平成19年度森林(もり)の未来を考える懇談会 第1回発言要旨についてお知らせします
意見交換における発言の概要
議事1 懇談会の開催スケジュールについて
【事務局】
資料1(懇談会の開催スケジュール)を説明。
【委員】
了解。
議事2 平成18年度森林環境基金事業の実績について
【事務局】
資料2(平成18年度森林環境基金事業の実績について)を説明。
県立学校における森林環境学習推進事業について
【委員】
県立高校は県内に100校近くあるのに2校(岩瀬農業、会津農林)しか取り組んでいないのは少しさみしい。教育委員会を通してもっとPRし、普通高校も含めてもっと多くの学校に取り組んでほしい。生物部など直接関係があるところは部活動の取り組みの一環としても行えるのではないか。あと4年間あるので、もっとPRしてより多くの県立高校に関心をもってもらい、取り組んでもらえればよいと思う。
ふくしまの森林文化復興事業について
【委員】
収集した情報の整理・報告書の取りまとめを行ったということだが、それだけで終わってしまうのか、それとも次へとつながっていくものなのか。
【事務局】
各市町村史等の基礎的な資料の中から、2万ページに及ぶような森林文化に関わる情報を取りまとめている。19年度はそれを活用して現地調査などにも取り組んでいきたいと考えている。
間伐材及び木炭を利用した水質浄化技術研究事業について
【委員】
18年度の途中経過を教えてほしい。
【事務局】
18年度は、農業排水の排水路内の浄化施設を対象として調査を実施したが、排水路内よりも田んぼの出口の部分の方がデータが得られやすいということが室内試験により分かってきたので、19年度については試験の方法を一部変更して取り組んでいくこととしている。
森林環境基金事業のPR
【委員】
懇談会では以前から言われていたことだが、森林環境税がどのように使われたのか、それをどのようにして県民に周知していけばよいのかということが非常に大切。事業のPRについて県の考え方を聞きたい。
【事務局】
ホームページを活用するなどより効果的な手法について今後もっと検討していきたい。特に、市町村の森林環境交付金事業については独創的な取り組みが多いことから、今後のよりよい事業構築につなげていくことができるような情報交換の意味も含めてPRのあり方を検討していきたい。
なお、個別事業の評価については、県の事業評価の仕組みと一緒に動いており、正式には11月中旬頃に公表される見込み。
【委員】
県民の皆様からいただいている税なのだから、事業評価しながら実施していくというのは当然のこと。事業評価の結果を公表するだけではなく、県民に対してはなるべく早い時期に、子供達の森林環境教育に多くの市町村が取り組んでいるなど森林環境税がどのようなところに使われているのかその全体像が分かるよう、地方紙の一面を使うなどして大いにPRしていくべきだ。
【事務局】
PRの必要性については十分理解しているし、対応していきたいと考えている。今後もその手法についてはまだまだ検討の余地はあるが、19年度はその一つとして、各農林事務所において18年度に実施した森林整備事業の箇所を県民の方に実際に来ていただいて見てもらおうというような取り組みも考えている。
【委員】
フォーラムのような形でみんなを集めて行うのもよいが、お金もかかるし実際に参加できる県民というのはほんの数%に過ぎないと思う。私も講師を務めたことがあるが、実際に学校に出向いて行う「出前講座」というのはもっと効果的。あまりお金もかからないし、子供達を通じてより多くの県民に森林環境税の取り組みをPRすることができる。教育庁と連携しながらそちらに力を入れた方がよい。
森林環境税の使い道については県民も高い関心をもっているので、なるべくお金をかけないでやるということも大切。例えば、間伐材製の樹木銘板を各学校に配るとか、県民みんなに「どんぐりを拾って植えましょう」と呼びかけるとか。とにかくお金をかけなくてもいいから、県民に自分達が森林環境税を払っていることを分かっていただけるようなことを取り組んでいく必要がある。
ペレットストーブ研究開発事業について
【委員】
ペレットストーブの製造については現在どのへんまで進んでいるのか。
【事務局】
公募により郡山の(株)コスモテックを開発業者として選定し、小型で安全なものという県の仕様書に基づき開発を行い、今年の3月末に試作機は完成した。
これからの課題としては、それを製品として販売するために、より改良を加えたりデザインを工夫するなどして実際にいつの時点で市場に出せるのかということ。試作機としてはすでに出来ているので、後は業者の努力次第である。
【委員】
私は基本的にペレットストーブには否定的。昨年度の懇談会の中で県中・県南地区で現地調査を行った。その時実際にペレットストーブを設置している施設も見たが、そこの人から全然暖かくないと言われた。燃焼効率等まだ未知の部分、問題が多いのではないかと思う。公共施設に入れても全く使われないようなことになれば、県民の皆様の貴重な税金を使うことの一翼を担っている本懇談会の責任も問われかねない。
現地調査の結果、まだまだ改善の余地があるという思いが強くなったので、さらに研究を重ねて早く完成品を作り上げてほしいと思う。
【委員】
私も同意見。デザインの良さやコストダウンということだけではなく、性能そのものについても改善の余地がある。実際にどのように使われているのかなど導入した箇所のチェックもしてほしい。
【事務局】
県がペレットストーブを推進しているのは森林環境税のシンボル事業としての意味合いもある。暖かくないという話もあったが、使用する空間の広さが適当であれば何ら問題は無いはず。
【委員】
コスモテック社は製造だけでなく、販売も行うのか?
