知事定例記者会見
■日時 令和5年9月11日(月曜日)10時00分~10時23分
■会場 応接室
【質問事項】
1 台風13号大雨に係る災害について
2 ALPS処理水の海洋放出について
3 国道401号博士峠の開通について
【質問事項】
【記者】
いわき市を中心に8日に発生した大雨被害についてお伺いいたします。
週末知事も現地御視察されたと思いますが、現時点で県が把握している最新の被害状況を教えてください。
その後、今日から議会が開会いたしますが、緊急的な予算措置など、県としての対応のお考えを伺います。
【知事】
まず、このたびの大雨で亡くなられた方に対し、深く哀悼の意を表しますとともに、被災された皆さんに心からお見舞いを申し上げます。
先週、顕著な大雨に関する気象情報が福島県に初めて発表され、線状降水帯による猛烈な雨が浜通りを中心に降り続き、1千棟以上の床上浸水が発生するなど、浜通りに甚大な被害が発生しました。
福島県では、顕著な大雨に関する気象情報の発表と同時に、災害対策本部を設置し、市町村に対しリエゾンを派遣して情報収集を行うなど、災害対応に当たるとともに、いわき市と南相馬市に災害救助法を適用しました。
また、発災翌日の9日から10日にかけて、私自身、いわき市と南相馬市の被災箇所を直接確認し、住民の皆さん、事業者の皆さんから被害状況を伺いました。
多くの方々のつらい思い、悲痛な声を伺い、今回の大雨がもたらした被害の甚大さを痛感しております。
県として、引き続き、被災市町村と連携し、被害状況の速やかな把握に努めるとともに、被災された方々の生活再建支援や被災箇所の迅速な復旧に向け、しっかりと取り組んでまいります。
また、現時点の被害状況でありますが、昨日、災害対策本部において、住家の被害や公共土木施設、農林水産業被害について御報告しました。
現在、その後の状況を精査しておりまして、本日午後にも災害対策本部員会議を開催し、その際により詳細な新しいデータを皆さんに御説明したいと考えております。
今後の対応でありますが、まずは被害状況をしっかり把握してまいります。
この被害状況の全容を早急に把握した上で、災害救助法における被災住宅の応急修理や被災した河川、道路、農業施設等の早期復旧に向け、速やかに対応の検討を進めていきたいと考えております。
【記者】
今後の対応について、速やかな対応ということで、予算とかお金の部分はいろいろとすぐには難しい部分もあるかと思いますが、その辺りの具体的なところは今後ということでよろしいでしょうか。
【知事】
まず応急復旧でありますが、例えば、堤防が壊れたという部分については、早速、土のうを数多く積み上げて、まず応急復旧をするということも、目の前の喫緊の対策であります。
また今後も、大雨災害等が出た場合、崩れてしまったところが非常に弱くなっていますので、こういった対応は当然行ってまいります。
それ以外の案件について、応急復旧はとにかく県としてまず真っ先に行う。そして併せて、被害状況の調査を行い、その後の本格復旧のためにどうするかということを、市町村と県と国とが連携し、しっかり現地調査を行った上で、予算の整理をするとともに、並行して、計画作業を進めていくという段階になりますので、そこは若干タイムラグが出てくると思います。
ただ、先ほど言ったような住家の対応ですとか災害救助法の適用関係は、既に取りかかれる状況にあります。加えて、現場における危険に関わる応急復旧は、とにかく一日も早く行うということで、取り組んでいきたいと思います。
【記者】
台風の関係ですが、いわき市では、避難所になっていた内郷二中が、浸水想定区域外であったにも関わらず浸水したという状況がありました。
これはおそらく市とか県の把握が十分じゃないということではなくて、雨の降り方がもう尋常じゃない、気候変動の影響だと思います。
そういったことを受けて、今回の災害について、県としても市と一緒になって検証したりとか、ハザードマップの見直しであったり、教訓を得るための見直し、検証について行う予定があるか、あるいは、今予定がなくても行いたいというような意思があるか伺います。
【知事】
今、御指摘があった内郷二中の関係であります。
私も現場に行って体育館を拝見しましたが、あのエリアは市長さんの御説明のとおり、(浸水想定の)対象地域ではなかったので、当然、避難所としての機能を果たしていただくということで準備していた。ですが、結果として浸水してしまって使えない状態となり、そこに一旦避難された方にまた移っていただくというプロセスがあったと聞いております。
