森林(もり)との共生を考える県民懇談会(第1回)発言要旨についてお知らせします
意見交換における発言の概要
【座長】 初回からテーマを絞って意見を伺うのも難しいので、自由に、皆さんの専門や関心ある点の意見を頂きたい。少しずつ論点を整理していき、最終的には提言をとりまとめ県が森林審議会に諮問できるよう、進めていきたい。
【委員】
身の回りでの課題、それぞれ関心のあること、大げさに言えばこの会に貢献できることなどを言い合いながら話していけたらどうかな、と思う。
【委員】
私は国有林の管理の仕事をしている。南会津のブナ林など大変関心を持たれているが、木を伐って植えるほか、野生生物の保護などもやっている。今、名実とも国民の森となっていくよう改革に取り組んでいるところ。
2年半前まで国際協力事業団でケニアの半乾燥地帯で木を植えてきた。今世界の森が減少してきているが、アフリカでの経験などを福島にも反映させられたら良いと思う。
【座長】
国の政策としては経営から管理になったわけですね。
【委員】
木を植えて育てるのがメインだったのが、水の供給や国土を守ることにシフトしてきている。
【委員】
私は経営が重要だと思う。資料に、県民が重要だと思う森林の働きの中で木材の生産は7位とあるが、かつての山に人が関わっていた時代にはずっと上位だったと思う。この意識の変化が、山の暮らしの現状や山が荒れることなどにつながっているのではないか。山の経済財としての働きが発揮できるよう本格的に取り組み、定住できるようにしない限り、たとえ都市住民が来てくれたとしても、山の面倒は見きれない。こういうことにも目を向けた発想をしていきたい。
【座長】
これは本質的な問題。持続可能というのは、循環型で持続可能ということのほか、それをやって生活が成り立っていて、さらに世代に渡って持続するということでもあるから、どうしてもそこに住んで食べていける人なしには持続は不可能。この意見はかなり重要なポイントの気がします。
【委員】
今年9月私の地元で行われた「第1回うつくしま育樹祭」の知事とのトークで、山に入って力一杯仕事をしたいという意見があった。フィールド提供者として大歓迎。本県ではボランティアとの接点となる森林づくりネットワークができているので、そういう人達を繋いでいきたい。この接点作りが大切で、縁あって薪ストーブのユーザーに木を伐って持っていってもらうことがあったが、きれいになった林床で山菜を栽培すれば林家も一石二鳥。フィールドを提供するので、林業に関係はないけど関心あるという人をどう山につなげるかを考えたい。
【座長】
現場の方からフィールドを提供し、それを活用したいと思っている人達とマッチングさせる、という論点ですね。
【委員】
自分自身森林を経営しているが情勢はあまりにも厳しく、森林の貨幣価値が大きく下がり経済的基盤として様変わりしている。そこで二つの問題を投げかけたい。
一つは所有と経営の問題。境界の分からない森林所有者が増えたり、所有者が不在村だったのでは何かしようにも個人の権利が足枷となり二の足を踏む。国土調査を進捗させたり、GPSを導入するなど対策をとっておかないと、子供や孫の時代になったらまず判らなくなってしまう。
また、山に幾ら投資をし幾ら収益を上げ資本の再投下をどうするか経営の理念が無くなっている。山に植えて育てても、伐った後植えられないようでは循環は不可能になる。なら、例えば所有と経営を分離して森林組合などが一元的に経営し、それを行政がバックアップするというような仕組みが必要ではないか。
もう一つは環境の問題。今の林業情勢では、まず経済的に運営が難しいので、自然保護の面などでの貢献を目指す林業経営を模索する。温暖化ガス排出削減のためにロシアのガスパイプラインを改修してるというが、そんなに国内での排出量削減が難しいなら、むしろその資金を国土緑化に回して二酸化炭素を吸収する森林を育成するべき。二酸化炭素を固定する木造建築の役割も見直して税制や保険料で優遇したり、非木造建築から財源を確保して山林育成や自然保護に向けるという方法もある。
