【知事 冒頭発言】
福島県民の皆さんに、謹んで新年の御挨拶を申し上げます。
3期目の県政を担わせていただくこととなり、新たな気持ちで新年を迎えました。選挙期間中に頂いた叱咤激励の一つ一つを改めて思い起こし、その期待にしっかりと応え、県民の皆さんの願い、希望をかなえることができるよう、引き続き、全身全霊で取り組んでいく、その思いを強くしたところであります。
昨年は、帰還困難区域では初となる避難指示の解除が実現し、全町避難が続いていた双葉町においても、一部の避難指示が解除されるなど、福島の復興は、新たな段階に向けた大きな一歩を踏み出しました。
また、JR只見線が、豪雨災害を乗り越えて11年振りに全線で運転を再開したほか、全国新酒鑑評会における金賞受賞数9回連続日本一の快挙達成、さらに、県産品の輸出額が過去最高を更新するとともに、県内への移住者数や新規就農者数も過去最多を更新するなど、これまで続けてきた挑戦が目に見える形となって現れております。
一方で、避難地域の復興・再生、廃炉と汚染水・処理水対策、風評と風化の問題を始め、急激に進む人口減少対策、度重なる自然災害からの復旧、さらには、長引く新型コロナウイルス感染症や原油価格・物価高騰への対応など、本県は多くの困難な課題を抱えております。
そのような中、今年は、第2期復興・創生期間の折り返しを迎えます。様々な困難に立ち向かいながら、福島の復興と地方創生を更に加速させていくため、福島に思いを寄せてくださる全ての方々と連携・協働の輪を広げながら、全庁一丸となって取り組んでまいります。
以下、県政の重要課題に沿って、新年の主な施策についての考え方をお話ししてまいります。
はじめに、新型コロナウイルス感染症につきましては、全国的に感染の拡大が続き、本県においても、連日、多くの新規陽性者が確認され、医療の負荷が高まっていたことなどから、昨年12月16日に「福島県医療ひっ迫警報」を発出し、医療機関の負荷を減らすための取組や感染者を減らすための取組を県民の皆さんにお願いしているところであります。
引き続き、医療提供体制の確保やワクチン接種率の向上、検査体制の拡充に努めるなど、県民の皆さんの命と健康を守るため、新型感染症対策に全力で取り組むとともに、地域経済の維持・再生を図ってまいります。
次に、原子力災害からの復興・再生についてであります。
地域によって復興の進捗は大きく異なり、時間の経過に伴って課題も複雑化、多様化しているほか、新たな課題も顕在化するなど、本県の復興はいまだ途上にあります。
引き続き、国や市町村等と連携しながら、「第2期福島県復興計画」や福島復興再生特別措置法に基づく「福島復興再生計画」に掲げた様々な取組を着実に進め、福島の復興と再生を前進させてまいります。
また、帰還困難区域内の特定復興再生拠点区域においては、今春の避難指示解除に向け、富岡町、飯舘村、浪江町で準備宿泊が実施されるなど、住民の皆さんの帰還に向けた動きが加速しております。一方で、拠点区域外の避難指示解除に向けた除染の手法や範囲等の具体化、さらには、帰還意向のない方々の土地・家屋等の取扱いなどの課題が残されていることから、引き続き、各自治体と真摯に協議を重ね、その意向を十分に踏まえながら、帰還困難区域全ての解除に向けて、最後まで責任を持って取り組むよう、国に強く求めてまいります。
福島イノベーション・コースト構想につきましては、産業集積や人材育成、交流人口の拡大を進めていくほか、創造的復興の中核拠点となる国際研究教育機構については、昨年、本施設及び仮事務所の立地場所が決定し、今年4月に設立が予定されております。機構が地域と結びついて成果を生み出し、その効果が自治体の垣根を越えて、広範なエリアに還元されるよう、国、市町村、関係機関等と連携しながら取組を進めてまいります。
次に、環境回復についてであります。
ALPS処理水の取扱いにつきましては、これまで、国に対し、関係者への丁寧な説明や情報発信の充実強化、万全な風評対策に責任を持って取り組むことなどを強く求めてまいりました。
処理水の問題は、福島県だけでなく、日本全体の問題であり、県民や国民の皆さんの理解を深めていくことが重要であります。
引き続き、処理水の処分に関する基本方針等について、丁寧かつ十分な説明を重ね、関係者の声にしっかりと耳を傾け、その思いを真摯に受け止めながら、信頼関係を構築し、理解が得られるよう取り組むとともに、行動計画に基づき、政府一丸となって、万全な風評対策に取り組むよう、あらゆる機会を通じて国に強く求めてまいります。
また、県内原発の全基廃炉が安全かつ着実に進むことが福島復興の大前提であることから、今後とも、国、東京電力の取組をしっかりと監視してまいります。
