【2016年7月20日(水曜日)】 Vol146
目次
- リレーエッセイ
県教育委員会委員 小野 栄重(おの えいじゅう) - 日々の思い
福島県教育庁政策監 佐久間 弘元(さくま ひろもと) - お薦めの一冊コーナー
- 学校自慢コーナー
- 大熊町立大野小学校
- 白河市立東北中学校
- 福島県立南会津高等学校
- お知らせ
- 福島県教育委員会からのお知らせ
- 福島県立図書館からのお知らせ
- 編集後記
教育総務課長 高橋 洋平(たかはし ようへい)
リレーエッセイ
「アクティブ・ラーニングの真髄」
県教育委員会委員 小野 栄重(おの えいじゅう)
つい先日、平成28年度北部ブロック道県教育委員協議会を 福島県教育委員会の主管のもと、郡山市で開催させていただきました。
今まで何度となくお会いしてきた各道県の教育委員のお顔を拝見できて、とても懐かしい気持ちになると同時に、福島県での大会ですので、皆様から参加して良かったと言われるような意義のある充実した内容になるよう、 全力で運営させていただきました。
さて、今回のテーマは、「これからの子どもたちに求められる資質・能力の育成について」でした。
班別協議に入る前に基調講演として、劇作家・演出家で教育に大変造詣が深い平田オリザ先生と福島県立ふたば未来学園高等学校長の丹野純一氏からテーマに沿った大変感銘深いお話をお聞きすることができました。
平田先生からは、コミュニケーション教育の現状と課題について、2020年以降、激変する大学入試改革に向けての対策と関連付けてのご説明がありました。
丹野校長は、現在学校で取り組んでいる生の姿と、校訓でもある自立・協働・創造の大切さを、「自ら教育目標に向かう地域社会を変革する変革者たれ」という理念のもと、熱く語られておられました。
どちらも非常に内容の凝縮した示唆に富む大変価値のある講話でありました。
続いて本協議会のメインでもある班別協議が行われ、上記テーマのディスカッションをブレイン・ストーミング方式で、各教育委員の皆様と大変活発に意見交換させていただきました。
私は、前段の基調講演と後段の班別協議に共通するこれからの子どもたちの教育上必要となるであろう大きなキーワードを感じざるをえませんでした。
それが、今話題となっている「アクティブ・ラーニング」という考え方であります。文字どおりに捉えれば、教員からの一方的な講義で知識を覚えるのではなく、生徒達が主体的に参加し、仲間と深く考えながら 課題を解決する力を養うことだと思いますが、果たしてこの概念のみが一人歩きしてしまって、教育の手法として それぞれの発達段階でどのように授業等に取り入れていけばよいのか、また、基礎的学力との整合性はどうなのか等、まだまだ課題も多いと感じました。
今、日本には大きな社会変化が押し寄せています。それは少子高齢化・グローバル化・高度情報化の波であります。
私たちは、この世界同時進行型の社会で生き抜いて行かなければならないのです。従って、これからの時代に求められる子どもたちの資質・能力は、 ただ知識を詰め込むだけでなく、その知識を活用して新たな価値を見出さなければ ならないわけです。そのための教育的手法が「アクティブ・ラーニング」であり、 決して今までの学習を否定するものではなく、また目的化するものでもありません。
先生方にはぜひ、それぞれの創意工夫のもとにアクティブ・ラーニングを授業に取り入れていただき、楽しい学校生活を子どもたちにプレゼントしていただければ、これ程嬉しいことはありません。
日々の思い
「多忙感」と「充実感」について
県教育庁政策監 佐久間 弘元(さくま ひろもと)
教育現場の多忙が指摘されて久しくなります。 「多忙」は非常に忙しいこと、時間的なゆとりのなさを意味する表現で、「多忙感」は精神的なゆとりのなさを示す表現ですが、前者は「忙しさ」の量的側面を、後者はその質的側面を捉えた表現であるともいえます。
一般的には、仕事量が多ければ「多忙感」を抱くわけですが、同じ仕事をしても 多忙と感じる人とそうでない人がいるように、仕事にやりがい等を見出せれば、「多忙感」より「充実感」を覚えるケースもあると考えられます。
学校現場においては、社会状況の変化等に伴い、これまでの学習指導と生徒指導に加え、子どもの指導に直接関わらない学校運営等の事務的な業務が増えており、これらの業務が教職員のモチベーションや「多忙感」に影響を及ぼしています。
また、教育だけの問題にとどまらず、貧困などの社会問題も影響しているため、学校だけでの対応には限界があり、外部人材の活用を含めてこれまでと違う対応が求められています。
これが、「チーム学校」の必要性でもあります。
忙しくなると、自己の職務に手一杯で、同僚の手助けどころではなくなるため、同僚としての関係性(同僚性)が阻害されることになり、一人一人の教職員の成長や力量形成にも悪影響を及ぼすこととなります。
