■日時 平成30年2月6日(火)14:00~14:30
■会場 応接室
【発表事項】
平成30年度当初予算について
【質問事項】
平成30年度当初予算について
平成30年度当初予算について発表いたします。
一般会計当初予算の総額は、1兆4,472億円であります。これは前年度と比較して15.8%の減となります。このうち、復興・創生分として6,178億円を計上いたしました。
歳入のうち、県税収入につきましては、前年度比で130億円増の2,341億円、地方交付税等につきましては、前年度と同程度の3,054億円であります。また、「原子力災害等復興基金」を始めとした各種基金を有効に活用し、必要な財源の確保に努めました。歳出については、各事業の効果をしっかり検証しながら、内部管理経費の節減や事務事業の見直しに努め、予算編成を行いました。
平成30年度は、復興・創生期間の3年目であり、折り返しとなる重要な一年であります。このため、当初予算につきましては、一日も早い復興の実現と地方創生に向けた取組の成果を、県民の皆さんお一人お一人に実感いただけるよう更に挑戦を続け、福島の未来を切り拓くための予算として編成いたしました。それでは、新年度予算の主な事業について御説明いたします。
はじめに、避難地域の「復興」を加速させる取組について説明いたします。4月に「ふたば医療センター」を開所させるほか、再開した介護施設等の安定的な運営に対する支援や、県外に避難されている方々の心のケアの充実に取り組んでまいります。また、原子力被災12市町村の事業再開や営農再開を引き続き、丁寧に支援するとともに、東京電力による家賃賠償が本年3月末までとされている世帯に対し、一定期間、家賃等の支援を行うなど、避難地域の復興に全力で取り組んでまいります。
続いて、浜通りの再生についてであります。福島イノベーション・コースト構想につきましては、ロボットテストフィールドの整備を着実に進めるとともに、人材育成や交流促進に向けた取組も行ってまいります。また、今年の夏に一部営業を再開するJヴィレッジの施設整備や新駅設置への取組のほか、復興祈念公園やアーカイブ拠点施設の整備に向けた取組も着実に進めてまいります。なお、企画調整部内に「福島イノベーション・コースト構想推進室」を新設し、体制強化を図ります。
次に、産業振興についてであります。農業法人や企業等が連携し、生産から流通・販売まで、一貫して取り組む新たな農業ビジネスへの参入を支援するほか、水産種苗研究・生産施設を再開させるとともに、県産水産物の競争力強化を図るなど、農林水産業の一層の振興に取り組んでまいります。また、実用化開発を事業化に向けて取り組む企業への寄り添った支援を行うとともに、航空宇宙産業への参入に向けた技術力向上や一貫生産体制の構築を支援するなど、商工業の更なる振興に努めてまいります。加えて、水素や再生可能エネルギーの一層の普及拡大にも取り組んでまいります。
次に、風評・風化対策についてであります。企業の発信力を活用した新たな情報発信や、市町村等との連携により、集客力の高い施設でのプロモーションを行うなど、福島の魅力と元気を発信してまいります。また、県産農林水産物や加工品について、ブランディングやパッケージングの強化を図るほか、工業製品についても、コンセプトや意匠性等を重視したデザイン指向のものづくりを支援するなど、本県産品の新たな市場を切り拓く取組を積極的に進めてまいります。
次に、安心して住み、暮らすための環境づくりについてであります。除染につきましては、市町村と一体となって除去土壌の着実な輸送等を推進するとともに、イノシシ等による鳥獣被害対策については、直接捕獲などに加え、将来の対策を担う人材の育成にも取り組んでまいります。 また、避難指示解除地域の安全・安心を確保するため、防犯カメラ等を貸与する取組を開始いたします。さらに、理学療法士や作業療法士等を安定的に養成する「(仮称)県立医科大学保健科学部」についても、平成33年4月の開設に向けて着実に整備を進めてまいります。本県の「復興」を加速するため、これらの取組をしっかりと推し進めてまいります。
次に、「地方創生」を推進する取組について御説明します。まず、出産・子育て環境等につきましては、妊娠から子育てまで切れ目のない支援を行う「子育て世代包括支援センター」の市町村への設置を更に促進するとともに、発達や障がい等に関するワンストップ窓口となる「地域支援センター」を全ての特別支援学校に設置し、相談体制を充実させてまいります。また、特に待機児童が多い3歳未満を対象とする保育施設や、働きやすい職場環境づくりに向けた企業内保育所の整備等への支援、さらに、土曜日等の休園日における預かり保育の促進や、保育人材の確保など、安心して結婚、出産、子育てができる環境をしっかりと整えてまいります。