【事務局】
そのような契約内容になっている。
【委員】
そうすると、いつまでに製品開発を終了していつからどのような規模で販売を開始するのかという今後のタイムスケジュールをはっきりさせておくということが必要だと思う。試作機ができたということだけで終わってしまうと、ペレットストーブの開発自体が無意味なものになってしまうので、そうはならないようにお願いしたい。
【事務局】
会社とはこれまでに何回か打合せを行っているが、現時点では試作機は特注品のようなもので相当高価になるためにすぐに市場に出すことは出来ない。現段階では40万円程度の売値でないとペイしない。会社としては、来年度には10万円台で販売する計画を持っている。
【座長】
単にストーブを作ればいいということではなく、燃料の供給体制と製造体制をどうするのか、間伐材をどのような流れでペレットにするのかという、そのへんをいかにしてシステム化していけるのかということが肝要だ。岩手からガソリンを使って運んでいたら意味がない。
【事務局】
県内の木質資源を有効に活用していくためには、もっと県内に製造工場がほしい。市町村の中には、エネルギープランを立ててその中でペレット製造工場についても検討を始めているところもある。そのような情報を集めながら、ペレット製造工場の実現化に向けていろいろな支援策は考えていきたい。
木質バイオマスの幅広い活用
【委員】
ペレットストーブを家庭に普及していくのは難しいと思う。あまりペレットストーブにこだわらずに、ペレットボイラーの導入も視野に入れた方がよい。ペレットの消費が一定かつボリュームがあり、これを公共施設に導入していけば将来につながるペレットの利活用になるのではないかと思う。
【委員】
近所の宿泊施設にもペレットボイラーが入っている。ペレットボイラーで沸かしたお風呂は昔の五右衛門風呂みたいによく暖まるということで好評のようだ。ただ、施設に導入するにはある程度の経費がかかるということで、そのへんは解決していかなくてはならない課題かと思う。
【委員】
ペレットボイラーの導入については賛成。ペレットストーブの普及を図ることも悪くはないが、それでは冬しか使わないので、ペレットを作る工場としては大変になる。例えば、冬に備えて夏の終わりから冬の間は稼働させるけれども春になればまた工場を止めざるを得ないというような季節変動が、ペレットストーブが普及すればするほど大きくなってしまう。
そのようなことから、学校などの公共施設もしくは市町村が運営する温泉施設を新設・改修する際のペレットボイラーの設置費用を森林環境税の対象とすることでペレットボイラーの普及も図っていくような、なるべく季節変動をなだらかにする方策を考えていく必要があると思う。
【事務局】
ペレットストーブだけでなくボイラーもという各委員の意見は十分に理解している。年間通して利用できるのでペレットストーブに比べれば季節変動が少ないのは事実。
ただ、ペレットボイラーは1千万円以上と高価であり、いわき市の公共施設に設置されているものも国庫補助を活用して導入されている。
確かに、木質バイオマスの利活用を推進していくうえでボイラーは欠かせないことから、今後の検討課題として認識している。
【座長】
最近ではバイオエタノールで木材が利用できるのではないかということがかなり盛んに言われている。あまりペレットのみに限定することなく柔軟に考えてほしい。
【委員】
福島県にはハイテクプラザという立派な研究施設があるのだから、木質バイオマスについて調査研究のテーマの一つとして取り上げてもらったらいいのではないかと思う。
間伐材搬出支援事業について
【委員】
間伐材の搬出と作業道の整備を支援する補助事業。森林は所有者が手入れをすれば公益的機能を発揮できるわけだから、本来は所有者が森林を整備することを支援する事業だと思う。ただ、この事業では業者関係しか補助の対象としていないようだ。それはなぜか?