現在は、我々が整理している地域の防災計画や避難計画において、これまでの災害の経験に基づいて安全だと思われている地域に避難していただくということとしております。
実は南相馬でも、私がお話した高齢者の方が「すぐそばの学校に避難することができず、もう一つ遠くまで行かなければいけなかった。」とおっしゃられておりました。恐らく水害との関係だったと思うのですが、やはり遠くまで行かなければいけないので非常に移動が大変だった、というお話もありました。
今回、線状降水帯の発生は初めてでありますし、また台風が低気圧に変わるというちょうど特殊なタイミングでもあったので、非常にこの避難関係が中々これまであった計画どおりになっていないという現実があったかと思います。
今回の被害状況を把握した上で、いわき市、南相馬市等の現状を見て、どういった対応がより良かったのかということをしっかり検討していくことは、必要だと思っております。
また、どういったレベルまで災害を想定して見直すかというのは、正直大規模な取りかかりになります。台風災害とか地震災害だとか、ある一定のところに起きて、順次(被害が)広がっていくというのは分かりやすいのですが、線状降水帯は、あの時、浜通り全体が危ないと出ましたが、私、実際に浜通りの各市町村長さんに電話したのですが、全く何もないところもありました。このように被害が発生する地域が非常にランダムなので、どうやって前提を想定したらいいかというのが、正直、今の段階ではまだつかみ切れておりません。
この線状降水帯、福島では初めてですが、西日本、九州では複数回体験されていますので、そういった県においても、恐らく今ほど言われたような御指摘、検証をどうするんだという議論もあるかと思います。各県の対応状況、また、気象庁ですとか、政府のアドバイスを頂きながら、より良く検証して変えていかないと、次のいつ起きるか分からない災害に対する備えという意味で不十分かと思いますので、是非、試行錯誤を進めていきたいと考えています。
【記者】
被害状況把握をまずは迅速にということだったのですが、現時点で政府に激甚災害指定を要請するようなお考えはありますでしょうか。
あと、4年前の東日本台風を受けて、いわき市の河川などでは防災対策としての工事を行ってきたわけですが、この工事について、一定の効果があったと見ているのか、その辺りのお考えを伺います。
【知事】
まず、激甚災害の関係です。
現在、関係部局において、自治体と連携しながら、被害額の把握に努めており、激甚災害の要件に該当するか、確認を進めてまいります。
また今回の大雨ですが、福島県だけでなく、千葉県、茨城県でも線状降水帯が発生し、大きな被害が生じています。こうした両県の状況、また福島県における被害状況なども十分に見極めながら、適切に対応していきたいと考えています。
そして、令和元年東日本台風以降の治水対策についてであります。
いわき市においても、また、国・県においても、特にこの4年間、国土強靱化、県土強靱化ということで、懸命に取組を進めてきました。
私自身今回、内郷や、南相馬市、昨日、藤原川、常磐に行っておりますが、実際に新しく整備した治水施設が効果を発揮して、「あれができたおかげで大丈夫だった」という感謝の声を、市長さん、あるいは地元の皆さんからも伺っております。
ただ一方で、昨日視察した藤原川で言いますと、実際、今回決壊しているところ、壊れているところは、新しいものではありません。その前後のところが全て完全にできているかというと、そうではありません。
また、国や県、河道掘削もかなりしっかり行っており、それによって(河川の)容量が増え、越水のレベルがゼロになった、あるいは、軽減されたということがあったかと思うのですが、やはりこれも全ての流域において全部できているわけではありませんので、今後とも、県土強靱化を進めていかなければいけないと考えております。
国土強靱化は、一定の期間が締切りとしてありまして、まだその後が未定であります。
私自身、これまで政府への予算要望等において、是非この国土強靱化を、限りのある年限ではなく、今後とも継続してほしいということを訴えておりますし、全国知事会でも、今年、特に災害を受けている西日本・九州の知事さんを含め、私と全く同じ思いでありますので、今回も、夏の知事会議を終えてから、全国知事会としての要望も行っております。これまで行ってきた箇所については、一定の効果が出ている。けれど途上であるので、これからも続けていかなければいけない、というのが率直な思いであります。