次に、教育環境等につきましては、小中学生一人一人の学力をきめ細かく把握し、着実に伸ばす取組を進めるほか、今後導入が予定される新たな大学入試制度に向けて、高校における英語力向上を図る取組や、浜通りを始め、中通りや会津地方の高校生がイノベーション・コースト構想の最先端技術に触れる取組等を行ってまいります。また、支援を必要とする子どもに適切に対応するため、伊達地区に特別支援学校を整備するほか、居場所づくりに取り組む団体への支援や保護者への各種支援制度の周知等に努め、教育環境の充実にしっかりと取り組んでまいります。
次に、健康長寿の推進についてであります。県民の皆さんお一人お一人に健康への理解を深めていただけるよう「ふくしま健民検定」を実施するほか、健康関連企業からの助言を受けながら従業員の健康づくりに取り組む企業の増加を図るとともに、優良事業所の認定や表彰制度を創設するなど、元気な職場づくりを一層応援してまいります。また、減塩や野菜の摂取を促すイベントを開催するほか、子どもの食環境改善に向けた取組を関係機関が一体となって推進するなど、健康長寿県の実現を目指し、県民運動を更に大きく展開してまいります。
次に、定住・二地域居住の推進と若者の定着・還流についてであります。首都圏在住の本県出身者等を対象に、福島の良さを再認識していただく機会として「30歳の同窓会」を開催するほか、首都圏における移住相談体制の強化や、市町村等が行う交流の場の確保への支援など、定住・二地域居住の更なる推進に取り組んでまいります。また、高校生等が地元企業や農業の魅力に触れることにより定着を促す取組を進めるなど、若者の定着・還流に向け、様々な施策に挑戦してまいります。
次に、交流人口の拡大についてであります。引き続き、ニーズを的確に捉えたプロモーションなど、国内外からの積極的な誘客に努めるほか、JR只見線の全線復旧に向けた取組や利用促進、また、会津地域の鉄道と観光資源を結ぶ二次交通確保への支援等を通し、交流拡大につなげてまいります。また、全国植樹祭や太平洋・島サミット、さらには、世界水族館会議や東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた機運醸成の機会等を通じ、広く本県の魅力を発信してまいります。なお、文化スポーツ局内に「オリンピック・パラリンピック推進室」を新設し、体制強化を図ります。福島ならではの「地方創生」を実現するため、これらの取組をしっかりと進めてまいります。
以上のとおり、平成30年度当初予算における総合計画の11の重点プロジェクトは、705事業で、計6,820億円を配分し事業構築を行いました。平成30年度においては、県民の皆さんとともに、引き続き、前例のない課題に果敢にチャレンジするとともに、郷土に対する誇り「ふくしまプライド」を確立し、福島県の復興・創生を一人一人に実感していただけるよう、「新生ふくしま」の実現に向けて全力で取り組んでまいります。
【記者】
今年度の予算の説明の時に、知事は「攻め」という言葉を使われたと記憶しているのですが、来年度の予算を一言で言うと、どのようになりますか。
【知事】
来年度の予算をネーミングとして申し上げますと、「復興・創生チャレンジ予算」になります。福島県がこれから福島の復興と地方創生、人口減少対策を進めていくためには、攻めの姿勢、チャレンジの姿勢が重要です。一方で、福島県がこれまでの丸7年間進めてきた守り、土台を固める部分も重要ですので、土台を固めることをきちんと進めつつ、一方で挑戦、チャレンジを続けるという思いを込めて来年度の予算のネーミングを考えました。
【記者】
予算を拝見しますと、ポスト復興の部分についても徐々に色濃くなってきていると思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
【知事】
