平成18年度森林(もり)の未来を考える懇談会 第4回発言要旨についてお知らせします
意見交換における発言の概要
議事1 平成18年度森林環境基金事業の実施状況について
【事務局】
資料13(平成18年度基金事業の進みぐあい)を説明。
森林環境交付金事業について
【委員】
森林環境交付金は、ただ単に市町村に予算を配分し、それを受けて市町村が使い道を考えて取り組んでいるということか。
【事務局】
交付金ということで、基本枠については、なるべく市町村の自由裁量で使えるような仕組みになっているが、「県民参画の推進」、「森林の適正管理推進」、「森林環境学習の推進」という3つの対象分野の中で使っていただくということになっている。
児童生徒を対象にした森林環境学習や、市町村内の森林の状況の調査等に使っていただくことを想定している。
各市町村の上限額は、50万円の基礎額に、森林面積と小学校の児童数により加算して算出している。
木質バイオマス利活用の課題
【委員】
ペレットストーブ研究開発事業とは、具体的にどのようなことをやったのか。
【事務局】
ペレットストーブの一般家庭への普及を図る観点から、現在約50万円と石油ストーブと比べて高価であるため、それを10万円台までプライスダウンすること、及び10畳ぐらいの部屋でも使えるような小型のものを開発することを目的としてプランを公募し、審査委員会の審査を経て業者を選定し、開発に当たっていただいた。
【委員】
ペレットストーブについては、本当に良いものなのかどうかいささか疑義がある。
今後はどのような研究が行われるのか。
【事務局】
今年度に試作機が完成したことから、今後は消費者の購買意欲をそそるようなデザイン面での研究も必要と考え、そのための予算を計上している。
【委員】
デザイン面の研究だけで大丈夫なのかどうか。良いところもあれば、様々な課題もあるように思える。
これからもっと普及したいと考えるのであればそのへんをもっと検討する必要があるのではないか。
【事務局】
その点については、これまでにも懇談会の中でいろいろと意見が出されてきたところ。
19年度には、そのへんをもっと懇談会の中でも検討いただいていろいろと見直しながら、20年度に向けてよりよい事業を構築していきたいと考えている。
その検討の中で、ペレットストーブだけで良いのか、一般の家庭では薪ストーブの方がもっと良いのではないかといった意見が出てくるようであれば、そのへんは柔軟に対応することとしたい。
現時点では、言わば循環型社会形成のための一つシンボル事業として始めたものであり、18年度に開発した福島型ペレットストーブを、一般の県民の方々に普及していくことを19年度の目標として取り組んでいくこととしたい。
【座長】
木質バイオマスエネルギー活用の一つとしてペレットストーブに着目して重点的に進めてきたわけだが、それが森林づくりにどのようにつながっていくと考えてそうしたのか。
【事務局】
木材のカスケード利用という考え方。
在るものを無駄なく使っていくことが循環型社会を形成する上で重要であり、その一つの象徴として、製材した残りの端材を使うペレットストーブに着目した。
より多くの方に使っていただくという意味では、利便性ということも一つのポイントだと考える。
【座長】
カスケード利用ということだが、バーク(樹皮)も使うということになると、灰が多く出て手入れが大変だという話もある。
従来処分に困っていたバーク部分を廃物利用のような形でペレットにして使っていくということであれば、循環型社会の形成につながっていくという考え方も理解できるが、ところがどうもホワイトペレットのようにバークが入っていないものの方が良いという声も出ている。
現在、福島県でペレットを製造しているのはいわきと会津だけだったかと思うが、それぞれのペレットの製造の過程を知りたい。
【事務局】
会津では、会津の発電所に流れてきた流木を新潟県に持って行ってペレットを製造してもらい、それを再び持ってきている。
製造工場の数については、にわとりと卵の関係にも似ているが、ペレットストーブが今後もっと普及していくようであれば、やりたいという人は増えている。
木材が集まってくる所があれば作れる可能性はある。
【委員】
いわきでは、元々チップの製造工場だったところが、ペレットの製造も行うようになった。
