知事定例記者会見
■日時 令和5年6月12日(月曜日)10時00分~10時24分
■会場 応接室
【質問事項】
1 ALPS処理水の取扱いについて
2 防衛財源法案と復興財源の確保について
3 パートナーシップ制度について
4 マイナンバーカードの運用について
5 葛尾村の特定復興再生拠点区域解除について
6 EUの輸入規制について
【質問事項】
【記者】
処理水のことでお聞きいたします。
土曜日に、西村経産大臣が、福島始め、宮城、茨城、三つの漁連を回って、改めて対話を試みたところでしたが、漁協側からは見通しの立たなさに対しての不安であったり、その政策に関して不十分だといった声が多かったと思います。
改めて、知事としてのお考えや政府に求めることを伺います。
【知事】
まず、先週7日、相馬双葉漁協の皆さんが経済産業省を訪問され、西村経済産業大臣に対し、処理水放出による新たな風評に対する心配や、支援内容が分かりにくいことなど、組合員の皆さんが抱えておられる不安や懸念の声を直接伝えられました。
そして、一昨日(10日)には、今、お話があったとおり、西村経済産業大臣が、福島、茨城、宮城の3県を訪問され、県漁連や漁協の皆さんと意見を交わされました。
その際、福島県では、漁業者の皆さんから「処理水放出は反対である」との意見や、「廃炉を望むのは、福島の漁業者も同じである」、「漁業継続への支援や万全な風評対策を求める」などの意見が出され、西村経済産業大臣からは、「安全の確認はもちろん、漁業者の皆さんへの支援や風評対策にしっかり取り組んでいく」との考えが示されたと聞いています。
国においては、漁業者の皆さんから寄せられた御意見をしっかり受け止め、引き続き、丁寧かつ十分に説明を重ねるとともに、新たな風評を生じさせないという決意の下で、漁業者の皆さんが将来にわたり、持続可能な漁業を実現することができるよう、万全な対策を講ずるべきと考えております。
【記者】
同じ原子力政策という部分では、中間貯蔵施設に関しては、県外の最終処分というものが法制化されています。
処理水に関しては行動計画などが作られてはいますが、法的な担保というところで、やはり地元では不安があるのかなと思っています。
そのあたりについて、県としては主体的にこの辺をもっとしっかり手厚くしてほしいと訴える部分についてのお考えを伺います。
【知事】
ALPS処理水については、これまでも国に対し、漁業者の皆さんと誠意を持って意思疎通を重ねることや、万全の風評対策を繰り返し求めてきました。
先週(8日)実施した、国への提案・要望活動においても、改めて西村経済産業大臣に対し、理解の醸成と万全な風評対策に責任を持って取り組むことや、復興の取組が妨げられることのないよう必要な対策の強化に取り組むことなどを、求めたところであります。
国においては、「約束を遵守していく」と繰り返し発言しています。
引き続き、漁業者の皆さんの思いを真剣に受け止めながら、しっかり対応すべきであると考えております。
【記者】
処理水の海洋放出についてですが、海洋放出に伴って、香港の政府関係者が、県産の水産物など輸入規制を強めるという考えを示したとの報道がありました。
この件について受け止めを伺います。
【知事】
まず、そういった報道を拝見しております。
今回のこのALPS処理水の問題は、国際的に(見ると)理解されている国・地域もございますし、一方で、誤解・偏見が残っているという状況もあろうかと思います。
その際、大切なことは、第三者的な、また、科学的に客観的な評価ができるIAEA等の国際機関の判断というものが重要かと思います。
先般、IAEA、国際原子力機関の関係者が日本を訪れて、ALPS処理水の海洋放出に関して、処理水の安全性や安全規制など、これまで実施してきた個別の評価を総括するための包括的なレビューが行われました。
ALPS処理水の取扱いに関しては、客観性や透明性を確保することが極めて重要であり、今月中にもIAEAのレビューに関する包括的な報告書が公表される予定であると聞いております。
政府においては、引き続き、IAEA等の国際機関と連携し、第三者による監視と透明性の確保に努めるとともに、科学的な事実に基づく分かりやすい情報発信を行い、国内外における理解が正確に深まるよう責任を持って取り組むことが重要だと考えております。
【記者】
本日、参院の地方公聴会が開かれます。内容としては、防衛費の増額、特措法に関してのお話ですが、復興財源を転用するというような中身に関して抵抗感があるというようなこともあるので、公聴会開きましょうという流れになったと認識しております。
被災県として、その財源の使途が変わるということ、これはこの2025年以降の財源獲得の部分でも、明確にすべき部分なのかなと思うのですが、知事のお考えを伺います。
【知事】
現在、国会において、「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案」、いわゆる防衛財源法案が審議されています。
防衛費の増額に当たっては、政府において、防衛力強化資金の創設のほか、税制措置等で財源を確保する方針が示されており、昨年末に閣議決定された、令和5年度税制改正大綱において、所得税額に新たな付加税を課すとともに、復興特別所得税の税率を引き下げた上で課税期間を延長するとされたところであります。