次に、風評・風化対策についてであります。
昨年は、英国などにおいて食品の輸入規制が撤廃され、規制を行っている国・地域が、原発事故直後の55から12まで減少するなど、着実に取組の成果が現れてきております。
引き続き、国や関係機関等と連携しながら、科学的根拠に基づいた正確な情報や県産品の魅力を広く発信するとともに、今月16日には、私自身が米国を訪問し、県産品の品質の高さや、おいしさを伝えるトップセールスを実施するなど、販路拡大に向けた取組を積極的に進めてまいります。
次に、産業政策についてであります。
商工業の振興につきましては、地域産業の持続的発展に向けて、商工団体等と連携した経営基盤の強化や、多様な人材の確保、誰もが働きやすい職場環境づくりなどに取り組み、中小企業が主役となった産業振興を進めてまいります。
加えて、新型感染症や物価高騰等の影響により落ち込んでいる県内経済の回復を図るため、プレミアム付き電子商品券の発行等による需要喚起策に取り組むほか、中小企業の経営安定化に向けて資金繰りを支援するなど、きめ細かな支援に努めてまいります。
さらに、ロボット、航空宇宙、医療など、新たな産業の分野においては、参入に必要な資格や認証の取得、地元企業の技術力向上を支援するなど、「メードイン福島」の革新的な技術や製品が生み出されるよう、関連産業の育成・集積を進めてまいります。
また、本県において、水素を活用した新たな未来のまちづくりに向け、県内のスーパーやコンビニ等での配送を中心とした燃料電池小型トラックの社会実装が、国内で初めて開始されます。
引き続き、関係する事業者の方々と連携しながら、水素の利活用拡大や、関連産業の集積を通じた水素社会の実現に向けて、積極的に取組を進めてまいります。
農林水産業の振興につきましては、需要に応じた米の生産や、収益性の高い園芸品目等の導入、さらには、多様な担い手の確保・育成と農地の利用集積などを進め、生産力の強化に取り組むとともに、「福、笑い」や昨年デビューを果たした「ゆうやけベリー」を始めとする県オリジナル品種の活用、GAPの推進、県産農林水産物の安全性と魅力に関する戦略的な情報発信などにより、「福島ならでは」のブランド力強化に取り組んでまいります。
また、今般の高病原性鳥インフルエンザ対策につきましては、養鶏場における防疫体制を強化するほか、影響を受けている養鶏農家の資金繰り等への支援を行うなど、養鶏農家の皆さんが安心して経営を継続できるよう、しっかりと対応してまいります。
次に、地方創生・人口減少対策についてであります。
県内への移住につきましては、福島での暮らしや仕事に関する総合的な情報発信を始め、移住希望者のニーズを踏まえた丁寧な相談対応、副業人材のマッチングなどによる関係人口の創出に加え、テレワークの普及により、都市部の企業に勤めたまま地方に移住して仕事をすることが可能となったことから、「転職なき移住」にも力を入れ、県内への新たな人の流れを創り出してまいります。
また、少子化対策につきましては、出会いや結婚の希望をかなえ、安心して妊娠・出産・子育てができるよう、市町村等と連携した出会いの場の提供や、不妊治療支援体制の充実強化、18歳以下の医療費無料化を始めとした経済的負担の軽減、地域の実情に応じた多様な子育て支援サービスの充実を図るなど、ライフステージに応じた切れ目のない支援体制を構築してまいります。
次に、子ども・若者の育成についてであります。
「学びの変革」を進め、ICT等の先進技術を活用した多様な学びを推進し、一人一人に最適な学習環境づくりに取り組んでいくほか、復興・創生の途上にある本県だからこそ、福島の良さや地域課題を題材とした探究学習を推進するなど、福島で学び、福島に誇りを持つことができる「福島ならでは」の教育を進めてまいります。
また、県立高等学校改革を着実に推進するとともに、再編整備に伴う空き校舎等への対応についても、市町村への財政的な支援を含めた具体的な検討を速やかに進めてまいります。
次に、県民の健康増進についてであります。
本県においては、メタボリック・シンドロームを始めとする健康指標の悪化が大きな課題となっていることから、「食・運動・社会参加」を三本柱に、「健民アプリ」を活用した運動習慣の動機付けや「ベジ・ファースト」の推進など、県民の皆さんがチャレンジしやすい様々な取組を実施していくとともに、大型小売店や飲食事業者と連携した減塩対策など、食環境の面からも健康づくりを推進してまいります。
