するなど、賃金の過誤払等の清算を目的とした相殺を「調整的相殺」と言います。
   調整的相殺は、相殺の時期、方法、金額等からみて労働者の経済生活の安定を害さない場合には、相殺禁止の例外として認められています。
   調整的相殺を行う場合は、過払いのあった時期と近い時期に、労働者に予告した上で、労働者の生活を害さないように数か月に分割して行うなどの配慮が必要です。

判例

○日本勧業経済会事件(最大判昭和36.5.31 民集15巻5号)
○日新製鋼事件(最二小判平成2.11.26 民集44巻8号)
○福島県教組事件(最一小判昭和44.12.18 民集23巻12号)
 

 

 

 
 

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