【質問事項】
【記者】
処理水のことでお聞きいたします。
政府は、明日にも関係閣僚会議を開いて、処理水の放出時期について最終判断するというようなことが検討されております。
そういった状況を踏まえまして、今朝の朝刊でも出ておりますが、共同通信の世論調査で、政府の説明が不十分だということが大半の状況の中で、政治判断をするというタイミングについて、内堀知事はどういった形で受け止めているのか伺います。
【知事】
ALPS処理水の取扱いに関して、様々な調査結果が示されています。
国においては、こうした調査結果を踏まえ、県民の皆さん、国民の皆さんの理解醸成に向け、これまで取組を重ねてきました。
その中で、昨日、岸田総理が福島第一原発を訪問し、ALPS処理水の海洋放出に係る設備等を直接確認されました。
岸田総理からは、東京電力に対して「ALPS処理水に関する安全性の確保や風評対策について、会長、社長の真摯なリーダーシップの下、会社を挙げて緊張感を持って万全を尽くすよう求めた」ほか、政府としても「引き続き、IAEAの包括報告書の内容も含め、国内外に対して、科学的な根拠に基づいた透明性の高い情報発信を丁寧に行っていく」との考えが示されたと聞いています。
国においては、引き続き、IAEA等の国際機関と連携し、第三者による監視と透明性の確保に努めるとともに、基本方針や行動計画の中で自らが示した取組を更に徹底し、最後まで責任を持って対応していくことが重要であると考えております。
また、今後のスケジュール等について、具体的に現時点においては聞いておりません。
【記者】
今ほどの政府に対する責任の部分ですが、県として改めてこの段階において、今スケジュールは具体的に把握されてないという部分はございますけれども、緊急の要望であったりとか、そういったものを検討されていたりとか、また、実際検討されているのであれば、伝える時期について、今日なのか明日なのかとかそういったものがあれば伺います。
【知事】
一昨年、政府が基本方針を決定しました。
その後、2年数か月が経過しているわけでありますが、その間、福島県として、先ほども世論調査結果のお話を頂きましたが、(多くの方々が)本当に様々な立場で真剣な思いを示していただいております。
特に関係者である漁業者の皆さんの思い、非常に痛切なものがあります。
全漁連あるいは県漁連等を始め、漁業者の皆さんが、今回のALPS処理水の問題について、本当に複雑な葛藤を持って、日々、漁業を続け、また、政府に対する思い、東京電力に対する思いを伝えています。
こういったものを踏まえて、国において、各種状況を見ながら真剣に対応していくことが何よりも重要だと考えています。
【記者】
改めて、その思いを県として、見える形で伝えるというタイミングがあるのか伺います。
【知事】
県として、正にそういった思いを、この2年数か月の間に幾度も伝えております。
実際に、直接政府高官に対してお話しした回数が全体で21回、これは関係大臣等に対する要請です。また、会議等の場での要望も26回、計47回にわたって、県民の皆さんの真剣な思い、また特に漁業者の皆さんの痛切な願い、思いというものを伝えております。
こういったものを十分に踏まえながら、国として真摯に対応すべきと考えております。
【記者】
処理水の関連でお伺いします。
岸田首相が昨日福島第一原発を視察した際に、報道陣の取材に対して、国際的な理解が科学的な知見に基づいて、冷静な対応が広がっているとの認識を示されましたが、知事御自身はこの処理水をめぐる理解の広がりどう見ているのか、今後求めていくことを含めて教えていただければと思います。
また、今後、処理水の放出設備の安全性の確認を、知事御自身が行うような予定はあるのか伺います。
【知事】
先ほど言ったとおり現時点で具体的なスケジュールが固まっているわけではありません。
その上で、私どもは政府に対して、この2年数か月の間、国内外における理解醸成をしっかり行ってほしいということを幾度も申し上げました。
そしてまた、先般はIAEAにおいて包括報告書が取りまとめられ、一定の整理がなされたところであります。
そうした中で、世界各国、この2年数か月の間に一定の理解は深まってきているかと思います。