福島県の場合、復興には相当長い期間がかかります。現在、国が定めている集中復興期間と復興・創生期間でトータル10年間になりますが、この期間でできる限り復興を進め、その上で、その期間を超えてもなお、原子力災害等に伴う復興の問題は根強く残りますので、そのポスト復興をしっかり頭に入れて、現時点での施策を構築していく必要があります。そして大切なことは、復興と同時に人口減少が急激に進んでいるこの福島の重い現実を頭に置いて、人口減少対策、地方創生にどのような具体的な施策を埋め込んでいくか、今回の予算の中ではこういった点に配慮しました。
【記者】
今回の予算編成の中で、特に知事の思い入れの強い、強調した予算はどちらになりますか。
【知事】
今の質問にお答えする前に、まず基本的な考え方を改めてお話しします。県民の皆さんに復興と地方創生に向けた取組の成果を実感していただくことができるように、挑戦、チャレンジを続けて福島の未来を切り拓くための予算を編成しています。基本的な考え方の一つは「復興」になります。これは、被災者の生活再建や浜通りの再生など、避難地域の復興に引き続き全力で取り組むとともに、産業振興、風評・風化対策、安心して暮らせる環境づくりを推し進めて、復興を更に加速してまいります。
基本的な考え方の二つ目が「地方創生」になります。「地方創生」については、結婚・出産・子育て支援の充実を始め、健康長寿の推進、定住・二地域居住、若者の定着還流、交流人口の拡大など、福島ならではの地方創生の実現に取り組んでまいります。
以上が基本的な考え方です。お尋ねの力を入れた点をあえて三つ選ばせていただきます。
一つ目が、「届く発信をする」ということです。単に風評を払拭することにとどまるのではなく、福島県の持っている魅力、宝物を国内外の皆さんに届ける取組を具体的に進めていきたいと考えています。具体的な事業としては、Jヴィレッジの再開や全国植樹祭、太平洋・島サミット、そして世界水族館会議など、大切な機会がたくさんあります。こういった機会を捉えて、県民や国内外の皆さんに復興に取り組む福島県の姿を実感していただきたいと思います。もともと、底力があり高い品質の農林水産物や加工品、工業製品、あるいはサービスについて、パッケージングやネーミングなどを磨き上げてイメージを刷新し、新しい市場を獲得し開拓する、こういった点に力を入れていきたいと考えております。
二つ目は、健康づくりです。県民の皆さん一人一人に健康への理解を深めていただく「ふくしま健民検定」を実施します。事業所における健康経営の取組を推進するために、優良事業者の認定や表彰制度を創設します。さらに、減塩、塩を減らす取組や、野菜の摂取を促すイベントを開催するといった取組を進めてまいります。
三つ目は、結婚・出産・子育て支援の充実です。相談の身近なワンストップ窓口となります「子育て世代包括支援センター」の市町村への設置を更に促進してまいります。発達や障がい等の相談のワンストップ窓口となる「地域支援センター」を全ての特別支援学校に設置いたします。また、特に待機児童が多い3歳未満を対象とする保育施設や、企業内保育所の整備を支援してまいります。そして、保育人材の確保をしっかりと推進してまいります。
今、述べた三つ、届く発信、健康づくり、子育て支援、こういったことに今回の予算の中では力を入れて編成いたしました。
【記者】
今の説明からは「人口減少を食い止めよう」という知事の強い意志が感じられるのですが、数値でもし表現できるならば、今回の施策によって人口減少の食い止めをどこまで実績として目指しているのか教えてください。
【知事】
数値でお示しすることは難しい部分があると思います。先週、人口データが公表されましたが、昨年2017年の人口の社会的な流出が全国ワーストという極めて厳しい状況になっています。まず、この状況は脱したいという強い思いを持っております。そのためにも今回、若い世代に戻って来ていただけるような、あるいは福島に来てみたいと思えるような施策として、「30歳の同窓会」を始めとした、今既に他地域で働いておられる方が福島に戻ろうと思うきっかけをつくる取組や、交流人口の増加、観光客の増加を進める中で、福島の魅力を全国に発信して福島のファンを増やす取組、あるいは自然減への対応になりますが、高齢者の方も含めて福島県に今住んでおられる方々が、できる限り元気で健康長寿であることが県民の幸せに直接つながりますので、そういった様々な施策を総合的に展開していくことが、この厳しい状況を脱するために必要だと考えております。
【記者】
震災から7年が経ち、復興の加速化が必要である一方で、以前からの人口減少の課題に対応する必要もあります。復興・創生期間が折り返し、終了を控えており、財源確保のために国への要望が今後更に必要になってくると思いますが、知事の考えをお聞かせください。
