会津地方21(昭和村):遠く、儚く、愛おしいもの(ハマナカアイヅ)
トンネルを抜けると、そこは雪国であった――
おっと、誤字がありましたので、訂正します。
正しくは、「洞門」です。
日本語を勉強すればするほど、よく難読・難解な言葉によく出会いますね。
獅子落洞門はかつて、交通の難所でした――(以下、福島県のホームページより抜粋)
柳津町大字琵琶首地内に位置し、隣の自治体を結ぶ県道32号線にある最大の難所で、「獅子落(ししらく)」と呼ばれる狭隘区間があり、さらに平面線形が悪く、急勾配であるため、自動車の円滑な交通に支障をきたしており、平成14年度より琵琶首工区の改良を進め、獅子落洞門含む1600m 全線(琵琶首パイパス)が開通することとなりました。
この獅子落洞門を抜ける先は、人口1300あまり(平成28年3月現在)の小さな村――昭和(しょうわ)村でした。
福島の奥会津と呼ばれる地域に位置しており、以前取材で訪れていた金山町と並んで、日本有数の「限界自治体」です。(ちなみに、平成12年の時点では1700人でした)
インターネットで「昭和村」を検索すれば、「駒止湿原」や「からむし織り」などといったキーワードが出てきたりします。
確かに、どれも昭和村の代名詞とも言えますが、村おこしの道のりは決して容易ではありません。
一度でも昭和村を訪れてみればわかります。
スノーシェッドの連続の代わりに、コンビニやガソリンスタンドなどといった現代生活にほぼ必要なものは、一軒たりとも存在していません。(村内では早朝からオープンする商店があります。)
県道32号や国道401号のトンネル整備が進んでいなければ、陸の孤島すらなりうる交通条件は、都会で暮らしている私たちの想像を遥かに超えていました。
それでも、多くの「限界自治体」と同じように、昭和村がしぶとく生き残っています。
遠く、儚く、いとおしいもの――
これは福島県に来て、たったの数回しかなかった訪問(と言っても単なる通過が多いが)で感じた、昭和村のイメージです。
昭和村はとにかく遠いです。私が住んでいる福島市から高速道路を使っても、3時間以上がかかります。同じ所要時間なら、東京や盛岡には楽に着けます。
しかし、一苦労して、ようやく昭和村にたどり着けば、やがて夢のような風景が目の前に広がります。(前の記事を参照)
特に冬場では、純白の世界と化した昭和村は、自然好きな人が大いに楽しめるのに間違いありません。
どんな優れた景色でも、一度見れば十分だと思う人もいると思いますが、私の場合は該当しません。
知り尽くすまでに、すべてを知ったかのように語るのは恥だと思います。
だから、時間と経済の許す限り、私は行きます。
例えば、こんな小さな村の、小さな雪まつりにも。
会津地方の冬では最後の雪まつりと銘打っているようですが、実質的昭和村の年間最大イベントでもあると思います。
目玉のイベントは、やはり「からむし織の雪ざらし実演」ですね。
淡々と進行していく実演で、オープニングセレモニーもなければ、クライマックスもありません。
知る人ぞ知るイベントですが、知らない人にはその魅力を伝えるのは難しいでしょう。ですが、それがいいのです。
世の中には、あらゆる魅力が存在しているわけですが、そのすべてを我々が夢中になるほど、感知力を持ち合わせていません。
私は元々からむし織には興味があったのですが、実演を見て退屈こそ感じていないものの、予想通りの感動は得られませんでした。
実際に、雪まつりで一番印象に残っているのは、何回でも乗れて、しかも無料なスノーモービル乗車体験でした。
そして、訪れていた子供たちにとって、一番好きなイベントは年に一度しか披露されない「からむし織の実演」ではなく、由緒ある「獅子舞」でもなく、極めて簡単なかまくらと、簡単な雪滑り台で十分なのかもしれません。
思い出ができれば、いとおしく思えます。
またいつか、再訪したいと思うようになります。
遠く、儚く、いとおしいもの。
それは、私が思う昭和村の魅力です。
たまに行くなら、こんな小さな村はいかがでしょうか。
(投稿者:徐)