職場でのサポートの雰囲気や体制は、「多忙感」の解消に効果があると言われております。教職員が支え合い、学び合う雰囲気がある職場環境は、教職員の協働性や同僚性を高め、児童生徒へのより良い指導をもたらすとともに、教職員の「充実感」にもつながるからです。
教職員の長時間労働が慢性化すると、「子どもと向き合う時間」が確保できないばかりか、教材研究や授業準備を行う時間もなくなるため、教育の質の低下が懸念されることになります。
多忙の「忙」という文字は、「心を亡くす」と書きます。多忙化により心身ともに疲れ果てた教職員からは精神的なゆとりが失われ、子どもと向き合う「心」まで亡くなる恐れがあるため、子どもたちへの良い教育効果は期待できません。
文部科学省内に設置された「次世代の学校指導体制にふさわしい教職員の在り方と業務改善のためのタスクフォース」が「学校現場における業務の適正化に向けて」と題する報告を平成28年6月に取りまとめました。この報告で提案された改善方策を参考に、本県においても、「先行実践」の活用やノー部活動デーの設定といった多忙化解消に向けた各学校での取組事例などを水平展開し、教職員が、子どもと向き合う時間を確保しながら、学習指導や生徒指導などに「充実感」を持って取り組めるよう教育環境の改善を図ってまいりましょう。
子どもたちが頼りにしているのは、やはり教師であって、その教師が「充実」した教職員生活を送ることは、児童生徒の能力や資質の向上につながるものであり、教職員は、子どもたちの成長の姿を見て「充実感」を覚えることになるものと考えます。
お薦めの一冊コーナー
このコーナーでは、福島県立図書館司書の「お薦めの一冊」を御紹介します。
『「世界最速の男」をとらえろ!』 織田一朗/著 草思社 2013
リオ五輪開催も目前です。本県出身・窪木選手が出場する自転車競技や、 陸上競技・水泳など、選手たちの好記録に期待が集まります。
本書は、そんな競技記録を計測する「時計」について、 五輪の公式計時も担当した大手時計会社「セイコー」の元社員が解説した1冊です。
酷暑、極寒、水中など、どんな環境の中でも正確さが要求される計測。選手たちの活躍の影で鈍く輝く、時計職人たちの意地と努力が垣間見えます。
福島県立図書館
→ http://www.library.fks.ed.jp
学校自慢コーナー
このコーナーでは、各学校の特色ある取組を御紹介します。詳しい内容を県教育委員会のホームページで紹介していますので、御覧ください。
「放射線教育と『ふるさと創造学』の展開」
大熊町立大野小学校
東日本大震災直後、大熊町教育委員会では、ふるさと復興、再生、創生のための 人材育成を目指して、「総合的な学習の時間」での「放射線教育」を独自に開発し、全小・中学校で取り組んできました。
3年前から、双葉郡全体で「ふるさと創造学」に取り組むことになっても、「ふるさとの復興、再生、創生」と「放射線教育」とは切り離せないものと考え、「放射線教育と『ふるさと創造学』」というテーマで取り組んでいます。
「安珍歌念仏踊り」と「生き生き協議会」
白河市立東北中学校
本校では、地域に伝わる郷土芸能『安珍歌念仏踊り』について学習し、 文化祭で発表したり、安珍供養祭で奉納したりしています。
また、生徒会では「生き生き協議会」という活動があり、生徒会本部・学級委員・各委員会委員長・教員らが学校の諸問題について考え、実践することで、よりよい学校づくりを行っています。
「可能性へのチャレンジ」
福島県立南会津高等学校
本校では、「郷土芸能委員会」が、山口地区「早乙女踊り」の継承に取り組んでおり、年に数回、地域のイベントで踊りを披露して好評を博しています。
他にも、ボランティア委員会による特別養護老人ホーム訪問や、南会津町との連携による各種事業「18歳の酒造りプロジェクト」(花泉酒造)等、地域の様々な取組に参加しています。
また、平成28年度は3年に1度の公開文化祭「南高祭」の年にあたりますが、例年、地元の「南郷豊年まつり」と共に催されており、多くの地域の方々で賑わいます。
お知らせ
1学期が終わると「夏休みの友」のとびらに書かれた児童詩の一節を思い出します。
― 明日から夏休み
ソフトクリームをなめるように
一日一日大切に過ごすんだ ―
みなさまは、この夏の計画はもう立てられましたか。
さて、ここからは7月のお知らせコーナーです。
福島県教育委員会からのお知らせ
福島県教育委員会ホームページ「トピックス」
最近の教育動向及び教育委員会事業等の様子を発信しています。 現在、7月7日(木曜日)に開催した「平成28年度北部ブロック道県教育委員協議会」の模様を掲載しておりますので、どうぞご覧ください。
教育総務課 024-521-7759
→ 福島県教育委員会のホームページははこちら
「福島県算数・数学ジュニアオリンピック」
算数・数学が好きな皆さん。算数・数学のちょっと難しい問題に挑戦したい皆さん。
自分の算数・数学の力を試したい皆さん。今年もそんな皆さんの参加を待っています。
算数・数学の世界へ、チャレンジをはじめましょう!