先ず、端材等を集めてきてチップにする。次に、チップにできないものをペレットにする。さらに、ペレットにもできないものは、火力発電の燃料として、自家発電施設を持っている他の工場に提供している。それでも使えないようなものは家畜の敷料に使っている。また、建築廃材の中の釘やボルトなどの金属類は回収して改めて売却しているという。
そのようなことから、いわきの製造工場に入ってきたものはすべて使い切っており、捨てるものは何も無いということで、これはすごいことだと思う。
このような取り組みは、今の時代に適しており、必要なものではないかとも思う。
先程からペレットストーブの是非についていろいろと論議がされてきたわけだが、木材のカスケード利用によって地球温暖化の防止にも貢献できるということ、また、そうした取り組みが県民一人一人へも伝わり、地球温暖化の防止に向けた意識の醸成、行動へとつながっていくことも期待できる。そのような意味ではペレットストーブもいい呼び水にはなるのではないかと思う。
【事務局】
確かに、間伐材によりペレットを製造することで、ペレットストーブの利用がそのまま森林整備につながっていくような仕組みであれば、すばらしいバイオマスの利活用になるとは思うが、いわきの工場でも製材工場から出される端材等だけでも十分にペレットは製造できるので、一本の間伐材すべてを材料にするところまでは至っていない。
しかし、なるべく使えるものは使っていこうということで、木材のカスケード利用の観点からも、製材工場における採算性の観点からも、ペレットという使い道は良いと考える。
森林環境基金事業におけるハード事業の割合
【委員】
懇談会の中で森林環境税の使い道を検討し始めた頃、ハード事業とソフト事業にどのように使い分けていくかという議論が最初に行われ、当面ハード事業にウェイトを置いて取り組んでいくというふうになされた。 そのような観点で考えると、資料13「1 森林環境の適正な保全」と「2 森林資源の利用促進」及び「7 市町村が行う森林づくりの推進(森林環境交付金事業の重点枠)」がハード事業と考えられ、合計で18年度事業費の約7割を占めているので、その点では懇談会の当初の議論に沿った適正な執行がなされたと評価される。
事業をPRする際の表現手法
【座長】
資料13の「3 間伐材搬出支援事業」の中で「16,777m3」という間伐材の運搬実績の記載があるが、一般の方にはこの数字は全く見当が付かない。もっと分かりやすい表現、身近なイメージで広報すべき。
【委員】
全く同感。例えば、「標準的な家の一戸当たりの木材使用量は○○であり、それが○○戸分です」みたいな表現の仕方。そのほうが一般の方にはぴんとくると思う。 先程のペレットストーブの場合も、「18年度は市町村や県に○○台が設置され、12月から3月までにこれを利用した場合のペレットの使用量は○○です、これを灯油のポリタンクに換算すると○○個分です」みたいな説明があればもっと理解していただけるのではないかと思う。
事業の成果をPRする際は、そのような分かりやすい表現を使うと良いと思う。
【座長】
森林林業のプロの方は専門用語を使ってしまうので、一般の方には分かりにくい。
最近、東大の大学院に科学の広報担当の先生が就任したという記事があった。
つまり、科学は難しすぎるので、それを分かりやすく解説するための部門を作り、専門の先生を採用したということ。
科学が子供にも理解できるように分かりやすく説明していくというのは、それは一つの部門である。
だから、これから森の大切さや環境のことについて広告宣伝していく場合には、表現の工夫というのはとても大切なことだと思う。
【事務局】
間伐材の16,777m3とは、例えば「4t車の場合、1m3が800kgだとすると3,400台分です」、あるいは「標準的な家の一戸当たりの木材使用量が20m3だとすると800棟です」、さらには「標準的な間伐のボリュームで言うと、1ha当たりの搬出される材が20m3だとすると800ha分です」等々、そのあたりの表現の仕方は今後工夫していくこととしたい。
【委員】
トラックの台数よりは住宅の戸数の方が説得力はあるかも。ただ、20m3で家が一軒建つとは言っても、丸太換算と製材換算では全然違う。
【事務局】
そのへんも工夫しながらPRしていくこととしたい。
森林ボランティア総合対策事業について
【座長】
「6 森林ボランティア総合対策事業」の中の森林ボランティアサポートセンターの広報誌とは、どのような人達を対象に配布しているのか。
【事務局】
ボランティア活動をしている団体の方などに配布している。