【記者】
線状降水帯に伴う被害についてですが、避難の在り方についてお伺いします。
いわき市、南相馬市、かなり早い段階で避難の呼び掛け自体はあったそうなんですが、やはり、先ほど知事からもあったように線状降水帯の特徴としてもなかなか、想定がしにくいというところもあって、実際住民の方にもお話を聞くと、あっという間に水が来て逃げられなくなって、その結果、消防の出動を要請したというお話もありました。
今後そういった避難の在り方について、県として現在のお考えを伺います。
【知事】
これまで大雨災害と言いますと、一般的には、台風災害か梅雨期の大雨に伴う災害というものが我々の経験としてありました。
それらについては、ある程度、こう徐々に雨が増えていき、そろそろ逃げたほうがいいなということが非常に分かりやすかったという部分があったかと思います。
それに対して、線状降水帯は、直前まで本当に雨がない。
その状態から突然雨が降り始め、一時間当たりで尋常でない量が降る。そのたった一時間で、一か月分丸々の降水量の雨が降るということもありますので、実は雨が降り始めた瞬間、もう逃げることは非常に困難な状況になっているというのがこの線状降水帯の大きな特徴かと思います。
またこれまでも、例えば大雨災害等で避難指示あるいは避難の呼び掛けをしても、実際は中々住民の皆さんが、そのタイミングでスムーズに動いているかというと、必ずしもそうではなかったと思います。
今後、この線状降水帯の怖さというものを、自治体と連携して、また皆さんのお力もお借りして、県民の皆さんに「これまでの災害とは違うんだよ」ということを知っていただく。また、降り始めた後は動くことがむしろリスクになる可能性もありますので、その場合は、家の中でできるだけ高いところ、あるいはお隣さんなど、非常に近いところに逃げ込むと(言うことをお伝えしていきたいと考えています)。私が昨日お会いした方も、高齢の方が隣家に行って助けてもらい、翌日の朝に帰ったら、非常に水が上がっていたというお話もありました。あまり遠くまで移動しようとすると、非常に危ないかと思いますので、線状降水帯で雨が降り始めた後に動くことの危険性、こういったもののバランスをどうとるかということを、今後、より詳しく広報し、皆さんに実感していただくことが大事かと思っています。
また、先ほどの災害対応の話も一緒ですが、線状降水帯についての理解というものが、やはり行政自身がまだ追いついていないところがあります。また住民の皆さんも「これまでの台風や大雨と同じだろう」というような感じもあるかもしれませんので、そこを変えていくことが、今後の「もしも」に対する備えとして必要だと考えております。
今後、県として防災イベントをいろんな場面で行っていきますので、そこで今回実際に経験して学んだことや、他県の実例等も聞いて、線状降水帯ならではの怖さ、対応の仕方というものを、これまでとは別の形で周知啓発していくこと、これに取り組んでいきたいと思います。
【記者】
避難の在り方について、県は以前から、ふくしまマイ避難ノートという形でも活用を呼び掛けていると思いますが、こうしたものの活用の在り方についても改めてあれば伺います。
【知事】
まず、ふくしまマイ避難ノートを全ての世帯にお届けしてありますので、もしそれを持っておられる方がいたら、読んでいただければ、線状降水帯のことを十分かどうかは別にしても、基本的なところは学ぶことができると思います。
現在、手元にないという方は、ホームページを見ていただくと全く同じものが掲載してあります。また逆にホームページですと、その線状降水帯の対応等もまた、逐次更新することができますので、我々自身もアップデートし、最新の形でお届けすることが必要かと思います。
また、現在、県の予算でマイ避難ノートのアプリ的なものの開発を進めておりますので、できるだけ早くつくり上げ、スマートフォンやタブレット等を持っておられる方は、それを使って、自分ならではの避難の仕方、御家族との連絡の取り方、あるいは避難所がどこかということが、常に自分の手元にあるという状態にしていただくことも重要かなと思いますので、こういったものも是非、早くつくり、皆さんに使っていただけるようにしていかなければいけない、こう考えております。
【記者】
