ALPS処理水希釈放出設備及び関連施設の設置工事(1)(事前了解時の検討結果)
ALPS処理水希釈放出設備及び関連施設について
設置の目的
- 福島第一原子力発電所構内では、多核種除去設備(ALPS)にて汚染水から放射性核種(トリチウムを除く)を低い濃度になるまで除去した水(「ALPS処理水等」)を貯留している。ALPS処理水希釈放出設備は、ALPS処理水等のうちトリチウムを除く放射性核種が告示濃度比総和(※)1未満を満足していることを確認した水(「ALPS処理水」)について、トリチウムについても規制基準を十分に満足するよう海水にて希釈し海洋へ放出することを目的としている。
※告示濃度総和・・・施設から放出される水や空気に対し定められている放射性物質濃度の規制値。複数の放射性物質を放出する場合は、核種毎に告示濃度が異なることから、それぞれの告示濃度に対する比率を計算し、その合計値を「告示濃度比総和」と呼んでいる。
設備に関する計画の概要
- 福島第一原子力発電所において安全かつ着実に廃炉・汚染水・処理水対策を進めていくため、国の規制基準や各種法令等を確実に遵守するとともに、風評影響を最大限抑制する対応を徹底することを前提に、ALPS処理水を海水にて希釈し、沿岸から約1km離れた場所から海洋へ放出するためのALPS処理水希釈放出設備等の新設を行う。ALPS処理水希釈放出設備等は、測定・確認用設備、移送設備、希釈設備、放水設備から構成される。
【ALPS処理水希釈放出設備の全体構成】
- 測定・確認用設備
測定・確認用タンク内の水がALPS処理水であることを確認するため、タンク内及びタンク群の放射性物質濃度を均質化し、資料採取を行う設備 - 移送設備
ALPS処理水を測定・確認用設備から希釈設備まで移送する設備 - 希釈設備
ALPS処理水を海水で希釈し放水設備まで移送する設備 - 放水設備
放出した水が希釈用海水に再循環することを抑制するため、海底トンネル(約1km)を経由して放出する設備
※出典:令和3年度第7回廃炉安全監視協議会(令和3年12月27日)説明資料から一部抜粋・編集
ALPS処理水希釈放出設備及び関連施設の新設に係る事前了解
東京電力ホールディングス株式会社から安全確保協定に基づき令和3年12月20日付けで提出のあった、福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画の変更認可申請(ALPS処理水希釈放出設備及び関連施設の新設)に係る事前了解について、これまで廃炉安全監視協議会、環境モニタリング評価部会及び安全確保技術検討会において、専門家や関係市町村とともに計画の内容を確認し、報告書 としてとりまとめました。
この報告書を踏まえ、県として検討した結果、「8項目の要求事項の確実な実施」、「新たに発生する汚染水の更なる低減」、「汚染水処理に伴い発生する二次廃棄物の安全な処理・処分」の意見を付し、令和4年8月2日付けで了解しました。
【8項目の要求事項】
- 希釈前の段階で国の規制基準値(トリチウムを除く)を下回ることを確認するための測定対象核種の選定にあたっては、可能な限り実測定により核種の存在の有無を明確にすること。
- 測定・確認用設備(K4タンク群)における測定試料の均質化については、水に溶けない粒子状の放射性物質を考慮して循環・攪拌の運用管理を行うとともに、排出後のタンク底部の残水や沈殿物の残存の影響を適切に監視すること。
- 希釈用海水の取水については、5/6号機取水路開渠の放射性物質が混入しないよう、運用開始までに除去等の対策を講じるとともに、取水した海水に含まれる放射性物質の濃度を定期的に監視すること。
- 設備・機器の保全にあたっては、ALPS処理水希釈放出設備等が放射性液体廃棄物を管理して適正に環境へ放出するための重要設備であるという認識を関係者が共有して取り組むとともに、設備等のトラブルを未然に防ぐため、有効な保全計画を策定すること。
- 処理水の漏えいや意図しない放出などの異常発生に備え、影響低減のための機動的対応を迅速かつ確実に実施できる手順書の整備、訓練による対応力の向上に努めること。また、機動的対応における時間的余裕を確保するため、設備面における重層的対策を講じること。
- 設備・施設の設置にあたっては、スケジュールありきではなく安全最優先で進めること。特に、海底トンネル等の海洋での工事は厳しい環境が想定されるため、リスク評価に基づく作業中断基準を明確に定める等、不測の事態に備えた安全対策を徹底すること。