【座長】
ボランティアのリクルートと言うか、どのような範囲に配布するのかというのも、新たにボランティアを増やしていく上では戦略的には大切。
例えば、市町村の図書館などなるべく多くの人が来るようなところに陳列してもらうとか、そういう人との接点が多ければ多いほどいい。
あらかじめやりそうな人の所に送るよりも、そうでない人の所に切り込んでいくという気持ちが大切だ。
森林環境学習推進事業について
【座長】
「5 森林環境学習推進事業」の中の「森林環境ゼミナール」の参加者の客層はどのような方達だったのか。
【事務局】
家族ずれなど一般の参加者の方が多かったと聞いている。
【委員】
磐城流域では、浜通り全体を対象として新聞などを使って参加者を公募しており、実際の参加者も、若い方、家族ずれの方、定年になってボランティアに興味を持たれたような方など、一般の参加者の方が多かった。
【座長】
ゼミナール実施後に参加者のアンケートなどはとっているのか。
どのような意見があったのか。
【事務局】
感想文を提出してもらっており、おおむね高評価だった。
実施時期が森林環境税導入後間もなかったこともあり、森林環境税そのものについての質問が多かったように思える。
また、ゼミナールを今後も継続してほしいといった意見もあった。
【座長】
継続性の問題。
単発の打ち上げ花火的なイベントではなく、その後の事業展開を考えながら取り組んでいく必要がある。
いわば、ロケットを軌道に乗せるための補助エンジンのような役割を担えるのかどうか。
ある程度まで打ち上げてしまうと後は自分で周回し続けるみたいな仕組み。
そのような仕組みがなく、補助エンジンの燃料が切れたら墜落してしまうようだとそもそもの事業の存在意義が疑問。そのへんをきちんと考えていくことが大切。
ふくしまの森林文化復興事業について
【委員】
「10 ふくしまの森林文化復興事業」の今後の展開だが、最終的にはぜひ映画にとりまとめていただきたいと思う。
福島県は、鎮守の森、御神木、林業技術者の熟練した技能、炭焼き、漆器、漆絵、竹炭等々、様々な森林文化を数多く有している。
こうしたものを映画にとりまとめ、森林環境学習に使っていくことで、たくさんの人々が森林文化にふれあう機会を創出し、ひいては後継者の確保につながることも期待できる。
【事務局】
ふくしまの森林文化復興事業に係る検討委員会の中でもそのような意見もあることから、今後の検討課題と考えている。
森林環境適正管理事業について
【座長】
「2 森林環境適正管理事業」の中の森林GISシステムの開発状況と森林づくりシンポジウムの実施状況を知りたい。
【事務局】
森林GISシステムについては、3年間でシステムを完成させることとしており、初年度である18年度は、基本設計を作成するとともにデータベースの一部の作成にも取り組んでいる。
森林づくりシンポジウムについては、木材を利用する側、あるいは森林の恩恵を享受する側からの要請に基づいて、林業関係者が今後どのように森林づくりに取り組んでいけばよいのかということをテーマに2月8日に開催した。
議事2 平成19年度森林環境基金事業の概要について
【事務局】
資料14(平成19年度基金事業の枠組み)、資料15(平成19年度基金事業一覧)、資料16(交付金重点枠による緊急課題への対応)を説明。(企業参加の森林づくりのイメージ)
【委員】
資料15「7 森林ボランティア総合対策事業」の中の企業参加の森林づくりについては、どのような参加のイメージを描いているのか。
【事務局】
CSR(企業の社会的責任)のイメージ。今後、企業側と活動の受け入れ側のコーディネートをしていく必要があると考えているが、そのへんの仕組みがまだできていないので、先ずは企業側と受け入れ側の意向の調査を行い、それを踏まえて検討を進めていきたいと考えている。
各企業でやりたいことは様々だと思う。植林活動をしたいという企業もあれば、従業員の休暇取得の方法を工夫したいという企業もあるかもしれず、いろいろな形が考えられる。
一方、受け入れ側でも、どのような形、どのようなフィールドで受け入れられるのかということもある。そのへんをうまくコーディネートしていくことができるような仕組みを作っていくためにも、先ずは企業側、受け入れ側双方の意向を調査しておきたいということ。
【委員】
企業の立場に立って考えた場合、例えば実際に従業員がボランティアとして参加するとなれば、現地の場所、そこまでの距離、時間、必要な作業内容などは、はじめに知っておきたいことだと思う。