もう一点、話題が変わって処理水の関係ですが、今日海洋放出の1回目が終わるかと思います。
これに関して、技術的な評価と社会的な反応としていろいろ良いことも悪いこともあったかと思いますが、その辺りの受け止めと次の放出に向けて改善してほしいところがあれば伺います。
【知事】
ALPS処理水の海洋放出については、東京電力から、これまでのところ計画どおりに実施されているという報告を受けております。
本日にも1回目の放出が完了する予定であります。
福島県では、放出開始日以降、希釈放出設備の運転等が手順どおり適切に行われているか、現地駐在職員を通じて確認を行っています。
先週、私自身、福島第一原発を視察し、緊急遮断弁や放水立坑放射線モニタなど、様々な安全対策を講じた上で、海洋放出がなされていることを直接確認しました。
また、海域モニタリングについては、国、東京電力のほか、県においても独自に海水中のトリチウム分析を行っており、いずれの結果も検出下限値未満であるか、十分に低い値となっております。
また、IAEAからも、このモニタリングの結果が、先日、出たところでございます。
県としては、引き続き、海水中におけるトリチウムの迅速分析を毎週継続するとともに、セシウム137など、トリチウム以外の核種についても、毎月モニタリングを実施し、県民の皆さんに分かりやすく情報発信をしてまいります。
一方で、中国における日本産水産物の輸入停止措置や日本に対する迷惑電話などの影響も生じております。
こういった点について、政府において、一定の対応をしていただいており、ある程度の落ち着きを見せておりますが、まだ一部継続しているという現実がございます。
また逆に、今回の海洋放出を機に、各都道府県、あるいは民間企業の皆さん、各国の大使の皆さん等が、福島あるいは三陸・常磐もの、こういった水産物を応援しようということで、本当に温かい声を寄せていただいております。
厳しい状況がまだまだ続いておりますが、こういった応援を力にして、我々は前に進んでいくことができるのではないかという思いも抱いております。
国及び東京電力においては、国内外の理解醸成に向けて、今後の対応でありますが、海域モニタリングの結果等も含め、正確で分かりやすい情報発信に取り組むこと。また、ALPS処理水の問題、これからまだ10年、20年、30年という長い戦いでありますので、引き続き、想定外の事態が生じることがないよう、油断することなく、万全の対策を講じていただきたいと考えています。
【記者】
博士峠のバイパスが昨日開通しました。
地元にとってとても悲願だと思うのですが、知事としてその意義ですとか期待感ですとか、どのように感じていらっしゃるのか伺います。
【知事】
博士峠の開通式、本来、私自身も参加したいという思いがありましたが、昨今の線状降水帯への対応を優先させていただきました。
50年近い、長年の悲願がようやく形になって、あの博士峠が整備されたことによって、冬期間も含め、非常に安全に安定的、そしてより早く交通がつながったということは、あの地域の皆さんにとって非常に大きな力になっていると思います。
地元の皆さんの反応を伺いましたが、非常に喜んでいただいていた。あと関係者も多く、歴代の市町村長さん、国会議員さん、いろんな方々も関わっているので、そういった方々の思いも、正に胸の中にあったかと思います。
特に救急関係、あるいは物流や観光、通勤通学、あらゆる面で、経済社会活動のプラスになるかと思います。
ただ一方で、福島県は広い県土で、まだまだいろんな交通事情が困難な地域もありますので、今回のものが一つの形として、先ほどの国土強靱化もそうなのですが、今後も福島県内の広い県土における交通ルート、こういう交通インフラの整備について、自治体と連携し、また国とも関わりながら、是非、前に進めていきたい、そういう思いでおります。
(終了)
○質問事項
1 台風13号大雨に係る災害について
→危機管理部災害対策課 電話024-521-8275
→危機管理部危機管理課(国土強靱化、防災イベント、マイ避難ノート)電話024-521-7302
→土木部河川整備課(治水対策)
2 ALPS処理水の海洋放出について
→危機管理部危機管理課 電話024-521-7302
→危機管理部原子力安全対策課 電話024-521-7252
→農林水産部農林企画課 電話024-521-7315
3 国道401号博士峠開通について
→土木部道路整備課 電話024-521-7502