高温焼却炉建屋東側壁面の配管からの放射性物質を含む水の漏えいに対する申し入れ
令和6年2月7日、福島第一原子力発電所において、汚染水浄化設備(第二セシウム吸着装置(サリー))が設置されている高温焼却炉建屋東側壁面の配管から、放射性物質を含む水が建屋外に漏えいする事案が発生しました。
県では、東京電力に対し、昨年10月に発生した増設ALPS配管洗浄作業における身体汚染に関する再発防止策を確実に実施するとともに、他の廃炉作業に水平展開して、同様のトラブルが発生しないよう、安全管理体制の構築に取り組むことを求めているところですが、その最中に、今回のトラブルが発生したことは極めて遺憾であると考えています。
東京電力において、県民に不安を与えるトラブルを繰り返し発生させていることについて、同様のトラブルを再び発生させないという強い覚悟を持ち、より一層の安全管理の徹底を図るよう、県では下記のとおり申し入れを行いました。
概要
- 日時 令和6年2月8日(木曜日)16時30分
- 場所 県庁北庁舎 2階 小会議室
- 申入者
- 相手方
- 執行役員 福島第一廃炉推進カンパニー・バイスプレジデント兼福島第一原子力発電所長 田南 達也
申し入れ内容
- 今回発生したトラブルの原因について、設備面、作業面、管理面など様々な視点から調査・分析を行うとともに、現在取り組んでいる増設ALPSでの身体汚染に係る再発防止策を含め、未然防止の観点に立った再発防止を徹底すること。
- 一連のトラブルの原因究明と再発防止策を他の廃炉作業に水平展開し、同様のトラブルが再び発生しないよう、安全管理体制の構築を改めて徹底すること。
- 今回のトラブルによる環境への影響の有無や、今後の対策について、県民の目線に立ち、正確で分かりやすい情報発信に責任をもって取り組むこと。
申し入れに対する東京電力からの説明内容
令和6年2月20日 |
第93回(令和5年度第6回)廃炉安全監視協議会
〇東京電力から本事案の原因と再発防止対策、汚染拡大防止対策の状況について説明を受けた。
【本事案の原因】
■手順書作成段階における原因
- 作業前の系統構成(※1)の作業責任をもつ保全部門が、設計図書に基づき手順書を作成していたが、現場状態と一致した適切な手順書となっていなかった。
- 具体的には、系統水がドレンラインへ流入しないよう、該当のドレン弁を『「開」から「閉」に操作する』と手順書に記載するべきだったところ、『「閉」を確認する』となっていた。
※1 作業に当たり作業対象範囲を系統から切り離すために境界弁を閉める等の安全処置のこと
■現場作業段階における原因
- 作業員(弁確認者)は、手順書に従い、ヒューマンエラーを防止するための手法(※2)を活用しながら弁の確認行為は行っていたが、弁番号と手順書が一致していることの確認に留まり、弁が「閉」状態でないことを見落とした。
※2 指差呼称、操作前の立ち止まりなど、ヒューマンエラーを起こさないような基本動作のふるまい、手法
【再発防止対策】
- (管理面の対策)高い濃度の液体放射性物質を取り扱う作業(汚染水処理設備、ALPS等)においては、運転部門が作業前の系統構成を一元的に実施する。
- (組織面の対策)「水処理センター」を設置し、水処理設備に特化した「水処理安全品質担当」を配置する(外部から招聘することも検討)ことで、水処理全体の安全と品質を高めていく。
- (設備面の対策)建屋外に直接開放している現状のベント口を、建屋内の管理された区域に排出する構造に変更し、水素滞留防止のための建屋換気口を追設する。
- (協力企業への対策)設備操作・状態確認の重要性と操作・確認を行う際の基本動作の徹底について、教育や研修を通して、現場作業員まで浸透させる。また、「基本動作の徹底、現場・現物確認を徹底し、疑問に思ったら声をあげ、確認し、一旦立ち止まる」ことを依頼する。
【汚染拡大防止対策】
- 令和6年2月7日に敷鉄板上に溜まっている漏えいした水の除去を完了。
- 令和6年2月8日から地中に染み込んだ可能性がある土壌の掘削除去を開始し、放射性物質の拡散リスクが高い箇所の対応は2月14日に完了。
- 除去した土壌は専用の保管コンテナに格納し、瓦礫類と同様の管理を実施している。
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令和6年2月26日 |
第36回(令和5年度第3回)労働者安全衛生対策部会
〇東京電力から再発防止対策の取り組み状況について説明を受けた。
【再発防止対策の取り組み状況】
- 協力企業への対応の一つとして、設備操作を実施する作業員全てに対するヒューマンパフォーマンスツールの教育を実施中。
- 教育内容は、今回の事例紹介、ヒューマンパフォーマンスツールの活用についての講義と実技訓練。
- 東京電力も現場で教育実施状況を確認しており、2月末までに完了する予定。以降は継続して教育を実施していく。
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令和6年4月24日 |
第94回(令和6年度第1回)廃炉安全監視協議会
〇東京電力から設備面の対策の進捗状況について説明を受けた。
【設備面の対策の進捗状況】
- 設備の改修は、高濃度の液体放射性物質を屋外に漏えいさせないこと、既存設備にて求められる仕様要求(停止中に発生する吸着塔内の水素を滞留させないこと)を満足することを考慮し、検討した。
- 具体的には、ベントラインの一部を切断して、ベント口を建屋内とする。これにより、ベント口が建屋内となるため、建屋内で水素を滞留させないように、壁面に水素を大気放出するための建屋換気口を設け、追設ベントラインを介して屋外へ排出する。
- 第三セシウム吸着装置(サリー2)の改修工事は完了。
- 第二セシウム吸着装置(サリー)は追設のベントラインまで設置しており、今後、ホースを接続し、今週中に改修が完了する予定。
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令和6年8月20日 |
第95回(令和6年度第2回)廃炉安全監視協議会
〇東京電力から、令和5年10月以降に発生した、一連のトラブルに対する共通要因分析から抽出された弱みと改善策について説明を受けた。
【共通要因分析から抽出された弱み】
- 人や環境に及ぼすリスクに対して設備が脆弱
- 作業に対するリスク因子の特定、リスクシナリオ設定、リスク評価、安全事前評価、安全対策・防護措置の検討が不足
- 東京電力及び元請企業の現場実態把握、危機意識が不足
【取り組む改善策】
- リスク管理や作業管理プロセスにおけるリスク因子の特定、リスクシナリオ設定及びリスク評価の改善
- 東京電力及び協力企業への教育(リスク因子抽出、危険意識を高める)の強化
- 設計段階でのリスク因子の特定、リスクシナリオ設定及びリスク評価の改善
- 脆弱性調査に基づく設備・手順書の改善
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原子力安全対策課楢葉町駐在による現地確認
東京電力の対応状況を確認するため、本事象の発生直後から、原子力安全対策課楢葉町駐在の職員が現地確認を行っております。
現地確認結果については、「高温焼却炉建屋東側壁面の配管からの放射性物質を含む水に漏えいについて」をご確認ください。