だから、実際に企業にアンケートを出す前に、どこにどのぐらいの放置されている森林があるのか、企業はそこを借り上げるのか、買い上げてもらうのか、そこの森林では植林してもらうのか、下刈りをしてもらうのかなど、企業に参加いただくイメージは事前にある程度持っておき、そのへんを示しながら企業の意向調査を行っていく必要があるのではないかということ。
【座長】
企業参加ということで一番最初に思いつくのは、植林してそこに会社の名前を付けるようなイメージ。
ただ、これまでの懇談会の議論の中で、植林した後の手入れの方がむしろ問題ということが分かってきたので、企業参加の場合も、木を植えてそれで終わりということではなくて、その後の手入れの方にもどこまで関わっていってもらえるのかというのが課題。
また、従業員が森林ボランティアへ参加を希望する際に休暇を認めるということ、それ自体がすでにその企業が森林づくりに貢献しているというふうな捉え方もある。
イギリスでは、ボランティア活動へ参加する場合に休暇を認めなければならないという法律がある。そうした社会制度上のバックアップがあるからこそ、イギリスではボランティア活動が盛んに行われている。
そのへんは一種の文化とも言え、そうした仕組みを構築していくことは容易ではないが、検討していく余地はある。
事業実施後の成果の検証
【委員】
資料15「14 森林環境基金運営事業」では、今年度は森林環境税のあらましについてチラシにより広報したが、来年度は森林環境税によって実際に事業をやってみてどうだったのかということを広報してもよいのではないかと思う。
また、これは事業全体に言えることなのだが、実際に事業を実施してみてどうだったのか、特にペレットストーブについては、入れてみてどうだったのかということをPDCAサイクルを働かせてチェックしていってほしい。
【座長】
確かに、事業の実施結果について、フィードバックしてもらうということも必要だ。
【事務局】
一年間事業を実施した結果については、今後県の広報誌等を活用しながらなるべく早い時期に広報していきたいと考えている。
また、事業の実施結果をフィードバックさせ、それをいかにして検証していくかについては、今後懇談会でも議論していただきながら仕組みを検討していきたい。
交付金重点枠による獣害対策の視点による森林整備
【委員】
確かに、最近は雪が少なく、雪による自然淘汰がなされないなどの条件も重なって、野生動物の個体数が増え続け、各地で様々な問題が生じている。
資料16の交付金重点枠による獣害対策のことだが、手入れが行き届かず真っ暗になっている森林の場合は間伐による効果も見込めるが、自然林に移り変わっていくような状態の森林を整備してしまうと、かえってエサ不足を招き事態を悪化させかねない心配もある。
【事務局】
今、獣害については非常に大きな問題になっているので、行政として様々な対応をしていかなければならない状況の中で、もちろん森林を整備するだけですべての問題が解決するわけではないが、様々な対策の中の一つの手段として森林環境税を使って何かできることはないかということで取り組んでいる。
委員が心配されるような点については、事業要望があがってきた段階で、それぞれの現場条件をきちんと確認していくこととしたい。
議事3 森林環境交付金事業(重点枠)の審査方法の改正について
【事務局】
資料17(交付金重点枠の審査方法の改正)を説明。(重点枠実施後のアフターケア)
【委員】
各委員が要望事業を理解する上でよりよい改正と考えられ、その点について異議はない。
ただ、それに関連したことだが、重点枠のうち、特に「森林整備の推進」については、事業実施後のアフターケアがかなり大切ではないかと思う。
例えば、事業実施箇所に「ここは森林環境税で整備しました」みたいな看板が設置してあるとする。それで、整備後数年経ってまた下草が生えてきたりして再び藪化するようだと、看板を見た県民の方は一体どのように感じるか。そのような誤解を生んではいけない。
よって、事業要望の段階で整備後のアフターケアの部分もきちんと計画しておいてもらうこととし、その部分を十分に確認した上で採択をしていく必要があるのではないかと思う。
今回の現地調査等の中で、鮫川村の「もりづくり100年委員会」や平田村の「もりづくり検討委員会」など市町村独自の第三者機関の話も紹介されたが、そのような仕組みは後々のアフターケアに非常に有効だと思う。