先般、NPTの議論が行われた際にも、IAEAの包括報告書の効果というものもあって、全体としての理解というものはあったかと思います。
一方で、依然として反対しておられる国・地域もあるわけでありますので、引き続き、政府においては、IAEAと連携しながら取組を進めていくことが重要だと思います。
また、国内においても、様々な調査がこの2年余り幾度も行われてきました。
一定程度皆さんの理解が進んでいるという部分もあるかもしれませんが、現時点においても、漁業者の皆さんを始め、反対だという思いを真剣に訴えられる方がいるということも、事実であります。
こういったものを見ながら、政府として、特に今日あるいは明日、全漁連と岸田総理の会談があるというような報道も拝見しておりますが、関係者である漁業者の皆さんと真剣に向き合って、理解を深め、信頼を構築していくことが極めて重要だと考えています。
【記者】
処理水の話に戻ります。漁業者の方々が反対している理由の一つとして、2015年に交わした関係者の理解なくしていかなる処分もしないという文章があるかと思います。
これは口頭での約束ではなく、国務大臣の高市早苗さんの名前で出された公文書ということになりますが、公文書で約束したことの重みについてどのように考えているか伺います。
【知事】
私はこれまで、政府、特に経済産業大臣に対し、あるいはこの会見の場においても、漁業者の皆さんとの信頼関係の構築が重要であるという話をしております。
また、この約束の存在、政府自身が極めて重要だと受け止めていると聞いております。
特に、総理自身が、今後全漁連の皆さん等と直接お話をされるとの報道を拝見しておりますが、信頼関係を構築するということが基本だと考えております。
【記者】
もう一点、合意形成のプロセスについて伺いたいのですが、先ほど知事からも、国が決めた基本方針を自ら責任を持って行うことが重要だとのお話がありましたが、国が責任を持つということは、一度決めたら必ずやり通すという意味なのか、それとも、福島の場合、利害関係者、それぞれの立ち位置によって求めることが違うときの、利害調整も含めてやってほしいということなのか、どのように考えているのか伺います。国が責任を持つという意味です。
【知事】
原子力災害からの復興、特にこの処理水の問題も含めた廃炉対策、非常に難しい問題であります。原発事故から十二年余りが経過していますが、年月を重ねるごとに複雑で多様であるということ。また、一つ一つの判断に葛藤と分断が伴うこと。また、これは福島だけの問題ではなく、日本全国の問題であり、かつ世界的にも強い関心がある。こういったところが原子力災害の非常に難しい部分を明確に示していると思います。
そうした中で、この合意形成のプロセス、中々明確に整理し切れない部分もあるかもしれませんが、やはり国において大事なことは、できるだけ正確な情報をしっかりと国内外に発信して、関係の皆さんの理解を深めていくこと。特に、先ほどからお話ししておりますが、漁業者の皆さんは正に関係者でありますので、こういった方々に対して、これまで経産大臣を始め、幾度も意見交換を重ねて、理解を深める努力をしてきていますが、今回、総理自身が、全漁連との関係も含めて、真摯に向き合って、より信頼関係をつくっていくことが重要だと思います。
また、こういった様々な不安や反対の一つの本質はやはり風評の問題だと思います。この風評の問題は、実は一番最初にお話しした正確な情報発信と直接リンクしている部分もあるのですが、風評が生まれることによって、例えば漁業者の皆さんであれば、現時点において、また、子どもたちの世代においても、本当に漁業を継続していくことができるのかという痛切な思いを幾度も訴えておられます。こういったものも全て含めた上で、政府として責任を持って判断し対応していくことが重要だと思います。
また、その時点時点の政府の判断に対して、私たち自身が一回一回、県民の皆さんの思いも踏まえながら、しっかりと、国に対して意見を訴えていく、あるいは様々な政策を求めていく、これを継続していくことが広域自治体として重要だと考えています。
【記者】