- 対象:県内の小学校5,6年生、中学校1から3年生
- 期日:10月23日(日曜日)午前のみ
- 会場:県内7会場(
県北:福島大学、県中:郡山女子大学、県南:白河合同庁舎
会津:会津大学、南会津:御蔵入交流館
相双:鹿島農村環境改善センター、いわき:いわき光洋高等学校) - 表彰:成績上位者には、金、銀、銅メダル。
銅メダルに準じる上位者には奨励賞を授与。 - 申し込み方法:学校から配付された参加申込書、 返信用封筒を自分が通っている学校に提出。
※参加申込書とチラシは、県教育庁義務教育課のHPからも ダウンロードできます。 - 申込締切:8月29日(月曜日)
義務教育課 024-521-7776
→ http://www.gimu.fks.ed.jp/
福島県立図書館からのお知らせ
「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」
期間:平成28年7月8日(金曜日)から8月31日(水曜日)
場所:公開図書室 インターネットコーナー付近
内容:
福島県立美術館の企画展「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」の 開催に合わせエドワード・ゴーリーの著作と関連本、生前エドワード・ゴーリーが愛好していた作家・画家の著作、画集等、 エドワードゴーリーから影響を受けた作家に関する資料を展示します。
「オリンピック展 名場面のアスリートたち」
期間:平成28年8月5日(金曜日)から8月31日(水曜日)
場所:展示コーナー
内容:
今夏、リオデジャネイロで開催される夏季オリンピック。 オリンピックイヤーを楽しむために、夏季オリンピックの名場面を掲載した資料を集めて展示します。
「子どもたちの教科書を見てみよう!」
期間:平成28年7月8日(金曜日)から8月31日(水曜日)
場所:公開図書室 時事展示コーナー
内容:
現在小学校から中学校で使用されている教科書を展示します。また、平成29年度より高等学校で使用される教科書も展示予定です。小学生から保護者の方、学校教育に関心をお持ちの方にお勧めの展示です。
福島県立図書館 企画管理部 024-535-3200
→ http://www.library.fks.ed.jp
編集後記
今週、南相馬市を訪ねました。道路脇には旗が並び、野馬追いに向けた準備が 着々と進んでおり、祭りへの熱気が伝わってきました。私も今週末、野馬追い初参加なので、ドキドキしています!(見るだけですが…)
今月12日には小高区の避難指示が解除されたため、6年ぶりに開催される神事もあると聞いており、復興に向けて力強く歩んでいる印象を持ちました。
そのような折、今月4日に、県教育庁内に「学校再開支援チーム」を設置しました。 これは小高区を含む避難指示区域の解除等に伴い、元の場所に帰還して再開する学校について、魅力的な学校づくりを市町村と一体となって 取り組むための組織です。
地域の課題やニーズにきめ細かく対応できるよう、市町村ごとの担当者を設けて、ワンストップで相談できる窓口を置くことにしました。
このチームは会議室で議論するだけの組織ではありません。現場に赴き、関係者の声に耳を傾け、一緒になって考え、行動することを主眼としたいと思っています。
魅力的な学校づくりとは何かを改めて考えてみると、先進的なカリキュラムをゼロから導入するということではなく、ふるさとに根ざした教育内容や文化を生かすという観点が重要だと考えています。
また、教育内容そのものも重要ですが、地域と共に議論しながら学校再開と地域コミュニティの再生を共に進めるという「プロセス」もまた重要です。
避難指示解除後の地域に戻ることは、保護者の仕事や医療・福祉、住居や交通手段など様々な要素がありますし、選択を迫られる保護者の方の悩みは想像するに余りあります。
我々としては、市町村としっかり相談しながら、再開後の学校が安心して喜びを持って通えるよう努力したいと考えています。
教育総務課長 高橋 洋平(たかはし ようへい)
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