重点枠による事業実施後にも地域活動としてPDCAサイクルが機能していくことで、毎年少しずつ手を入れていくような仕組み、言わば重点枠を呼び水にしてその後の地域による森林づくりが継続して推進されるような方向へ持って行くことができれば一番望ましい。
【座長】
確かに、一発の打ち上げ花火のようなイベントで終わることの無いよう、事業要望を出してもらうときに事業実施後にそれがどのような形で継続していくのかという見通しや、そのための仕組みづくりについても市町村にきっちりと計画してもらうということは必要かもしれない。
議事4 その他(19年度の事業評価に向けての意見の整理)
【事務局】
これまでに懇談会の中で委員の皆さんから様々な御意見をいただいてきた。
来年度にはそれらの意見を踏まえて全体的な森林環境基金事業の評価を行い、必要に応じて見直した上で次年度の予算要求に結びつけていきたいと考えている。
本格的な検討は来年度に行うこととしたいが、本日は、そのための意見の整理を少し行っておきたい。これまでの懇談会の意見を大まかに整理すると、以下のようなものかと思う。
(1) 事業実施後にも森林づくりの取り組みが継続していくような仕組みづくりが必要
(2) 木質バイオマスはペレットストーブに限定すべきではない
(3) 森林資源を活用した新たな産業の創出を支援すべき
(4) 森林環境基金事業をもっと積極的にPRすべき
また、その他、想定される検討事項ということでいくつか列挙してみた。
(5) 地球温暖化防止対策への取り組みの是非
(6) 国庫補助事業の導入の是非。
従来にも国庫補助事業ではできないことに森林環境税を充当すべきとの意見が示されていたところであり、これは非常に難しい問題であるが、国庫補助をもらうことで事業量をふやすことができるという考え方もある。
(7) 作業路整備のあり方。現地調査でも見たようにこれまでは非常に簡易な一過性の形で整備していたが、もう少し事業費を増やして山を破壊しないような形でもう少ししっかりしたものを整備した方がいいのかどうかということ。
(8) 森林文化復興事業の今後の進め方
(9) 森林環境交付金(基本枠)の算出のあり方。
森林環境学習については、今年度全市町村で、また、全小中学校の約半数で取り組んでおりかなり定着してきたところではあるが、これをさらに推進していくためには算出方法を見直していくべきなのかどうかということ。
(10) 森林環境交付金(重点枠)の上限または県事業と市町村事業の構成比。
これから重点枠の要望件数がさらに増えていったときに、予算にも限りがあるのでそのへんの上限をどうするのか、または県事業と市町村事業の枠組みをどうするのかということ。
本日は、これらについて深く議論する時間もないが、来年度の検討事項を整理する意味で委員の皆さんから追加意見等を出していただければと思う。
国庫補助事業の導入の是非
【座長】
国庫補助事業とはいかがなものか。夕張市を思い出してしまう。
国庫補助事業があるから整備するわけだが、補助事業が無くなったときに維持ができなくなる。
先程の継続的な森林づくりの仕組みをどうするかということで考えると、補助金は言わば一発イベントであり、そのときの負担を軽減できるということは確かにあるが、絶対に継続できない。維持費の方が実は金がかかる。
国は、箱モノや機械類の整備には金を出してくれるが、人件費にはとにかく金を出さない。当然、維持管理には人の力が必要なわけであり、負担はかさむ一方というのはままある話。
だから、下手をすると今回の森林環境交付金も市町村レベルでそういう使い方をしてしまっている危険性がないとも言えない。そこはかなり論議してきちんと市町村を指導していかないと、先程の委員の話にもあったように、「森林環境税により整備しました」という看板を立てたものの草がぼうぼうという事態にもなりかねない。
そこのところをきちんと考えていく必要がある。
事業のPRの手法
【座長】
子供(小学生)が見ても分かるようなPRを心掛けてほしい。NHKで週末にやっている週間こどもニュースみたいなイメージ。
子供が読んでも分かるものは親が読んでも分かるので、ターゲットを絞って取り組んでほしい。
難しい作業になるかも知れないが、PRが同時に子供のための森林環境教育にもなるというような視点でやっていただきたい。
【委員】
森林づくりに関する様々な優良事例を市町村に紹介していくことも大切。