【事務局】
森林組合または認定事業体がこの事業を利用することを基本としている。個人の場合だと実際に間伐材を搬出したのかどうかなどの確認の方法が難しい。そのへんは御理解をいただきたい。
【委員】
いわき市でも類似の事業を以前から実施していたが、今回この森林環境税の事業ができたために無くなってしまった。事業内容が違うのだから無くなっては困るということでいわき市に対しては要望しているが、個人の方は県の事業の補助対象にならないので大変な思いをしている。検討課題とされたい。
【座長】
今の件に関しては気になることが一点ある。森林環境税によってこの事業ができたためにいわき市では従来実施していた予算を削られたと言うことで、これは代替可能性が存在する事業に時限立法である森林環境税を投入しているということになっているのではないのか。これは本来の趣旨に反するのではないか。
【委員】
いや、事業内容が違う。いわき市の場合は個人を対象にしている。県の場合は個人を対象としていない。
【座長】
なるほど。ただ、この事業が一定の効果があるとすれば、時限立法である森林環境税ではなく、経常的な森林関係の市町村予算など継続的な仕組みの中に組み入れてやってもらった方が効果的だと思う。効果的な補助金の手法を市町村に普及していくということであればまだ話は別だが、単に臨時収入があったからこの際使ってしまおうという発想だとこれは本来の趣旨から外れるのではないかと思う。
森林環境学習の推進
【座長】
もりの案内人をもっと学校などの出前講座の方にも活用していければいいと思う。
【委員】
すでに活動している。学校の先生とも話し合いながら少しずつ手法を改善して取り組んでいる。
【座長】
広がりはあるのか。
【委員】
少しずつ広がっている。学校行事というものは年度単位で決められており、途中からの追加は難しい。税導入二年目の今年度は、かなり忙しくなりそう。
【委員】
税の使い道として県民の皆様に一番理解が得られるのは、子供達への森林環境教育だと思う。もっと森林環境教育に力を入れるべきだし、必要に応じて予算も増やすべきだ。
【委員】
交付金事業の基本枠については、かなり学校教育の方にも使われているようだ。私自身も最近講師としてとある中学校へ行ってきたが、生徒達が熱心で感心した。県民の意識の醸成、学校教育という面では随分効果が上がってきていると思う。
現場における問題点について
【委員】
今回導入された森林環境税はすばらしい取り組みだが、実際の現場では問題も起きているようだ。
例えば、市町村有林でも分収林制度があって市町村から地元の人達が借り受けて整備することになっているが、高齢化もあってなかなか進まないのが現状のようだ。これを森林環境税で整備することはできないのかという声が挙がっている。また、福島県でも今回森林整備業務に関して競争入札制度を導入したが、これまで築き上げてきた森林所有者と森林組合の信頼関係というものが無視されてしまい、それでいいのかということも言われている。
(議事3) 森林環境基金事業の評価と見直しについて
【事務局】
資料3(森林環境基金事業の評価と見直しについて)を説明。
今後、懇談会の皆様の意見を踏まえながら事業の見直しを行っていくわけだが、維持していかなければならないものもあることを御理解いただきたい。
先ず、水源地域の森林整備については、5年間で9千ha行うということを県民に対しても説明済みなので、これは変えられない。
次に、交付金事業の中の基本枠。これも一定のルールに基づいて行っているので変えられない。
この2つで基金事業全体の約7割程度の予算を占めることから、事業費的には残りの3割の中で調整していくことになる。
継続的な森林づくりの取り組みに向けて
【委員】
森林環境税について、この5年間が終わった後どうするのかということも考えながら計画を立てていく必要があるのではないか。5年間だけでなくもっと継続して取り組んでいくべきではないかと思う。森林環境教育についてももっと長期のスパンで議論していく必要がある。今後、そのへんの長期展望も示していってほしい。
間伐材の搬出支援にかかる新たな視点
【委員】
今後、間伐を進めていく中で、材木として利用できないようなものも有効に活用するため、紙の原料として使うことはいかがか。その時の運搬費用を森林環境税で支援することで一層間伐が推進され、ひいては温暖化対策にもつながる。20年度事業構築の中で前向きに検討してほしい。