また、コロナ禍において課題となったがん検診については、受診率の向上に向けた取組を進めるとともに、若い世代を対象とした、がんの正しい知識の普及や検診の重要性の啓発に取り組んでまいります。
次に、地球温暖化対策についてであります。
世界的な気候変動への対応は、本県においても喫緊の課題であります。昨年策定したロードマップの下、県民総ぐるみによる省エネルギー対策の徹底や、再生可能エネルギーの最大限の活用など、「福島県2050年カーボンニュートラル」の実現に向けて、取組を進めてまいります。
次に、インフラの復旧・整備についてであります。
公共インフラにつきましては、被災地における復旧工事の早期完了はもとより、本県の復興と地方創生を支える「ふくしま復興再生道路」を始めとした基幹道路網の整備や、橋りょう耐震化などの「防災・減災、国土強靱化」の推進により、安全で信頼性の高い道路ネットワークの構築に取り組んでまいります。
また、激甚化・頻発化する水災害に対応するため、福島県緊急水災害対策プロジェクトによる河道掘削や堤防の強化等に加え、流域内のあらゆる関係者が協働して水害の軽減を図る「流域治水」の取組など、防災・減災対策にスピード感を持って対応してまいります。
JR只見線につきましては、昨年10月1日に全線で運転を再開し、県内外から多くの方々に御利用を頂いております。こうした状況を一過性に終わらせないためにも、引き続き、地域資源の磨き上げや新たな魅力の創出、只見線ならではのおもてなしを展開するなど、沿線市町村、団体等と連携して、利活用の促進に取り組んでまいります。
以上、新年の県政運営に関し、所信の一端を申し上げました。
今後とも、直面する様々な課題にしっかりと対応し、挑戦を「シンカ」させながら、総合計画に掲げた目標を一つ一つ着実に実現し、県民の皆さんお一人お一人が夢や希望を持ち、豊かさや幸せを実感することができる未来を創るため、全力を尽くしてまいります。
皆さんの一層の御支援と御協力をお願い申し上げまして、新年の御挨拶といたします。
【質問事項】
【記者】
知事が常々言われる、「未来は変えられる」という文脈に則って、人口減少問題について伺います。これは、もう数十年来、昭和・平成・令和と続く構造的な課題だと思いますが、とりわけ自然減よりも社会減、若者・女性の首都圏流出などもそうですが、なかなか止まらないという構造的な課題があります。これを解決しない限り、人口減というのは止まらないと思いますが、逆に言えば、ここに手を入れられれば、緩やかにすることができるのかなと思います。そういった意味で、新年度、県としてどのように取り組んでいくのかということを、まず伺います。
【知事】
重要な御質問を頂きました。人口減少対策についてであります。
今、福島県を始め、地方部の県においては、間違いなく人口減少は継続している、これが厳しい現実であります。また、日本全体を見てみましても、都市部、大都市部も含めて、今後、全体として人口減少に転じていくことは、現在の人口ピラミッドを見ても明らかでありますので、これは地方だけの問題ではなく、今後、日本全体の問題になってくると思います。
その中でも、福島県においては、特に2011年の震災と原発事故以降、人口の社会減、ここは大きく進行している部分があります。
先ほど御質問があったとおり、人口減には自然減と社会減、この2つの重要な要素がありますが、特に今年、福島県として力を入れていく対策として、社会減対策についてお話ししたいと思います。
人口の社会減がなぜ起きるか、様々な要因がありますが、例えば大学等の高等教育機関に行く際、あるいは就職をされる際に、福島県で生まれて育った若者たちが、そのまま県外に行って戻ってこられない、これが非常に大きな要素になっていると思います。特に、震災、原発事故によって、この部分がより強まっているというのが現実であります。
自然減は、どうしても人口ピラミッドの構造上、難しい部分があるのですが、一方で、社会減少は、政策として、県、市町村、関係機関といった県全体で力を合わせていくと、減少幅を抑制していくことはできると考えています。
現実に、震災と原発事故以降、社会減の減少幅が大きく広がった時に比べると、今、その減少幅を、何とか少しずつですが狭めている状況にあります。
そして大事なことは、先ほど言ったとおり、福島県に生まれて育った若者たちが、例えば大学はある程度それぞれの進路希望もありますので、(県外へ行くという)意向があっていいと思うのですが、でき得れば、仕事を実際に始める際や、社会人になる際に、また福島県に戻って来ていただく、あるいは、ある程度、大都市等で働いて、その上で、将来30代、40代で、もう1回、ふるさとに戻って来ていただいて、福島の復興と地方創生の担い手になっていただくということが、非常に大事な契機になると考えています。