- 処理水の測定結果や設備の運転状況等については、ホームページ等において常に最新の情報が確認できるよう公表するとともに、安全性に関する数値と比較するなど、分かりやすい情報発信に努めること。また、トラブルが発生した場合は、安全確保協定に基づき速やかに通報連絡するとともに、事象に伴う放射線影響等についても、正確で分かりやすい情報発信を行うこと。
- 「放射線影響評価結果(設計段階)」については、人及び環境への影響は極めて軽微であることを県民に分かりやすく説明すること。また、海域モニタリング結果と併せて、県民はもとより国内外に広く理解されるよう情報発信すること。
※8項目の要求事項の対応状況について現場調査や会議を実施し、確認しています。
ALPS処理水希釈放出設備に係る設備の設計、安全性の確認
県では、ALPS処理水希釈放出設備等の新設に係る計画内容及びALPS処理水の海洋放出に係る放射線影響評価結果について、技術検討会(7回開催)、廃炉安全監視協議会(5回開催)、モニタリング評価部会(4回開催)において確認及び検討を重ねました。
会議名 | 開催年月日 | 議題 |
---|---|---|
令和3年度第3回モニタリング評価部会 | 令和3年12月6日 | ・ALPS処理水の海洋放出に係る放射線影響評価報告書について |
令和3年度第7回廃炉安全監視協議会 | 令和3年12月27日 | ・福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画の変更認可申請に係る事前了解願いについて(ALPS処理水希釈放出設備等新設について) |
令和3年度第3回モニタリング評価部会追加説明 | 令和4年1月19日 | ・ALPS処理水の海洋放出に係る放射線影響評価報告書について |
令和3年度第8回廃炉安全監視協議会(現地調査) | 令和4年1月24日 | ・ALPS処理水希釈放出設備等新設に係る現地確認(K4タンク群の状況等) |
令和3年度第4回技術検討会 | 令和4年2月4日 | ・ALPS処理水希釈放出設備等新設に係る計画の詳細について(処理途上水の確実な二次処理、希釈・放出管理、自然災害への対応、設備機器の設計詳細) |
令和3年度第5回技術検討会 | 令和4年2月24日 | ・ALPS処理水希釈放出設備等新設に係る計画の詳細について(設備の保守・管理、工事の安全な実施、設備機器の設計詳細) |
令和3年度第4回モニタリング評価部会 | 令和4年2月25日 |
・ALPS処理水に係る環境モニタリングについて |
令和3年度第5回モニタリング評価部会 | 令和4年3月8日 |
・ALPS処理水の海洋放出に係る放射線影響評価報告書について |
令和3年度第6回技術検討会 | 令和4年3月15日 |
・ALPS処理水希釈放出設備等新設に係る計画の詳細について(処理水及び放出水測定の信頼性、公衆被ばくの評価等、測定結果等の公表、不具合発生時の対応、設備機器の設計詳細) |
令和3年度第9回廃炉安全監視協議会 | 令和4年3月25日 |
・ALPS処理水希釈放出設備等新設に係る計画について(海底トンネルに関する外部有識者による質疑(外部有識者)、原子力規制庁における審査状況(原子力規制庁)、福島県における事前了解願いへの対応経過(県事務局)) |
令和4年度第1回技術検討会(書面開催) | 令和4年4月19日~5月2日 |
・ALPS処理水希釈放出設備等の新設に関する検討の状況について |
令和4年度第1回廃炉安全監視協議会 | 令和4年5月24日 |
・ALPS処理水の安全性に関するIAEAレビュー報告書について |
令和4年度第2回技術検討会 | 令和4年6月13日 |
・ALPS処理水希釈放出設備等新設に係る計画について(令和4年度第1回技術検討会で提出された質問に対する回答、令和4年度第1回廃炉安全監視協議会後に提出された追加質問に対する回答) |
令和4年度第3回技術検討会 | 令和4年7月15日 |
・ALPS処理水希釈放出設備及び関連施設の新設に関する確認結果報告書(案)について |
令和4年度第2回廃炉安全監視協議会 | 令和4年7月26日 |
・汚染水発生量の現状、今後の議題、汚染水発生量の更なる低減について |
令和4年度第4回技術検討会 | 令和4年7月26日 |
・ALPS処理水希釈放出設備及び関連施設の新設に関する確認結果報告書(案)について |
申し入れ・要望
令和4年8月3日(水)、福島県知事が大熊町長、双葉町長とともに、福島第一原子力発電所のALPS処理水の取扱いに関して経済産業大臣に要望を行いました。
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