福島県民の間で、処理水の進め方について反対の声が政府に届かないのではないかという、失望感や不信感みたいなものが広がっていると思うのですが、今後、廃炉が少なくとも30~40年は続くという中で、国が決めて県民はそれに抗えないという関係性はどうやったら変えることができるか、そのときに、県の役割、県選出国会議員含めて政治家の役割をどのように考えているのか伺います。
【知事】
先ほどもお話ししましたが、原子力災害に関わる問題というのは複雑。多様で、葛藤と分断があり、また、福島だけの問題ではなく、日本全国に関わる重要な重い問題であります。
これについては、当事者である政府、東京電力が真摯に向き合い対応することが重要でありますし、一方で、正に東京電力福島第一原発でありますので、福島県として、県民の皆さんの様々な思いや葛藤を直接政府の高官に伝える、あるいは東京電力の幹部に伝えるという努力をこれまでも十二年以上継続してきました。
そういった訴え、意見を伝えるということを、私自身はこれまでも大切にしてきましたし、これからも大事にしていきたいと考えています。
【記者】
処理水の関連の質問で重ねて恐縮なのですが、首相が昨日、視察に来られたということで、タイミングとしては、判断するかどうかのぎりぎりのタイミングなのかなと個人的には思うのですが、今このタイミングで首相が視察をされて、全漁連の方々、関係者の方々と直接会うということについて、タイミング的には知事はどう捉えているのか、どう評価されているのかについて伺います。
【知事】
まだ今後のスケジュールについて、総理も昨日の視察後のぶら下がりでもお話されていますが、具体的なものを聞いている訳ではありませんので、仮定の質問にお答えするのは難しいのですが、大事なことは、この問題は先ほどからお話ししているとおり、何か非常に明らかな正解がある問題ではないということを、我々自身、例えば避難指示の設定や、それをどのタイミングで解除するか、あるいは中間貯蔵施設の問題をどうするか、中間貯蔵施設の(除去土壌等の)県外最終処分をどうするか。こうした全ての問題が、一般的な合意形成というものが非常に難しい葛藤、ジレンマを抱える問題だということを、この十二年余り経験してきています。
特にこの処理水の問題というのは、先ほど言ったような複雑で多様、いろいろな立場によって様々な御意見があり、必ずそこに葛藤と分断がついてまわる。さらに、福島だけではなく、全国の問題としてどうしていくのかという特性もありますので、こういった観点も踏まえながら、政府自身が責任を持ってどう対応していくのか。これを総理自身が、今後、全漁連の皆さんと向き合って生の声、痛切なお話というものを聞いた上で、真摯に率直に意見交換することが極めて重要だと考えています。
【記者】
処理水以外の関係ですが、県内の除染で出た土壌の県外最終処分に関して、環境省がこれまで9回の対話フォーラムを全国各地でやってきましたが、一昨日、最終回という形で、今後新たな形式で理解醸成に向けた活動を行うという方針が示されました。
この全9回にわたっての対話フォーラムの成果をどのように捉えているかということ、新たな活動について何か期待するようなことについて伺います。
【知事】
先般、国においては、「除染土壌等の県外最終処分に向けた国民の理解醸成活動」の一環として、9回目となる対話フォーラムを東京都で開催しました。
今回の対話フォーラムでは、これまでに開催された対話フォーラムの総括を行うとともに、西村環境大臣を始めとしたパネリストによる意見交換が実施されたと聞いています。
重要なことは、国民の皆さんからの御意見一つ一つに対し、真摯に向き合い、丁寧な説明を継続していくことであります。
国においては、県外最終処分の確実な実施に向け、今後も工夫を重ねながら、国民の皆さんの理解を深めるための取組を着実に進めていただきたいと考えています。
(終了)
○質問事項
1 ALPS処理水の取扱いについて
→危機管理部原子力安全対策課 電話024-521-7252
→企画調整部風評・風化戦略室 電話024-521-1129
→農林水産部農林企画課 電話024-521-7315
2 環境省主催対話フォーラムについて
→生活環境部中間貯蔵・除染対策課 電話024-521-8056