会津地方20(金山町):雪割の花(ハマナカアイヅ)
福島県の金山町は、只見川の沿岸を中心とした「奥会津」と呼ばれる地域にあり、日本有数の豪雪地帯のひとつです。
下記の2枚の写真を見比べてみましょう。
わずか2ヶ月(写真・左:2015年12月 写真・右:2016年02月)で、金山町の太郎布高原は、すっかりと姿が変わりましたね。
「道路の除雪は当然、自治体がするし、家屋の雪おろし住民が定期的に行えばいいのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、人口の6割近くが65歳以上の高齢者で占める金山町では、一人暮らしのお年寄りは作業できないという事情があります。
2月中旬、県内各大学の学生たちと一緒に、金山町で「雪かたし(雪を片付けること)」のボランティアに参加しました。
このイベントをきっかけに、自治体の現状について考えるようになりました。
福島市から金山町までの所要時間は、約3時間です。
医療機関が進んでいる会津若松市までは、高速道路を使っても1時間はかかります。
――金山町までのアクセスは実に大変です。
雪かたしをする前に、主催者からスコップなどの道具の使い方を一通り習いました。
経験が皆無な以上、雪かたしのは単なる肉体労働だと思い込んでいました。
道具をうまく使いこなせるのには、「コツ」が必要です。力任せにすればするほど、腕や腰に負担がかかってしまいます。
「マネ」は簡単ですが、「コツ」を心得ている者こそ、「プロ」になれます!
余談はここまでしておきますか。
金山町の大塩地区。
「田舎の伝統」を感じさせてくれる古き良き時代の町の風貌が特徴です。
名物は、日本でも珍しい天然炭酸水の井戸です。
それと、地区の名前を由来としたJR只見線の「会津大塩駅」があります。
しかし、2011年7月の新潟・福島豪雨災害が発生して以来、不通区間のため「開かずの駅」となっています。
長年にわって「住民の足」として親しまれてきた存在だっただけに、いっそう悲壮感が漂っています。
続きまして、金山町の積雪量を見てみましょう。(データは気象庁より)
今回雪かたしの対象となる渡部さんのお宅周囲の積雪を見た途端、さすがに驚きました。
暖冬とはいえ、雪の吹きたまりはひとりの成人男子の身長を遥かに越えましたね。
担当者の指導のもとで、輪かんじきを装着してみました。
これで、積雪の上でも普通に歩けるようになりました。
フル装備した若者たちの情熱は、今年の暖冬以上に、雪を溶かしています。
よいしょっと、よいしょっと働き続けた若者たちの姿は、正しく「雪割の花」と言えるのでしょう。
程なくして、雪かたしができました!
休憩の時に、家主の渡部さんが飲み物とお菓子を出して下さいました。
汗を流したあとの水って、やっぱりおいしいですね。
その間、お話を伺いました。
「――どうして、この豪雪地帯に一人で住み続けたのでしょうか?」
渡部さんによると、この大塩地区に嫁いできたのは今から50数年前のことでした。
以来、ここで家族と一緒に暮らしてきたが、やがて子どもたちが大きくなり、集落を出ていきました。
そして、ご主人が他界してからは、渡部さんがひとり暮らしをしてきました。
買い物は移動販売車を頼むと言い、隣県に住まいの息子さんは月に1回身の回りの世話をしてくれるそうです。
「それでも、やはり冬は大変です。」
「今年は暖冬で助かりましたが、来年はどうなりますかね。」
――そうつぶやいた渡部さんですが、春から関東に移り、横浜市在住の娘と一緒に暮らすことを考えていると言います。
ひょっとしたら、次の冬が訪れる頃には、渡部さんはもう金山町にいません。
金山町の人口数の変化も気になりますが、何とかしてあげたい気持ちでいっぱいです。
まずは、この町、そして奥会津のことを文章に載せて、多くの人に知らせましょう。
できる限り町を訪れて、魅力を発掘していきましょう。
そして、来年もまた、この町で雪かたしのボランティア活動に参加しましょう。
雪割り街道(六十里越街道)の先には、金山町があります。
雪割の花は、ずっとこの町に咲けますように。
(投稿者:徐)