【座長】
ここでも経済的なポイントのところがかなり重要だと言うことが分かってくると思う。所有と経営の分離に関してはなかなか難しいですね。不在村のパーセンテージは把握していますか。
【事務局】
不在村森林所有者のもつ森林面積は県内の14%。全国では25%。
国土調査の進捗は59%で、民有林に限ってみると48%。
【委員】
町では「百年杉」の林業を目指してきたが、2年前に100年間風雪に耐えてきたスギでも倒れるような雪害があった。長年手を掛けてきた百年杉が倒れたという驚きと、こんなに手の掛かるうえ二束三文のような山を森林所有者の子供が「いらない」と言った、この言葉が恐ろしかった。
やはり地域全体の杉の価値をもっと上昇させるよう、売り方の仕組みを変え、製品を作り出していくようなことに早く取り組まないと、後継世代との感覚の違いは解決できない。
【委員】
里山には、子供のころ上級生と遊んだ楽しい思い出がたくさんあり、その楽しさや自分が感動したことを子供達に伝えたくて、シニアの方達から子供達に教えながら森づくりを行っている。
このような活動を点で行っている人は沢山いるし、様々な経歴を持っている方が沢山いる。皆さんの活動内容を勉強し、私からもお知らせする。情報の提供や場所の提供を通じて点の活動を線として結ぶネットワークづくりに参加したい。
【座長】
Jリーグもプロ野球も子供達をどう確保するかがその業界の反映につながるということで大変重要視されている。アメリカ航空宇宙局でも子供達に対する特別のプログラムを持っているほどで、こういうことが裾野を広げ、次世代につなげているのだと思う。
【委員】
森にすごく関心を持っている人がたくさんいるのだなと思う。自分はアレルギーなどでなかなか外に出られないが、緑の少年団の活動に関わっているので一緒に勉強するつもりで関わっていきたい。
【委員】
ミクロネシアで青少年達と自然の豊かさについて考えようというプログラムに関わっていたころ、実は日本の中にも本当に豊かなところがあるんじゃないかなと疑問に思っていた。そんなときに奥会津の標高千メートル近い森で子どもたちと雪上のキャンプを行う機会があり、自然と人と食事の豊かさに触れるようになった。小学校の総合学習で森の中にどんどん入っていくプログラムに関わっていくうちに、山を守るだけじゃなくて木を伐って森を活かしていくという価値観にも触れた。教育の場としての森をどう活かしていけるかを考えていきたい。
【座長】
教育の観点にずっと触れてきました。もうひとつ振りましょう。
【委員】
私が農林業経営を行っているいわき市田人地区はスギなどの植林が進んだ林業の大変盛んな所ですが、ここ4~5年、売れるうちに伐ってしまい伐採跡地は放って置くという山が出て来ている。植林や保育を行っても造林補助制度があり個人負担は3割程度で済むのだが、林業を行いながら山を守っていくことが難しくなっている。
これから森林を守っていくためには、生業として成り立つことと、市民がボランティアなどで森づくりに参加することの二通りの方法がある。
生業としての林業は、国産材のシェアが2割を切っている中で価格形成もままならない状態。補助金を投入しながら立派な山を作っても木材を使うところがなかったら何にもならないので、地産地消で地元の木材を使いながら森林を守っていくという形がこれからも必要。
ボランティアというと、今、広葉樹がもてはやされているが保水能力は針葉樹林と広葉樹林で大差はなく、二酸化炭素固定機能で見れば針葉樹の方が勝っているというデータもある。木材は、資源の少ない日本にあって唯一再生産の可能な資源なのだから、誤解を解きながら意見を交わし、針葉樹の人工林を活かしながら広葉樹林も守っていくような仕組みを勉強したい。
【座長】
林業の現場からすれば針葉樹を差別されている、確かにそのような傾向はないとは言えませんね。まさに木材をどう使うんだと言うところが重要ですね。
【委員】