あわせて、この税制改正大綱には、「息の長い取組をしっかりと支援できるよう、東日本大震災からの復旧・復興に要する財源については、引き続き、責任を持って確実に確保することとする」との文言も明記されております。
震災と原発事故という未曽有の複合災害によって、福島県は避難地域の復興・再生や、被災者の皆さんの生活再建、廃炉と汚染水・処理水対策、風評と風化の問題など、様々な困難を抱えており、これからも復興に向けた長く困難な戦いが続きます。
このため、第2期復興・創生期間終了後も切れ目なく安心感を持って復興を進めていくことができるよう、中長期にわたり、必要な財源が確保されることが不可欠であります。
今後もあらゆる機会を通じて、国が責任を持って、福島の復興に必要な財源を確実に確保するよう、強く訴えてまいります。
【記者】
今の件に関してですが、復興財源についてはしっかり確保するという文言が明記されたということがありますが、私たちの伝え方も悪いのかもしれないのですが、その復興財源が防衛財源に転用されるというような誤解を、県民に招かないためにどのような説明の仕方を検討していくのかということが一点と、参院で明後日にも、法案成立を目指すというこのタイミングでの地方公聴会の開催についてどのように受け止めているのか伺います。
【知事】
昨年末、この防衛財源の税制の議論を与党において行っている中、一部の報道が先行しました。その際の記事を拝見する限りでは、私自身、「転用されるのではないか」という思いがあったのは事実であります。
そこで直ちに、政府、当時の復興大臣、それから自民党、公明党の復興対策の本部長、こういった方々に、事実確認を行いましたが、「そういうことは決してない」、先ほど詳しく丁寧に説明しましたが、「復興財源はまず第2期復興・創生期間は当然確保するし、その後においても、我々はその決意を持っている」ということを明確に言われました。
ただ、少なくとも、(議論がなされている)当初の段階において、私自身には、そうした発言が明確に届いておりましたが、県民の皆さん、あるいは全国の皆さんからみると、必ずしもそう受け取れないという状況でありましたので、これは政府として、あるいは与党として、明確にそうしたことを示してほしいということを強く訴えました。
その後、当時の復興大臣が福島県に来られた際、直ちにぶら下がり(取材)で「そういった心配はないんだ」ということを明言され、その後、先ほど言ったとおり、与党の税制改正大綱、あるいは政府の税制改正大綱において、復興財源の確保について明記されたところであります。
したがって、政府与党においては、この事実を国民の皆さん、県民の皆さんにしっかり伝えていくことが重要でありますし、先週、私自身が東京に行きまして、政府与党に対する提案・要望活動を行ってまいりましたが、その際にも、特に第2期復興・創生期間後の財源確保を責任を持ってやってほしいということを話し、「それは当然政府与党としてやる」ということを明言していただいております。そういった思いも含めて、今後とも丁寧な説明というものを続けていただければと考えております。
【記者】
このタイミングでの地方公聴会開催についてはいかがでしょうか。
【知事】
それは国会における対応かと思いますので、直接的なコメントはございません。
【記者】
まず一点目ですが、性的少数者をめぐる考え方について伺います。
最近、司法の場では同性婚をめぐる判決であったり、国会の場でもLGBT法案が審議されています。
一方で県内を見ると、パートナーシップ制度を導入しているところがまだ一つも自治体としてない。富岡町で一部検討しているという情報はありますが、全国的に見ても、残念ながら後進県となってしまっている状況があります。
県内の状況について、現状をどう受け止めていらっしゃるか、あと福島で、何故これほど進まないのかということについてのお考えを伺います。
【知事】
まず、地裁における判決や、LGBT理解増進法案の審議、これが現在国会において継続されていることについて注視しているところであります。
福島県としては、多様性が尊重され、誰もが生き生きと暮らせる県づくりを目指すという考えの下、多様な性について、県民の皆さんの理解を促進していくことが重要だと考えています。
このため、多様な性に関するセミナーの開催や、男女共生センターにおける相談支援のほか、昨年度は、県民の皆さんにも活用していただける「多様な性に関する職員ハンドブック」を作成するなど、様々な取組を行ってきました。
パートナーシップ制度については、住民に身近なサービスを提供する市町村等の意向を伺ってまいります。
【記者】
なかなか進まない理由については何かありますでしょうか。こういうことが原因じゃないかというようなところについて伺います。
【知事】
現時点においては、そういったものはございませんが、政府における動向、あるいは国民的な世論の状況、そして他県の取組、市町村等の御意向、こういったものを丁寧に伺いながら考えを進めてまいりたいと思います。
【記者】
もう一点、マイナンバーカードについてです。
福島県内の幾つかの自治体でも、口座情報等を含め、誤登録があったりとか、マイナ保険証についても、ある団体の調査で6割程度がトラブルを経験したというような情報もありました。これについて、現状の受け止めと、政府に求めることを改めて伺います。
【知事】
マイナンバーカードを利用したサービスについて、福島県内においても誤登録などの事案が複数発生しています。
福島県としては、まず市町村に対して事務手順の徹底を周知しました。