【知事】
復興・創生期間が5年間あり、特に新年度は折り返しの3年目になりますので、この復興・創生期間において必要な財源を確保した上で、復興・創生に役立つ様々な施策をより効果的に実施していくことに力を傾注していきたいと考えています。5年間の復興・創生期間をつくるに当たり、当時の復興大臣や政府と私自身が直接様々な折衝を繰り返して、この5年間における福島県の財源の全体の大枠を確保しております。その上で、毎年、実際に具体的にこういう政策をやりたいということを例えば官邸や大臣、副大臣、あるいは政府の幹部と私自身が直接お話をしながら財源を確保し、また、県庁内の各部局も直接お話をしながら、できるだけ福島県にとってより役に立つ形での具体的な中身の構築を続けております。新年度の国の予算においても、福島県のこの新しい当初予算をバックアップする財源を100%確保していただいておりますので、当面の財政運営は着実に行っていけると考えております。一方で大切なことは、復興・創生期間の5年を加えたトータル10年でも、それで福島の復興や創生の全てが終わるわけではありません。ポスト復興庁の議論もあります。その後の財源確保の在り方も含め、今後、国に対して福島県の現状、そして今後の財政需要、展望を、私が直接足を運んで熱く訴えながら、今後の財源確保、特に中長期的な財源確保や制度構築に一生懸命力を尽くしていきたいと思います。
【記者】
今回の当初予算はおそらく全体の額だけで見ると原発事故後最少で、初めて1.5兆円を下回ったと思いますが、この点についての受け止めをお聞かせください。
【知事】
平成30年度の当初予算では、被災者の生活再建支援や、福島イノベーション・コースト構想の推進、復興関連の道路整備を始め、福島県の復興と地方創生を着実に進めるために必要な予算をしっかりと確保したところです。そして、予算規模についてですが、住宅の除染が完了し、また、復興公営住宅の整備が着実に進んでおり、さらに、災害復旧事業など、復旧・復興が進んでいることにより、結果として今回の予算規模になったものと受け止めております。
【記者】
風評・風化対策について震災から7年になろうとしているところで、風評や風化の潮目が変わってきているところもあると思いますが、知事はその変化をどのように受け止めて、今回の当初予算にどのように反映させたのかについてお聞かせください。
【知事】
風評の話から入ります。丸7年の間、私自身、様々なところでトップセールスを行ってきました。その実感としては、我々の努力を続けることによって、ある程度、風評が和らいできた、薄らいできたと感じます。一方で、昨年のEUの問題もそうですが、様々な国内のアンケートの結果を見ても、根強い風評の問題、こびりついた風評の問題は残念ながら変わっておりません。福島県産の農産物で言いますと、相変わらず価格差があります。また、首都圏や大阪の大きな店舗の常設棚に常に置いていただける状態になっていないなど、まだまだ解決していない部分もあります。風評との戦いは長いものがあります。例えば、今後、福島第一原発の廃炉作業中に何らかのトラブルがあると、また後戻りする可能性もゼロではありません。そういう意味でこの風評との戦いは長い時間がかかり、腰を据えて取り組まなければいけないという思いを自分自身の真ん中に持って、関係機関と連携して取り組んでいきたいと考えております。
次は風化の問題についてです。風化の問題は、丸7年が経ち今年は8年目に入りますが、今度は逆に、時間が経てば経つほど風化が進みます。もちろん風化が進んで良い意味でプラスの部分もあるかもしれませんが、大切なことは、福島県の震災、原発事故、風評というこの複合災害の問題が過去形ではなく、残念ながらまだ現在進行形だということです。現在進行形であるから、風化が進んでしまうことは、全体として問題であると受け止めております。したがって、特に国、政府、東京電力に対して、福島の問題は長く期間が必要な戦いなんだ、今の現状はこうなんだということを訴え、また国内外に対しては、福島の復興がここまで進んでいるという光の部分、一方でまだまだこういう難しい課題、重い課題を抱えて苦しんでいる、悩んでいるという影の部分、この光と影を正確に発信し、全体として風化の問題を和らげていく、こういう努力も併せて継続していかなければいけないと考えております。
【問合せ先】
平成30年度当初予算について
→ 総務部財政課 電話024-521-7027