会津は人工林率が20%と少ない一方広葉樹林が8割あり、かつては県産広葉樹材の半分を供給するなど豊富な資源を誇っていた。今は、全県の保安林の7割が会津にあるように、上流域の森林として水源かん養など公益的機能の十分な発揮が期待されている。
森林の機能や、木を植えたりその手入れがなぜ必要なのかを知ってもらうために、森林を環境資源ととらえ下流の新潟県との交流を図りながらイベントを行っている。
他の地域でも住民の参加や支援による取組みが行われていると思うが、県で情報を収集しているなら提供してほしい。
【座長】
流域林業活性化センターとは何ですか。行政区域での活性化ともちょっと違いますね。
【事務局】
委員の皆さんに参考資料をお送りする。
【委員】
私は街中に住んでいて森林の恩恵を受けている立場だが、今、ユニバーサルデザインや地産地消に取り組んでおり、現場に行って検証したりと大変勉強になっている。林業では森林認証制度に関心を持っているが、これはどのような仕組みか伺いたい。
【事務局】
乱伐した木を輸入してどんどん使ってもよいのか、という問題があって、適正に管理されるなど一定の基準を満たす森林経営が行われていることを認証し、そこから生産された材をラベリングすることで消費者が購入する際に選択できるようにして、持続的な森林経営を支援する仕組み。後ほど資料をお送りする。
【委員】
古い木でもう「いらない」と言う話を伺ったが、それを観光資源に利用できないか。山形県には「トトロの木」というものがあり、現場に行くと駐車場があって沢山の人が来ていた。福島県でも春になるとあちこち有名な桜を訪れる人が多いが、そのようなものの現状はどうなのか。
【事務局】
古来より守られてきた鎮守の森の大木や学術的に貴重な木など、県民に親しまれ愛され、地域の風習や習慣に結びついた樹木、樹林を指定した「緑の文化財」が520件ある。その保存のため少しずつではあるが保全対策を実施している。
【委員】
あるのはあるのだけれど、PRが課題ということかな。
【委員】
今、年齢を問わず、都市も山村も問わず、誰もが森林・林業へ関心を持つようになって、かつてこれほどの高まりは経験がない。
林業・木材産業にはいろいろと助成策があるが、それでもなかなか立ち行かず、多くの国民・県民の支援をもらわないとやっていけない状態にあって、いろいろな新しい財源の手当てをすべきだということが大きな論点となっている。
森林・林業に対する理解が情緒的なものに留まらないよう、どのようにして理解していただき、どんな方策をとればよいのか、この先出てくると思う。県民の理解が得られ、森林所有者や森林をみんなで応援して支えたとしても、森林が循環的に経営されなければそれを裏切ることになるので、森林所有者自らも変わっていかなければならない。
森林所有者は、生物の多様性も認識し景観にも配慮した上で持続的な森林経営を行い、それをアピールすべきである。そうして初めて県民からの理解や支援が得られると思う。
【委員】
針葉樹林は林業のプロの領域、広葉樹林は市民の森づくりなど素人もアプローチしやすい森、というイメージがある。ただ、田人地区の針葉樹林などは市街地に住む私たちから見ても神々しく映る森であり、いわき市を代表する風景でもある。
森に対する考え方は各人多様なので、公園の緑地や個人の庭など森と言うにはちょっと小さい身近な緑に始まり、大きい広葉樹や針葉樹の森へと皆さんの目線を導くような活動をしたい。そこには街の除草をしている小さなボランティアもあれば森づくりをしている大きな団体もあるので、いろいろな人々の橋渡しとなってネットワークづくりでの成果を出したい。
【委員】
林業という産業が本当に生業としてやっていけるのか、それをどう活性化させるのかという方向と、市民間に広がる森林への熱望や森林ボランティアとして広葉樹林を守ろうという、二つの路線があると思う。
林業面では、国有林にしても1兆3千億円の赤字があるなどかなり難しい状況になっているので、もっと広く財源を集めないと森を守ることが難しいと思う。高知県の森林環境税のような税を何らかの形で検討することが大事だと思っている。