PRを行う上での視点
【委員】
森林環境税のPRを行う上で、表現の仕方を分かりやすくする等ということだけではなく、どのような手段で行うのかということについても検討して案を示されたい。
【座長】
同感。いつ、どこで、どのような方法でPRを行うのかという広報計画を立てるべきだ。それを踏まえて懇談会でもいろいろとアイディアを出していきたい。事業費の5%ぐらいはPR費用として計上してもいいのではないか。
【委員】
どこにどのような形でお金が使われているのか県民に見せていくことも必要だ。森林整備箇所に看板を立てたり、県民みんなで山に木を植えたりとか県民に見えるような形で、またそれをマスコミなども活用して情報発信していく。
そうした努力をしていかないと、この5年間で一体何をやったのかわからなくなってしまい、その後に続くことは無いと思う。
森林資源利活用の視点
【委員】
森林資源を活用した新たな産業を創出することは、なかなか難しい。発想を転換し、昔は木を使っていたのに今は化石燃料に置き換わってしまったようなもの、それを掘り起こし再び森林資源を活用していくというようなことはできないか。森林文化にも通ずるものがあるが、新しいものばかりに着目するのではなくて、むしろそのような視点の方が大切だと思う。
交付金事業の予算枠と重点枠への上限設定
【委員】
交付金事業の予算枠については問題意識を持っている。重点枠のうち、「県産間伐材の利活用推進」については市町村毎の上限額が定められており、「木質バイオマスの利活用推進」については市町村毎の上限額までは定められていないものの、対象が市町村有施設であることからおのずと制約がかかる。その点、「森林整備の推進」については、事業箇所数の制限が無いことから、市町村はいくらでも要望が可能である。実際、要望事業数はどんどん増加しており、このまま行けば県事業を圧迫しかねない。
そこで、「森林整備の推進」についても一市町村あたり500万円という上限額を設定する案を提示したい。これはあくまでもたたき台ということだが、そのように何らかの制約を行うことで、市町村の中であらかじめ優先順位を付けてもらうということも必要だと思う。
【委員】
確かに一定の制約は必要かも知れない。市町村毎に上限額を定めるのがいいのか、件数で制限した方がいいのか。事務局に案を示してもらい、それを元に検討すべきだ。
【事務局】
いくつかのパターンを考えてメリット、デメリットも整理の上次回以降案を提示していくこととしたい。
交付金重点枠による継続的な森林(もり)づくりの必要性
【座長】
森林環境税は5年間の時限立法であることから、市町村においては、これが無くなったときにその後どうしていくのかということも考えた上で事業を構築していってほしい。
【委員】
同感。事業実施後の維持管理というものもしっかりと見据えて事業を構築してもらう必要がある。
ソフト事業の取り組みの視点
【事務局】
今回出された意見と過去に出された意見で食い違う部分がある。以前はハード事業のウェイトが高くて適正ということであったが、今回はソフト事業の充実を図るべきという意見が出されている。そのへんはもう少し議論を深めてほしい。
【座長】
なるほど。ただ、議論をするにしてもソフト事業の中で、どのようなことを実施して、どのような人達が参加されて、どのような意見が出されているのか、どのような評価をされているのかといったことがよく分からない。ソフト事業はそのへんの検証がなかなか難しいとは思うが。
【委員】
ハード事業は進捗率などの数字的なものが出てくるので分かりやすいが、ソフト事業の方は中々そのようにストレートには浸透していかなくて、県民の反響も少し遅れて上がってくるものだと思う。新しい取り組みを行っているわけだから、拙速に成果を求めるのではなく、少し様子を見るということも必要だ。
だから、あまり予算規模にこだわるというような話では無いと思う。
【座長】
同感。ソフト事業の予算を増やせということではなく、実施内容とタイミングの問題。今回の取り組みを契機としてどのようにして広げていけるかがポイント。
― (議事4) 平成19年度森林環境交付金事業(地域提案重点枠)追加要望分の審査については非公開 ―
【座長】
では、そろそろ意見も出尽くしたようなので本日の議事を終了したいと思う。事務局には次回の事業の評価と見直しに向けて、本日出された意見の整理をお願いする。
では、本日の懇談会はこれで終了する。