また、国に対しては、引き続き、各省庁や自治体、関係事業者が一体となったチェック体制の構築を求めております。
また先般、全国知事会として、国に対し、マイナンバーカードの安全・安定的な運用に向けた緊急提言を行ったところであります。
こういった自治体、あるいは県等の意向というもの、また国民の皆さんの様々な思いを受け止めて、政府において速やかに対応を進めていただきたいと考えております。
【記者】
葛尾村の復興拠点解除から一年で、住民が生活できる環境が一定程度整った一方で、これまでの解除区域と比べて帰還が進んでいないのが現状かと思うのですが、今後の帰還困難区域の復興の在り方も含めて、知事の考えを伺います。
【知事】
平成28年6月12日に葛尾村で初めての避難指示解除が行われてから今日で7年、そして昨年、野行地区に設定された特定復興再生拠点区域の避難指示が解除されてからちょうど1年となりました。
この間、村民の皆さんの懸命な御努力、また、国内外からの温かい御支援を頂く中で、葛尾村は復興に向けた歩みを着実に進めてこられました。心から敬意を表したいと思います。
現在、葛尾村では、畜産の振興を始め、最高級胡蝶蘭「ホープホワイト」の生産やバナメイエビの陸上養殖事業に取り組まれるなど、活力ある村の創造に向けて果敢に挑戦、チャレンジを続けておられます。
また、昨日は、村制施行百周年の記念式典も行われました。
県としても、葛尾村の更なる復興に向けた力強い後押しとなるように、生活インフラの整備や住まい、働く場の確保など、村民の皆さんが安心して暮らせる環境づくりに全力で取り組んでまいります。
【記者】
やはり復興拠点ということで、避難指示解除後も課題が多いと思うのですが、そのあたりはどのように感じているか伺います。
【知事】
帰還困難区域における避難指示解除は、これまでの区域に比べると、より難しい部分があります。
それに加えて、12年という年月が経過したことによって、避難された方が避難先の自治体等で、職場環境、教育環境等、一定の生活というものを確立されているという事実もありますので、やはり時間が経てば経つほど、特に帰還困難区域における避難指示解除は、より容易ではなくなってくるというのが現実かと思います。
一方で、自治体自身や村民の皆さんに、「また古里に戻って生活をしたい」、「農業をしたい」、あるいは「子どもたちがそこで育って暮らしたい」というお声があることも事実であります。
まず、復興拠点において、現在、着々と除染や生活環境整備が進んでおりますが、これをしっかり前進させ、安心して暮らせる環境をつくること。また、先般、法案が成立しましたが、福島復興再生特別措置法の改正が行われることで、特定帰還居住区域という新しい地域が設定され、拠点外においても、2020年代において、古里に住民の皆さんが帰還できる制度がいよいよスタートします。
こういったものも同時並行で進めながら、できるだけ多くの村民の皆さん、町民の皆さんが古里に戻っていただける環境をつくること、併せて、葛尾村も、ほかの自治体もそうですが、他の地域や他県から移住されて、村の担い手として非常に頑張っていただいているということもありますので、移住促進も含めて、様々な施策に連携して取り組んでいきたいと考えています。
【記者】
EUの輸入規制の関連についてお伺いします。
EUの方でも議会とか理事会、もう既に始まっておりまして、6月中にも輸入規制の見直しがされる見込みだというふうに伺っております。
これまで知事の方で様々な働き掛けをされてきたかと思いますが、難しさや、あるいは手応えのような感触、また期待について伺います。
【知事】
特に今年に入りまして、3月から4月にかけ、EUを構成しておられる国、地域、例えばドイツ、スペイン等の関係各国に対して、直接、私自身が政府の大臣、あるいは政府の幹部、州政府のトップ、首相等に働き掛けをしまして、EUにおける輸入規制撤廃について幾度もお話をしております。
また、EUの関係者が、議会の方やいわゆる執行部の方、それぞれ福島に訪れていただきまして、県内の農産物の安全性や県内の空間放射線量の状況について正確な事実をお伝えして、「是非、EUの規制を撤廃していただきたい」ということを重ねて訴えてきました。
現在、正に6月ということで、EU内部における様々な協議が行われているかと思います。
これまで政府においても、様々な形で、G7の場も含めて、要請していただいておりますので、我々としては、EUの輸入規制が撤廃されることを望んでおります。
ただ、やはり20数か国・地域の連合体であるEUということでありますので、実際の状況というものを注視していくというのが現在のところでございます。
(終了)
○質問事項
1 ALPS処理水の取扱いについて
→危機管理部原子力安全対策課 電話024-521-7252
2 防衛財源法案と復興財源の確保について
→企画調整部企画調整課 電話024-521-8624
3 パートナーシップ制度について
→生活環境部男女共生課 電話024-521-7192
4 マイナンバーカードの運用について
→企画調整部デジタル変革課 電話024-521-7138
→総務部市町村行政課 電話024-521-7304
→保健福祉部国民健康保険課 電話024-521-7201
5 葛尾村の特定復興再生拠点区域解除について
→避難地域復興局避難地域復興課 電話024-521-1178
6 EUの輸入規制について
→農林水産部農林企画課 電話024-521-7319