一方、3年ほど参加している「うつくしま21森林づくりネットワーク」の交流会では思いが年々熱くなっているが、ネットワークも強化されるなどNPOの路線はある程度動き始めている。このように林業のプロではないが意識の高い人とプロの林業家とをうまく結びつけるのにどのようにするのかが重要だと思う。
税など新しい財源を確保したとして、それが森林にとって有効に使われているのかをきちっと評価して公表しないと、納税者に納得してもらえない。そうしなければ林業と市民を結ぶ接点は難しいと思う。
【座長】
論点が二つ。プロとしての、経済活動としての林業と、市民の側の森林に対する熱い思いとの結びつきですね。
【委員】
仲間と一緒に自然学校をやっており環境教育をライフワークにしたいと考えている。四季折々のプログラムで自然の大切さを教えており、ガイドやクラフトの指導で年間500人から1000人の子供達と付き合っている。エコツアーや里山体験で原生自然と里山のいずれにも関わっている経験を生かしたい。
間違いなく言えることは、人は、個人差はあるが、森の中に入ると癒される、何よりも表情が良くなる、表情から読みとれる気持ちの状態も非常に良い状態になる。
県では2年前に「うつくしま未来博」を実施し、里山をそのまま活用したパビリオン「森のネイチャーツアー」では230人のボランティアが活躍した。今では県内各地で森の大切さを伝える動きが盛んになりネットワークも立ち上がっているので、それを広げていきたい。
林業自体とは関わりがなかったが、体験を通じて森に親しみを持ってもらい、少しずつ理解し意識を変えていくような環境教育のフィールドとしての森がもっとあっても良いのかなと思う。
【座長】
ありがとうございました。ほぼ出席された委員全員の御発言を頂きましたが、言い残したことでこれだけはというのがあれば。
【委員】
林業関係の専門用語がたくさんあるんで、簡単な用語集のようなものを教えていただきたい。
【事務局】
今回あった中で説明の必要なものについては、なるべく早いうちに整理して皆さんにお届けする。
【座長】
第1回目ですから、一通り意見を頂きました、
最後の方で委員が方向が二つあるんじゃないかとおっしゃいましたが、私も実は大きく分けると二通りかと思われます。
経済的に山林を経営として成り立たせていくにはどうしたらよいかという、厳しい日本の林業の在り方とその活路の見いだし方。このことは経営や雇用の問題だけではなくて、実はこのことを通じてしか森林は守れないという重要な論点が出ておりました。ただ税金などをつぎ込んで保全すればよいということではなく、それ自体が再生産するような、持続可能な仕組みをどう作るかということがひとつのポイントだろうと思います。
一方、そうやって作られ保全されている森林を、じゃあ享受する側が一体どういうふうに使うのかということがもう一つの大きなポイントだと思います。その場合、老若男女、森に住む人街に住む人、子供から大人まで森をどういうふうに享受するかという、利用の仕方の課題があると思います。その中には木材製品の利用、観光、健康、スポーツ、娯楽などの側面があるかと思います。
この大きく分けた二つ:生産者の視点と、消費者の視点と二つあるとすれば、もう一つさらにはその間を結ぶ橋渡しの仕組みをどう作るかということが大事かなと思いました。フィールドを提供することとそこを利用する人達の結びつき、このネットワークづくりがかなり重要で、そのことが社会全体の、あるいは国全体の中で循環を形成していくという論点だと思います。
第1回目ですので、話し足りなかったことはメール、郵送、FAXなどで事務局までお届けください。1月末までにお願いします。
次回、第2回目の懇談会は、今回出た意見、論点を整理しながら、新しい形の守り育てる施策、県民参画の在り方についてを中心としてやっていきたいと思います。
本日の懇談はこれで終了したいと思います。どうも御協力ありがとうございました。