それがきっかけになり幅広く多くの県民の方を巻き込んでいくことによって、森林を守っていくという意識も醸成されていくのではないかと思う。
PDCAサイクルによる事業の評価
【委員】
森林環境基金事業を今後とも適正に執行していくためには、PDCAサイクルの仕組みを導入し、人が変わっても変わらないような事業評価の仕組みを構築していくことが大切だ。
県の積極的な関与の必要性
【委員】
先日の「森林づくりシンポジウム」の中で岩手県の葛巻町森林組合の竹川さんから、県はお金がなくても県というステータス、信用があるので、県が関与すること自体が非常に大切という話があった。
そのことから、様々な林業が抱える問題についての勉強会のようなものを立ち上げ、県も関わりながらやっていければよいのではないかと思う。
木材の流通システムのあり方
【委員】
昨日の「森林環境フォーラム」の中で稲本先生から、木材の自給率を上げることが大切、そのためには流通システムを変える必要があるという話があった。
元々は安い木材が流通の過程を経て消費者に届く頃には高くなってしまう。
流通システムを変えることは可能なのかどうか。そのへんの検討は必要だと思う。
【座長】
木材の現在の価格はどのぐらいか。
【事務局】
柱用の丸太でも市場で1本千円程度。
【委員】
日本経済全般に言えることなのかも知れないが、中間の業者が多いということはある。
ただ、最近では製材工場からそのまま持って行くような形でホームセンターでも販売するようになっており、そうすると中間経費が削減できるので消費者の小売価格も安くなるし、一方で山元からの仕入れ価格もそれなりに高くなる。
小規模の改装程度だと大工さんもホームセンターに木材を買いに行くようになった。そのような取り組みが段々と始まってきている。
【事務局】
確かに、製材工場そのものが市場などの役割を果たす木材の直送化ということは現に起きている。
単純に考えても、現場から市場、市場から製材工場という木材の運搬経費が、現場から製材工場へ直接運び込むことで、経費の削減につながるということはあると思う。
ただ、市場機能が製材工場へ移管するような側面もあるので、そのようなことも含めての善し悪しということは検討していく必要はある。
木材価格の推移、森林を守るためのポイント
【委員】
国産材のシェアは、最悪の時期は18%ぐらいまで落ち込んでいたが、今は20%ぐらいまで上がってきた。
それは、外材の価格が高くなってきたからであり、これからもその傾向はますます強くなる見込みなので、さらに国産材のシェアは上がっていくものと思われる。
シェアとともに単価も上がってくれればよいのだが。
【委員】
昔は山を持っているとお金持ちだったが、今では木材価格が下がったため伐採適齢期になったものでも出せば赤字になるということで放って置く。せっかく植林しても放置しておく、手をかければかけるほどマイナスになっていくという事態に陥ってしまっている。
今後の木材価格の動向というのは極めて重要だ。
【座長】
森林を守るということについてここ数年来関わってきた現時点での感想だが、森林を守るためには、森林をどうやってお金に換えるかというのが一番のポイントだと思う。その換えたお金を森林に返すことができないからこそ荒れてきているわけであり、とりあえず今は税金を投入しているということ。
昨日の「森林環境フォーラム」の稲本正さんは、木材に対してものすごい付加価値を付けて商売している。高い方がかえって売れるということで、商売のやり方がうまかった。
だから、これまでお金にならなかったことをどのようにしてお金になるような仕組みに変えていくか、ということがやはり最大のポイントではないかと思う。
どうやってお金にするか、どうやったらお金になるか。
【委員】
全く同感。
森林を元気にするため、林業家の方が意欲をもって取り組むため、木材が高い価格で売れるということは、やはり必要なことだと思う。
そのことから、県産材が地元の住宅建設などにどんどん使われていくことは非常に重要であり、個人資産形成に税金を投入することの是非はあるものの、そのことに森林環境税を投入するということも検討する余地はあると思う。
【座長】
では、そろそろ意見も出尽くしたようなので本日の議事を終了したいと思う。
今回が本年度最後の懇談会ということで、委員の皆さんにおかれましては、これまで会の円滑な進行に御協力いただいたことを感謝する。
では、本日の懇談会はこれで終了する。