現在、令和5年度、新年度の予算編成を進めておりますが、若者たちが福島県で生まれて育って、そのまま就職する、その就職する彼ら自身のやりがい、生きがいを感じることができるようなすばらしい企業、産業、事業が福島県内に多数あります。ただ、現実にキャリア教育は一般的に学校現場等で行われているのですが、実は自分の身の回りにある企業や工場がどれだけすばらしい製品、サービスを供給しているかということを、皆さんが十分に知っているかというと、そうではないと思います。
あるいは、お子さん世代に対するキャリア教育も大事なのですが、お子さんの親御さん、祖父、祖母世代も、昭和の感覚というのか、(就職先に対する)一定の固定観念のようなものがあるかと思いますが、実は福島県内にすばらしい働き場所がある、また日本でシェアナンバーワン、あるいは世界でシェアナンバーワンの企業、工場があるということが、意外に知られていないという現実もあります。
こういった点も含めて、福島県内の中小企業、事業者さん、あるいは大きな企業が非常に活躍して頑張って、日本、世界で誇れる製品やサービスをつくり出しているということを知っていただくことも、一つの重要な施策になってくるかと思います。
また、移住政策も重要であります。御承知のとおり、震災と原発事故以降、本県への移住は大きく落ち込みました。「移住希望地域ランキング」でも、残念ながら以前の3年連続日本一ではない、それが福島の現実ですが、今、盛り返してきています。特に移住世帯、移住者の数は、むしろ震災と原発事故の前よりも今のほうが多い。そして、更に伸びていく傾向が見られます。
あるいは、新規就農者数も、我々が2030年に達成しようとしていたレベルをほぼ達成しつつある。こういう状況でありますので、逆に県外の若者の皆さんが福島県内に希望を感じ、未来を感じて、移住してきていただいているという現実があります。
したがって、福島県には様々なチャンスがある、チャレンジができる場所だということを、県内に生まれ育った若者たちにも、そして県外あるいは国外の皆さんにも伝えていく中で、社会減の抑制はできるという思いを持っておりますので、こういった点に、今年は特に力を入れていきたいと考えています。
【記者】
4月に開設予定の福島国際研究教育機構も、将来的には人口増の起爆剤になり得るかと思いますが、理数教育に力を入れないと、なかなかそういったIターンUターンにもつながっていかないのかと思います。教育面から見て、どういった方向に進むべきかという考えがあれば伺います。
【知事】
現在、県教育委員会が力を入れている分野は、特に二つありまして、一点が今言われた理数教育、(もう一点が)英語教育です。
なぜこの分野に力を入れているか。実は福島県が弱い分野だから、その裏返しだと思います。現在、全国の学力テスト等を見ましても、国語等の力は比較的頑張っています。ただ、理数系が、特に小学校から中学校に上がると、大きく全国順位を落としてしまっているという事実がありますので、現在、この理数系の教育、どうやって先生方が生徒に分かりやすく、また理解できるように教えるかという工夫を県教委で取り組んでいます。
あともう一つ、今、世界の経済状況、社会情勢、安全保障情勢は常に日本に直接関わり、正にグローバルな時代になっていますので、英語教育も極めて重要であります。理数教育、英語教育は今、県教委自身が一定の取組を頑張ってくれているのですが、更に進化させていかないと、全国それぞれの県が「教育県」を目指して頑張っていますので、追いつかないという現実もあろうかと思います。
県教委の取組を是非、知事部局においても支えながら、あと、例えば、いわき市もそうですが、各市町村も子どもたちの教育に力を入れています。磐梯町は英語教育に力を入れていて、英検2級を始め、英検3級以上の取得率が非常に高い。したがって、「やればできる」、こういった取組を、それぞれの自治体のトップランナー的なモデルも全県に広げていく、あるいは、リーダーシップ、首長さんや教育長さんたちの力というものも重要ですので、そういった面でも連携をしながら、子どもたちの教育レベルを上げていけるように、また一方で、福島ならではの教育、生きる力を育めるように、今年も取り組んでいきたいと思います。
(終了)
【問合せ先】
○質問事項
1 人口減少対策について
→企画調整部復興・総合計画課 電話024-521-7922
2 福島県の教育について
→教育庁義務教育課 電話024-521-7732
→教育庁高校教育課 電話024-521-7769